青年、花京院典明は困惑していた。

宿敵・DIOの部下であるテレンス・T・ダービーとの魂を賭けたゲーム対決で敗北し、急激な虚脱感に襲われたのは覚えている。
だが覚えているのはそこまでだ。
気が付けばあの妙な会場に呼ばれ、老婆に殺しあえと言われて。とにかく主催である老婆を倒そうとした途端、琵琶の音と共に意識が遠のいて。
情報が多すぎる。これで困惑するなという方が無理な話だ。

(いったん整理をしよう。たしかあの老婆は支給品を配るといっていたな)

キョロキョロと辺りを見回せば、小さなデイバックが落ちていた。
花京院は傍の木の陰に隠れてその中身の検分を始めた。

「これが僕の支給品...ん、これは名簿と地図か」

名簿を目にした彼に更なる困惑が降りかかる。

「承太郎にジョースターさん!それに...DIO!?」

空条承太郎とジョセフ・ジョースター。
花京院典明が初めて心より信頼した友人であり大切な仲間たち。

DIO。
承太郎たちの旅に同行したそもそもの目的。
植え付けられた屈辱を晴らすため、ジョセフの娘であり承太郎の母であるホリィの命を救うために倒すべき男だ。
名簿にはディオ・ブランドーと記載されているが、これはかつてジョセフから聞かされたDIOの本名だったはずだ。

(館で分断され、テレンス・T・ダービーと戦っていたメンバーだけがこちらに来ている。つまり、承太郎たちもゲームに負けたのか?
奴は人形に魂を入れられた者を自在に操れるのか?しかし、それではDIOまでもこちらにいるのが不可解だ)

テレンスに負けた者がこちらに飛ばされたと仮説を立ててみるが、しかしDIOがいる時点でこの説は不自然な点が多すぎる。
テレンスがDIOを裏切ったとしてもタイミングがおかしいし、そもそもあの慎重なDIOがゲームの達人であるテレンスとゲームで勝負などするだろうか?
人質をとったにしても、最も縁が深いであろうエンヤ婆にさえ、利用価値がなくなったと判断すれば、肉の芽を仕込み殺してしまうような男に通用するするとは思えない。
DIOほどの力があり、人質も意味を為さないのであれば、そのままテレンスが殺されるだけだ。
よって花京院は、この殺し合いとテレンスは無関係だと考える。あるとしても、それはテレンスが脅迫されて従っているという構図だろう。


(いや...気になる名はそれだけじゃない)

ジョナサン・ジョースター。ロバート・EO・スピードワゴン。

前者は、承太郎とジョセフの先祖にあたり、100年前に吸血鬼と化したDIOと戦った男だ。
確か彼はDIOに首から下、つまりは身体を丸ごと乗っ取られて死亡したと聞かされている。

ロバート・EO・スピードワゴン。
世界的に有名な財団の創始者の名前だ。ジョースター家に対して非常に協力的であり、花京院も目の治療や物資の支援などの恩恵を受けたこともある。
だが、彼もまた心臓発作で亡くなっていた筈だが...。

(神子柴は死人を蘇らせていたが、彼らも蘇らせられたのか?)

死者の蘇生は見せられた。
だが、見せしめの青年は身体がその場にあったから復活できたが、DIOに身体を乗っ取られているジョナサンが生き返られるのかはわからない。
スピードワゴンにしても、彼の享年は80歳を超えていた筈だ。
そんな彼を蘇らせてまで殺し合いに放り込むだろうか?順当にいけば、すぐに脱落してしまうだろう。

(わからないことだらけだ...とにかく情報を集めなければ!)

花京院は決して殺し合いに乗るつもりはない。
それどころか、二度とこんなバカげたことを起こさせないように神子柴を倒そうとすら考えている。

しかし、現状では神子柴の摩訶不思議な能力に対抗する術は思いつかない。
地図を信用するならば、奴は国会議事堂にいるようだが、あの巨腕や空間移動(?)の術を破る術がなければ恐らく無駄死にとなるだろう。
一人で向かうのは愚策。
まずは承太郎やジョセフと合流する。そして他の参加者にも協力を呼びかけ、奴を倒す手がかりを見つけ出さなければ!

花京院は荷物を纏め立ち上がろうとする。

―――そんな彼に被さる影。



「っ!」

他の参加者の気配を察知した花京院は反射的に振り返る。

月光に照らされ、花京院へと影を伸ばしていたのは少女だった。

緑色の髪に、大きな盾と胸当てに身を包んだ、どこかメルヘン風味なRPGの戦士のような恰好だ。
少女は武器や盾を構えるでもなく、さほど距離をとっているわけでもなく、ただじっとこちらを見つめている。
敵意はない、とみていいのだろうか。

(罠を仕掛けているのなら僕が彼女の存在に気が付くような素振りを見せるはず...こちらから接触してみるか)

こちらの存在に気が付きながらもなにもアクションをしてこない彼女に、花京院も警戒心が高まるが、このまま黙っていたところでどうにもならないだろう。
花京院は意を決して声をかけた。

「そこのきみ、僕の名前は花京院典明。僕はこの殺し合いに乗っていない。少し話を聞かせてもらいたいのだが」
「っ!?」

少女は驚き慌てたように盾をかざしその後ろに身を隠し、上部にある覗き穴からこちらをじっと見つめ始めた。

(警戒されているな...仕方ない)
「...わかった。きみが落ち着くまで僕はここにいる。接触する気が起きたらなにか合図をくれないか。信用できなければそのまま立ち去ってくれても構わない」

こちらから譲歩し彼女に選択を委ねさせる。
こちらを見つめていたことから、彼女もなにかしらの情報を欲しているのは火を見るより明らかだ。
ならば警戒心さえ薄められれば情報交換は容易いはずだ。
その考えのもと、花京院は彼女の返答を待った。

十秒。二十秒。三十秒...

沈黙が場を支配する。

もうすぐ一分が経過するといったところで少女は口を開いた。

「わ、私、二葉さなといいます。あの、花京院さんも魔法少女なんですか?」

魔法少女。
殺し合いにそぐわぬそのファンタジーチックな可愛らしい単語に、花京院の困惑はますます深まるばかりだった。




傍に立っていた城に身を隠し、花京院とさなは腰を落ち着け、互いの情報を交換していた。

さなは語った
己がキュゥべえという生物と契約し魔法少女となり、その願いが作用し、魔法少女以外には存在を認知できなくなっていることを。

「それで気付かれないはずだとああも無防備に見張っていたということか...」
「あの、すみません。私からどう接触すれば気付いてくれるか思いつかなかったので...」
「いや、責めてるわけじゃないんだ。僕もきみと同じ立場なら同じ方法をとっただろう」


魔法少女―――俄かには信じがたいし、始めは自分やアヴドゥルのような天然のスタンド使いだと思った。
が、さなが変身を解除して制服の姿に戻るのも見せてもらったうえ、キュゥべえという他生物の名前も出てきている。
妄想と現実の区別がついていないにしては会話も成り立ち違和感を覚えるところもない。
となれば、自分やスピードワゴン財団が知らないだけでそういう存在がいると考えるべきだろう。スタンド使いにせよ、基本的に一般人が知ることはないのだから。

「あの、本当に魔法少女じゃないんですよね?」
「ああ。僕は御覧の通り男だし、魔法少女に関わったこともない」
「じゃあ、なんで私が見えたんでしょうか?」
「......」

花京院は己の口元に手を添え考える。
スタンドは基本的にスタンド使いにしか認識できない。これだけ見ればさなの魔法少女もスタンド使いの派生と捉えることもできる。
しかし、それはあくまでもさなに当てはまるだけ。他の魔法少女は誰にでも認識できるらしい。

(...確認してみるか)

花京院は、右手の甲をさなに向けて差し出した。

「いいかい、この手を見ていてくれ」

さなは、言われた通りに差し出された手を見つめる。


―――ブンッ

「!?」

さなは己の目を疑った。花京院の腕から緑色の別の腕が浮き出ているのだ。
そのまま彼の背中からぬるりと姿を現した像を見て、さなの警戒心はさらに高まる。



「魔女...ウワサ...!?か、花京院さん、こっちに来て盾に隠れてください!」
「大丈夫。落ち着いてくれ。これは僕の力だ」
「えっ?」
「スタンド...精神エネルギーが作り出すパワーある像だ。僕以外にも使える者たちがいる」

スタンドを引っ込め、花京院は再び思案にふける。

(やはり見えていた...となると、僕のスタンドも彼女も、神子柴に干渉され他の参加者にも認識できるようにされているのだろう)

よくよく考えればだ。
スタンドやさなのように、他者に認識されず一方的に攻撃を仕掛けられる者は殺し合いにおいてアドバンテージが働きすぎている。
神子柴は、首輪は強い衝撃を与えれば爆発すると言っていた。
つまり、花京院が己のスタンド『ハイエロファントグリーン』を潜航させ、破棄力の高い必殺技であるエメラルドスプラッシュを近距離で首輪に向けて放てばそれだけで決着が着いてしまう。
そんなもので優勝する様を『殺し合い』というゲームにおいて観たいと思うだろうか?
もしもそんな映画があれば途中退席する者が後を絶たないだろう。

(どうやってその調整をしているかは...いまは置いておこう)

現状、さなと花京院の分の情報しかないため『これだ!』と断定するのは難しい。
それならば、いま必要なのは知人たちとの合流と首輪を如何に解除するかだ。
首輪さえ外してしまえば参加者たちのリスクは格段に減り、殺し合いをする必要も無くなるからだ。

「さて...ひとまず知人たちを探しに行こう。僕の知り合いはジョースター邸に向かうかもしれない。一応、名前が入っている施設だしね。君の知り合いの向かう場所に心当たりは?」
「えっと、確かまどかさんとほむらさんが見滝原中学校の出身だと言っていたので、そこに向かうかもしれません」
「見滝原中学校...ちょうどジョースター邸の近くにあるな。僕らの場所からもそこまで遠くはない。よし、まずは中学校から向かおう」

花京院に促されるまま、さなは荷物を纏めて彼についていく。
その背中を見つめつつ思う。

さなは本来ならば花京院とは会話すらできない筈だった。
誰にも知られず、触れ合えず、独り孤独に生きていく筈だった。
けれど、この殺し合いの場ならばこうして触れ合える。優勝すれば、もうあんな寂しさを味わわなくてよくなる。
そのことに悩み苦しんだことは確かにあった。

(でも、もういいの)

それでもさなは殺し合いを否定した。
例え『人』と触れ合えずに生きることになっても構わなかった。

彼女はもうとっくに救われていたから。

(アイちゃんは私を生かしてくれた。...その意味は、解ってるから)

人工知能のウワサ―――アイ。
人間でも魔法少女でもない彼女だが、さなの初めての友達だった彼女。
彼女は背中を押してくれた。自分を必要としてくれる人と共に生きてと。
そんな人はいないだろうと諦めていたけれど、それこそが幻想だと教えてくれた。
弱虫で、ダメな自分でもちゃんと見てくれる人たちが、必要としてくれる人たちはいてくれた。
その人たちはきっと理不尽で残酷な絶望にも負けないだろう。
もしも挫けそうになっても、自分が護ればいい。盾になればいい。
彼女たちと共にいられる日々を、彼女たち自身を護れればそれでいい。それが、さなの戦う理由だった。

(いろはさん、やちよさん。絶対に、絶対に守りますから!)

115: エメラルドの眩しい決意 ◆ejQgvbRQiA :2020/01/02(木) 01:03:23 ID:evCBF5g20

ここに孤独な青年と少女があった。
青年は己の『異常』に気が付いて周囲への壁を作り独りになった。
少女は己の『劣等』に打ちのめされ周囲から己を切り離し独りになった。

互いに孤独であったのは同じだが、その原因は真逆。彼ら同士、真に互いを理解することは難しいだろう。

けれどそれでも共有する思いは同じ。だからこそ、同じ道へと進める。

それは、己にとっての『特別』を最期まで護ること。

仲間であり恩人。
友であり家族。

それを護る為に命を懸け、彼らは戦う。その全てに悔いはないだろう。





【B-7/ミッドランド城/1日目・深夜】

【花京院典明@ジョジョの奇妙な冒険】
[状態]健康
[装備]なし
[道具]基本支給品、ランダム支給品1~3
[行動方針]
基本方針:殺し合いを破壊する。
1:承太郎、ジョセフと合流する。ジョナサン・ジョースター、スピードワゴンも気になる。
2:DIOを倒す。
3:さなの知り合い(いろは、やちよ、まどか、ほむら)を探す。

※参戦時期はテレンス・T・ダービーに負けて人形に魂を入れられる直前です。

【二葉さな@魔法少女まどか☆マギカシリーズ】
[状態]健康
[装備]なし
[道具]基本支給品、ランダム支給品1~3
[行動方針]
基本方針:殺し合いを止める。
1:いろは、やちよ、まどか、ほむらと合流。
2:花京院の知り合い(承太郎、ジョセフ)との合流


※参戦時期はマギレコ本編8章以降です。



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