憂「お姉ちゃん!会いに来たよ!」

唯「えっ?」

憂「えへへ。今日もね、どーしてもお姉ちゃんに会いたくなっちゃったの。突然来ちゃってごめんね?」

唯「わわっ! ダメだよういー!」

憂「へ? 何でダメなの? せっかく会いに来たのに」

唯「明日も学校あるんじゃないの!? 早く帰ってちゃんと朝に起きなきゃダメなのにー!」アワワッ!

憂「わ……分かったよ、お姉ちゃん」

唯「ばいばい、憂」

憂「うん。お姉ちゃん、またね」



憂「お姉ちゃん、会いに来たよ!」

唯「えー……また……?」

憂「ご、ごめんね。でも会いたかったから……」

唯「ねぇ、憂は三年生になってから軽音部に入ったんだよね?」

憂「うん」

唯「そろそろ、文化祭の時期じゃなかったっけ?」

憂「……」

憂「さぁ?」

唯「……むむむ。てごわい」

唯「こんな事してる場合じゃないよ、絶対にさ」

憂「『こんな事』って?」

唯「毎日毎日、用事もないのに私に会いに来ることっ」

憂「用事はあるよ?」

唯「へ? そなの? なにかあった?」

憂「お姉ちゃんとこうしてお話するのがね、私にとって何よりも大事な用事なの」

唯「何よりも?」

憂「うん」

唯「ほんとーに……?」ジトー…

憂「うんっ!」ニッコリ

唯「……うぅ、なんて明るい笑顔」クラリ

憂「お姉ちゃんに褒められると、やっぱりうれしいなっ」

唯「私も憂とお話出来るのはうれしーけど……でもね、やっぱりダメっ!

 こんな風に毎日毎日会うのなんておかしいよ。だって、私はもう……」

憂「……ダメ?」

唯「ダメだよっ」

憂「どうして?」

唯「ダメだから、ダメなのっ」

憂「……お姉ちゃん、怒ってる?」

唯「怒ってないよ。怒ってないけど、帰ってよー……ねっ?」

憂「うーん……。良く分からないけど、今日は帰るね」

唯「明日も来ちゃダメだよっ。ダメだからねっ!」

唯「だから、ばいばい、憂」

憂「……またね、お姉ちゃん」…ボソリ



憂「だーれだ」めかくし!

唯「……うーいー?」

憂「正解だよ、お姉ちゃん!」

唯「来ちゃダメって言ったのにー。憂は私よりお利口さんだったはずでしょ?」

憂「『明日も来ちゃダメ』って言われたから1日置いたよ?」キョトン

唯「うひゃー……そう来ちゃったのかぁー……憂は頭が良いね!」

憂「そうかなー?」エヘヘ///

唯「とんちが利いてて、いっきゅーさんみたい。今の憂は憂っきゅーさんだよ!」

憂「うふふ。ありがとー、お姉ちゃん!」

唯「でも、ちゃんと帰らなきゃダメだかねっ! あと、絶対また来たら『めっ!』だからねっ!」

憂「明日は?」

唯「明日もっ」

憂「明後日は?」

唯「ずーっとダメっ!」

憂「……うぅ」

唯「じゃあね。ばいばい、憂」

憂「分かったよぉ……」

憂(……またね、お姉ちゃん)



憂「お姉ちゃん!会いに来たよ!」


憂「あれ? お姉ちゃん?」

唯「……今日はどんなとんち?」

憂「えーと……」

唯「……」

憂「うーんと……」

唯「……」

憂「……ごめんね。一旦帰って考えて来る」

唯「思い付くまで来ちゃダメだよ」

憂「うーん……」

唯「出来れば思い付かないでね?」

憂「ひどいよ、お姉ちゃん……」

唯「ひどくないよ。ばいばい、憂」

憂「うん。またね、お姉ちゃん」



憂「お姉ちゃん!会いに来たよ!」

唯「えーー……何か思い付いちゃったの?」

憂「ううん」

唯「え?」

憂「ん?」

唯「……うん?」

憂「うん」

唯「……」

憂「……?」ニコニコ

唯「ね、ねぇ……どーいうこと?」

憂「何にも思い付けなかったけど来ちゃった」

唯「憂のウソつき。約束を破るのは、すっごくすっごく悪いことなんだからねっ!」めっ!

憂「……お姉ちゃん、成長したね」

唯「へ? せーちょう? してないし、そんなの出来ないよぉ」

憂「出来てるよー。だって、まさかお姉ちゃんに注意される日が来るなんて思ってなかったもん!」ニコニコ

唯「むぅ。失礼な」

唯「とにかく帰ってよ、憂」

憂「はぁい……」

唯「ばいばい、憂」

憂「うん! またね、お姉ちゃん!」



憂「お姉ちゃん!会いに来たよ!」

唯「もうっ、憂! いい加減にしてよっ!」プンプン-3

憂「お、お姉ちゃん……?」

唯「さすがに私も怒るよ!?」プンスカ!-3

憂「おねーちゃん……」…ウルッ

唯「うぅ……な、泣いてもだめーっ!」

憂「お姉ちゃん、私のこと嫌いになっちゃったの……?」グスグス

唯「嫌いじゃないもんっ。……大好きだもん」ムゥ…

憂「じゃあ、どうして私が会いに来たら怒るの?」

唯「だって、憂には憂の生活があるでしょ?」

唯「毎日学校だってあるし、あずにゃんや純ちゃんと部活だって始めるんじゃないの?」

唯「だからさ、こっちに何度も何度も来ちゃダメなんだよ。分かってよ、うい……」

憂「……」

唯「……うい?」

憂「………ない……もん」

唯「うい……?」

憂「お姉ちゃんの居ない生活なんて、いらないもん」

憂「お姉ちゃんの為にお掃除してお洗濯して、美味しいご飯作りたいんだもん……」ポロポロ

唯「……私だって、憂のご飯食べたいよ」

憂「おねーちゃん……!」

唯「でも、無理。無理なんだよ? 分かるでしょ。こんなの、すっごく無駄だって」

憂「……お姉ちゃんのいじわる」

唯「……。……帰ってよ、憂」

憂「……」…コクリ

唯「ばいばい、憂」




憂「またね、お姉ちゃん」



憂「お姉ちゃん!会いに来たよ!」

唯「……」ジトー…

憂「へへへ……来ちゃった///」

唯「照れても許さないよっ」

憂「……うぅ」…ウルッ

唯「泣いても無駄だからねっ」

憂「むすー……っ」

唯「拗ねても効かないもんっ」

憂「お姉ちゃん、だいすきー」ニコニコ

唯「むむっ。良い笑顔」たじろぎ!

憂「……!」パァァッ!

唯「でもダメ」

憂「……」…ションボリ

唯「しょ、しょげたって、ダメだもん」

憂「お姉ちゃん、どうしちゃったの? 最近のお姉ちゃん……おかしいよ……」

唯「……」

唯「……憂も知ってるくせに」

憂「知らない。私、なんにも分かんないもん」

唯「憂、子供みたいなこと言わないでよー……」

憂「子供だもん。私、お姉ちゃんと一緒に居られるならずっとずっと子供で良い」

唯「そーゆーわけには行かないんだよ、憂」

憂「知らない、知らないっ! 知りたくないっ!」

唯「憂はもう知ってるよ。自分が本当はどうするべきかも」

憂「……わかんないよ、おねぇちゃん」

唯「そんなはずないよ。憂は賢い子だから。憂はね……憂は、私の自慢の妹だから」

憂「……」

唯「……憂、ばいばい」

憂「またね、おねぇちゃん」

唯「…………うい」



憂「お姉ちゃん!また来たよ!」

唯「~♪ ~♪」ジャカジャカジャッジャッ

憂(……あ)

憂(おねぇちゃん、ギー太弾いてる)

憂(あんなに夢中になって……ふふっ)

憂(ゴロゴロしてるお姉ちゃんは可愛いけど、ギー太弾いてるお姉ちゃんはね、すっごく格好良いよ)

唯「~♪ ~……むむっ。やっぱりここは難しいなぁ」ポリポリ

憂「おねーちゃんっ」

唯「わわわっ。……憂? いつから居たの?」

憂「さっきから、ずーっと居たよ」

憂(弾くのに一生懸命すぎて私の事も気づいてなかったんだ)

憂(そんなお姉ちゃんも……かわいいなぁ)

唯「ねぇ、憂。もうそろそろ……」

憂「弾いて」

唯「へっ?」

憂「お姉ちゃんの演奏してる姿。もっともっと見たいよ」

唯「で、でもね、憂……」

憂「…………見たかったのに、なぁ」

唯「んー……分かったよ。弾くよ。私も、弾きたかったから」

憂「ほんと!? やったぁ!」

唯「……」

唯「……」ジャン ジャン ジャンジャジャンッ 

唯「……」…。…。

唯「……あぁ。ちょっと、つかれちゃった」

憂「すごいっ! お姉ちゃん、前よりもずっとずっと上手くなってる気がするよっ!」

唯「そ、そうかなぁ?」

憂「うんっ。私、びっくりしちゃったよ!」

唯「……そう、だと良いなぁ」

憂「……? ……変なお姉ちゃん」

憂「それにしても、大学生はいいなぁ。毎日楽しそうだもん」

唯「私、楽しそう……かな?」

憂「うんっ」ニコッ

唯「……あはは。そっか……うん……」

憂「そういえば、お姉ちゃん。他の皆さんは?」

唯「……」

憂「あれ? お姉ちゃん?」

憂「ほら、軽音部の皆。一緒の大学でまだバンドしてるんでしょ?」

唯「うーん……活動休止、してるみたい」

憂「みたいって……」

唯「色々あったからね。……でも、一旦休止してるだけだよ」

唯「またいつか、一緒に演奏できるよ。絶対に」

憂「いつか? いつかって?」

唯「明日かも知れないし、何年も何十年も……もしかしたら、百年も後かもね」

唯「私、神様じゃないから分かんないや」

憂「百年後って、さすがに皆死んでるよー」クスクス

唯「分かんないよ? ほらさ、最近は医学の進歩が凄いとか、なんとか」

憂「私も詳しく知らないけど、そうらしいね」

唯「……みんな、長生きできれば良いなぁ」ポツリ

憂「お姉ちゃんもねっ」

唯「……憂も、ね」

憂「だけど、こんな場所で一人でギター弾くの、さみしくないの?」

唯「……さみしい、よ」

憂「あはは。やっぱり」

憂「それならお姉ちゃん。無理矢理でも良いから、皆誘ってまた演奏すれば良いのに。……私、また聴きたいよ。放課後ティータイムの演奏」

唯「うーん……でもね、私は気長に待ちたいなぁ」

唯「みんなに会うまでに沢山練習して、すごく上手くなって、みんなをびっくりさせたいや」フンス!

憂「お姉ちゃんらしいね」

唯「そっかなぁ?」

憂「うん。そうだよ」

唯「……えへへ。良かった」…ヘラッ


……
………

憂「……でね、梓ちゃんったらおかしいの。『憂ったら、どうしたのー』って」

憂「そんなの、こっちのセリフだよね。ねぇ、お姉ちゃん」

唯「……そーだね」

憂「……? お姉ちゃん、元気ないよ?」

唯「……私、元気だよ。大丈夫、大丈夫」


唯「憂こそ、元気出してよ。……お願いだから」

憂「え?」

憂「私は元気だよ?」キョトン

憂「お姉ちゃんと一緒に居られたらね、私は、何があったって元気でいられるの」

唯「……憂。今日こそちゃんと帰ってね。必ずだからね」

唯「ばいばい、憂」

憂「……」

憂「……またね」エヘヘ


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最終更新:2011年02月24日 23:55