憂「お姉ちゃんったら『アイス、アイス―』って言いながらゴロゴロ転がって」

憂「それがすっごくかわいいの!」

梓「家でもいつもそんな感じなの?」

憂「そうだよ、そんなお姉ちゃんを見てると癒されるんだあ」

梓「唯先輩しっかりしてくださいよ……」

憂「でもね、最近はなんだか張り切っててね」

梓「あっ、そろそろ掃除時間だよ」

梓「憂は今週当番でしょ?」

憂「うん、そうだよ」

梓「大変だね、じゃあ私、部活に行くね」

憂「あっ ちょっと待って!」

梓「どうしたの?」

憂「えーっと、その、もうちょっと話していかない?」

梓「いいの? もうみんな準備始めてるけど」

憂「そうなんだけど……」

純「おーい、憂! 机運ぶの手伝ってよー」

憂「ごめんね! すぐやるよ」

梓「何か用事でもあるの?」

憂「そういうわけじゃ……」

ヴーヴー(携帯)

憂「あっ、お姉ちゃんから」

憂「よし! もういいよ、部活頑張ってね梓ちゃん」

梓「えっ? 話はいいの?」

憂「もう終わったの それじゃあね」

憂「私こっちの机運ぶねー」

純「おねがーい」

梓「……変な憂」


――――

紬「これで準備は万全ね」

澪「本当にやるのか?」

唯「もう憂にもメール送ったよ!」

紬「ふふふ、楽しみね」

梓「こんにちはー」ガチャッ

律「おっ 梓きたな!」

律「音楽準備室へー!」

みんな「「「「ようこそ!」」」」

梓「」ポカン

梓「……何なんですか?」

律「今日はとっておきの日なのさ」

紬「忘れられない一日が梓ちゃんを待ってるわよ」

唯「ムギちゃんそれ私の台詞!」

紬「えへへ 言ってみたかったの」

梓「……」

梓「なんだか荷物がたくさん置いてありますけど、何かやるんですか?」

唯「よくぞ聞いてくれました!」

唯「今日はあずにゃんにとって忘れられない一日になるよ!」

梓「えーと、まだちょっとよく話が……」

梓「誰かの誕生日でもない、クリスマスでも文化祭でもない」

唯「ほかに記念日と聞いて思い当たることはない?」

梓「……ギターを買った日?」

唯「あずにゃん鈍感だよ~」

梓「いきなり記念日って言われても……」

梓「……あっ」

唯「わかった?」

梓「違います 唯先輩が思ってるのとは違いますから」

唯「違わないよ」

唯「きっと」

梓「……」

律「唯ー、そろそろ始めるかー?」

唯「うん! 始めよう!」

唯「いくよギー太!」

梓「演奏するんですか?」

唯「あずにゃん、しっかり聞いててね」

唯「せーのっ」


みんな「「「「ラヴィ!!」」」」

唯「ヌヌネネヌヌネノ ヌヌネネヌヌネノ ヌヌネネヌヌネノ ヌヌネネヌヌネノ
  ヌヌネネヌヌネノ ヌヌネネヌヌネノ ヌヌネネヌヌネノ ヌヌネネヌヌネノ
  んーん んーん んんんんんー
  んーん んーん ん・ん・んー」

みんな「「「「ラヴィ!」」」」

唯「おまたせ ようこそあずにゃん
  いまから奇跡がはじまる
  キンギョを吐いたり ロウソク消したり
  コウモリ吹いたり ペンキで塗ったり
  お店のカートで激走
  成層圏から地上へダイブ!
  怪我ひとつないぜ俺たち」

唯「そうです あずにゃん覚えて
  われらの名前はラブラビッツ!
  蟻酸を浴びたり ミサイル避けたり
  波間で揺れたり ビルから落ちたり
  高速道路で前転
  大蛇の腹から緊急脱出!
  傷ひとつないぜ俺たち」

律「いのちがキケンだ!いのちキケーン!」

唯「みんなはマネしちゃダメだぜ」


梓「……」

梓「……それ何の歌ですか?」

唯「告白の歌にきまってるでしょ!」

梓「……」

唯「こんなところで驚いてちゃだめだよ」

唯「本番はここからなんだからね、あずにゃん!」

梓「えっ」

唯「いくよ!」

唯「ぐっ、ウエッ」

梓「唯先輩! 自分で指を喉につっこんで」

唯「オエッップ」

ビチビチ(金魚)

梓「あの、唯せんぱ」

澪「ひいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい」

律「やっぱり澪にはキツかったか」

紬「本番なら我慢できると思ったけど……」

紬「しかたないわ、澪ちゃん抜きで次にいきましょう」

梓「……」

唯「」ハァ、ハァ

梓「大丈夫ですか?」

唯「ふっ ゥ 愛の前にはこんなもの、無に等しいのだよ!」

唯「ムギちゃんロウソク!」

紬「任せて!」

紬「」サッ

唯「よく見ててねあずにゃん」

唯「」ドキドキ

梓「火がついてないですけど」

唯「ふっ」

シュッ(ロウソク)

紬「うまくいったわ!」

梓「ロウソクごと消すんですか!?」

唯「やったねムギちゃん!」

紬「これくらい朝飯前よ!」

律「次々! 時間は待ってくれないよ!」

律「おりゃあっ!!」ガシャンッ

バサバサバサッ!(コウモリ)

梓「ひいっ! コウモリ!」

梓「こんなもの部室に持ち込んでたんですか?!」

唯「これもすべてはあずにゃんのため!」

唯「善良な市民を襲う悪しきコウモリめ! あずにゃんは私が守る!」

唯「ふーっ! ふーっ!」

バサバサバサッ キーキー!

唯「よし、これで軽音部の平和は…」

梓「こっ こっちにこないで!」

唯「しまったぁ!」

キキー!

梓「誰か助けてー!」

唯「あずにゃん危ない!!」ガバッ

梓「きゃっ」

唯「大丈夫あずにゃん?!」

唯「私の愛しい人に指一本でも触れてみろ! 許さないぞ!」

梓「唯先輩…」

唯「か弱い乙女を先に狙うとは極悪非道め!」

唯「貴様には血が流れていないのか!!」

唯「かかってこい、正々堂々勝負だ!」

キィーッ!

唯「ふーっ! ふーっ!」

キキー コ、コレハツヨイ!

ニゲロー! バサッ バサッ

唯「ふんっ! おとといきやがれ!」


律「ふー、無事助かったな」

紬「危機一髪だったわね」

律「見てるこっちがヒヤヒヤしたぜ」

唯「やつらは手強い敵だったよ……」

唯「しかして、軽音部に平和は訪れた」

唯「無事だったかい、ハニー」

梓「ひぐっ ひぐっ」

唯「?!」

梓「ひどいです唯先輩、どうしてこんな……」

梓「私を怖がらせるつもりだったんですか…?」

唯「ち、ちがうよ! 私はあずにゃんを守りたくてやったんだよ!」

梓「わざわざコウモリなんて連れてきて……」

唯「で でも、怪我はしてないよね?……」

梓「そういう問題じゃないです!!」

唯「あずにゃん……もう大丈夫だから」ぎゅっ

梓「やめてください! 唯先輩に抱きつかれるのは嫌です!」バシッ

唯「痛い!」

梓「唯先輩はいつもいつも人の気持ちを考えないで!」

梓「そういう自分勝手なところが嫌いなんです!」

唯「あ、あずにゃん……」

梓「…」グスッ

梓「わたしもう帰ります!」

唯「あ、待って!」

バタンッ!


唯「どうして……何がいけなかったの……」

唯「わたし、あずにゃんのために体を張って頑張ったんだよ……」

唯「金魚を飲んで、ロウソクも消して、コウモリとたたかって」

唯「何度も何度も練習して、大変だったんだよ、苦しかったんだよ」

唯「途中でやめたくなっても、あずにゃんのためだって思うと力が沸いてきて」

唯「どんなつらくても、投げ出したくなっても我慢したのに……」

律「わかってるよ、唯はよく頑張った」

唯「じゃあなんでだめだったの!」

紬「……ちょっとやりすぎちゃったかしら」

律「コウモリが飛んできたらさすがに怖いよなあ」

唯「そうならないように気を付けてたのに……」

律「確かに、ちゃんと窓のほうを向いて息を吹きかけてたな」

律「でもコウモリだって生き物だ、そう思い通りにはいかないんだな」

唯「わたし甘かったよ……あずにゃんに強いところを見せようなんて」

唯「わたしにはまだ早かったんだよ……」

律「唯、気を落とすな」

紬「……ごめんなさい、私のせいね」

唯「ちがうよ! ムギちゃんはコウモリを捕まえるの手伝ってくれたもん!」

唯「一番怖い仕事だったのに自分から引き受けてくれて……」

唯「私すごく嬉しかったんだよ!」

律「そうだよ、ムギのせいじゃない、運が悪かっただけだよ」

紬「違うの、あのコウモリ……実はロボットなの」

律「えっ」

紬「うちの人に頼んで、精巧なラジコンを作ってもらったの」

紬「万が一噛まれたりしたら危険だから……」

唯「ちゃんと考えてくれてたんだね、ありがとう」

紬「でも! 梓ちゃんに向けて飛ばせちゃったの、あれわざとだったの!」

紬「その方が迫力があると思って、何の相談もしないで……」

紬「唯ちゃんは思った通り、梓ちゃんをかばってくれていい雰囲気になったけど」

紬「だけど、結果は……」

紬「本当にごめんなさい!」

唯「ううん、ムギちゃんのせいじゃないよ、謝らないで」

唯「ムギちゃんはわたしのワガママに付き合ってくれただけだもん」

唯「それにね、わたし気付いたことがあるの」

唯「コウモリがあずにゃんのほうに飛んで行ったときにね、私があずにゃんを守らなきゃ!って」

唯「本気でそう感じたの 逃げたいなんて考えもしなかった」

唯「あずにゃんのことが真剣に好きなんだって」

唯「私、あずにゃんのためなら何でもできる」

唯「それがわかったのはムギちゃんのおかげ」

唯「だから自分を責めないで」

紬「……ありがとう」

唯「えへへ、次は頑張らなきゃ」

律「よーし! それじゃあ次の作戦会議だ!」

唯「おー!」

紬「おー!」


澪(目が覚めたら真剣な雰囲気……輪に入れない)


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最終更新:2011年03月26日 22:41