ザ ン ッ

「てめェ!!クソ人間!!」

「ひいいぃぃぃ!!」

ワ ア ア ア ァ ァ ァ

響く吸血鬼の怒号。まどかの悲鳴。

それらを背景に、襲いくる吸血鬼たちの軍勢へ、明はドラゴンころしを構える。
体勢は居合抜き。
ただし、腕だけではなく身体全体を使った回転斬りだ。

明が鉄塊を振るう度に吸血鬼は両断され、薙ぎ払われ、血だまりを作っていく。

だが、大ぶりであるが故に隙も大きく、二人の吸血鬼が鉄塊を躱し、背後にいるまどかへと襲い掛かる。

そんな『相棒』の隙をフォローするのはホル・ホース。
目にも止まらぬ速さでスタンド『皇帝』を発現させ、吸血鬼たちの両脚を撃ち抜く。
とはいえ、人間よりも生命力が強く頑丈な吸血鬼相手では数秒の足止めが限界だ。

「そんだけありゃ充分だろ、なァ旦那」

その言葉通り、数秒のうちに明は体勢を立て直し、再び鉄塊を振るい吸血鬼たちを両断する。

シーン...

殺戮の終焉と共に訪れる静寂。

ハァ、ハァ、と呼吸音が空気を支配する。

明は吸血鬼たちが動かなくなるのを確認すると、身体から力を抜き息を吐く。

「大丈夫か二人共」
「お蔭さまでな。今回は噛まれずに済んだぜ」

功労者である相棒を労うホルホース。一方、まどかは優れない顔色で血だまりを見るだけだ。

「恐いのか」

明はそんなまどかに気が付き声をかける。

「恐いのは吸血鬼というより...俺だろうな」

まどかの身体がビクリ、と跳ね上がる。
図星だ。
まどかにとって吸血鬼も恐いが、明はそれ以上。
最初の時は助けられたこともあって感覚が麻痺していたかもしれないが、落ち着きを取り戻したいまでは、容赦なく敵を殺戮する明が悪魔にすら見えてしまう。
そんなことはない、彼は優しい人だ。
そう思えば思うほど、現実との乖離は酷くなってしまう。

「ご、ごめんなさい、わたし...」
「謝るな。お前は間違ってない」

明を傷付けてしまったと思ったまどかだが、明は微笑み逆に彼女を肯定した。

「俺も彼岸島に着いた時はそうだった。あの島にいた兄貴に会った時、その冷血ぶりに攻め寄ったんだよ」

微笑みつつも、遠い目でかつての光景を思い浮かべる明に、ホルホースは存外人間味があるんだなと意外に思っていた。

「あの島は人を変えてしまう。だから、お前が俺のようになる必要はないんだ」

ポンポン、と幼子をあやすようにまどかの頭に手を乗せ、くるりと振り返り吸血鬼たちの亡骸へと向き合う。
二人に見せないその顔は、おそらく無表情の冷徹な狩人と化しているだろう。
だが、彼の寂しく悲しそうな背を見れば、もうまどかの目には彼が悪魔のようには映らなかった。

「オゥ、これはまた絶景ね」

どこからともなく発せられた暢気な声。
まるで物見遊山にでも来たかのようなほど、この光景には不釣り合いだ。
三人がとっさに振り返れば、そこに立つのはスリットの入った中華風の装いの女。
その色気漂う女―――シェンホアのいきなりの登場に、まどかはただ面くらい、明とホルホースの二人は反射的に戦闘体勢に入る。

「あ・ア~、早とちりよろしくないですだよ。争うの別に構わないが、それ目的なら声かけたりしない。よろしいか?」

その訛りがかった口調に三人は怪訝な顔を浮かべる。

「こいつは失礼。あんたみてぇな別嬪さんに声かけられると流石に緊張しちまうんだ」
「嬉しいこと言ってくれるね、色男。ならふたりとも武器を下ろして貰えませんですか?」
「悪いな。俺も、そう易々と他人は信用するなと学んだんだ」

若干間の抜けた空気が流れるものの、明とホル・ホースの警戒心は依然衰えていない。
依然、張り詰めた糸は残ったままだ。

そんな空気を打ち破るかのように、もぞもぞと地面を這う影がひとつ。

「ガアアアアア!!」
(しまった!一匹見逃していたか!)

明は慌ててドラゴンころしを振ろうとするももう遅い。

影―――吸血鬼は、シェンホアへと跳びかかった。



―――ピッ。

吸血鬼は押し倒したシェンホアごとごろごろと地面を転がり明たちから距離をとる。

「ハッ、仲間の死体に隠れて死んだふりをしていた甲斐があったぜ。あいつら見捨てたお蔭でこんな上玉を食えるんだからよ」

吸血鬼はハーハーと息を荒げ、シェンホアへと下卑た笑みを見せつける。
この男がナニをしようとしているのかは、語らずともわかるだろう。

「奴らを殺したらお前を犯してやる。それまで小便垂れて大人しくしてな」
「お宅好みじゃないね。逝きたいなら一人で逝くよろし」

動じず冷めた返事を返すシェンホアだが、吸血鬼に押し倒されている状況だけ見れば危機は必至。
まどかは思わず明たちへと振り返り助けを促そうとするが、二人は戦闘態勢をとるだけで、それ以上近づこうとはしなかった。
何故か。助ける理由がないからだ。

言い換えれば、もう勝負はついているということだ。

「強がるじゃねェか。だがよ、オレに噛まれていつまでその暢気な態度g」

ぐらり、と吸血鬼の視界が傾き頭部が地に落ちる。

「保て...あ、あれ、なんでオレの身体がそこに」
「まだそれだけ喋れるですか。けど頭と体泣き別れたらもう終い」

シェンホアは、伸しかかる吸血鬼の身体を面倒そうに押しのけ返り血を拭う。

(速ェ...)

ホル・ホースは純粋に彼女の技量への賞賛の感を覚えた。
吸血鬼が跳びかかるのとほぼ同時に反応し、目にも止まらぬ早業で吸血鬼の首を斬ってみせた。
彼女の身のこなしから相当の達人であり且つあの躊躇いの無さから自分と同じく殺し屋染みた生業の者であることは容易く察せた。
単純な体捌きなら確実にあちらの方が上。実際に戦りあえば、己の信条を抜きにしてもお互いにただでは済まないだろう。
そんな自分と同等の者が現れたのは幸か不幸か。それを判断するのはこれからだ。

「余計な邪魔が入りますしたが、お話戻しますです。私、あなたたちと話がしたいだけですだよ」

あくまでも穏やかに語るシェンホアは語る。
実際、彼女からは殺気など感じ取れず、不審な点も見当たらない。
いつまでもこうしていては埒が明かないと、ホル・ホースは銃をおろし、明は構えを解き。

その切っ先をシェンホアへと突きつけた。

「あ、明さん?」
「旦那?」
「さっき言っただろう。俺は易々と他人を信用するなと学んだ。あんたみたいに笑顔を振りまく奴に騙されたこともあるんだ」

話し合いへの交渉が収束しかけていた時に突如剣先を突き付けるのだ。
明のその予想外の行動にはまどかもホル・ホースも思わず面食らい、シェンホアでさえも目の色が変わってしまった。

当然、張り詰めた空気になるのは必定である。

ドキドキと誰かの鼓動が脈打ち、それが空気を伝わり伝染するかのように一同は鼓動が早まりハァハァと呼吸が乱れる。

(...戦る気なら受けて立ツ)

シェンホアの目が薄く見開かれ、殺気が目に宿る。
同時に、明の剣はスッと下ろされた。

「すまんな。ようやくいい目になった」
「?」
「アンタはいま俺に殺意を抱いた。その本気な目付きが見たかったんだ」

張り詰めた空気は一気に四散する。
明の行動の意味を理解したシェンホアとホル・ホースはそういうことかと肩で息をつき、まどかはただ一人疑問符を浮かべホル・ホースへと説明を仰いだ。

「日本でも目は口ほどにモノを言うって諺があるだろ?どう演技しても、本気の目付きって奴には生き方が現れちまうもんだ。旦那はそれを知りたかったってことだ」
「な、なんだかすごいですね」
「だがやり方が強引だ。あれじゃ一歩間違えば殺し合いが起きちまう。...なんか焦ってたのかねェ」

ホル・ホースからしてみれば、明とシェンホアがぶつかり合い無駄な消耗をするのは好まない展開だった。
だから、結果的に両者無傷で事が済んだのは暁光ものであった。

(焦っていた、か...)

明は己の手にするドラゴンころしへと目をやる。

ホル・ホースの憶測は的を得ていた。
この殺し合いに巻き込まれてから幾度か振るったこの鉄塊。
確かに強力なものだが、同時に違和感を感じていた。

(同じくらい重たい物は持ったことがある。だが、この剣からは重量以外のなにか奇妙なモノを感じる)

ドラゴンころしは、ただの鉄塊ではない。
名鍛冶師・ゴドーが叩き上げ、それを一人の男が幽界(かくりよ)の相手に振るい斬り続け、亡者の怨念を浴び続け鍛え上げられ、異界の者への干渉が可能になるまで至った。
文字通り魔剣である。

そんなものを初見且つ魔法染みたモノへの認識の無いまま使いこなせる者はそうはいない。

常人では持ち上げることすらできないドラゴンころしを振るえるのは流石というべきだろう。
だがそこまでだ。
明にできるのは、この鉄塊を振るうことだけであり、決して扱いこなせてはいない。
いうなれば、武器に振り回されている状態だ。
長期の鍛錬を積めばまだわからなかったかもしれない。
だが、少なくともいまの明ではドラゴンころしを使いこなすことができないという確信があった。

常にドラゴンころしへと意識を向けることを強いられるため、否が応でも注意力は散漫してしまう。
それが、今回死んだふりをした吸血鬼を見逃し、シェンホアへの対応が強引になってしまった要因だ。

だが、明はそれを自ずから口にはしない。自分が動揺すれば同行者にもその不安が伝わってしまうからだ。
故に明は、彼岸島の時と同様、表面上は冷静に振る舞っていた。

「お話の前にひとつよろしいか?」

シェンホアは己の目を指差す。

「これ、笑顔作ってるわけじゃなくて、生まれつき細めなだけですだよ」
「...すまない」

早とちりで人を試すような真似をしてしまった。
こんな調子では先が思いやられそうだ。明はそんな思いで謝罪と共に頭をさげた。


【F-2/一日目/早朝】


【シェンホア@ブラックラグーン】
[状態]:健康
[装備]:とんでもなく長ェ刀@彼岸島
[道具]:基本支給品一式、不明支給品1~2
[思考・行動]
基本方針:ゲームから脱出する。
0:生き残る。手段にはこだわらない。
1:レヴィたちと合流するつもりはないが敵対するつもりもない。
2:T-800からの依頼(ジョン・コナーを探す)は達成したいが、無理はしない。
3:明たちと情報交換をする。

※参戦時期は原作6巻終了後です。



【宮本明@彼岸島】
[状態]:雅への殺意、右頬に傷。
[装備]:ドラゴンころし@ベルセルク
[道具]: 不明支給品0~1
[思考・行動]
基本方針: 雅を殺す。
1:吸血鬼を根絶やしにする。
2:ホル・ホース及びまどかとしばらく同行する(雅との戦いに巻き込むつもりはない)
3:邪魔をする者には容赦はしない。
4:シェンホアと情報交換をする。
※参戦時期は47日間13巻付近です。



【鹿目まどか@魔法少女まどか☆マギカ】
[状態]:疲労(大)、精神的疲労(大)、失禁
[装備]: 女吸血鬼の服@現地調達品、破れかけた見滝原中学の制服
[道具]: 不明支給品1~2
[思考・行動]
基本方針: みんなと会いたい。
0:ほむら、仁美との合流。マミ、さやか、杏子が生きているのを確かめたい。
1:明とホル・ホースと同行する。
2:あの子(ロシーヌ)の雰囲気、どこかで...?
3:シェンホアと情報交換をする。

※参戦時期はTVアニメ本編11話でほむらから時間遡航のことを聞いた後です。
※吸血鬼感染はしませんでした。


【ホル・ホース@ジョジョの奇妙な冒険】
[状態]:疲労 (大)、精神的疲労(大)、失禁、額に軽傷
[装備]: 吸血鬼の服@現地調達品、いつもの服
[道具]: 不明支給品1~2
[思考・行動]
基本方針: 脱出でも優勝でもいいのでどうにかして生き残る
0:できれば女は殺したくない。
1:しばらく明を『相棒』とする。
2:DIOには絶対に会いたくない。
3:まどかを保護することによっていまの自分が無害であることをアピールする(承太郎対策)。
4:そういやこいつら、スタンドが見えているのか
5:シェンホアと情報交換をする。

※参戦時期はDIOの暗殺失敗後です。
※赤い首輪以外にも危険な奴はいると認識を改めました。
※吸血鬼感染はしませんでした。




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運のいい時に限って中々気付けない シェンホア 警鐘
妖精 宮本明
鹿目まどか
ホル・ホース
最終更新:2018年01月25日 23:27