ゆうさくほど雀蜂に刺された男は居ないだろう。その因縁はすでにホモガキたちの間でも語り継がれている。
そしてスズメバチくんのゆうさくへの執着もそれに違わず強いものだ。
ふたりの因縁は、ゆうさくが生き延びる決意をして数十分も経たずに成就した。




ビンビンビンビンビンビン

信じたくなかった。
不吉な羽音が、ゆうさくにとっては死の宣告に等しい音が。
まさか、自分の背後から聞こえてくるなんて。



何度、こうしてそれと対峙しただろうか。
そして、何度それに刺されただろう
ゆっくりと振り向いた視線の先には、ゆうさくにとっての死神ーー不気味なほど自分と似た人面のスズメバチが、居た。

何度もこいつに殺された。
あまりに多すぎて覚えていないが、少なくともその回数は400000回に到達している筈だ。

「……不安、的中しちゃうんですよね」

その音が聞こえた瞬間から、ゆくさくは既に生を諦めていた。
抗うだけの気力を持てなかった。
抗っても無駄だからだ。
過去には抗ったこともある。何度も何度も、時には撃退すらしたこともある。ただ、それでもお約束のごとく刺されて死んできた。
マッハ2.2で突っ込まれたり、背後から奇襲されたり、ビブラートで襲われたり……
それらの経験は、ゆうさくの心を折るには十分すぎるものだった。

ビンビンビンビンビンビン

薬師寺天膳を刺したスズメバチくんは、この広大な島で直ぐ様ゆうさくを見つけ出した。 
具体的には直感のみで2エリアも移動してきたのだ。恐るべき執念。いや使命感か。
すでに刺すための準備は万端であった。
聞き方によっては人の声にも聞こえる羽音がその証拠だ。

ビンビンビンビンビンビン

ゆうさくは自身の死を確信していたし、スズメバチもゆうさくの死を確信していた。




ガシィッ!!


「ま、間に合った…大丈夫ですか!」


白い少女が、スズメバチの一撃を受け止めるまでは。






なぜ、どうして。
スノーホワイト、姫河小雪が最初に思ったことは絶望だった。
魔法少女は清く正しく美しく…断じて殺し合いの道具などではない。
ずっと魔法少女に憧れていた。それでも叶わないと思っていた夢が叶って、幸せだった。
その先に待ち受けていたものは魔法少女の削減と…それに伴う殺し合い。暴力と略奪と死という、信じていた魔法少女の姿とは駆け離れたものだった。
それだけでもキツいのに、その矢先にこれだ。
キャンディ集めとは違い、土地の枯渇を防ぐためという大義名分もなく、堂々と開き直って殺し合いをさせられている。
魔法少女は精神耐性も高まるとはいえ、まだ十代半ばの少女には荷が重い。それに、自身の首輪は狙われる側の"赤"ときた。
ただ、それでも。

「でも……こんな事、間違ってるよ」

折れる寸前とは言え、まだ彼女は理想の魔法少女を貫きたいと思っている。
希望はある。
この島に居る魔法少女は自分を含めて四人。
接点はないがN市の最古の魔法少女のクラムベリーに、不気味だが一応は味方になってくれそうなハードゴア・アリス。
彼らと協力すれば、この状況を抜け出せる道もあるかもしれない。ただ、それよりも注意を引くことがひとつ。

「そうちゃん……!」

ラ・ピュセル。死んだ筈の、…殺された筈の幼馴染みの名前が名簿に乗っていたのを見たときは目を疑った。
もしも、もしも彼が生きてこの島に居るのならーー会いたい。会って話をしたい。
そう思った直後だった。


『視聴者のためにゆうさくを刺さなければいけないのに刺せない。どこだ』
そんな声が聞こえてきた。

『見つけた。刺さなければ』

『見つかった。死にたくない』
また声が聞こえてきた。今度は別の人の声だ。

『助けて、死にたくない』
『誰か、もういやだ』

魔法少女は例外なく、ひとつの固有魔法を扱える。スノーホワイトも例に漏れず、彼女の魔法は『困った人の心の声が聞こえるよ』である。
そして、その声が殺し合いの会場で聞こえるということは、まず疑いようもなく、近くで誰かが命の危機に瀕していることだった。

「助けなきゃ…」

正直、精神的にも状況的にも他者を助ける余裕はない。
ただ、それでも彼女は駆け出した。
それでも助けるのが、魔法少女だから。




声を辿っていくと、そこには今まさに襲いかかろうとしている人面の蜂と男性の姿が。
危機一髪で間に合った。 

「ま、間に合った…大丈夫ですか!」

先程の声から刺されたらまずいのは分かっている。針に触れないようにディバックでガードする。
パワーそのものはたいしたことはないのか、戦闘に不慣れなスノーホワイトでも防ぎきれた。
突然の乱入者に驚いた顔をするが、人面のスズメバチはゆうさくを刺せなかったことを悔しそうだ。ただ、ゆうさくを刺すという使命感は今だ衰えていないのか、空中で旋回。
一直線にゆうさくの、具体的にはその右乳首に突撃する。

「えいっ」 

それに対して『ゆうさくを刺せずに困っているスズメバチの声』を聞いて動きを予想していたスノーホワイトは、懐に忍ばせていた支給品を放り投げる。 

バシュッ!!という空気が抜けた音の後に、視界が煙幕で覆われる。
発煙弾。これといった殺傷能力はないが、足止めには便利な道具だ。
余談だが雀蜂の駆除には煙による燻し出しが効果的だ。よってスズメバチにも一定の効果が期待できると思うんですけど(名推理)

とにかく隙が出来たことは確かだ。

「すみません!暴れないでくださいね」

スノーホワイトはゆうさくを抱えると、一直線に離脱を図る。魔法少女の身体能力なら、成人男性を抱えての逃走も可能とした。
ゆうさくは軽々と自分を抱えて走り出した少女に驚くも、助けてくれたことを理解しなすがままに任せていた。



【F-?/平野/深夜】

【スノーホワイト(姫河小雪)@魔法少女育成計画】
【状態】健康
【道具】基本支給品、ランダム支給品1、発煙弾×1(使用済み)
【行動方針】
基本:殺し合いなんてしたくない…
1.同じ魔法少女(クラムベリー、ハードゴアリス、ラ・ピュセル)と合流したい
2.そうちゃん…
3.スズメバチから逃げる
※参戦時期はアニメ版第8話の後から


【ゆうさく@真夏の夜の淫夢派生シリーズ】
【状態】不安、困惑
【道具】基本支給品、ランダム支給品1~2
【行動方針】
基本:不安感じるんでしたよね?
1.スズメバチ対策をする。
2.なんだこの魔法少女!(困惑)


一分も経たずに煙が晴れると、そこにはスズメバチのみ。ゆうさくとスノーホワイトは影も形も残さず離脱に成功していた。

スズメバチは激怒した。

ビンビンビンビンビンビンビンビンビンビンビンビンビンビンビンビンビンビン
ビンビンビンビンビンビンビンビンビンビンビンビンビンビンビンビンビンビン
ビンビンビンビンビンビンビンビンビンビンビンビンビンビンビンビンビンビン
ビンビンビンビンビンビンビンビンビンビンビンビンビンビンビンビンビンビン
ビンビンビンビンビンビンビンビンビンビンビンビンビンビンビンビンビン

【スズメバチ@真夏の夜の淫夢派生シリーズ】
【状態】健康、怒り
【道具】なし
【行動方針】
基本:注意喚起のためにゆうさくを刺す。邪魔者も刺す。
1.白い少女(スノーホワイト)に激怒。
2.ビンビンビンビンビンビン……チクッ
※刺した相手を必ず殺せます。
※相手がゆうさくでない場合、邪魔をしなければ刺しません。



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能力制限には気を付けよう! ゆうさく
スズメバチ 男の世界は一方通行
最終更新:2017年11月07日 00:25