──【ミオチャアン……】──
──【ププ……】──
──【ハチミツ……メープル……】──
律「見えるのは三人か……」
唯「もしかしてこの中に……」
律「ここからの視界ジャックじゃよくわからないな。中に入って確かめよう」
唯「うん…」
先に唯が行き、玄関から入ろうとするも、
律「さすがに玄関からはまずい、こっちだ」
澪の家を熟知していると言った感じで迂回して裏口に回る。
律「澪のお母さんはいっつもここ開けっ放しなんだよな」
そう言いノブを回してみると案の定と云った感じで勝手口のドアが開いた。
二人とも無言になり屈みながら秋山家に潜入した。
既に視界ジャックを行っており、リビングでテレビを見ているのはわかっていたからだ。
そこから素早く二階に上がり澪の部屋を目指す。
唯「(あのちっちゃい羽根の生えてたのは…………)」
律「唯、早く来い! 置いてくぞ」ボソッ
唯「う、うん」
ゆっくり音を立てないように階段を上がる。
律「…………」
二人とも、目は閉じない。ここまで来れば、いや、唯なら最初からわかっていたかもしれない。
視界ジャックをした時、生きている人間は緑色で表示される。自分は青、そして赤は…………。
律は静かに澪の部屋のドアを開けた。
澪「……」
律「澪、迎えに来たぞ」
唯「…………」
澪「リ…………ツ…………?」
律「そうだ、わたしだ。怖かったろう? もう大丈夫だからな」
律が優しく澪を抱き締める。
唯「……っ……うっ……」
唯はただただ溢れている涙を拭っていた。
澪「リツ……リツ……」
澪の目からは大量の血が流れている。それが律の制服に流れ紺色のブレザーが黒色に染まる。
唯「なんで……こんな……」
澪「リツ……リツ……」
律「わたしはここにいるからな……みお……みおっ」
律は声を震わしながら澪の名前を何回も呼んだ。
唯「りっちゃん……離れなきゃ……」
律「……いやだ」
唯「もうそれは澪ちゃんじゃないんだよ……りっちゃん、」
律「ヤダッ!!! やだやーだぁーっ! これは澪だもんっ! わたしの大事な友達で……幼なじみで……」
律も澪に負けないぐらいの涙を流している。違いは赤か透明かと言うだけだろう。
唯「わたしだって大切だよ! 澪ちゃんは軽音部の……大切な友達だよ……でも」
律「唯なんて澪を知ってから3年も経ってないだろっ!! わたしはずっとずっとずぅっと澪と一緒だったんだ……」
唯「…………りっちゃん」
1 澪ちゃんに抱きついてるりっちゃんをひっぺがし、叩く
2 そうだね……澪ちゃんだもんね……と同調する
3 しばらく二人にしてあげる
※1
抱きついているりっちゃんを力ずくで澪ちゃんから引き剥がす。
律「あっ……」
切なげな顔をしたままのりっちゃんをわたしは力いっぱい叩いた。
唯「ばかっ!」
パシンッ──
律「ッ……」
唯「生き残るって言ったじゃない……りっちゃん」
律「……」
唯「おいていかないでよ……」
律「唯……でも……ほら、澪のやつ襲って来ないぞ? もしかしたら……」
唯「それは多分まだ死んでから間もないからだよ…。半屍人なんだ…。でも……次にサイレンがなって血の海を渡ったら……もう姿も形も澪ちゃんじゃなくなる…」
唯「りっちゃんも見たでしょ?! あの化け物達を! ここで死んじゃったら……ああなるんだよ」
律「そんな……ことって……あ、ああ、ああああああああああああああ……」
頭にフラッシュバックする。サイレンの音に導かれ赤い海を渡っていた。
じゃあ……わたしは何で今生きてるんだ?
唯も……どうして?
澪が死んで屍人になったと言うならわたしも唯もそうなっていけなきゃならない。
頭が爆発しそうだ……。
唯「りっちゃん……」
ただ、言えることは……
律「ああ……」
ここではもう澪は戻って来ないってことだ……。
唯「攻撃して来ないのは本当にりっちゃんを思ってたからだと思うよ…。半屍人の行動はね…生前の生活がベースになってるから…」
律「そっか…。唯、澪を楽にしてやれる方法はないのか?」
唯「……屍人は死なないから…。何かを使えば浄化出来たんだけど…わからない」
律「そっか…。じゃあ今はそっとしておこう」
唯「うん…」
律「封印を解いて……必ず助け出してやるからな……澪。それまで待っててくれ…」
そうして二人が踵を返し、部屋を出ていこうとした時だった。
澪「リツ……リツウ……コッチニキテヨ……リツウウウウウウ」
エリザベスをネックから掴み上げ、振りかぶる。
唯「危ない!!!」
壁に当たりそうになったベースのエリザベスにわざと当たりに行く唯。
唯「つ……ぅ……」
いくら片手で持っていたとは言っても細く小さい唯の体には余りにもオーバーダメージだった。
律「唯!!! バカなにやってんだよ!!! 避けれたろ!!!」
唯「だって…あんな勢いで壁に当たっちゃったら……エリザベス……壊れちゃうから」
律「唯……バカ……バカっ…!」
唯もわかっていた。自分が今こうしてると言うことは、もしかしたら澪もまた同じように戻れるのではないか? と。
その時にお気に入りのベース、エリザベスがバラバラだったら…澪は悲しむだろうと。だから、飛び込んだ……自分を犠牲にしてでも守ったのだ。澪の気持ちを。
澪「リツゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥコッチニキテヨーーーーーー」
そんな気も知らず、今の澪はまたエリザベスを振りかぶり、、、
律「澪……ごめん」
わたしは引き金を……
1 引いた
2 引かなかった
※1
パァン───
澪「リ……ツ……」
一撃で心臓を貫いた銃弾は一時的にだが澪を安らかな眠りへと誘った。
律「…………」
目を伏せたまま口許を強張らせ静かに泣いている律。仕方がないとは言え友人を撃ってしまった悲しみは、これからずっとついて回るだろう……。
唯「りっちゃん……」
優しく律の肩を抱く唯。
律「……今のうちにエリザベス……隠しておこう」
唯「うん……」
唯はエリザベスを拾うと、ケースに入れクローゼットの中に収納した。
律「行こう……唯」
唯「うん……」
そのまま二人は澪の部屋を後にした。
階段を降り、勝手口から律が出ようとした時だった。
唯「……りっちゃん、ちょっと先行ってて」
律「……ん、これ」
律が唯にもう一つの武器、金属バットを差し出す。
律「カッターナイフじゃ威力が足りないだろ。それとも左はわたしがやろうか?」
なんだ……知ってたのか。
唯「ううん、大丈夫。一人で出来るよ」
律「……そっか。じゃあ車で待ってる」
去り際に手をひらひらと二、三回振ると律は車の方へと歩いて行った。
バットを握りしめる。
唯「せめて少しぐらいは……いい夢を見てね。あずにゃん」
背後から忍び寄り……唯は二人の頭を砕いた。
ガチャ……バタンッ
唯が車の中に入ると、律は無言のまま車を出した。
律「……無事で良かったよ」
唯「うん……」
律「……辛かったな」
唯「うん……」
靴を脱ぎ、助手席で体操座りをしている唯。膝に目元を押し当て、必死に堪えている。
律「泣いていいんだぞ……唯」
唯「……う゛ん゛」
それがきっかけになったのか、唯は大声で泣き始めた。
律は左手で唯の頭を持つと、黙って自分の膝まで持ってくる。
律「……」
唯「うぇ…ぐすっ…」
その泣き顔を見ることもせず、ただただ左手で唯を優しく撫でた。
車は唯が言った秋山宅近くの公園に向かって行く。
終了条件2 達成
律「唯、ついたぞ」
唯「うん、ここで間違いないよりっちゃん」
律「って言ってもただの公園だろ? ここにそんな大それた封印? なんてもんがあるのか?」
唯「まあまあ、見てなさい」
落ち着きを取り戻したのかいつも通りにあどけて見せる唯。
良かった……。
車を降りて公園の中に入る。昔よく遊んだっけな……澪と。
唯「これだよりっちゃん!」
ビシッと指をさしたのはどこの公園でも設置されている様な水飲み場だった。
律「おいおい……いくらなんでもこれは」
唯「まあまあ。物は試しだよりっちゃん。これを全開まで捻ってみて」
律「はあ…わかったよ」
それは捻ると上に噴き出す型の奴、わたし自身確かにこれを全力まで捻った覚えはないけど……。
律「こうか~」
唯「もっとだよりっちゃん!」
更に捻り込む。
律「これでどうだああっ」
唯「もっと!! もっとだよ!! 天まで届かせる勢いで!」
律「バカ言うなよ! そんなこと出来るわけ…」
キュ、と、とうとうそれに限界は訪れた。
次の瞬間光が立ち上ぼり、空を覆っている雲を退けた。
律「……」ポカーン
唯「だから言ったでしょ!? 本当だって」
律「うん……まあ……わたしはびしょ濡れだけどな……!」
唯「(残り…二つ)」キリッ
律「どや顔すなっ!」
律「は~もう、酷い目にあった。次の封印は唯が解くんだぞ!」
風邪をひかないようにそこら辺りの民家に干してあるタオルを拝借して体を拭く。
唯「わかってるよぉ~りっちゃん」ニヤニヤ
律「こっちみるなぁ!」
唯「ふふ、次はどこの封印を解除しに行く?」
律「う~ん残り二つか。ムギの家はここから遠いしな」
唯「……でももしかしたら」
律「ああ、生き残ってるかもしれない。澪はギリギリ間に合わなかったけど…ムギは助けられるかも…な」
唯「うん!」
1 喫茶店SDKの近くの封印を解く
2 ムギの家の近くの封印を解く
※1
律「近い方から行こう。車ならそう時間も変わらないだろうしな」
唯「うん、わかった。近代世界万歳だぬ!」カミッ
律「だぬ!」
唯「りっちゃん酷い~」
律「水浴びさせてくれたお礼だ!」
唯「もぅ」
そうやってほっぺたを膨らます唯が可愛くて、ついついからかってしまう。
せめて唯だけは……生き残って欲しい。
唯だけは……。
喫茶店SDK付近の川原──
唯「え~とね……」
律「また水難だけはご勘弁を……」
唯「多分変な石ころがあると思うんだ~。りっちゃんも探してみて~」
律「はあ…結局こうなるのか」
先に川の中に入ってじゃぶじゃぶしてる唯を見ながらわたしも靴を脱ぎ捨て靴下を脱ぎ、川の中に入る。
律「……」
太陽が届いてないせいか気温も秋後半ぐらいになっている為水も若干冷たい……。
って言うか……。
律「唯、これ大丈夫なのか? 赤いけど…」
唯「大丈夫だよ、多分」
律「多分って……」
ほんとに大丈夫かよ…。とにかく一刻も早くその石ころを探した方がいい…気がする。
律「唯~あったか~」
唯「ん~ない~」
律「そもそもどんな石ころなんだ?」
唯「炎の形をしたやつ……は違うか。なんかねー掴んでみてこれだっ! ってなるやつー」
律「なんじゃそりゃ」
唯「多分りっちゃんにもわかると思うよー」
律「わかるわけないだろ……」
唯「石ころさえもいとおしい……」
律「? なんか言ったか~?」
唯「う~うん、なんにも~」
律「こんなんで見つかるのかよ……」
ん……この感触……まさか……これはっ!?
1 封印の石ころだ! 間違いない!
2 多分封印の石ころ……かな?
3 封印の石ころのわけないよなぁ……
4 漫画タイムキララだ!
5 暇だから唯にちょっかいだそう
※4
律「まんがタイムキララだ! しかも最新号!」
律「気になってたんだよな~キャラット」
赤い色が染み付いていて読めない……。
律「もうっ!」ポイッ
早く探さないと……。
律「早く探さなイト……」
ムンズッ!
こ、この感触は!
1 間違いない! 封印の石ころだ!
2 封印の石ころだったらいいなぁ……
3 封印の石ころなんて存在しないだろ……
4 喉が乾いたな……ちょっとだけなら……
5 暇だから唯にちょっかいだそう
※1
律「このつるつるツベツベ感……そして手に馴染むフィット感……! まるでこれを持って生まれて来たんじゃないかと見間違ごうような……!」
律「これだああああああっ!!!」
それを天高く掴み上げた瞬間、光の矢が空へと放たれ、天空の霧を晴らしたもう。
唯「見つけたんだりっちゃん!」
律「おぅよ! 残りは後一つだな!」
唯「うん!(あと…一つ)」
ウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ──────────
律「あの時聞いたサイレンの音……」
唯「12時になったんだ……(澪ちゃん…)」
律「唯、急ごう」
唯「うん」
最終更新:2011年03月19日 03:11