【第3部】


時刻は20時

純「夢?」

純「………そっか…よかった…」

なんだかすごくつらい夢を見ていた気がする。
いや、気がするんじゃなくて…見てたんだ。
辛い夢を。

純「あんな変な終わり方をしたっていうことは…夢か……はぁ~!良かった!」


しっかり思いだせる。
目覚める直前までの夢は記憶していないけど。
何があったのか。


何を教えてもらったのか。


純「…………憂」


もう私ならできる気がする。



夢が…私に、大切なことを教えてくれたから。


純「たかが夢だけど……夢の中の唯先輩、なんか怖かったなぁ…」

純「そんな先輩だったけど…」



気づかせてくれた。大切なことを。



時刻は…20時。



純「まだ明日なら…間に合う。絶対。」



『 「遅れ」は悪 』


純「もう迷わないよ…憂。」

純「憂、待っててね…。明日…必ず、伝えに行くから。」



もうこれ以上時間は無いね。

もうこれ以上待てないね。

もうこれ以上迷えないね。



純「待っててね…憂!」


  • 別視点-(時間巻き戻し)

【使われていない教室】

純「い、いくら先輩でも…それはひどくありませんか!?」

唯「アハハ」


唯が、純の背後に回り込む

純「って!え!?」

唯「(ごめんね…純ちゃん…)」

バキッ

純「」

純「」

唯「あっ、あずにゃん。そんなところに隠れてたんだ。」

梓「はい。って…唯先輩、これやりすぎじゃ…」

唯「うぅ…ごめんね。加減できなくて…」

梓「(ぶ、不器用…)」

梓「それじゃあ、二人で運びましょうか。」

唯「純ちゃんのお家は知ってるよね?」

梓「はい、大丈夫です。家の鍵も、純の鞄に入ってますし。目を覚まさないうちに、ちゃっちゃと布団に寝かせちゃいましょう。」

唯「二人で持てるかな…」

梓「あはは、なんとか…」


【純の家】

梓「よいしょっと…服変えるの、結構大変…」

唯「なんか、純ちゃんおきちゃいそうで怖いねぇ」

梓「ですから、早く済ませちゃいましょう」



梓「よしっ。これで完成」

唯「あはは、純ちゃん、気持ち良さそうに寝てるね」

梓「唯先輩の加減のせいで純の首になにか大きな負担でもかかってたらどうするんですか…」

唯「あはは、ごめんごめーん」

梓「それじゃあ、出ましょうか」

ガチャッ



【純の家の外】

梓「ふぅ…これで一段落ですね」

梓「唯先輩、私たちは何も知らなかったんですからね?」

梓「今日のことは何も知らない。何もなかったんですからね?」

梓「すべて純の夢ですから。ちゃんと演技してくださいね?」

唯「うん!大丈夫、分かってるよ!」

梓「明日、『憂にしっかり話す』んですからね?」

唯「うん、頑張る!」

梓「はい!それじゃあ、私家こっちですので、それじゃあ、さようなら」

唯「うん!あずにゃんまたね~」



  • 純視点-

【次の日】


純「ふぁ~」

まだ眠い…

時間は…まだ少しあるし…二度寝を…

純「ってぇ!今日は大事な日なんだから、シャキッとしなくちゃ!」


そう、今日は…

今日は、憂に、気持ちをちゃんと伝える。
そう決めた。
時間は無い。

今すぐ動き出さなくちゃ!





純母「え?まだ6時よ・・・?もう起きたの?」

純「うん!」



【学校】【授業中】

純「って…憂に告白ったって…どこでしたらいいんだろう…人目のつかないところとか…」

先生「おい鈴木、なにブツブツ言ってるんだ?」

純「あ、すみません」

梓「………」

【放課後】

ついに…ついに放課後になってしまった…。

結局どこに呼び出すかも決まってないし…

純「(はぁ…もう私何やってんだろ…)」


あんな夢の内容のようなことにはなりたくない。

今すぐ動き出すって決めた。

後戻りはできない。したくない。

純「(今日じゃなきゃだめだっ!)」

純「だめだっ…落ちつこう。深呼吸して…すぅ………ヨッシャ!!」

梓「あのさ…純、ちょっといい?」

純「ん?何、梓」

梓「あのさ…純と憂のこと、協力するって、言ったでしょ…?」

梓「唯先輩がね……」



梓「憂のことが……好きみたいで…」

純「………え?」

梓「今度、告白するつもりだって…嬉しそうに昨日言ってて…」


純「………何?何言ってんの?」




正夢?


純「………」

梓「………ごめん…こんな、私役に立てなくて…」

梓「唯先輩に…話に行ったほうがいいかもね…。今は、屋上にいるみたいだけど…」

純「………」

純「………そんなこと、言われなくてもわかってるよ」


梓「じゅ、純!?」

梓「(行っちゃった…。)」

梓「(……………頑張って、純)」


…なんだか、夢で見たような光景だ…

憂が…とられる…


なんか夢とは違うような同じような





なんでもいいや、そんなこと




今私にするべきことを果たせば、それで。






憂…!


憂…!


憂…!


ガチャン!
純「唯先輩!!!!!!!!」

来たんだ、私は屋上に。

私のためにも。

未来のためにも。

唯「ぇ?純ちゃん?」

唯先輩は…屋上のコンクリートの中でひそひそと咲いていたたんぽぽを見ていたようだった

純「唯先輩…その…」

唯「ん?どうしたの?」

純「私…」

私…
私…

もう迷わず進める。

憂が、私が憂のことを好きになっていること知ったら、私が嫌われる?

そんなの分からない。
というより
もうそんなことはどうでもいいよ

純「私…憂のことが、好きなんですよ!!!!!!!」

純「すごく押しつけがましい感じもしますけど…!」

純「唯先輩が、憂のことが好きなんだって知りました!」

唯「え?え?」

純「私…私、唯先輩には負けたくなくて!」

純「こんなこと唯先輩に行ったところで、唯先輩が身を引いてくれるとは思いませんけど…」

純「すごくみっともないですけど…」

唯「じゅ、純ちゃん…」

純「でも、これだけは言えるんです!」

純「唯先輩よりも…」

純「唯先輩よりも、私のほうが、憂のことをずっとずっと好きなんです!」

純「憂のこと、大好きなんです!!」

叫んだ。無意味なのは分かってたけど。

もう…遅れるのは嫌だったから。

純「そうですよ!私はレズですよ!気持ち悪いかもしれません!」

純「でも、憂ことが好きなんです!抑えられないんですよ!どうし…………………え?」


温かい。

体が。

なんだろう。

なぜだろう。

唯先輩がこんなにも近くにいる。



ギュウゥ・・・・
唯「///」

純「………って!唯先輩、何抱きしめてるんですか!私は真剣に…!」

唯「純ちゃん、ものすごく嬉しいよ…」

純「え?」

唯「純ちゃん…嬉しすぎて、なんか言葉が出ないや…えへへ…//」


ゆっくりと…目の前にいた唯先輩の相貌が変化する。



後ろ髪を束ねる唯先輩。



純「なっ…!なんでっ!なんで!?」

憂「えへへ…純ちゃん、ありがとっ///」
ギュゥゥゥウウ・・・

体いっぱいで、先ほどよりもギュッと抱きしめてくる唯先輩…じゃなく、憂。

純「え?ぁ、え!な、なんで!?////」

憂は純を抱きしめたまま、顔がとても近い距離で、上目づかいで話してくる。

憂「そのね…実は、お姉ちゃんから、『憂は私の変装をして、屋上に行ってみて!きっといいことがあるから』って言われて…それで…」

純「(憂の顔…こんなに、近い/////)」

純「そ、そっか…私、すっごい恥ずかしいこと言ってたよね…//」

憂「ううん、そんなことないよ。すっごく、嬉しかった…」

純「そ、そっか///」

憂「純ちゃん…あのね…私…」

純「(憂かわいすぎるよぉ…//)」

憂の顔は、徐々に火照りを増す。みるみる赤くなる。

二人の抱きしめ合った体温は、暑いくらいに上昇されていた。

憂「純ちゃん…私もそのッ…」

憂「純ちゃんのこと…好きだから…っ」

純「う、嘘……」

純「でっ、でも、女の子が女の子を好きになるっておかしいと思わないの?」

憂「ううん。じゃあなんで、純ちゃんは私のこと好きになってくれたの?」

純「うっ、それは…」

憂のことが好きだから、ただそれだけだ。
女の子同士だなんて関係ない。

憂「ふふっ、同じだよ。純ちゃんは私が好き。私は純ちゃんが好き…何もおかしくないよ。何も変なことじゃないよ…!」

純「う、憂ぃ…」グスッ

憂「って、純ちゃん!」

少し涙ぐむ純。その涙をハンカチで拭う憂。

憂「ん…純ちゃん、私も…大好きだよっ///」

抱きしめあう体。

温かい。

暑いくらいに。

あぁ…こんなに暖かいなら、もっと早く告白すればよかった…

純「…うんっ///私もだよ、憂…///」

お互いの顔は赤く、

二人とも幸せそうで、

笑顔で。


そんな中、二人は互いに唇を合わせた。


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最終更新:2011年03月25日 19:48