唯「りっちゃん大丈夫?落ち着いた?」ナデナデ

律「うん……にゃんとか……ましになってきた……」

りっちゃんのその言葉を聞いて、私は一安心した。

唯「もう大丈夫だからね~……私、なんかさっきから『大丈夫』しか言ってないね」クスクス

律「あはは……ほんとだな……ごめんな唯……あ、ありがと///」

そんなことを言いながら、二人で笑いあう。

でも、私はりっちゃんのさらさらの髪を撫でながら、別のことを考えていた。

私に抱きついた拍子にカチューシャが外れ、前髪がおりたりっちゃんは、

乱れた服、火照った体、真っ赤な顔、弱々しい声、その他いろんな要素が相まって、

私が今まで見たどんなものよりも綺麗で、可愛くて、素敵で、守ってあげたくて……



そして、えっちかった。


りっちゃんの顔を直視できなくなった私は、顔を赤らめながら視線を下に落とす。

高鳴る鼓動を鎮めるため別のことを考えようとした私の頭は、
今まで気づかなかったものにも気づいてしまった。

唯「あれ……?ここの床も何だかすごく濡れてる……あっ!私の足も!なんで!?」

律「!!!」ビクッ

腕の中でりっちゃんの細い身体がまたはねる。

でも今度のはさっきのとは違い、何かに怯えるような……そんなはね方だった。

唯「あれ~?さっきまでは濡れてなかったのに……おかしいなぁ」

律「あ……あははは……私またヨダレ垂らしちゃったかな……汗もかいちゃってるし……」

唯「え~?でもりっちゃん、口の周りには全然ついてないよ?汗だって、私の手や服は濡れてないし……」

私はそう言いながら自分の身体をぺたぺた触っていた。

ああ、神様仏様お父さんお母さん、どうして唯はこんなにおバカなんでしょう。

みんなは天然なんて言って笑ってくれるけど、裏を返せば空気が読めないってこと。

「一つのことに集中すると周りが見えない」って、褒めてるようで褒めてないようで……

うん、やっぱりこの性格はどちらかというと短所なのかも。

この時も私は、床と私を濡らす液体の正体を考えるあまり、
さっきまであれだけ見ていたりっちゃんのことは、何一つ見えなくなっていた。

いつも周りに気を配るりっちゃんなら、きっと、いや間違いなく。

すぐに相手の顔色が赤から青に変わってるのに気づいたんだろうな。

ううん、憂も和ちゃんも澪ちゃんもムギちゃんも、それにあずにゃんも。

誰だってそんなことにはすぐに気がついたに違いない。

わからないのは私だけ。目の前の相手のことが目に入らないなんて、本当にどうしようもない。

そして何より……部室に来てからのりっちゃんの反応、
瓶から漂う甘い香り、身体が熱くなるあの不思議な感覚……

これだけのヒントを与えられて、問題にも真剣に取り組んで、
それでも結論に辿り着かない自分の鈍さに嫌気がさす。

まぁこんなに色々考えられるのは、いつも取り返しがつかなくなった後なわけで。

気づいたときには全部後の祭りなわけで。

結局私はいつも通り、天然の平沢唯のまま突っ走ってしまった。

唯「う~ん、一体これは何なんだろう……必ず正体を突き止めてみせる!隣のばっちゃんの名にかけて!」

律「いや……唯……これは……その……」ダラダラ

唯「いや言うなりっちゃん隊員!この名探偵に任せろ!」

どう考えても「迷」探偵、眠る前の小五郎です。本当にありがとうございました。

唯「状況を整理すると……ガイシャは床、私の足、あとりっちゃんの足と……スカート?」

律「あ、あのさ……唯……えっとその……」ダラダラ

唯「一番濡れてるのは……うわっ!りっちゃんの足、びちょびちょだよ!?ってことは……」

律「………………」

唯「犯人……は……?」

律「……さすが名探偵。犯人はあたしだよ」

唯「……えっと……犯行に使われた……この……液体状の凶器は……」ダラダラ

律「わかってるんだろ名探偵さん?あたしは犯人がペラペラ喋り出す推理モノは苦手でね」


唯「えーっと……私の推理では……これは……りっちゃん犯人の……お股の……」

律「ああそうだよ名探偵さん。これはあたしのお股から出たエッチなお汁だよ。何かお茶飲んだ後くらいから急に身体が熱くなってきてさ。
頭はボーッとするし下腹部はジンジンするし、身体が何かに触れる度電気が走るみたいだし。今までこんなことなかったよ。そりゃあたしもお年頃だし、夜に布団の中で自分を慰めることもあるよ。
でもやっぱりちょっと怖いし、そんなに深入りしたりはしなかったよ。おっと今のはギャグじゃないぞ?あたしはクリ派だしな。ハッハッハッ。
まぁあたしの夜の事情は置いといて、もう動くのも辛くてどうしようもなくてさ、早く放課後にゃんにゃん時間にしゃれ込みたかったわけ。でもお前は私のこと心配して一人にしてくれないし。
あの時ばかりは、優しさは時に人を傷つけるナイフになるんだと思ったね。でもまぁあたしがお前の立場だったとしたらお前と同じことしただろうな。
だって辛そうな親友を置いて『じゃあ私ドロンするね』なんて無理だもんな。だから別に唯のこと怒ってるわけじゃないんだよ。でもお前は何故かあたしの近くに寄ってくるし、身体に触ってくるし。

まぁ普段からあたしらスキンシップも多めだし、今更どうこう言うこともないんだけどな。でも普段とは状況が違うわけ。今回の場合。
普段なら意識しないお前の手の温かさとか、おでこの感触とか、シャンプーみたいな赤ちゃんみたいな甘い香りとか。その全てがあたしを狂わす禁断の果実なわけ。
もうあたしは手汗ベタベタ脇汗ダラダラ下着ビチャビチャなわけ。風呂も一緒に入ったことあるし隣で寝たこともある大事な友達のせいで。でもあたしは自己嫌悪なんてしてる暇はないわけ。
もうどうやってこの天使の顔した悪魔から逃れようか、どうやってこの漲る熱情をおさめようか、それだけなわけ。でも頭は回らないし、いいアイディアは浮かばないし、お前は耳元でエンジェルボイスだしで何も言えねぇわけ。
そうこうしてるうちにお前があたしの腕を掴んでさ。もうヤバかったね。初めて胸にもアソコにも触らずにイッたね。正に昇天、死ぬかと思ったね。そっから何かあんまり覚えてないの。
気づいたらソファーに座っててさ。でも一回イッたら結構落ち着いてね。色々考えてたの。主にエロいこと。そしたら来たね。油断してるとこに問答無用の胴回し回転蹴り。

あたしのおツユがね、ラブジュースがね、さっきあたしを天国に送った友人の指にライドオンしてるじゃない。たまげたね。思考回路はショート完了。
もう何言ったか覚えてないね。たぶんヨダレか鼻水か、股から出る以外の体液だって言ったんだろうね。そしたら来たよ。止めの握撃。四肢全部と顔面に。
この天然お嬢ちゃん匂い嗅いじゃったよ。あたしの股汁の。何やってんの?ねぇアナタ何やってんの?あたし何て言った?いや覚えてないけど、たぶんヨダレだっつったんだよね?
その時点で普通匂い嗅がないよね?例えクレオパトラだろうがマリリンモンローだろうが口から出て時間たったヨダレは臭いよそりゃ。
何で匂い嗅いでんの?もう何も考えられない。思わず立ち上がってお前の元へ駆け寄ったよ。足踏み出した瞬間来たよ電流。
でもまだピカチュウの電気ショック。まだ慌てる時間じゃない。ところが目の前には腕を広げる親友。キタ。優しさナイフアゲイン。まるでお母さんみたいな優しさに包まれた。

イッた。もうイッた。一瞬で全人生分イッた。ジバコイルのかみなりなんてレベルじゃない。脳味噌がぐるんぐるん回ってドロドロにとけまくり。
身体もドロドロにとけた気がする。りっちゃんのぼうぎょりょくがぐーんとあがった!なんで溶けたら堅くなるのかなーなんて昔は疑問だったなぁ。まぁ今はそれはいい。もう本当に何もわからなくてさ。
刃牙が飛騨に籠もって達した人間を越えた境地。あたしは唯に抱きしめられてその境地に達したね。もう一瞬が永遠。何時間もイキ続けてるような、それを一瞬で体験したような、そんな密度。
そうこうしてるうちにキタ。第二波。もうイキまくって気狂いかけてるとこに。ゆさぶられただけなんだけどね。またイッたね。イキまくったね。キ〇ガイだね。イキキチ律平だね。
もう何も考えてなかったね。たぶんあの瞬間あたしは世界で一番なにも考えてない人だったね。脊髄反射で唯が何か言ってるのに返事してて、でもやっぱ急に上がったら急に落ちるもんでね。
結構すぐに落ち着いてきたの。撫でられてる頭は未だ性感帯モードだったけどね。唯の優しい笑顔に救われてね。やっぱ優しさはナイフなんかじゃないね。

でも冷静になって気づいた。辺り一面愛液地獄。もう足はびちょびちょだしパンツ通り越してスカートも濡れてる。ヤバいね潮吹いたんだねあたし。カイオーガのメガネ潮吹きだね。ハピも二確だね。
幸い唯はまだ気づいてないね。まだ慌てる時間じゃないね。はい唯ちゃん気づいたね。どうやら唯ちゃんの御御足まで濡れ鼠だったみたいだね。
お姉さん気づかなかったね。もっと広い視野を持つ選手にならないと代表には呼ばれないよね。サムライブルーの縁の下の力持ち、阿部や長谷部のような選手になりたいよね。
でも唯ちゃんまだそれがりっちゃん印のマンゴージュースだって気づいてないよね。あたしまだ大丈夫だよね。でも唯ちゃん探偵ごっこ始めちゃったね。いつものあたしらのノリだね。止まらないねこの暴走リニアモーターカー。
おっと唯ちゃんの顔色変わったね。あたしの顔色はさっきからノンウォッシュの生デニム並にインディゴブルーだけどね。これから毎日履き倒して自分好みに育てていきたいね。
ついに気づいちゃったねあなたの足を優しく包むお汁の正体。そうだねあたしのLCLだね。そんなこんなで今に至るね。
犯人饒舌すぎるね。あたしの苦手なタイプだね。でもたまにはいいよねそういうのも。唯ちゃんもそう思うでしょ?」

唯「うん!そうだね!」


そこからのことはよく覚えてない。気づいたら私もりっちゃんも裸で、部室の床に寝転がってた。

りっちゃんは気絶してるみたい。一瞬死んじゃってるのかと思ったけど、息はしてた。よかった。

りっちゃんの身体には、私が付けたのであろう歪な菱形の愛の印が至る所に付いていた。

それは欲望の象徴で、首筋なんかに付けられたのを絆創膏で隠したりするのがお約束なんだろうけど、
月明かりに照らされたりっちゃんを彩る赤いそれは不思議にすごく美しかった。

あれから何時間たったんだろう。下校時刻はとうに過ぎている。

きっと携帯には心配性の妹からの着信がいっぱいなんだろうな。

澪ちゃんたちにも連絡がいってるかも。みんな心配してるかな。

でもたまにはいいよね。残り少ない華の女子高生、夜遊びの一つもやっとかないと。

それにりっちゃんと一緒にいたって言えば大丈夫だろう。憂もりっちゃんのことは大好きだし。

そろそろりっちゃんを起こそうか。びしょびしょのまま裸で寝てると風邪ひいちゃう。

唯「おーいりっちゃーん。起きてよー風邪ひいちゃうよー」

律「……んんっ!///もうひゃめてゆいぃ……しんじゃうよぉ……」

……どうやら私にはそっち方面の才能があるみたい。

いくらエッチな薬を飲んでるからって、ここまではならない……よね?

私は素面なわけだし、それで何時間もりっちゃんをいぢめちゃったわけだし。

唯「うん、もう少しこのままでもいいかな?くっついてればあったかあったかだしね」

律「うぅ~んゆいぃ~……やさしくしてよぉ~……」

可愛い寝顔だ。寝言は(私のせいで)危険極まりないけど。

スヤスヤ眠るジュリエットの唇に、今日何回目になるかわからない口付けを落とす。

お姫様が目覚めることはない。でもそれもいいよね。永遠の眠りってわけじゃないし。

あれ?キスするのはお姫様で、目覚めるのが王子様だっけ?ていうかそれはロミジュリじゃない?

唯「うぅ~ん、どうだったっけな?記憶が定かじゃありませんなぁ……」

まぁいいや!難しいことは明日の私に任せよう。

余命僅かな今日の私は、りっちゃんの体温を楽しむことに専念しますか!

唯「よーっし、もう寝ちゃお寝ちゃお寝ちゃお~!」

律「そうねひゃお~……ふが」

上手に合いの手が入ったところで、平沢唯の激動の一日もこれにておしまい。明日もいいことあるといいなぁ……

それではみなさんまたお会いしましょう!おやすみなさーい!

(終)



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最終更新:2011年03月19日 22:31