またまた踵を返すと来た道を逆走する。
視界ジャックで相手の手の位置、指のかかり具合などを見ていつ撃つかなども見落とさないようにする。
警察官「アファアアアアア」

パンッ──

律「(よし!)」
小刻みに動いてる為か相手の狙いは定まってない。
しかし近づくほどどんど的は大きくなる為油断は出来ない。

律「(もうちょい…!)」

パンッ──

5発目も何とかわきに逸れてくれた。

律「もらったあああああっ!!!」

パンッ──

律「…………あれ?」

警察官「アッヒャハッヒャッハァ!!!!」

よろよろと崩れ落ちる体。

律「おっかしいな~……何か体に……力が入らないや」

ゴルフクラブが手から滑り落ち、赤い何かが私の胸辺りから沸き出ている。

律「ああ……血か……」

撃たれたんだな……私。
そう気付いた時にはもう意識は遠退いていた。

終了条件未達成



桜ヶ丘 秋山宅
PM19:30:00


終了条件1
──────────

澪「あ、あの…助けてもらってありがとうございました」

斎藤「別にいいさ。探し物のついでだしな。あんたは確か琴吹嬢の友達だろ? どこ行ったか知らないか? てかここどこ?」

澪「ムギの知り合いなんですか!?」

斎藤「おっ、おお……まあな。あそこの執事だよ俺は」

澪「家にいなかったんですか?」

斎藤「いなかったから探しに来てるんだろうが。全くどこほっつき歩いてんのやら。おてんばの世話はこれだから…」

澪「おてんば…?(ムギが?)」

斎藤「そんじゃあ悪いけど探しに行くから」

澪「わ、私も行きます!」

斎藤「……そいつは無理だ。二度は助けない主義なんでね。それに足手まといにしかならい」

澪「そんな…」

斎藤「澪さん、誰かに助けてもらおうなんて思わない方がいい。じゃあな」

背中を向けたままひらひらと手を振る。

斎藤「ちなみに、この家は出た方がいい。多分そいつらは時期に起き上がってくる。そうしたら次こそあんたは死ぬ」

澪「……」

斎藤「じゃあな」

バタンッ

閉められた扉が……まるで私を拒絶しているように思えた。

澪「ここは……どこだろう」

家を出た方がいいと言われただ闇雲に歩き回った。

律には……会えなかった。

他のみんなにも。

どれぐらい歩いただろうか……。

数時間かもしれないし……数十秒かもしれない。

そしてたどり着いた場所は……崖だった。

まるで街がくり貫かれたようにそこで終わっている。

そしてそこから下は……一面の赤い海。

澪「……」

私は静かに崖の縁に腰を下ろすと、それをぼんやりと眺めていた。

澪「綺麗だな……まるで夕陽が落ちたみたいに真っ赤だ……」

いい詞が浮かびそうだな……。


澪「あれ……?」


よく見ると遠くの方に何やら人影が見える。
それは群れをなして赤い海を渡っていた。

澪「!?」

その中に見知った顔があった。

澪「律……やっと……やっと見つけた」

あの黄色いカチューシャ……間違いなく律だ。

澪「おーい律。今そっちに行くからなー」

山彦を呼ぶように両手で口周りを塞ぎ大声でそう行った。

澪「よっと」

私はそのまま、赤い海に飛び降りた。

ウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ──────────



桜ヶ丘高校
PM20:00:00


終了条件1 追跡者を倒す
──────────

紬「どこにもいない……」

いるのは死んだような顔をしてる人達だけ。あれは多分人間じゃない…。

紬「ここはどこなの!!!? 私達の日常を返してよ!!!」

紬「はあ…はあ…」

避けんでも誰もいない。

唯ちゃんもりっちゃんも澪ちゃんも梓ちゃんもみんないなくなっちゃったの?

紬「後いるとしたらもう…ここしかない」

学校…もしかしたらみんなここに

バンッ───カァンッ───
紬「ひっ…」

校門に銃弾が当たり火花が散る。

追ってきた…!?

すぐさま正門から校庭に入り、職員室の窓から学校の中に入る。

紬「信じてたのに…!」

溢れそうになる涙を堪えながら職員室を出る。目指すのは勿論軽音部の部室。


校長「ゴルフ楽シミダナァ……」


紬「(校長先生も……)」

職員室の外を徘徊している校長先生がゴルフクラブを磨いている間に後ろを抜けていく。何故かはわからないがこの人達はかなり注意力が散漫だ。
なので足音を立てずゆっくりと歩けば大抵はバレずに済む。

紬「あれは保健の先生…………」

保健の先生「ハァーイ唯ちゃん内臓カエマショウネー」

人形になりやら詰め込んでるみたい……ここからじゃよく見えないわ。

紬「唯ちゃん……無事かしら」



何人もの人をやり過ごし、ようやく部室にたどり着いた。

紬「お願い…誰か居て」

祈る思いで扉を開ける───




紬「……ふふ、遅れてごめんね。すぐにお茶入れるから」


紬「唯ちゃん」


紬「みんな見つからないから心配したんだから」

紬「今日はね、ローズティーにしたの。とっても香りがいいのよ?」

紬「お菓子はね~……なんと飴玉!」


紬「ごめんね、急いでてこれしか持って来れなかったの」


紬「美味しい……? ねえ……唯ちゃん……」

コロン…………
口から転げ落ちる飴玉。

紬「返事してよ…………唯ちゃん………」

部室に血だらけで横たわっていた唯を抱きしめる。

強く……強く……。

紬「唯……ぢゃん゛……一緒にお菓子食べようよ……」

返事はない。

紬「唯ちゃん冷たいね……ほら、私の手……暖かいでしょう?」

唯の頬に両手を当てる紬。

紬「唯ちゃんが寒くならないように……ずっと……ずっと暖めてあげるから……」

何にも思えない。
もう声にもならない。
ただあの元気で明るかった唯ちゃんがこんなに冷たくなって横たわっているのを受け止められない。

寝てるんじゃないかな……?

なんて思ったりもする。

紬「唯ちゃん……」

頭を撫でると、可愛らしい唯ちゃんの顔が少しだけ微笑んだように見えた。

そんな筈……ないのに。

ドンッ──

ドンッ────

ドンッ──────

部室のドアが叩かれる。
多分あいつだろう。

紬「邪魔しないでよ……!」
私はそこら辺にあるものを武器として使うために掴み上げた。

1 キーボード
2 ドラムセット
3 トンちゃんの水槽
4 ケロちゃんの人形
5 ホワイトボード

※3

怒りに任せて掴みあげる。
入って来たらこれで……

「スイースイー」

紬「あ……」


唯『可愛いね~トンちゃ~ん』
「スイースイー」
梓『飼うからにはちゃんと面倒みてくださいね!』

紬「あ……あ……」

ガチャン……

紬「駄目……このままじゃみんなが大切にしてたトンちゃんが……」

ダァンッ───

紬「ヅッ────」

体に風穴が開く。
糸が切れたマリオネットみたいに膝から崩れ落ちた。

バシャアアアアア

水槽が派手にひっくり返りその勢いでトンちゃんも床に投げ出された。
トン「パタパタ……パタパタ……」
仰向けになったまま動けないでいるトンちゃんに最後の力を振り絞って手を伸ばす。

紬「はい……これで……だいじょうゲフッ……」

トン「…………」

そのままトンちゃんはどこを目指しているのか這って進み始めた。

紬「ごめんね……トンちゃん……ごめんね……みんな」



最後に私が見たのは……この軽音部であった色々な出来事だった。


終了条件未達成



桜ヶ丘 住宅街
PM19:45:45


終了条件1 屍人を10体以上倒す
──────────

梓「わあっ純!!! ぶつかるうううっ」

純「大丈夫大丈夫~」

キキィ~!!!ドンッ

梓「!?」

純「……でさあ~」

梓「今なんかはねたよね!?」

純「えっ? 気のせいじゃない?」

梓「気のせいじゃないよ!!!」

純「まあまあ。で、これからどうする?」

梓「いいからせめて前見て運転して!」

純「はいはい」

梓「とりあえずみんなを探さない?」

純「みんなって言うとー軽音部の?」

梓「うん」

ドンッ

純「……生きてるのかな」

梓「……わかんない」

純「私の親は駄目だったよ。私を見て化け物!化け物! って言いながら襲って来てさ。どっちが化け物だってーの」

ドドンッ

梓「もしかして……」

純「そ。殺したの。両親を…。けど…また起き上がって来てさ」

梓「……そっか」

ドンッ───

ドンッ

純「それで梓が心配になって来たってわけ」

ドンッ

梓「ありがとね、純」

ドンッ

純「気にしないでよ。友達じゃない」

梓「純『ドンッ』……」

純「……」

梓「純!!! 前見て運転してって言ったでしょ!! もし唯先輩達だったら…」

純「大丈夫大丈夫」

ドンッ──

純「ちゃんと確認してからはね飛ばしてるから」

梓「そういう問題じゃなーーーい!!!」


終了条件達成



桜ヶ丘 国道
PM21:00:00

中野梓

終了条件1 二人でこの世界を脱出する。
──────────

純「いないね~」

梓「うん……」

街をひたすら走ってみるもいるのはあの頭のおかしい人達ばかりだ。

純「まるで屍人だよね」

梓「屍人……?」

純「昔どっかの本で読んだことがあるんだよね~…タイトル何だったかな~。羽がどうのことのだったような。まあそれに書いてた屍人って奴らに似てるな~って」

梓「ふーん…」

純「あっ、ガソリン無くなりそう。ちょっとガソスタ寄るね」

梓「なんかもう手慣れてて怖い」

純「あ~お金ないや。ちょっとスタンドの中から拝借してくるよ」

梓「えっ、ちょっと! 純!」

一人でそそくさと行ってしまう。

全く頼りなるんだかならないんだか。

梓「不思議だな…」

こんな恐ろしい世界に来てるのに…自然と怖くなかった。
誰かが側に居てくれる、ただそれだけでこんなにも違うんだ…。

純もそう思ってくれてるのかな?

純「ヘイッお姉ちゃんガソリン何オクだい!? 今ならレギュラーもついてくるよ!!!」

梓「ふふ、混ぜちゃダメでしょ」

純も笑ってる。

だから私も笑うんだ。

こんな世界でも。

純「ハイオクの方がよく走るかなー?」

梓「わかんない。レギュラーでいいんじゃない?」

純「梓がそういうならレギュラーにしとくよ。お金もあんまりないしねー」


あの時…律先輩に酷いこと言ったのを今頃思い出した。

本当に大切なものと本当に大切なものを比べなきゃいけない場合どうするか……なんてそんなの決まってる。

どっちも守ろうとするだろう。
きっと律先輩も唯先輩もそうしてる筈だ。

だから私もそうしよう。

純「お待たせ~」

梓「うん」

純のこと、守ろう。
死ぬ間際まで……。

どれくらい純と走っただろう。
私達は一向に誰も見つけられず、そしてとうとう……。

見てしまった。


6
最終更新:2011年03月19日 03:02