皆さんは

 朝起きて


 周りに誰もいなかったら



 どうしますか?









(フン!)

 二代目火影ことアサシン・千手扉間の場合は、まずは気配感知であった。

 正確に言えば寝ていたのではなく気絶昏睡していたのだし、朝どころか正午過ぎなのだがそれはさておき。
 感知タイプであるアサシンは、生前同様にその能力を活かして病院内の気配を探ることを選んだ。

(……どういうことだ……)

 そしてその結果を受けての感想は、困惑。気絶から目覚めての五感の不調と前後不覚がより強まったかに感じて。

(そもそも、なぜ誰もいないのかのう……)

 白に黒にと明滅を繰り返す視界を頭を振りなんとか動かし。アサシンは病室に誰もいないことを再確認した。



(爆破予告とは、なんと悪辣な。)

 アサシンの眉間に皺が寄る。その原因はいまだに頭を直接揺さぶるような体調の悪さだけではなかった。
 少ししてどうにか意識を持ち直したアサシンは、病室の前にいた警官達の会話からこの病院が爆破予告されたことを知った。詳しい事情までは把握できなかったが、この病院などに予告があり実際に爆弾も見つかったという。
 どうりで茜達がいないわけだ、そう納得はした。わざわざVIPルームに通された茜ならば真っ先に避難させられるだろう。となると問題は、それならなぜアサシン当人をおいてけぼりにしたのか、という話になるのだが。

 好意的に解釈すれば、霊体化した自分を運ぶことができず、また気絶していた為に起こすこともできなかったためやむを得ず置き去りにした、というたところか。
 悪意を持って解釈すれば、ランサーのマスターの情報を持ってきた以上、既にアサシンは用済みどころか気絶までしている足手纏いであり、爆破の為の囮として残された、といったところだろうか。

(どちらも筋は通る。しかし。)

 アサシンはもやのかかった頭を無理矢理に動かして少しの間考えると、どちらも説明がつかないところがあると結論づけた。置き去りにしたのならせめて書き置きの一つでも残しておいておかしくはないだろうし、囮にするといってもそんな回りくどいことはせず殺したほうが早いだろう。
 もちろん、これらの疑問点を解消する仮説もいくつか考えついたがーー所詮は仮説だ。もしもの話にもしもを重ねてもしょうがない。
 この問題は棚上げするのが今は最善だろう。

 なにせ今は。


(ぬかった……マスターもどこにも居ない。それどころか次々と病院内の人間が外へと動いていきおるーー逃げているのか。)

 なにせ、アサシンのマスターである九重りんが消息不明なのだ。
 アサシンは少ないチャクラを経絡経から強引に絞り出して実体化する。これで霊体化の時とは桁違いの精度で気配感知ができるようになる。そしてその気配感知で知ることができたのは、病院内の人間が続々と病院外へと逃げていく気配だけだった。というかようやく回復しつつある聴力には大勢の人間が蠢くとき特有のざわめきも聞こえてくる。爆弾があるのだ、逃げるのも当然だろう。

(感知がうまくできん……チャクラが少なすぎるか。)

 そしてその気配が、マスターである九重りんの捜索を困難にしていた。今のアサシンはチャクラーーいわゆる魔力が不足しその上それに起因する昏睡から目覚めて間もない。そんなコンディションではたとえ実体化しようとも、その気配感知のキレは大幅に落ちてしまっていた。それに加えてマスターの九重は魔力を持たない正真正銘の一般人である。そんな九重を気配感知でNPCの群れの中から探すのは砂浜から一粒のダイアモンドを探し当てるに等しい至難の技であった。

(!このチャクラ、あのランサーか?しかも同時に別のチャクラだと!?)

 更に悪いときには悪いことが重なるもの。アサシンは一キロは離れているであろう北方で発生した膨大なチャクラーーブラフマーストラを感知した。それは、目下打倒すべき相手であるあのランサーが戦闘していることに他ならない。また同じタイミングでもう一つ、感知したことのないタイプのチャクラも感じた。状況を考えればまず間違いなく、あのランサーと打ち合っているはずだ。つまりそれは、あのランサーに片を並べるほどのサーヴァントが他に存在することを意味している。

(何ィ!?ええい、どうなっている!?)

 更にもう一発!

 二度あることは三度ある。泣きっ面に蜂、追い討ちに頭上から臼。
 アサシンは窓際に駆け寄る。視線は西へ。そこには。

(写輪眼、それも万華鏡。それにあの姿、まさか。)

 木の上から人並みを伺う、赤い目。そして感知したのは、九尾に近いチャクラ。それを見てアサシン・千手扉間の頭のなかに浮かぶのは、うちは一族の九尾の人柱力ーーうちはマダラ。



(いや、待て……)

 その仇敵の姿が脳裏に浮かんだところで、しかしアサシンは冷静になった。

 アサシンは頭にちらつくうちはマダラの影を振り払うようにまた頭を振るともう一度自分が見つけたサーヴァントを見た。まず目につくのが、赤い目だ。渦を巻くその模様は嫌が応にも万華鏡写輪眼を連想させる。次に感じるのは、その圧倒的なチャクラだ。間違いなく上忍クラスのレベルには達している。その上この感じは尾獣の一つ、九尾のチャクラに近い。そしてそのあとに目についたのが、それがほんの幼い子供だということだ。そのことがほんの少しだがもう一度アサシンを冷静にさせる。
 彼の知る『うちはマダラ』ならば、その様な姿のはずがない。たとえ変化しているにしてももっと別の姿をとるのは間違いない。あの男が好き好んで童女の姿になるなど全く想像ができないからだ。むしろ変化するなら兄者である柱間の姿になっている方が余程あり得るであろう。
 その事を頭に置いた上でチャクラを感じれば、オリジナルのマダラのチャクラと先程見つけた『マダラ』のチャクラはまるで別物であった。そもそもチャクラとは力の性質が違うようにも思える。橋で戦ったバーサーカーよりかはその性質は近いようだが、しかし「チャクラではない」といくらか落ち着けた今ならば言えた。

(……久々の現世で耄碌していたか。だが次はこうはいかん……)

 アサシンは、深呼吸すると蓮華座を組む。どうにも自分は少々調子を崩していたようだ。それは体調のことではなく、心の問題だ。つい今も先入観からチャクラも持たないサーヴァントをよりにもよってうちはマダラなどと誤解しかけた。こんな心持ちでは、いつ足下を掬われてもおかしくはない。

(ーーこれはチャクラ糸。む?そうかーー)

 そしてそんな自分の異常に気づけたからこそ、アサシンは自分から伸びるレイラインの存在に気づいた。思い出した。普段なまじ気配感知で周囲の状況を把握できてしまうためついぞ意識に上がらなかったその蜘蛛の糸を。
 思わずアサシンの背に冷たいものが伝う。自分は、自分の想像よりはるかに耄碌していたと。そう理解させられた。

「ーーなにっ!?」

 そして小さくも声を出してしまう。
 レイラインを辿り割り出したマスターである九重の位置。
 そこは、冬木市の市境近くーー場外すれすれの場所であった。









 ■  ■   ■    ■     ■      ■       ■        









(軽自動車か、仕方ない、とりあえずは足になる。燃費も良いみたいだし。)
「バーサーカーさん、なんで車の下を見てるの?」
「む。いや。確認だ、安全かどうかの?」
「わかるの?」
「……サーヴァントだからな。」
(初めて自動車を見た人ってこんなリアクションするのかな。)

 病院でアサシンが目覚めた時間から少し遡って午前中。
 竜堂ルナ&バーサーカー・ヒロの主従と、衛宮切嗣&アーチャー・クロエ・フォン・アインツベルンの主従からなる同盟は、新都にある某レンタカーショップに来ていた。お腹も一杯になってけっこう体は休まったこともあり、移動しようとしていたのだ。というか、移動する必要性に迫られていたとも言える。その原因は、ランサー・カルナの戦闘だった。
 ランサーの戦闘に介入するか、否か。バーサーカーと切嗣双方が本心を隠したまま行った交渉は、やっぱりうまくいかなかった。バーサーカーは交渉上手ではあるのだが、冬木や現代日本といった環境に対応できていない。切嗣に至ってはブランクと口下手とバーサーカーに対応できないという三重苦だ。
 しかし、両者とも最低限の意志疎通はできていたのが幸いした。とりあえず足が要る、その認識の共有に苦労の末に成功して今に至る。

「切嗣さん、私たちも乗せてもらってほんとにいいんですか?」

 キーを持って車へと歩み寄ってきた切嗣に、ルナがおずおずという感じで聞く。無関係の人間が見ても緊張していることがわかるであろう態度に思わず失笑しつつ、「同盟してるんだからね。それに、君のサーヴァントは僕たちと離れたくないみたいだし」と答えた。
 一瞬、バーサーカーが剣呑な雰囲気を出し、ニヤリと笑う。「戦力の分散は下策だからな」と返した。


 そもそも、この同盟の目的を考えればルナ達を乗せないという選択肢は事実上取り得なかった。二組が、というよりかはバーサーカーが同盟に拘ったのは、同盟という名目で切嗣達を監視するためなのだから。
 バーサーカーはその言動とは裏腹に用心深くも注意深くもある。生前は彼女の二枚も三枚も上手な人間やら魔族やら神やらがいたせいで微妙に無能扱いされたりもするが、決して暗君ではなく非凡な実力者であることは間違いないのだ。

 故に堂々と、バーサーカーは切嗣に対峙する。バーサーカーからすれば切嗣程度、言いくるめることなど容易い。同盟を組むとき一か八かの賭けに出たとか、ファミレスで延々押し問答したとか、ランサーを追うか追わないかで揉めたりとか、そういったことは、まあ、あれだ、うん。

「はいはい、それじゃあ早く乗ろっか。話は車に乗ってからでもできるでしょ。」
「ふん……誰が御者になるんだ。お前か。」
「なわけないでしょ。マスター、お願いね。」
「なら私とルナは後ろに「ルナ、助手席に座らないかい?」切嗣ゥ……!」
「え?えぇっと……」
「ちょっと、席順でまで揉めないでよ……小学生じゃないんだから。」

 アーチャーがまとめにかかった矢先に、再び切嗣とバーサーカーの間で口論が再燃する。バーサーカーとしては後ろからいつでも斬りかかれるように後部座席にマスターと座ろうと、切嗣としてはそうはさせずと助手席にルナを座らせその後ろにアーチャーを座らせることで人質にとろうとする。
 二人は再び唾を飛ばしあう。若干の時間のあと、いつまでも直射日光に当たっていないという少女達の有形無形の圧力により、それぞれのマスターの後ろにそれぞれのサーヴァントを座らせることで合意に至った。

 こうして一台のeKスペースが二組を乗せて走り出す頃にはとっくにランサーの戦闘は終わっていた。



「「オエェェ……」」
((酔うのか……しかもバーサーカーも……))

 それから軽く二時間後。太陽も高度を落とし始めた正午過ぎ。
 ルナとバーサーカーは慣れない車でのドライブですっかり戦闘不能になっていた。
 切嗣はその間ランサーの方へ行くことはもちろんなく(バーサーカーがその事に気づいた時には既に彼女はグロッキーであった)、適当に未遠川東岸を流して偵察していたのだが、目に見える成果はなかった。安全策をとり新都中心部を避けて円を描くように遠巻きに探ったのが失敗だったか、それとも真っ昼間に活発に動く主従がいないのかは切嗣にはわからなかったが、バーサーカーはともかくアーチャーの目にもマスターはもちろんサーヴァントの姿も写ることはなく、いつしか車は元の方向に近づきつつあった。そして病院の近くを少し西に行った辺りで、ついに『走行不能』に追い込まれたのだった。

「車の中で吐かないでよ……フリじゃないからね。」
「恐ろしい兵器だ……この世界の人間はこんな非人道的な物を量産しているのか……」
「……う……えっ……うっぷ。」
「耐えろルナ!ここで吐いたら食べた意味がなくなるっぷ。」
(もうやだこの二人。)
(今のうちに殺しておいた方がいいか……)

 じわじわと確実に好感度が下がっていく。それをバーサーカーは敏感に吐き気と共に感じ取った。感じ取ったのだがそれはそれでこれはこれ。吐き気を押さえることに全力を注ぐ。この場で吐きでもすればただでさえ隙だらけの現状で決定的な隙を晒すことになる。それだけは、避けたい。好感度は後から上げられるが命は拾えないのだ。

「ふっ……妙な臭いと規則的でありながら時おり不規則な振動、重心移動。そして極めつけはこの腹を締め付けるベルト。一つ一つが的確な嫌がらせだ。」
「嫌がらせじゃなくてそういうものだから。食べてすぐに乗ったら気持ち悪くなるかもしれないけど。」
「シートベルト(?)がお腹に食い込んで……」
「お腹で締めるんじゃなくて腰で締めないと。バーサーカーならともかくなんでルナまで自動車乗ったことない人みたいなリアクションなのよ。」
「……」
「……え。」
「……」
「……マジ?」
「……こういう機械に乗ったこと、あんまりなくて。」
「機械って……馬にでも乗ってたわけ?」
「馬っていうか、えと……猫とかフクロウとか……」
「……あなた本当に21世紀の日本の人間?」
「東京育ちだよ。」

 東京の人間は車の代わりに猫やフクロウに乗るのか。アーチャーの頭のなかで東京タワーや雷門の前をそんなファンシーな動物に乗って歩く光景を思い浮かべる。うん、合わない。ていうか東京育ちなのか。

『パパ、どう思う?』
『彼女がいわゆる常人じゃないのは明らかだ。だが魔術師とも毛色が違う。鬼種や……吸血種であるなら、あるいは。』

 思わずアーチャーは念話で切嗣に意見を求めるが、これにはさすがの切嗣でもすぱっと回答することはできない。もっとも、その時彼の注意はバックミラーーーそれに映る人波に注がれていたためかもしれないが。

『それよりも、あの人だかりを優先したい。この近くには病院があったはずだが、わからないな。』
『あの列?病院から離れてるみたいだけど。』

 今度は切嗣がアーチャーに話を振る。バーサーカーに隙を見せないようにシートベルトを外して体を後ろに捻り、その人垣に焦点を合わせようとした。
 そしてそのタイミング。彼らは逆方向、即ち現在車が前を向いている北から光が昇るのを感じた。

「あの光はさっきの。」
「あっちは警察署の辺りか。派手にやってくれる。」

 四人は一斉にそちらを見る。天へと登っていくその光は、自分達がこうして車を使うきっかけとなった光だ。
 つまるところ、それはそこにランサーがいることの証明だ。切嗣は思わず苦い顔になる。このままぐるぐるしていても元の場所に戻りかねないので北上しようとした矢先にこれだ。どうにも、面倒なことが重なる。同盟相手は吐きかけ、頭の痛い存在が再び現れた。そのうえ病院ではなにかが起こっているときた。どうしたものか。

(アーチャーを急いで病院に向かわせる……ダメだ、いくらバーサーカーがこんな有り様でも僕を無防備にするのはリスクが大きい。かといってバーサーカーを偵察に出せばろくでもないことをしでかすはず。ここは四人全員で一度病院まで向かうか、いや……)

 車のハンドルを指でトントンと叩きながら、切嗣は考える。ここで選択を誤るとまた面倒なことになるぞ、と考えて。

「アーチャー、ひとまず病院に偵察に向かってくれないか?」
(ほら来た。)

 案の定、バーサーカーが露骨な提案をして来た。切嗣はふぅ、と息をつく。これなら、あの騎士王の方がよほどやり易い相手だ。ある意味バーサーカーというクラスにそぐわぬ面倒くささを実感させられている気がする。さて、今度はどうこのお転婆を丸め込むか、そう考えて。

「バーサーカーさん、私代わりに見てくるね?封印解除!」
「なにっ?」「え。」(ん?)

 切嗣の横でガチャンという、シートベルトの外れる音と魔力の流れが生まれる。それに驚いて首を左に向けた時にはルナの姿は残像に変わっていた。

「待てルナ!くっ、このベルトめ、離せ!」
「シートベルト壊さないでよ!今外してあげるから。」

 慌てて追いかけようとしてシートベルトに引っ掛かるバーサーカーをアーチャーが助ける。一度霊体化すればいいとか、そもそもサーヴァントであるバーサーカーではマスターであるルナに追いつけないことなどには頭が回ってないのだろう。普通は逆なんだがなあ。

(……バーサーカーより、マスターの方に注意をかけるべきだったな。)

 もし自分が全うな家庭を持っていたらこんな風に年頃の少女の狂行に頭を悩ませていたのだろうか。それを考えると士郎というのは良くできた息子である、切嗣はそんなことをふと思いなつつ胸ポケットから煙草を出そうとしてからぶると。
 シートベルトの呪縛から解放されたバーサーカーが車外に出る。もうルナの姿はどこにもなかった。



「飛び出してきちゃったけどどうしよう……」

 そう呟くと、街路樹の上でルナはため息をついた。
 ルナとしてはまたバーサーカーが口論するのを避けたくて出てきてしまっただけで、別段なにか策とかそういうものがあったわけではない。ノープランである。つまり、妖力解放した意味なんて、ない。無理矢理体調が改善したのはいいが、それを除けばデメリットの方が多いのではないか。なんてことを言葉にはできずにぼんやり考える。

 彼女は知らない。その行動ですぐ近くにいるサーヴァントから警戒されていることを。なぜか聞いたこともない一族や見たこともない生き物と関連があるなどと思われていることを。


「よし、もう一回封印して、それから普通に聴き込みしよう。」



 彼女はまだなんにも知らない。









 ■  ■   ■    ■     ■      ■       ■        









 ガラガラ。
 ガラガラガラガラガラガラ。
 ガラ。

(ここまでは、来れた。)

 目深に被った麦わら帽子から猫のようなくりくりとした目が覗く。後ろで虚ろな声を発しながらドライバーがタクシーのドアが閉めた音を聞きながら、美遊・エーデルフェルトは睨むように川を見た。


 美遊のしようとしていることは言葉にすれば至極簡単なことである。「イリヤスフィール・フォン・アインツベルンを衛宮家へ送り届ける」。それだけだ。気絶したイリヤを場所が割れている可能性のある美遊のマンションから秘密裏に衛宮家に送る。そのためにわざわざランサーに陽動を任せ、こうしてタクシーを使い、サファイアでドライバーの記憶を弄り、未遠川の河川敷までやって来たのだ。
 もっとも、陽動にランサーが出たのは美遊の代理という面もあるのだが、サーヴァントがマスターを抱えて移動すれば目立ってしまい衛宮家へ行く意味などなくなってしまうのであながち間違いという訳でもない。
 そう、サーヴァントは目立ってしまう。それが美遊を悩ませていた。

 イリヤの家があるのは、深山町。つまりは未遠川西岸である。冬木大橋が落ちた今、そこに行くためには二つの方法しかない。
 一つは、渡し船を使うこと。美遊は川を往く船を見る。ほとんどボート同然のそれを目当てに今も数人の人が並んでいる。それを使えば、とりあえず西岸には行けるだろう。問題は渡っている最中に攻撃されるかもしれないことだ。
 もう一つは、サファイアの力で転移する事。川幅はけっこう広いが、それでも不可能ではない、はずだ。たとえ不可能でも可能にしてみせる。問題は、転移の際に魔力が発生してしまうことだ。隙は少ないのだが、これではここまで魔力を抑えて来た意味が無くなりかねない。
 なんならバーサーカーにキャスターを襲わせた時のように移動するということもできなくはないが、それなら転移する方が余程マシだろう。そもそもバーサーカーを実体化させてしまった段階でやはり魔力を抑えて来た意味が無くなる。


 がたり、とキャリーバッグが音をたてる。
 美遊に緊張が走る。彼女はそれを人目のつかないように開けると『換気』した。

 彼女の傍らにある巨大なそれには、今だ目を覚まさないイリヤが詰め込まれている。明らかに小学生である美遊が人一人を運ぶにはこれしか方法がなかったのだ。一応中には保冷剤や氷水の袋も入れてあるが、中の温度はやはり暑い。タクシーから降りて『詰め直して』少ししか経っていないのに、中はサウナ状態だ。

 どのように川を渡るか。美遊は早急な決断を迫られる。
 彼女の背後では、二つの光の柱が生まれていた。



【新都・病院/2014年8月1日(金)1318】

【アサシン(千手扉間)@NARUTO】
[状態]
筋力(15)/C、
耐久(15)/C、
敏捷(25)/A+、
魔力(8)/B、
幸運(5)/E、
宝具(0)/EX
実体化、気配遮断、気配感知、魔力不足(極大)、魔力不足により宝具使用不可、魔力不足によりスキルに支障、魔力不足により全パラメーター半減、飛雷針の術の発動不可のため敏捷が+分アップしない。
[思考・状況]
基本行動方針
聖杯を用いて木の葉に恒久的な発展と平和を。
1.あのサーヴァント(ルナ)、万華鏡写輪眼に九尾の人柱力、まさか……
2.マイケルや茜達はどこにいったか……それにマスターのあの位置は……
3.ランサー(カルナ)のマスターはーー。
4.三つの問題は一先ず後回しでよいだろう。
5.魂喰いの罪を擦り付ける相手は慎重に選定する
6.穢土転生の準備を進める。
7.他の組の情報収集に務める。同時にランサー達を何とか隠ぺいしたいがたぶん無理。
8.女ランサー(アリシア)との明日正午の冬木ホテルでの接触を検討し、場合によっては殺す。
9.バーサーカー(ヘラクレス)は現在は泳がせる。
10.逃げたサーヴァント(サイト)が気になる。
11.聖杯を入手できなかった場合のことを考え、聖杯を託すに足る者を探す。まずはランサーのマスター(日野茜)。
12.マスター(りん)の願いにうちはの影を感じて……?
[備考]
●予選期間中に他の組の情報を入手していたかもしれません。
ただし情報を持っていてもサーヴァントの真名は含まれません。
●影分身が魂喰いを行ないましたが、戦闘でほぼ使いきりました。その罪はバーサーカー(サイト)に擦り付けられるものと判断しています。
●ランサー(アリシア)の真名を悟ったかどうかは後の書き手さんにお任せします。
●バーサーカー(ヘラクレス)に半端な攻撃(Bランク以下?)は通用しないことを悟りました。
●バーサーカーの石斧に飛雷針の術のマーキングをしました。
●聖杯戦争への認識を改めました。普段より方針が変更しやすくなっています。
●ランサー・真田幸村達とアーチャー・ワイルド・ドッグ達とフワッとした同盟を結びました。期限は8月8日です。またランサーのマスターがヒノアカネだと認識しました。
●九重りんへの印象が悪化しました。
●三谷亘の令呪二画付の肉塊が封印された巻物を九重りんの私物に紛れ込ませました。
●ランサー(カルナ)の戦闘を目撃しました。
●イリヤ(kl)の髪の毛を入手しました。アサシンが霊体化したため床に落ちました。
●ルナをサーヴァントと、うず目を万華鏡写輪眼と、妖力を九尾のチャクラと誤認しました。


【衛宮切嗣@Fate/zero】
[状態]
五年間のブランク(精神面は復調傾向)、満腹、精神的疲労(小・消耗中)。
[残存霊呪]
三画。
[思考・状況]
基本行動方針
聖杯戦争を止め、なおかつクロエを元の世界に返す。
1.バーサーカーを警戒。ルナはもっと警戒。
2:アーチャーに色々と申し訳ない。
3.バーサーカーは苦手だがなんとか関係を改善しなくては。
4.戦闘は避けたいが協力者を募るためには‥‥?
5.装備を調えたいが先立つものが無い。調達しないと。
6.自宅として設定されているらしい屋敷(衛宮邸)に向かいたいが、足がない。避けたいが、アインツベルン城に泊まるか?
7.冬木大橋が落ちたことに興味。
[備考]
●所持金は3万円代。
●五年間のブランクとその間影響を受けていた聖杯の泥によって、体の基本的なスペックが下がったりキレがなくなったり魔術の腕が落ちたりしてます。無理をすれば全盛期の動きも不可能ではありませんが全体的に本調子ではありません。
●バーサーカーとそのマスター・ルナの外見特徴を知り、同盟(?)を組みました。好感度が下がりました。
●コンビニで雑貨を買いました。またカバンにアーチャー(クロエ)の私服等があります。
●バーサーカー(ヒロ)が苦手です。ルナも苦手になりつつあります。
●セイバー(アルトリア)への好感度が上がりました。
●eKスペース(三菱)のレンタカーを借りました。

【アーチャー(クロエ・フォン・アインツベルン)@Fate/kareid liner プリズマ☆イリヤ】
[状態]
筋力(10)/E、
耐久(20)/D、
敏捷(30)/C、
魔力(41)/B、
幸運(40)/B、
宝具(0)/-
実体化、軽く自暴自棄、満腹、魔力充実(微、上昇中)、私服、精神的疲労(小・消耗中)。
[思考・状況]
基本行動方針
衛宮切嗣を守り抜きたい。あと聖杯戦争を止めたい。
1.なんかもうむちゃくちゃね。
2.なんなの、アイツ(ルナ)……ホムンクルス?少なくとも人間ではないと思う。
3.あんまりコイツ(ルナ)からは魔力貰いたくない……
4.冬木大橋が落ちたことに興味。
[備考]
●赤色の影をバーサーカーと、銀色の影をマスターの『ルナ』と認識しした。
●ルナをホムンクルスではないかと思っています。また忌避感を持ちました。
●バーサーカーと同盟(?)を組みました。
●夏用の私服を着ています。
●バーサーカーとルナが苦手です。


【竜堂ルナ@妖界ナビ・ルナ】
[状態]
封印解除、肉体的疲労(中、回復中)、妖力消費(中)、満腹、靴がボロボロ、服に傷み、精神的疲労(小)。
[残存令呪]
3画
[思考・状況]
基本行動方針
みんなを生き返らせて、元の世界に帰る。バーサーカーさんを失いたくない。
1.一回封印しよう。
2.食べ過ぎて……
3.同盟を結んだ?らしい。
4.学校の保健室を基地にする‥‥いいのかな‥‥
5.誰かを傷つけたくない、けど‥‥
[備考]
●約一ヶ月の予選期間でバーサーカーを信頼(依存)したようです。
●修行して回避能力が上がりました。ステータスは変わりませんが経験は積んだようです。
●新都を偵察した後修行しました。感知能力はそこそこありますが、特に引っ掛からなかったようです。なお、屋上での訓練は目視の発見は難しいです。
●第三の目の封印を解除したため、令呪の反応がおきやすくなります。また動物などに警戒されるようになり、魔力探知にもかかりやすくなります。この状態で休息をとっている間妖力は回復しにくいです。
●身分証明書の類いは何も持っていません。また彼女の記録は、行方不明者や死亡者といった扱いを受けている可能性があります。
●食いしん坊です。
●店の空気に気づきませんでした。
●バーサーカーの【カリスマ:D-】の影響下に入りました。本来の彼女は直接的な攻撃を通常しませんが、バーサーカーの指示があった場合それに従う可能性があります。

【バーサーカー(ヒロ)@スペクトラルフォースシリーズ】
[状態]
筋力(20)/D+、
耐久(30)/C+、
敏捷(20)/D+、
魔力(40)/B++、
幸運(20)/D、
宝具(40)/B+
実体化、最低限の変装、精神的疲労(小・消耗中)、満腹、吐きそう。
[思考・状況]
基本行動方針
拠点を構築し、最大三組の主従と同盟を結んで安全を確保。その後に漁夫の利狙いで出撃。
1.ルナを追いかけたいが……どこだ?
2.あの光のサーヴァント(カルナ)が気に入らない。。
3.ルナがいろいろ心配。他の奴等に利用されないようにしないと。
4.切嗣と関係を改善させたいのだが……
5.冬木大橋が落ちたことに興味。学校を拠点にするのはひとまず先送り。
[備考]
●新都を偵察しましたが、拠点になりそうな場所は見つからなかったようです。
●同盟の優先順位はキャスター>セイバー>アーチャー>アサシン>バーサーカー>ライダー>ランサーです。とりあえず不可侵結んだら衣食住を提供させるつもりですが、そんなことはおくびにも出しません。
●衛宮切嗣&アーチャーと同盟(?)を組みました。切嗣への好感度が下がりました。
●衛宮切嗣が更に苦手になりつつあります。
●狂化の幸運判定に成功しました。今回は狂化しませんでした。
●神を相手にした場合は神性が高いほど凶化しずらくなります。


【新都・未遠川東岸/2014年8月1日(金)1318

【バーサーカー(小野寺ユウスケ)@仮面ライダーディケイド】
[状態]
筋力(100)/A+、
耐久(50)/A、
敏捷(50)/A、
魔力(50)/A、
幸運(30)/C、
宝具(??)/EX、
霊体化
[思考・状況]
基本行動方針
美遊を守り、命令に従う
1:待機。
[備考]
●美遊の令呪により超感覚の制御が可能になりました。以降常にフルスペックを発揮可能です。
●各種ライジング武装、超自然発火が使用可能になりました。
●少なくとも魔力放出スキルによるダメージは無効化できません。

【美遊・エーデルフェルト@Fate/kaleid liner プリズマ☆イリヤ】
[状態]
私服、覚悟完了。
[装備]
カレイドサファイア@Fate/kaleid liner プリズマ☆イリヤ
[残存令呪]
3画
[思考・状況]
基本行動方針
イリヤに自分の存在を知らせずに優勝させる。
1:誰が相手であろうと、絶対にイリヤは殺させない
2:イリヤなら、聖杯をしっかり使ってくれるはず。
3:イリヤを自宅へと送る。
4:アサシンはどこ?
[備考]
●予選期間中に視界共有を修得しました。
しかしバーサーカーの千里眼が強力すぎるため長時間継続して視界共有を行うと激しい頭痛に見舞われます。
また美遊が視界共有によって取得できる情報は視覚の一部のみです。バーサーカーには見えているものが美遊には見えないということが起こり得ます。
●セイバー(テレサ)の基本ステータス、ランサー(真田幸村)の基本ステータス、一部スキルを確認しました。
●月海原学園初等部の生徒という立場が与えられています。
●自宅は蝉菜マンション、両親は海外出張中という設定になっています。
また、定期的に生活費が振り込まれ、家政婦のNPCが来るようです。
●バーサーカー(小野寺ユウスケ)の能力及び来歴について詳細に把握しました。
五代雄介についても記録をメモしていますが五代が参加しているとは思っていません。
●冬木市の地方紙に真田幸村の名前と一二行のインタビュー記事が乗っています。他の新聞にも載っているかもしれません。
●ランサー(カルナ)の真名、ステータス、スキル、宝具を確認しました。
●ランサー&イリヤ組と情報交換しました。少なくとももう一人のイリヤの存在を知りました。
ています。
最終更新:2016年09月05日 22:00