ガチャ

律「おーっす……て、梓はまだ来てないか」

律「澪たちも遅れてくるしなぁ。来たら来たで勉強だし……」

律「はあ……勉強したくねえ……でもしなきゃ、私だけ……」

律「……。みんなが来るまでドラム叩いてよっかな」ゴソ

律「あれ? うそっ」ゴソゴソ

律「くそう、私としたことが。勉強道具より大切なスティックを忘れるとは」

律「……倉庫ン中に古いのがあった記憶が……探してみるか」テクテク ガチャ

律「んー……前に片付けてから、また色々物が増えてるな……」

律「ったく、誰だよこんなに物を増やすのは……って私もか」

律「うーん……上の棚にないかな?」ゴソゴソ

律「おっ! 奥のほうにそれらしき物体がっ」

律「……くそっ、澪なら簡単に手が届くのに」ググッ

律「くっ……もう、ちょい……」グググッ ……グラッ

コンコンガチャ


和「お邪魔しま……あら? 誰もいないのかしら」

ドンガラガッシャン!!

和「?!」

和「何、今の音。倉庫から?」タタタッ

和「あっ、律!」

律「……」

和「ちょっと、大丈夫?」

律「……」

和「と、とにかく律の上から物をどけないと……っ」ガタンガタン

律「……うぅ、」ヨレ…

ポロッ カツン

和「律?気が付いた? っしょ……、起き上がれる?」

律「んん、和?……」ハラリ

和「腕に掴まって。ゆっくりでいいからね」

パキッ

和「? 何か踏んで……あっ」

律「ん?」

和「律、ごめん、カチューシャ壊しちゃった」

律「!」

和「ごめんね、買って返すから。それより痛いところない?大丈夫?」

律「……」

和「律?」

律「……っ」フルフル

和「どうしたの? どこか痛い?」

律「……ふ、」フルフルフルフル

和「ちょっと、律、震えて……」

律「ふ、ふえぇぇ……」ポロポロ

和「えっ? 泣い……えっ、ちょ」オロオロ


ガチャッ

澪「律ー、遅くなってごめ……。あれ、いないのか?」

澪「ん、倉庫が開いて……泣き声?」タタタッ バッ

澪「律っ、和も! ふたりともどうした?!」

和「あっ、澪! ねえ律の様子が」

律「! みおちゃんっ」ダッ

ダキッ

澪「?! り、律?」

律「みおちゃん、みおちゃん」フルフル

和(みおちゃん?)

澪「律、カチューシャどうした?」

和「ごめん、床に落ちたところを私が踏んで壊しちゃって」

律「……」フルフル

澪「……そっか」

澪「だいじょぶ、大丈夫だよ、りっちゃん」ナデナデ

和「えっ」

律「ふぇぇ……」グスグス

澪「怖くないからね、大丈夫、大丈夫」ナデナデ

律「……」グスン

和「……」

澪「……落ち着いた?」ナデナデ

律「……」コクリ

澪「りっちゃん、椅子に座ろっか」

律「……」ギュッ

澪「まだ離れるの怖い? じゃ隣に座ってあげるから」

和「ちょっと澪、律? どういう……」

律「……っ」ビクッ

澪「りっちゃん大丈夫。のどかちゃんだよ」

律「……」チラッ

和「……」

澪「ほら、友達ののどかちゃん。ね?」

律「……」コクリ

和「……澪、」

澪「ごめん和、落ち着いてから説明する」

和「……わかったわ」


ーーーーー


和「……別人格?」

澪「うん。中学生の時に律のお母さんから初めて聞いたんだけど」

澪「律、私と知り合う前は、私以上の人見知り……いや、」

澪「家族以外の人と会うのも怖がるくらいだったらしくて」

和「……」

澪「それで、知人の紹介で診てもらったカウンセラーから」

澪「催眠療法っていうの?そういうのを受けて、」

澪「一種の暗示なのかな。簡単に言えば、前髪を上げれば性格が変わるみたいな」

和「……こう言っちゃアレだけど、胡散臭い話ね」

澪「私も最初に聞いたときはそう思った。でも、実際に……」チラッ

律「……みおちゃ、」ギュッ

澪「大丈夫だよ、りっちゃん」ナデナデ

和「……この律は、治療以前の人格ってこと?」

澪「多分。私が知り合った時はもう、和も知ってるあの律だったから」

和「そうなんだ」

澪「中学に入る頃には、前髪を下ろしても平気なくらいだったらしいんだけど」

澪「中3の時に一度、今と同じようになっちゃって」

和「その時は、何か原因があったの?」

澪「はっきりとはしなかったみたいだけど、強いストレスが原因なんじゃないかって」

和「ストレス?」

澪「症状が出たの、高校受験の時期だったんだ」

和「……あぁ。じゃあ今回は、」

澪「うん……。もしかしたら、大学受験のせいかもしれない」

律「……」ギュウ

澪「……ん、」ナデナデ

澪「みんなが来る前になんとかしないと、急に人数増えたら律が耐えらんないかも」

和「前髪を上げておけるものがあればいいのよね。髪留め持ってないの?」

澪「それが、今日に限って忘れちゃって……他になにかあれば……」

モーユイチャンッタラ エーワタシノセイー? アハハ

律「!」ビクッ

和「あの声は、ムギと唯ね」

澪「どうしよう……。あっ! 和、ごめん借りる」ヒョイ

和「えっ? あっ、ちょ、」

澪「りっちゃん、こっち向いて? よ、っと」スチャッ スッ

律「!? ……ぁ、」

ガチャッ

唯「やっほー!」

紬「おまたせー」

律「……」

律「……おー、待ったぞー」ニカッ

澪(ほっ、ぎりぎりセーフ……。ん? 和、なんで長椅子の裏に隠れて……)

和「ちょっと澪、眼鏡返して!」ヒソヒソ

澪「ゴメン、他に方法見つかったらすぐ返すから」ヒソヒソ

和「じゃなくて、まずいのよ! 唯がっ」ヒソヒソ

澪「え、唯が何?」ヒソヒソ

唯「あれー? りっちゃん、なんで頭に眼鏡乗っけてるの?」

和「!」

律「ああ、ちょっとカチューシャが壊れちゃって、その代わりに」

唯「ていうかそれ和ちゃんの眼鏡?! なんでりっちゃんが?」

律「あーそれは、えーっと」

唯「和ちゃん、ここにいるの?」キョロキョロ

和「……」

唯「あっ! 和ちゃんみっけ!」バッ

和「!!」ビクッ

唯「和ちゃん、眼鏡、外してる……」

和「……」

唯「……」ジーッ

律「唯?」

澪「和? どうした?」

唯「……」フルフル

和「……落ち着きなさい、唯」

唯「のどか、ちゃん……」フルフルフルフル

和「お願い、唯、落ち着いて」タラタラ

紬「唯ちゃん?震えてるけど大丈夫?」

澪「和?異様に汗かいてるけど、どうした?」

唯「……がま……できな……」フルフルフルフル

和「っ! 待ちなさい唯! 律、眼鏡返しーー」

唯「のどかちゃんっ!!」ガバッ

和「きゃっ」バターン

律澪紬「!?」

律「唯が」

澪「和を」

紬「押し倒した……?!」

唯「のどかちゃん……ちゅーしよう!ちゅー!」ググググ

和「止しなさいっ!唯っ、ちょ、離れて……っ」ググググ

唯「一回だけでいいから、一回だけでいいから」ハァハァ

律「どうしてこうなった」

澪「なにがなんだか」

紬「唯ちゃんったら……」アラアラ

和「ムギ!指の間から見てないで助けて!」ググググ

唯「ね?のどかちゃん、一回だけでいいからっ」ハァハァ

和「澪!お願い、眼鏡……っ」ググググ

澪「……っ、律ゴメン!」メガネヒョイ

律「ちょっ?! ……ぁ……」ハラリ

律「……」ヘタリ

澪「ほら和、眼鏡!」

和「澪、ありがーー」

唯「ダメーッ!」バシッ

澪和紬「あっ」

ヒューーーーーー……

ガチャ

梓「遅くなりま……えっ?! わっ」メガネキャッチ

澪「梓ナイス!!」

梓「えっ? な、何?眼鏡?」

唯「のどかちゃん、お願い、一回だけ、ね?一回だけ!」ハァハァ

和「やめなさい!唯!やめて、お願い!」ググググ

梓(えええ唯先輩が和先輩を襲ってる?!)

澪「梓! その眼鏡を早く和に!」

梓「えっ、えっ?」アセアセ

和「梓ちゃん!」ググググ

梓「あっ、はい!」タタタッ

唯「シャーッ!!」

梓「!?」ビクッ

梓(威嚇された!唯先輩に威嚇された!!)

澪「くっ、私が唯を抑えるから、梓はその間にーー」

ガシッ

澪「?!」

律「ふえぇぇっ、みおちゃっ」フルフル

紬「!!」アラアラマアマア

律「みおちゃん、みおちゃん」フルフルフルフル

澪(しまった、律がいた!これじゃ身動きが……)

唯「のどかちゃん、一回だけ、一回だけ」ハァハァ

和「唯っ、お願いだから冷静になって!」ググググ

律「みおちゃ……こわい……」フルフル

澪(うっ……いま律を引き剥がすわけには……)

梓「わ、私はどうすれば」オロオロ

和「! 梓ちゃん、憂に電話して! 唯がレベルKだって!」ググググ

梓(レベルKって何?!)

梓「え、えっと、とにかく憂を呼べばいいんですね」ピポパ

プルル プルル……

憂『もしもし、梓ちゃん?』

梓「あっ憂! あのね、今部室なんだけど」

憂『どうしたの?そんなに慌てて』

梓「えっと私もよく分からないんだけど、唯先輩がレベルKだって和先輩が」

憂『!! すぐ行く!』プチッ ツーッツーッ

……チャーン オネーーーチャーーーン

憂「お姉ちゃん!!!」バタン!

梓「早ッ!」


2
最終更新:2011年03月24日 23:56