梓「というわけで、はい」スッ

唯「え……?」

梓「これから抱きつくときはちゃんとこれを提示してくださいね」



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| 回数券  |
|¨¨¨¨¨¨¨¨¨.|
|. 10秒  |
|.       |
|.¨¨¨¨¨¨¨¨..|
|. 10秒  |
|.       |
|.¨¨¨¨¨¨¨¨..|
|. 10秒  |
|.       |
|.¨¨¨¨¨¨¨¨..|
|. 20秒  |
|.       |
|.¨¨¨¨¨¨¨¨..|
|. 30秒  |
|.       |
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄


唯「えっ、えっ!?」

梓「複製や他者への譲渡は無効です。あと使用期限は一週間ですからね」


唯「ちょ、ちょっとまってよあずにゃん!」

梓「なんですか?」

唯「なんですかじゃないよ! こ、これ10秒って! 10秒って、えええ!!!?」

梓「よく見てください20秒と30秒の券もあります」

唯「そういう問題じゃないよ~~!!」

梓「どういう問題なんです?」

唯「これじゃあ一週間に……え、えっと、ななじゅ、80秒! しかっ! 抱きつけないよっ!」

梓「あちゃー、それは残念ですねっ!!!」

唯「ひどいよ~、80秒ぽっちじゃあずにゃん分を補給しきれない~~!」

梓「わずかな時間で効率よくしたらいいんじゃないですか」

唯「無理だよお……」

梓「わかりました。では唯先輩の日頃の行いしだいでは次の発行の際すこしだけ増やしてあげましょう」

唯「ほんと!?」

梓「はい。ただし行いしだいですよ……」

唯「……むぐ」

唯「あの……私なにか悪いことしましたかね」

梓「あれ? わからないんですか? どうしようもないですねっ!!」

唯「……おもいあたる節は……多々ございます」

梓「でしょう? ほら、言ってみてください」

唯「まず、あずにゃんの教室で人前にも関わらず好き勝手抱きつきました……」

梓「あれのせいで私クラスメートにからかわれてるんです。ほかには?」

唯「……あずにゃんの辞書にらくがきしました」

梓「はい。そうですね。なんかアレな言葉に蛍光ペンで線ひいてましたね」

唯「……すいません、つい出来心でぇ……」

梓「許してもらいたいなら誠意をみせましょう」

唯「ほかにもいろいろしました……私は悪い先輩です」

梓「そうですね。傘をわざと忘れて無理やり入ってきたり、お弁当つまみ食いしたり」

唯「放課後リコーダーを拝借したり……」

梓「えっ!!?」

唯「あっ……」

梓「ゆ~い~せ~ん~ぱぁい?」

唯「……ちがうのぉ!!」

梓「なにが違うんです」

唯「どうしても……あずにゃん分がたりなくて……およよよ」

梓「泣き落としなんてききません。とにかく、その30秒の券は罰として没収します」ビリビリ

唯「あ"あ"あああっ!!」

梓「はい、のこりで今週はがんばってくださいね!」ニコッ

唯「……鬼だよぉ」

梓「私、そんな誰にでも好きなときに抱きつかせるような軽い女じゃないんです」

唯「……カムバックあずにゃん」

梓「ほら、もう教室もどってください。チャイム鳴りますよ」

唯「じゃあその前に……」ピリッ

梓「えっ、もう使うんですか。とっておくって考えはないんですね」

唯「うぅ、この10秒券を……お納めくださいあずにゃん様」

梓「むぅ……つくった以上、私からは拒めませんね。わかりました10秒だけですよ」

唯「よーし10秒10秒」

梓「どうぞ」

唯「今週第一回目の~、あずにゃんぎゅう~~~」ギュッ

梓「12345678」

唯「はやいよおおお!!!」

梓「9、10! はい終わりです!」

唯「ノー! それはずるいよいくらなんでもっ!」

梓「はい?」

唯「いーーーーーーーーちっ! にーーーーーーーーいっ! って感じでしょ、普通!」

梓「それのどこが10秒なんですか」

唯「ええっ!? でもいまのあずにゃんの3秒くらいだったよ」

梓「わかりました。じゃああと7秒抱きついていいですよ」

唯「けち臭いなー、あーやだもうほんとけち臭い。ケチにゃん!」

梓「いやなら没収でもいいですよ」

唯「ごめんなさい抱きつきたいです!!」

梓「ほら、7秒。きっちり7秒じゃないと怒りますからね」

唯「7秒か……よーし!」

梓「どうぞ」

唯「いっきまーす!」ギュウ

唯「スーハースーハースーハースーハー!!!」

唯「んなあああああっほうあずにゃんあずにゃんあずにゃあああん!!!」

唯「うえへへへええっっほっほう! うふふっふふふ!!!」

唯「すーはーすーはーすーはーすーはーすーはーすーはーすーはーすーはー!!」

唯「うぇへへへへへ、生あずにゃんのフレイバーえへへっへへっ!!!」

唯「……あ、終わりました」

梓「……」

唯「7秒でも本気だせば結構イケルね!」

梓「……」

唯「どしたの?」

梓「……没収です!」


……


唯「というわけなんだよ~」

憂「へぇー、梓ちゃんの薄っぺらいお尻に敷かれてるお姉ちゃんも可愛い!」

唯「あずにゃんに嫌われちゃうよー」

憂「規制かけられた時点でもう相当だと思うよ!」

唯「そんな~~~」

憂「今日元気なかったのはそのせいなの?」

唯「うん……あずにゃんから得られるあずにゃんエネルギーは私にはかかせないものだから……」

憂「もう券はないの?」

唯「泣きついたらお情けで10秒を一枚だけ……しくしく」

憂「これが券? うわぁ、なんか適当だね!」

唯「あずにゃんが私のことを考えて一生懸命つくってくれたんだよ! うふふ」

憂「ずいぶんポジティブなんだね」

唯「はぅ~~、この券はつかわずにおさいふにいれてお護りにでもしよっかな~うふふふ~」


憂「……可哀想なお姉ちゃん」

唯「うふふ~~あずにゃんの手作りのおまもりうふふふふ」

憂「このままじゃお姉ちゃんがおかしくなっちゃう!」

憂「なんとか梓ちゃんにお願いして券を発行してもらわないと……」

唯「10秒を無限に引き伸ばす精神修行でもしよっかなーうふふふうふふあははは!!」

憂「こんなお姉ちゃんみてられないよ!!」

唯「ういーういー、ストップウォッチとかある~? あと真っ白で何もない部屋。あははは~♪」



翌日 教室


憂「……」

梓「なにその土下座」

憂「お願いします……お姉ちゃんを……お願いします……!!」

梓「や、やめてよ……まわりどん引きしてるじゃん」

純「うぃーっす、って憂なんかしたの?」

梓「あ、純おはよ。これはね、元々は唯先輩が……」

憂「お姉ちゃんをよろしくお願いします!!!」

純「えぇっ!!? そこまで進んでたんだっ!」

梓「ちょ、ちが……ちょっ! 憂!! 誤解させるようなこと言わないで」

憂「びええええん、このままじゃお姉ちゃんがだめになっちゃう~」

純「よくわからないけど首をつっこんだらめんどくさそう」

梓「わかったわかった! ちゃんと用意するから」

憂「ほんと……?」

梓「だから顔あげてよ……これじゃ私が悪者だよ」

憂「よかった! ありがとう梓ちゃん!」

梓「純、憂って極端すぎるとこない?」

純「泣き落としよりずるいことを平気でするよその女は。たまにね」

憂「えへへ」ニコニコ

梓「はぁ……じゃあ唯先輩に渡してくるね」

憂「きっと喜ぶよ~」

……


梓「……はい、憂に感謝したほうがいいですよ。中途発行なんて特例中の特例ですから」

唯「あ、あずにゃん……これ……」




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| 回数券  |
|¨¨¨¨¨¨¨¨¨.|
|. 10秒  |
|.       |
|.¨¨¨¨¨¨¨¨..|
|. 10秒  |
|.       |
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|. 10秒  |
|.       |
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|. 10秒  |
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|.¨¨¨¨¨¨¨¨..|
|. 10秒  |
|.       |
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唯「50秒しかない……」シュン

梓「5日にわけて使えますよ」


唯「……あずにゃん、私がんばる!」

梓「はい?」

唯「あずにゃんがもっといい券をくれるようになるまで! 一生懸命がんばるよ!」

梓「……ふふ、そうですね。がんばってください」

唯「じゃあ景気付けに一枚」ペリペリ

梓「タバコやお酒みたいな扱いですか」

唯「ほれ、10秒抱きつかせなさい。ほれ、ほれほれぇ!! 拒絶不可の抱きつき券様だぞお!」

梓「……し、しかたないですねぇ」キョロキョロ

唯「ん? どしたの?」

梓「あの、でも場所がちょっと……」

唯「え? ああ……」


律「……なんで梓がウチの教室来てるんだよ」

澪「……おーい、もうすぐ授業はじまるぞー」

紬「……これが噂の逢引!」


唯「……あ、そっかそっか」

梓「視線が……その、恥ずかしいので……」

唯「まかせて!」

梓「え?」

唯「みんな~~! いまからちょっとあずにゃんに抱きつくから目を背けてくださ~い!」

梓「んあ?」

ハイハイ ユイ、ファイトー

クスクス クスクス アズニャン

ユイチャンモスキネー


律「はぁ……朝っぱらからか」

澪「HTTの評判ガタ落ちだっ!」

紬「でも、なんていうか……いまさらな感じね!」


唯「はいあずにゃん、誰もみてないよ」

梓「……なんか、とても良いクラスですね……」

唯「はやくはやく~! はやくぎゅうしたいよお!」

梓「こ、興奮しないでくださいっ」

唯「みんなに悪いから早くしようよ」

梓「そ、そうですね。ではどうぞ。10秒ですよ」

唯「は~い!!」ギュウウウ

梓「んぐ……勢いつけすぎです」

唯「いーち、にーい、さーん」

梓「しーい、ごーお、ろーく」

唯「あはん、私バカだから今何秒かわからなくなっちゃった~」

唯「数え直しだね~! いーち!」

梓「きゅーう、じゅう! 終わりです!」

唯「ひどい!!」

梓「しりません。なんで付き合わなきゃならないんですか」

唯「……もっととんでもない場面でつかっちゃうよ」ボソッ

梓「ひっ!?」

唯「たとえば~、あ、お着替え中とか~?」

梓「没収しますよ」

唯「ごめんなさい調子にのりましたぁ……」

律「おーいもう帰れよー」

澪「梓、また放課後な!」

梓「はい! あ、それと唯先輩がなにか悪いことしたら報告してください! 次回の券の発行の際、審査材料にしますんで」

紬「まかせて~、悪行は全て記録しておくわ~」

梓「逆に+になることも報告してください。まぁないでしょうが」

和「あ、そういえば来る途中……唯!」

唯「えっ? なんかしたっけ……やめてよぉ和ちゃん、空気よもうよお」ブルブル

和「そう? ならなんでもないわ」

唯「ほっ」

和(道行くおばあさんの荷物もってあげてたって言おうとしたのに……)

唯「これ以上減ったらもうほんとに禁断症状がでちゃう、うひひひ」



放課後 部室


唯「でね~、あずにゃんったら、うにゃ~ってね、猫みたいで可愛くてね」

律「へ~、ふ~ん、ほぉ~」

だらだら ペチャクチャ


ガチャリッ

梓「すいません遅れました」

唯「!!!!」

梓「? どうしたんです唯先輩。そんなに慌てて」

唯「さぁみんな! 練習だよ練習! ほらそこ三人だらだらしなーい!」

澪「おいっ!」

律「点数稼ぎ必死だな~」

紬「はい梓ちゃん、ケーキと紅茶」

梓「あ、どもですいただきます」

唯「……じゅるっ……ぐぐ、ケーキィ……」


澪「……」ズズズ

律「うまいなー」

紬「今日のケーキはね、私のお気に入りのお店のスペシャルケーキなの!」

梓「へぇ~今度いってみたいです」

紬「あ、でもちょっと遠いの~」


唯「ケーキたべたいな……」


紬「ちゃんと唯ちゃんの分もあるけど」

唯「……ふふ、ふふふふ」

律「た、食べてもいいと思う……」

唯「でもね、ふふふふっ、あずにゃんが見てる……あずにゃんが見てるよオオオ」

梓「……審査しなくちゃです」カキカキ

唯「うわーん、審査ノートにいろいろ書かれてるよー、ここで食べたらマイナス評価だよー」

澪「いい加減気にしすぎなんじゃ……」

律「いいから食べようぜ! な? みんなでお茶するのも大事なことだって!」

唯「いいのかな……」オソルオソル

梓「自己判断でどうぞ。ま、私は楽しくお茶する空気を潰すのはマイナスだとおもいますよ、私はね」

唯「そ、そっか……うんそうだよね」

唯「じゃあいただきま~す♪」

唯「もぐもぐ、うまい!」

紬「うふふ、良かった。いつもの唯ちゃんね」

梓「……」カキカキ

律「どーんな評価かいてんのっ?」チラッ


今日も笑顔が可愛い +++


梓「にゃっ!? ひ、秘密のノートですから見ちゃダメです! 漏洩禁止です!」

律「だ、だいじょぶだいじょぶ全然見えなかったから! ほんとほんと睨むなって!」

澪「唯の悪口がいっぱい書いてあったりして……」ブルブル


唯「もぐもぐもぐもぐ! おいひ~しあわせ~~♪」


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最終更新:2011年03月29日 00:48