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白と黒の世界 - (2013/10/19 (土) 23:07:43) の最新版との変更点

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《A》 「市長。緊急の連絡だ」 「どうした、アサシン」 「君が市長に仕立てあげたNPCから連絡が入った。先ほど、新都の警察署から多数の銃器が紛失したそうだ」 日は沈み、夜。 新都の外れに位置する双子館で、ジョン・バックス市長はサーヴァントであるアサシンから報告を受けた。 「――サーヴァントの仕業か?」 「おそらく。拳銃と弾薬、それに狙撃銃が一挺持ち出されている。霊体化して忍び込み銃を物色した後、壁を壊して堂々と逃げたらしい。  もちろん監視カメラには何の痕跡も残っていないがね」 「日本の警察の装備、施設をある程度熟知している者の仕業か――足取りは終えるか?」 「NPCでは無理だろう。私が直接出向けば可能だろうが」 「ふむ――」 市長は黙考する。 おそらくアーチャーのマスターではないだろう。 確認できる限りアーチャーとそのマスターはこの戦いが始まってからずっと新都にいるが、銃器が必要なら初日から行動を起こしているはずだ。 冬木市には警察署は新都にしかないため、犯人は深山町からこの新都に移動してきた別のマスターの公算が高い。 「どうする?私が確認に向かおうか」 「そうだな。深山町に向かった君たちはどうしている?」 柳洞寺と遠坂邸に向かった二人の分身は、それぞれマスター達を発見していた。 遠坂邸にいる四組と、柳洞寺で戦っていた四組。 遠坂邸にいた集団はその後キャスターの魔術で柳洞寺に転移し、攻め寄せていたバーサーカーたちを撃退したのを確認している。 その場から逃げ延びたのはバーサーカーとそのマスター、そして帯同していたキャスター。 彼らを逃がすため殿に残ったアサシンであろうサーヴァントは集中攻撃を受けて撃破された。 「難航している、としか言えん。予定では遠坂邸にいるマスター達と接触するつもりだったが――数が多すぎる。  五人ものマスターが手を組んだのは予想外だった。あれでは、共闘を持ちかけても我々を受け入れる理由がない」 当初、市長とアサシンはアーチャーを敵として生き残ったマスター達に認知させるつもりだった。 アーチャーの脅威は時間停止能力を始めとする、単独戦闘能力の高さだ。 一対一、あるいは二体のサーヴァントで同時に向かったとしてもあのアーチャーを打ち破るのは難しい。 時間を止められている間に急所を攻撃、あるいはマスターを狙われれば為す術はないからだ。 しかし五人ものサーヴァントがいれば話は別。 アーチャーもサーヴァントである以上、魔力は有限、永遠に時間を止められるわけではないし、また魔力消費も膨大なはずだ。 チームを分け、一人がアーチャーに挑み、残りの仲間が遠距離から援護すれば、いかに時間を止めようとも凌ぎ切れるものではない。 時間を止める宝具の連続使用、そのタイムラグを突く。 数を揃えたものだけに許される、正攻法にして強引極まりない力技だ。 その戦術を取れるチームを相手に共闘を持ちかけたとて、アサシンの力を必要としていないのだから受諾される可能性は低い。 何せその中には全ての能力が評価規格外という化物のようなセイバーがいるのだから、それ以上の戦力は必要ではない。 むしろ彼らの中にはアサシンと以前交戦した者がいるため、敵対する可能性の方が遙かに大きい。 「状況は激変した。ゼフィールらが脱落した今、我々には協力者がいない。  アーチャーももちろん脅威だが、この柳洞寺に集った集団はそれ以上だ。  もし彼らが同じ目的の元に団結しているのならば――我々は駆逐される側にいることになる」 「彼らとアーチャーを潰し合わせることは可能か?」 「それが理想的な展開だが、ただアーチャーをぶつけるだけでは苦もなく排除されるだろう。  ある程度拮抗した戦力をぶつけなければ、我々が横から掠め取る余地が発生しない」 「では、柳洞寺から逃げたマスターというのは?今も監視しているのだろう」 「ああ。名前は枢木スザク、バーサーカーのマスター。  キャスター並びにアサシンと同盟を結んでいるようだが、言った通りアサシンは討たれた。  今は月海原学園に向かって移動している。柳洞寺のサーヴァントたちの情報を集めるつもりだろう」 「ふむ――暗殺は?」 「可能だが、推奨しない。深山町にはキャスターが放ったであろう使い魔が飛び回っている。  向こうの私が隠形を解けば瞬時に発見されるだろう」 柳洞寺周辺にいるアサシンは分身体であるため、倒されてもアサシン自体は存続する。 が、当然次の分身を生み出すにはバックスの魔力を消費するため、無駄に浪費できるものではなかった。 「それに――見て回った限り、深山町にいるマスターは柳洞寺の集団と、この枢木だけだ。  キャスターのマスターはまだ発見できていないが、おそらくこれ以外はいないのだろう」 どこかに潜伏して時が経つのを待っているようなマスターがいれば話は別だが、今はそちらに手を割く余裕はない。 柳洞寺の五組、枢木とキャスター組、アーチャー、警察署を襲った者、そして市長自身。 現状聖杯戦争の盤面にいるのはこの十組だけと考えていいだろう。 「枢木を削っては柳洞寺組並びにアーチャーを始末する手駒が不足する」 「そうだな、今は手を出さないでおいてくれ。それに彼が得る情報は私達にとってもプラスになる」 騎乗に広げた地図を睨み、バックスは考えを巡らせる。 西と東の二つの脅威。 それに含まれない第三戦力。 同盟者のいない自分たち。 「――大統領。さっき、アーチャーとの共闘は有り得ないと言ったが、あれは撤回する」 「というと――アーチャーと組み、柳洞寺の集団を相手取るのか?」 「そうだ。だが、アーチャーを信用する訳ではない――盤面を単純にするんだ。  今生き残っていて一番大きな勢力は柳洞寺組だ。次に、枢木スザクとキャスター組。  そして単独であるアーチャー、我々、警察署を襲った――仮にAとしよう。このAの三組。  柳洞寺組を一つの意思に統制されたまとまった集団とするならば、これに対抗するには同じくまとまった集団をおいて他にない」 「我々、アーチャー、枢木、キャスター、そしてAを一つのチームにする――と?」 「私自身、状況の推移がここまで早いとは想像できなかった。が、この機を逃せばいずれ我々は柳洞寺組に各個撃破されるのは明白だ。  同等の戦力を築き上げ、激突させ――双方の一切合財を失わせる。  この聖杯戦争の山場はここだと確信したよ」 今いる場所に合わせて柳洞寺組を西軍、それ以外を東軍とでも言うべきか。 それぞれ思惑があるマスター達に柳洞寺組という共通の敵を示すことにより、一時的に団結を促す。 彼らにしろ単独では柳洞寺組に敵わないから、門前払いを受けるということはないはず。 共通の敵――その存在はアーチャーから柳洞寺組にすり替わったが、やることは同じ。 厄介な敵を潰し合わせ、最終的に漁夫の利を得る。 理想は情報だけ渡してアーチャーたちを裏から操ることだが、こればかりはアサシンも参加せねば他のマスター達をうまく誘導できない。 そして参加する全てのサーヴァントが脱落するなど都合よくもいかないだろう。 だが、仮に柳洞寺組の半数が落ち、こちらはアーチャーが倒れる――といった展開ならば、やりよう次第で望みはある。 そうすれば残りはアサシン単独でも何とかやれる可能性が出てくる。 聖杯戦争を一気に決着させる一手になるだろう。 「枢木スザクを監視する一体を残して、君の分身を引き上げさせてくれ。  アーチャーとAを接触する。ああ、君本体は接触しないでくれよ。万が一ということもある」 「了解だ」 指示を受けたアサシンが部屋を出ていこうとする直前、市長は無意識にアサシンを呼び止めていた。 「どうした、市長?」 「いや、なんとなくだがな。  ――これが最後の夜になる、そんな気がするんだ」 「成り行き次第ではそうなるだろう。だが、最終的に生き残るのは――」 「――ナプキンを取るのは我々だ、だろう?わかっているよ、大統領」 市長の言葉に頷き、アサシンは館を出て行った。 残された市長はすっかり馴染みの味となったドリンクをまた一本開ける。 来たるべき東軍結成の交渉に向けて、市長は思索に耽っていった。 《B》 「驚いたな。マスター、アサシンが出てきたぞ」 ふと告げられたライダーの言葉に衛宮切嗣は耳を疑った。 警察署から装備を調達した後、人気のない港で狙撃銃の調整を終えて市街に戻ってきた時だった。 「どこだ?距離は?」 「遠くない。市街のど真ん中だ。気配を消さずに姿を晒していやがる」 低いステータス、姿を表すまでまったく存在を感知できなかった隠形の技はアサシンそのもの。 同時に隠密を旨とするアサシンからは絶対にありえない行動を、切嗣は即座に罠と判断しライダーを変身させた。 「ライダー、宝具の修復は終わったか?」 「もうほぼ問題ない。仕掛けるのか?」 「いいや、まず様子を見る。何か裏があるのは間違いない――」 「待て、マスター。あのアサシン、魔力をちらつかせて――何だこの波長?」 怪訝そうなライダーの視界に同調し、切嗣自身の目でアサシンの様子を確認する。 白人男性のアサシンが発している魔力光の波長はごく単純なものだった。ただのモールス信号だ。 「戦闘の意思はない・情報を持っている・接触を求む――?」 「なんだそれは。あのアサシン、俺達や他のマスターを呼び集めてるってのか」 「あのサインを額面通りに信じるならな」 切嗣は辺りを見回し、電線にとまっていた鳩に目をつけた。 先ほどキャスターに破壊された使い魔の代わりを作成し、アサシンの元へと飛ばす。 「そいつで様子を探るのか」 「ああ。ライダー、周囲を警戒してくれ。背後から別のサーヴァントが襲ってこないとも限らない」 切嗣は使い魔に意識を集中させる。 やがて鳩はアサシンの目前へ移動したが、アサシンからは攻撃行動はない。 「ほう、使い魔とはな。マスターは魔術師か」 「誘ったのはそちらだ。何の真似だアサシン」 「説明する。だがもう少し待て――来たな」 アサシンは切嗣の使い魔とは違う方向を見て言った。 使い魔をそちらに向けると、上空からまた別の人物が降って来た。 大柄で金髪の男。ステータスが読み取れることからサーヴァントに相違ない。 「来てやったぞアサシン。この私を呼びつけるとはいい度胸をしているではないか」 「ようこそアーチャー。先ほどはよくもやってくれた、と言っておこう」 アサシンとアーチャーが対峙する。 両者の目には隠し切れない敵意が覗いている。 (こいつらは以前に戦っている――?ならば何故こうして再び対面させた) 「そこで覗き見ているのはまた別のマスターか。アサシンよ、一体何の魂胆があって我らを集めたのだ?  下らぬ用件であったならば――今度こそ貴様は再起不能になると覚悟しておけ」 切嗣の疑問を、アーチャーが代わりに尋ねた。彼にとっても不可解な事態のようだ。 「アーチャー、私もお前には色々と借りがあり、恨みもある。  だが今はそんな些事に構っている場合ではない――西の深山町に強力なサーヴァントの集団が出現した。  私の確認した限り、セイバーが二人、キャスターが一人、そしてクラス不明のサーヴァントが二人。  合計五人のサーヴァントが徒党を組んでいる」 アサシンが淡々と告げた言葉に、切嗣は思わず声を漏らしかけた。 間違いなくアーサー王を筆頭とする集団だ。 知っているのはアーサー、ガウェイン、オーズの三人だったがさらにキャスターともう一名が合流したらしい。 スザクをぶつけさせて戦力を減らすどころか、恐ろしいほどに増強されている。 「五人――だと?」 「どれもがAクラス以上の強力無比なサーヴァントたちだ。先ほどバーサーカー、キャスター、アサシンが仕掛けたが容易く撃退された。  特にセイバーの片方は全てのステータスがEXという化物だ」 「ガウェイン、か」 「ほう、お前はやつらを知っていたか。ならば言わずともどれだけの脅威かわかるだろう」 「――ああ。太陽の騎士と称されるガウェイン、騎士王アルトリア・ペンドラゴン。名高い円卓の騎士が二人も雁首を並べている」 「太陽の騎士――?」 泰然と構えていたアーチャーの鉄面皮が割れる。 態度の大きそうなサーヴァントだがさすがに衝撃だったようだ。 「なるほど、お前が僕達をこうして呼び集めたのは――」 「お察しの通りだ。この前代未聞の敵に対抗するために、一時休戦し共闘をしたい――と、私と私のマスターは考えている」 「共闘だと――この私と貴様らゴミカス共が?冗談ではないな」 「だが、お前一人で倒せる相手でもないということはわかっているだろう」 アサシンの切り返しに尊大なアーチャーも反論できない。 どれほど強力なサーヴァントだとしても、五人という数の壁はそうそう覆せない。 一人二人倒したところで、その隙を残った者に狙われればどうしようもない。 「無論、私とて思うところがないわけではない。殺し合った敵と手を組むなど本来ならばあり得んことだ。  だが私は聖杯に賭ける願いがある。お前たちも同じだろう。  このまま駆逐されるのを待つより、少しでも勝利に近い道を選ぶ――私はそうするだけのこと。  お前たちはどうだ?」 このアサシンの問いに、切嗣は傍らで聞いているライダーに意見を求めた。 アサシンとアーチャーには聞こえないように使い魔との接続を一部カットする。 「正直業腹だが――マスター、俺はこの誘いに乗るべきだと思う。  俺と枢木のバーサーカーだけでは奴らには太刀打ち出来ん。  せめて数の上だけでも互角に持ち込まないとな」 「戦力的に必要なのは僕も同意見だ。だが奴らを信用できるか?」 「こいつらだって聖杯を狙う以上、オーズたちを排除しなきゃならないのは俺達と同じだ。  奴らとこいつら、どっちが与し易いかといえば間違いなくこっちだし、向こうにとってもそうだろう。  少なくともオーズたちをどうにかするという目的そのものには嘘はないと思う」 「仮に組んでうまくオーズたちを排除できたとして――」 「そこからは即、背中の狙い合いだな。こいつらは決して味方じゃない」 オーズたちの同盟を全滅もしくは半壊に追い込めたら、次の敵は当然組んでいたこのアサシン達になる。 ただ一組の優勝を目指すのだから、いずれの激突は不可避だ。 「――タイミングがシビアだな。オーズたちを全滅させられたならいいが、そうでなかった場合残敵とアサシン達、両方を相手取ることになる」 「そこからは乱戦だな。だが、首尾よくオーズを破壊できれば俺の力は増す。ある程度の無茶は利かせられるぞ」 「とにもかくにも、オーズたちの頭数を減らさないことには道は開けないということか――」 「――いいだろう。僕はその話に乗る」 「ほう、話の分かるマスターで助かる。ではこちらに来てくれないかな?  マスターが来いとはいわん、私のようにサーヴァントの姿を見せてくれ」 「それはそこのアーチャー次第だ。乗るとは言ったが、組むのがアサシンお前だけでは戦力的に旨みはない。  アーチャーも参加するなら僕も。それが条件だ」 アーチャーに水を向ける。 黙っていたアーチャーがゆらりと構えを解き―― 「――いいだろう。私のマスターも了承した。  五組のサーヴァントを排除するまで、限定であるが――貴様らと組んでやろうではないか」 「では――二人とも了承ということで構わないな?」 「待て、こちらにまだ宛てがある。バーサーカーのマスターだ」 「バーサーカー?そんな弱兵が役に立つものか」 「いや、そのバーサーカーは理性こそないが戦闘能力そのものは極めて高い。使い方次第では戦力になるだろう」 「バーサーカー、もしや枢木スザクか」 「知っているのか?」 スザクの名前を出してきたアサシンに驚く。 が、随一の諜報力を持つアサシンならば別におかしくはない。 「私はついさっきまで深山町にいたのでな。彼は今こちらに向かっているはずだが」 「なら僕が呼び出そう」 「助かる。では場所を移すとしようか――」 切嗣がスザクを呼び出し、簡単に事のあらましを告げてホテルに来るように伝えた。 通話を切り、切嗣はライダーを実体化させてアサシン達のもとに向かわせる。 「僕のサーヴァントはライダーだ」 「ライダー――ふん、なるほど。お前が悠の言っていたやつか」 「悠――鳴上悠か?あいつを知っているのか」 「色々とあったのだよ。まあ、後で話してやるさ。情報の共有は大切だものな。  ところで、話を詰めるにせよ――枢木とやらのサーヴァントはバーサーカーなのだろう。  まさか話し合いの場に狂兵を寄越す気ではあるまいな」 「それについては問題ない。枢木はキャスターのマスターと組んでいるそうだ。  従って、ホテルに来るのはキャスターということになる」 「キャスター――ほう、では我々の陣営はライダー、バーサーカー、キャスター、アサシン、そして私アーチャーということになるか」 「対して敵はセイバー二人、ライダー一人、キャスター一人、そしてクラス不明が一人。  最優のセイバーが二人もいるというのがやや気がかりだが、戦力的にはほぼ互角だな」 三人のサーヴァントが夜の街を飛んで行くのを見送って、切嗣は懐からタバコを取り出した。 交渉はライダーを通して行う。 やがて――ライダーからキャスターが到着したという連絡があった。 タバコを吐き捨てて火を踏み消す。 これから戦略を詰めて、おそらくそう間を置かずにセイバー達との戦いに突入するだろう。 「――なんとなく、これが最後の夜になる、そんな気がするな」 数十分前に市長が呟いた言葉を、切嗣もまた零したのだった。 《C》 (五人ものマスター――それだけの人数が組むということはつまり、マドカと同じく聖杯を壊そうとしているのだろうな) アーチャー、DIOはマスターである鹿目まどかとの同調を断って交渉の場に赴いている。 建前は何とでもなった。 未熟なまどかでは百戦錬磨のマスターたちを相手に主導権を握れない、交渉に集中するためにこの場は任せてほしい。 そう言えば荒事には慣れていないまどかはそれ以上食い下がりはしなかった。 (もし敵がマドカと同じ目的であることを知れば、マドカは戦おうとはしない――どころか、彼らと協力しようと言い出すだろう。  それは困る――集団に飲み込まれれば、いかに私とて最期に聖杯を奪取するのは難しい) DIOは自分を最強のサーヴァントだと自負しているが、決して無敵だなどと自惚れてはいない。 空条承太郎に敗れた時も、ある意味では花京院やジョセフらの援護があったからこそ敗北したのだ。 だからDIOはアサシンの話に乗った。 効率よく敵を減らし、その目的をマスターに知らせず葬るために。 (今のマドカは不安定だ――覚悟を決めたとて、いつ転ぶかわからん。不安定な要素は少しでも排除していかねばな) 内憂外患とはこのことか。 マスターを信用しきれないのは正直なところ苛立たしいが代わりがいない以上放り出すわけにも行かない。 (まあ、いい。今はアサシン共を利用して、徒党を組んだカスどもを叩き潰す。  アサシン共はその後だ。うまくすれば今夜中に聖杯戦争を終わらせられるだろう――) 【新都・ハイアットホテル/夜中】 【ライダー(門矢司)@仮面ライダーディケイド】 [状態]:ダメージ(小)、魔力消費(中) 【アサシン(ファニー・ヴァレンタイン 並行世界)@ジョジョの奇妙な冒険】  [状態](5人目)・魔力消費(極大)・宝具「D4C」無し・気配遮断  [装備]:拳銃  [道具]:携帯電話 【キャスター(ゾルフ・J・キンブリー)@鋼の錬金術師】  [状態]:疲労(中)、魔力消費(大)、全身ダメージ(小)、右胸貫通  [装備]:羽瀬川小鳩を練成した賢者の石 【アーチャー(DIO)@ジョジョの奇妙な冒険】  [状態]:魔力消費(小) 、令呪(まどかの戦いに力を貸す)  [装備]:封印の剣@ファイアーエムブレム 覇者の剣、携帯電話 《D》 スザクが新都入りしたのを見届けて、5人目のアサシンは遠坂邸へと引き返した。 柳洞寺組が柳洞寺から遠坂邸へと拠点を移したためだ。 アーチャー、ライダーらとの会談に出席するのはNPCに付き添っていた6人目のアサシンになる。 深山町にはキャスターのサーチャーが飛び回っているためあまり近くには接近できないが、五人ものサーヴァントが固まっていればその気配は大きなものになる。 発見、監視はさほど難しくない。 市長はここまでは概ね計画通りに事が進んで言うことを確認し、何本目かわからなくなった栄養ドリンクの蓋を開けた。 【深山町・遠坂邸付近/夜中】 【アサシン(ファニー・ヴァレンタイン 並行世界)@ジョジョの奇妙な冒険】  [状態](6人目)・魔力消費(極大)・宝具「D4C」無し・気配遮断  [装備]:拳銃  [道具]:携帯電話 【新都・双子館/夜中】 【ジョン・バックス@未来日記】  [状態]:疲労(小)・冬木市市長・残令呪使用回数3回  [装備]:「The watcher」  [道具]:なし 【アサシン(ファニー・ヴァレンタイン)@ジョジョの奇妙な冒険】  [状態](4人目)・魔力消費(中)・気配遮断  [装備]:拳銃  [道具]:携帯電話・エッケザックス@ファイヤーエムブレム 覇者の剣 【新都/夜中】 【鹿目まどか@魔法少女まどか☆マギカ】  [状態]:健康、令呪残り2画  [装備]:鋼鉄の腕(アイゼン・デア・アルム)@エンバーミング 、鋼鉄の腕の予備弾@鋼鉄の腕(アイゼン・デア・アルム) 【衛宮切嗣@Fate/zero】 [令呪]:1画 [状態]:固有時制御の反動ダメージ(中)、魔力消費(大) [装備]:ワルサー、キャレコ 、狙撃銃       携帯電話、鉈、大きな鏡、その他多数(ホームセンターで購入できるもの) 【枢木スザク@コードギアス 反逆のルルーシュ】  [令呪]:2画  [状態]:疲労(特大)、義手・義足を機械鎧化 【バーサーカー(ランスロット)@Fate/Zero】 [状態]:ダメージ(特大・戦闘行動に支障あり)、魔力消費(極大・実体化困難)、右腕欠損、兜及び上半身の鎧破壊   宝具“無毀なる湖光(アロンダイト)”喪失
《A》 「市長。緊急の連絡だ」 「どうした、アサシン」 「君が市長に仕立てあげたNPCから連絡が入った。先ほど、新都の警察署から多数の銃器が紛失したそうだ」 日は沈み、夜。 新都の外れに位置する双子館で、ジョン・バックス市長はサーヴァントであるアサシンから報告を受けた。 「――サーヴァントの仕業か?」 「おそらく。拳銃と弾薬、それに狙撃銃が一挺持ち出されている。霊体化して忍び込み銃を物色した後、壁を壊して堂々と逃げたらしい。  もちろん監視カメラには何の痕跡も残っていないがね」 「日本の警察の装備、施設をある程度熟知している者の仕業か――足取りは終えるか?」 「NPCでは無理だろう。私が直接出向けば可能だろうが」 「ふむ――」 市長は黙考する。 おそらくアーチャーのマスターではないだろう。 確認できる限りアーチャーとそのマスターはこの戦いが始まってからずっと新都にいるが、銃器が必要なら初日から行動を起こしているはずだ。 冬木市には警察署は新都にしかないため、犯人は深山町からこの新都に移動してきた別のマスターの公算が高い。 「どうする?私が確認に向かおうか」 「そうだな。深山町に向かった君たちはどうしている?」 柳洞寺と遠坂邸に向かった二人の分身は、それぞれマスター達を発見していた。 遠坂邸にいる四組と、柳洞寺で戦っていた四組。 遠坂邸にいた集団はその後キャスターの魔術で柳洞寺に転移し、攻め寄せていたバーサーカーたちを撃退したのを確認している。 その場から逃げ延びたのはバーサーカーとそのマスター、そして帯同していたキャスター。 彼らを逃がすため殿に残ったアサシンであろうサーヴァントは集中攻撃を受けて撃破された。 「難航している、としか言えん。予定では遠坂邸にいるマスター達と接触するつもりだったが――数が多すぎる。  五人ものマスターが手を組んだのは予想外だった。あれでは、共闘を持ちかけても我々を受け入れる理由がない」 当初、市長とアサシンはアーチャーを敵として生き残ったマスター達に認知させるつもりだった。 アーチャーの脅威は時間停止能力を始めとする、単独戦闘能力の高さだ。 一対一、あるいは二体のサーヴァントで同時に向かったとしてもあのアーチャーを打ち破るのは難しい。 時間を止められている間に急所を攻撃、あるいはマスターを狙われれば為す術はないからだ。 しかし五人ものサーヴァントがいれば話は別。 アーチャーもサーヴァントである以上、魔力は有限、永遠に時間を止められるわけではないし、また魔力消費も膨大なはずだ。 チームを分け、一人がアーチャーに挑み、残りの仲間が遠距離から援護すれば、いかに時間を止めようとも凌ぎ切れるものではない。 時間を止める宝具の連続使用、そのタイムラグを突く。 数を揃えたものだけに許される、正攻法にして強引極まりない力技だ。 その戦術を取れるチームを相手に共闘を持ちかけたとて、アサシンの力を必要としていないのだから受諾される可能性は低い。 何せその中には全ての能力が評価規格外という化物のようなセイバーがいるのだから、それ以上の戦力は必要ではない。 むしろ彼らの中にはアサシンと以前交戦した者がいるため、敵対する可能性の方が遙かに大きい。 「状況は激変した。ゼフィールらが脱落した今、我々には協力者がいない。  アーチャーももちろん脅威だが、この柳洞寺に集った集団はそれ以上だ。  もし彼らが同じ目的の元に団結しているのならば――我々は駆逐される側にいることになる」 「彼らとアーチャーを潰し合わせることは可能か?」 「それが理想的な展開だが、ただアーチャーをぶつけるだけでは苦もなく排除されるだろう。  ある程度拮抗した戦力をぶつけなければ、我々が横から掠め取る余地が発生しない」 「では、柳洞寺から逃げたマスターというのは?今も監視しているのだろう」 「ああ。名前は枢木スザク、バーサーカーのマスター。  キャスター並びにアサシンと同盟を結んでいるようだが、言った通りアサシンは討たれた。  今は月海原学園に向かって移動している。柳洞寺のサーヴァントたちの情報を集めるつもりだろう」 「ふむ――暗殺は?」 「可能だが、推奨しない。深山町にはキャスターが放ったであろう使い魔が飛び回っている。  向こうの私が隠形を解けば瞬時に発見されるだろう」 柳洞寺周辺にいるアサシンは分身体であるため、倒されてもアサシン自体は存続する。 が、当然次の分身を生み出すにはバックスの魔力を消費するため、無駄に浪費できるものではなかった。 「それに――見て回った限り、深山町にいるマスターは柳洞寺の集団と、この枢木だけだ。  キャスターのマスターはまだ発見できていないが、おそらくこれ以外はいないのだろう」 どこかに潜伏して時が経つのを待っているようなマスターがいれば話は別だが、今はそちらに手を割く余裕はない。 柳洞寺の五組、枢木とキャスター組、アーチャー、警察署を襲った者、そして市長自身。 現状聖杯戦争の盤面にいるのはこの十組だけと考えていいだろう。 「枢木を削っては柳洞寺組並びにアーチャーを始末する手駒が不足する」 「そうだな、今は手を出さないでおいてくれ。それに彼が得る情報は私達にとってもプラスになる」 騎乗に広げた地図を睨み、バックスは考えを巡らせる。 西と東の二つの脅威。 それに含まれない第三戦力。 同盟者のいない自分たち。 「――大統領。さっき、アーチャーとの共闘は有り得ないと言ったが、あれは撤回する」 「というと――アーチャーと組み、柳洞寺の集団を相手取るのか?」 「そうだ。だが、アーチャーを信用する訳ではない――盤面を単純にするんだ。  今生き残っていて一番大きな勢力は柳洞寺組だ。次に、枢木スザクとキャスター組。  そして単独であるアーチャー、我々、警察署を襲った――仮にAとしよう。このAの三組。  柳洞寺組を一つの意思に統制されたまとまった集団とするならば、これに対抗するには同じくまとまった集団をおいて他にない」 「我々、アーチャー、枢木、キャスター、そしてAを一つのチームにする――と?」 「私自身、状況の推移がここまで早いとは想像できなかった。が、この機を逃せばいずれ我々は柳洞寺組に各個撃破されるのは明白だ。  同等の戦力を築き上げ、激突させ――双方の一切合財を失わせる。  この聖杯戦争の山場はここだと確信したよ」 今いる場所に合わせて柳洞寺組を西軍、それ以外を東軍とでも言うべきか。 それぞれ思惑があるマスター達に柳洞寺組という共通の敵を示すことにより、一時的に団結を促す。 彼らにしろ単独では柳洞寺組に敵わないから、門前払いを受けるということはないはず。 共通の敵――その存在はアーチャーから柳洞寺組にすり替わったが、やることは同じ。 厄介な敵を潰し合わせ、最終的に漁夫の利を得る。 理想は情報だけ渡してアーチャーたちを裏から操ることだが、こればかりはアサシンも参加せねば他のマスター達をうまく誘導できない。 そして参加する全てのサーヴァントが脱落するなど都合よくもいかないだろう。 だが、仮に柳洞寺組の半数が落ち、こちらはアーチャーが倒れる――といった展開ならば、やりよう次第で望みはある。 そうすれば残りはアサシン単独でも何とかやれる可能性が出てくる。 聖杯戦争を一気に決着させる一手になるだろう。 「枢木スザクを監視する一体を残して、君の分身を引き上げさせてくれ。  アーチャーとAを接触する。ああ、君本体は接触しないでくれよ。万が一ということもある」 「了解だ」 指示を受けたアサシンが部屋を出ていこうとする直前、市長は無意識にアサシンを呼び止めていた。 「どうした、市長?」 「いや、なんとなくだがな。  ――これが最後の夜になる、そんな気がするんだ」 「成り行き次第ではそうなるだろう。だが、最終的に生き残るのは――」 「――ナプキンを取るのは我々だ、だろう?わかっているよ、大統領」 市長の言葉に頷き、アサシンは館を出て行った。 残された市長はすっかり馴染みの味となったドリンクをまた一本開ける。 来たるべき東軍結成の交渉に向けて、市長は思索に耽っていった。 《B》 「驚いたな。マスター、アサシンが出てきたぞ」 ふと告げられたライダーの言葉に衛宮切嗣は耳を疑った。 警察署から装備を調達した後、人気のない港で狙撃銃の調整を終えて市街に戻ってきた時だった。 「どこだ?距離は?」 「遠くない。市街のど真ん中だ。気配を消さずに姿を晒していやがる」 低いステータス、姿を表すまでまったく存在を感知できなかった隠形の技はアサシンそのもの。 同時に隠密を旨とするアサシンからは絶対にありえない行動を、切嗣は即座に罠と判断しライダーを変身させた。 「ライダー、宝具の修復は終わったか?」 「もうほぼ問題ない。仕掛けるのか?」 「いいや、まず様子を見る。何か裏があるのは間違いない――」 「待て、マスター。あのアサシン、魔力をちらつかせて――何だこの波長?」 怪訝そうなライダーの視界に同調し、切嗣自身の目でアサシンの様子を確認する。 白人男性のアサシンが発している魔力光の波長はごく単純なものだった。ただのモールス信号だ。 「戦闘の意思はない・情報を持っている・接触を求む――?」 「なんだそれは。あのアサシン、俺達や他のマスターを呼び集めてるってのか」 「あのサインを額面通りに信じるならな」 切嗣は辺りを見回し、電線にとまっていた鳩に目をつけた。 先ほどキャスターに破壊された使い魔の代わりを作成し、アサシンの元へと飛ばす。 「そいつで様子を探るのか」 「ああ。ライダー、周囲を警戒してくれ。背後から別のサーヴァントが襲ってこないとも限らない」 切嗣は使い魔に意識を集中させる。 やがて鳩はアサシンの目前へ移動したが、アサシンからは攻撃行動はない。 「ほう、使い魔とはな。マスターは魔術師か」 「誘ったのはそちらだ。何の真似だアサシン」 「説明する。だがもう少し待て――来たな」 アサシンは切嗣の使い魔とは違う方向を見て言った。 使い魔をそちらに向けると、上空からまた別の人物が降って来た。 大柄で金髪の男。ステータスが読み取れることからサーヴァントに相違ない。 「来てやったぞアサシン。この私を呼びつけるとはいい度胸をしているではないか」 「ようこそアーチャー。先ほどはよくもやってくれた、と言っておこう」 アサシンとアーチャーが対峙する。 両者の目には隠し切れない敵意が覗いている。 (こいつらは以前に戦っている――?ならば何故こうして再び対面させた) 「そこで覗き見ているのはまた別のマスターか。アサシンよ、一体何の魂胆があって我らを集めたのだ?  下らぬ用件であったならば――今度こそ貴様は再起不能になると覚悟しておけ」 切嗣の疑問を、アーチャーが代わりに尋ねた。彼にとっても不可解な事態のようだ。 「アーチャー、私もお前には色々と借りがあり、恨みもある。  だが今はそんな些事に構っている場合ではない――西の深山町に強力なサーヴァントの集団が出現した。  私の確認した限り、セイバーが二人、キャスターが一人、そしてクラス不明のサーヴァントが二人。  合計五人のサーヴァントが徒党を組んでいる」 アサシンが淡々と告げた言葉に、切嗣は思わず声を漏らしかけた。 間違いなくアーサー王を筆頭とする集団だ。 知っているのはアーサー、ガウェイン、オーズの三人だったがさらにキャスターともう一名が合流したらしい。 スザクをぶつけさせて戦力を減らすどころか、恐ろしいほどに増強されている。 「五人――だと?」 「どれもがAクラス以上の強力無比なサーヴァントたちだ。先ほどバーサーカー、キャスター、アサシンが仕掛けたが容易く撃退された。  特にセイバーの片方は全てのステータスがEXという化物だ」 「ガウェイン、か」 「ほう、お前はやつらを知っていたか。ならば言わずともどれだけの脅威かわかるだろう」 「――ああ。太陽の騎士と称されるガウェイン、騎士王アルトリア・ペンドラゴン。名高い円卓の騎士が二人も雁首を並べている」 「太陽の騎士――?」 泰然と構えていたアーチャーの鉄面皮が割れる。 態度の大きそうなサーヴァントだがさすがに衝撃だったようだ。 「なるほど、お前が僕達をこうして呼び集めたのは――」 「お察しの通りだ。この前代未聞の敵に対抗するために、一時休戦し共闘をしたい――と、私と私のマスターは考えている」 「共闘だと――この私と貴様らゴミカス共が?冗談ではないな」 「だが、お前一人で倒せる相手でもないということはわかっているだろう」 アサシンの切り返しに尊大なアーチャーも反論できない。 どれほど強力なサーヴァントだとしても、五人という数の壁はそうそう覆せない。 一人二人倒したところで、その隙を残った者に狙われればどうしようもない。 「無論、私とて思うところがないわけではない。殺し合った敵と手を組むなど本来ならばあり得んことだ。  だが私は聖杯に賭ける願いがある。お前たちも同じだろう。  このまま駆逐されるのを待つより、少しでも勝利に近い道を選ぶ――私はそうするだけのこと。  お前たちはどうだ?」 このアサシンの問いに、切嗣は傍らで聞いているライダーに意見を求めた。 アサシンとアーチャーには聞こえないように使い魔との接続を一部カットする。 「正直業腹だが――マスター、俺はこの誘いに乗るべきだと思う。  俺と枢木のバーサーカーだけでは奴らには太刀打ち出来ん。  せめて数の上だけでも互角に持ち込まないとな」 「戦力的に必要なのは僕も同意見だ。だが奴らを信用できるか?」 「こいつらだって聖杯を狙う以上、オーズたちを排除しなきゃならないのは俺達と同じだ。  奴らとこいつら、どっちが与し易いかといえば間違いなくこっちだし、向こうにとってもそうだろう。  少なくともオーズたちをどうにかするという目的そのものには嘘はないと思う」 「仮に組んでうまくオーズたちを排除できたとして――」 「そこからは即、背中の狙い合いだな。こいつらは決して味方じゃない」 オーズたちの同盟を全滅もしくは半壊に追い込めたら、次の敵は当然組んでいたこのアサシン達になる。 ただ一組の優勝を目指すのだから、いずれの激突は不可避だ。 「――タイミングがシビアだな。オーズたちを全滅させられたならいいが、そうでなかった場合残敵とアサシン達、両方を相手取ることになる」 「そこからは乱戦だな。だが、首尾よくオーズを破壊できれば俺の力は増す。ある程度の無茶は利かせられるぞ」 「とにもかくにも、オーズたちの頭数を減らさないことには道は開けないということか――」 「――いいだろう。僕はその話に乗る」 「ほう、話の分かるマスターで助かる。ではこちらに来てくれないかな?  マスターが来いとはいわん、私のようにサーヴァントの姿を見せてくれ」 「それはそこのアーチャー次第だ。乗るとは言ったが、組むのがアサシンお前だけでは戦力的に旨みはない。  アーチャーも参加するなら僕も。それが条件だ」 アーチャーに水を向ける。 黙っていたアーチャーがゆらりと構えを解き―― 「――いいだろう。私のマスターも了承した。  五組のサーヴァントを排除するまで、限定であるが――貴様らと組んでやろうではないか」 「では――二人とも了承ということで構わないな?」 「待て、こちらにまだ宛てがある。バーサーカーのマスターだ」 「バーサーカー?そんな弱兵が役に立つものか」 「いや、そのバーサーカーは理性こそないが戦闘能力そのものは極めて高い。使い方次第では戦力になるだろう」 「バーサーカー、もしや枢木スザクか」 「知っているのか?」 スザクの名前を出してきたアサシンに驚く。 が、随一の諜報力を持つアサシンならば別におかしくはない。 「私はついさっきまで深山町にいたのでな。彼は今こちらに向かっているはずだが」 「なら僕が呼び出そう」 「助かる。では場所を移すとしようか――」 切嗣がスザクを呼び出し、簡単に事のあらましを告げてホテルに来るように伝えた。 通話を切り、切嗣はライダーを実体化させてアサシン達のもとに向かわせる。 「僕のサーヴァントはライダーだ」 「ライダー――ふん、なるほど。お前が悠の言っていたやつか」 「悠――鳴上悠か?あいつを知っているのか」 「色々とあったのだよ。まあ、後で話してやるさ。情報の共有は大切だものな。  ところで、話を詰めるにせよ――枢木とやらのサーヴァントはバーサーカーなのだろう。  まさか話し合いの場に狂兵を寄越す気ではあるまいな」 「それについては問題ない。枢木はキャスターのマスターと組んでいるそうだ。  従って、ホテルに来るのはキャスターということになる」 「キャスター――ほう、では我々の陣営はライダー、バーサーカー、キャスター、アサシン、そして私アーチャーということになるか」 「対して敵はセイバー二人、ライダー一人、キャスター一人、そしてクラス不明が一人。  最優のセイバーが二人もいるというのがやや気がかりだが、戦力的にはほぼ互角だな」 三人のサーヴァントが夜の街を飛んで行くのを見送って、切嗣は懐からタバコを取り出した。 交渉はライダーを通して行う。 やがて――ライダーからキャスターが到着したという連絡があった。 タバコを吐き捨てて火を踏み消す。 これから戦略を詰めて、おそらくそう間を置かずにセイバー達との戦いに突入するだろう。 「――なんとなく、これが最後の夜になる、そんな気がするな」 数十分前に市長が呟いた言葉を、切嗣もまた零したのだった。 《C》 (五人ものマスター――それだけの人数が組むということはつまり、マドカと同じく聖杯を壊そうとしているのだろうな) アーチャー、DIOはマスターである鹿目まどかとの同調を断って交渉の場に赴いている。 建前は何とでもなった。 未熟なまどかでは百戦錬磨のマスターたちを相手に主導権を握れない、交渉に集中するためにこの場は任せてほしい。 そう言えば荒事には慣れていないまどかはそれ以上食い下がりはしなかった。 (もし敵がマドカと同じ目的であることを知れば、マドカは戦おうとはしない――どころか、彼らと協力しようと言い出すだろう。  それは困る――集団に飲み込まれれば、いかに私とて最期に聖杯を奪取するのは難しい) DIOは自分を最強のサーヴァントだと自負しているが、決して無敵だなどと自惚れてはいない。 空条承太郎に敗れた時も、ある意味では花京院やジョセフらの援護があったからこそ敗北したのだ。 だからDIOはアサシンの話に乗った。 効率よく敵を減らし、その目的をマスターに知らせず葬るために。 (今のマドカは不安定だ――覚悟を決めたとて、いつ転ぶかわからん。不安定な要素は少しでも排除していかねばな) 内憂外患とはこのことか。 マスターを信用しきれないのは正直なところ苛立たしいが代わりがいない以上放り出すわけにも行かない。 (まあ、いい。今はアサシン共を利用して、徒党を組んだカスどもを叩き潰す。  アサシン共はその後だ。うまくすれば今夜中に聖杯戦争を終わらせられるだろう――) 【新都・ハイアットホテル/夜中】 【ライダー(門矢司)@仮面ライダーディケイド】  [状態]:ダメージ(小)、魔力消費(中) 【アサシン(ファニー・ヴァレンタイン 並行世界)@ジョジョの奇妙な冒険】  [状態](5人目)・魔力消費(極大)・宝具「D4C」無し・気配遮断  [装備]:拳銃  [道具]:携帯電話 【キャスター(ゾルフ・J・キンブリー)@鋼の錬金術師】  [状態]:疲労(中)、魔力消費(大)、全身ダメージ(小)、右胸貫通  [装備]:羽瀬川小鳩を練成した賢者の石 【アーチャー(DIO)@ジョジョの奇妙な冒険】  [状態]:魔力消費(小) 、令呪(まどかの戦いに力を貸す)  [装備]:封印の剣@ファイアーエムブレム 覇者の剣、携帯電話 《D》 スザクが新都入りしたのを見届けて、5人目のアサシンは遠坂邸へと引き返した。 柳洞寺組が柳洞寺から遠坂邸へと拠点を移したためだ。 アーチャー、ライダーらとの会談に出席するのはNPCに付き添っていた6人目のアサシンになる。 深山町にはキャスターのサーチャーが飛び回っているためあまり近くには接近できないが、五人ものサーヴァントが固まっていればその気配は大きなものになる。 発見、監視はさほど難しくない。 市長はここまでは概ね計画通りに事が進んで言うことを確認し、何本目かわからなくなった栄養ドリンクの蓋を開けた。 【深山町・遠坂邸付近/夜中】 【アサシン(ファニー・ヴァレンタイン 並行世界)@ジョジョの奇妙な冒険】  [状態](6人目)・魔力消費(極大)・宝具「D4C」無し・気配遮断  [装備]:拳銃  [道具]:携帯電話 【新都・双子館/夜中】 【ジョン・バックス@未来日記】  [状態]:疲労(小)・冬木市市長・残令呪使用回数3回  [装備]:「The watcher」  [道具]:なし 【アサシン(ファニー・ヴァレンタイン)@ジョジョの奇妙な冒険】  [状態](4人目)・魔力消費(中)・気配遮断  [装備]:拳銃  [道具]:携帯電話・エッケザックス@ファイヤーエムブレム 覇者の剣 【新都/夜中】 【鹿目まどか@魔法少女まどか☆マギカ】  [状態]:健康、令呪残り2画  [装備]:鋼鉄の腕(アイゼン・デア・アルム)@エンバーミング 、鋼鉄の腕の予備弾@鋼鉄の腕(アイゼン・デア・アルム) 【衛宮切嗣@Fate/zero】  [令呪]:1画  [状態]:固有時制御の反動ダメージ(中)、魔力消費(大)  [装備]:ワルサー、キャレコ 、狙撃銃   携帯電話、鉈、大きな鏡、その他多数(ホームセンターで購入できるもの) 【枢木スザク@コードギアス 反逆のルルーシュ】  [令呪]:2画  [状態]:疲労(特大)、義手・義足を機械鎧化 【バーサーカー(ランスロット)@Fate/Zero】  [状態]:ダメージ(特大・戦闘行動に支障あり)、魔力消費(極大・実体化困難)、右腕欠損、兜及び上半身の鎧破壊   宝具“無毀なる湖光(アロンダイト)”喪失

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