―ジリリリリリッ!

唯「う~ん…うるさい……」ピッ
唯「…あと五分だけ…」

憂「お姉ちゃんもう朝だよ!」

唯「あと五分だけ寝かせてよ……」

憂「駄目だよ早く起きて準備しなきゃ!お仕事遅刻しちゃうよ?」

唯「わかったよぉ。今起きるから…」

憂「もう。早く起きて下に降りてきてね?御飯できてるんだから」

ばたん

唯「………はぁ」
唯「仕事行きたくないなぁ」


……

上司「平沢さん!あなた何回同じこと繰り返すの!?
  この前もそれで失敗したばかりじゃない!」

唯「すみません…」

上司「謝るくらいなら同じ失敗を繰り返さないように気をつけなさい!
  大体あなたはいつもいつも……」

唯「…………」

はぁ、また始まったよ。この人の説教長いんだよねぇ。
いつも同じようなことネチネチネチネチと……他に話すことないのかな…?
大体さ、私に説教垂れる前に他にもやることがいっぱいあるんじゃないの?
早く結婚するとかさぁ。40後半にもなって独身はねぇよwこのババァ。大体さぁ…

上司「―ちょっと平沢さん!聞いてるの!?」

唯「え?は、はい!ちゃんと聞いてます…」

上司「ふぅ…もういいわ。仕事に戻りなさい」

唯「はい…失礼します」ペコリ



就業時間まであと3時間か…。
長いなぁ…。早く家に帰ってギター弾きたいなぁ…。

唯「はぁ……」

客「ちょいと店員さん」

唯「はい?どうされましたか?」

客「このチラシに載っている鯖の缶詰はどこにあるんじゃ?」

唯「それでしたらあちらの方に…」

客「あっち?あっちってどっち?」

唯「ですからあちらの方に…」

客「お前客をなめてるのかっ!場所を聞かれたら案内するのが普通じゃろう!」

唯「も、申し訳ございません!今すぐご案内いたしますので…」

客「お前じゃ話にならんっ!今すぐ上の人間を呼べ!」


上司「ちょっと平沢さん!あのお客様カンカンだったわよ!?」

唯「す、すみません!」

上司「今度はあなたいったい何をしたのよ…?」

唯「実は………」


上司「………はぁ、呆れた…」

唯「すみません…」

上司「あなた最低ね。それくらいのことも満足に出来ないなんて」

唯「すみません…」

上司「まったく…謝るしか能がないんだったら仕事辞めたら?」
上司「その方がこちらとしても助かるんだけどねぇ」クスクス

唯「!……すみません…」


謝るしか能がないだって…?ふざけないでよ…。
お前だって怒ることしか能がないくせに…。
人を見下して…。馬鹿にすることしかできない。
本当に最低なのはどっちだ…?

上司「ほら!もういいから早く仕事に戻りなさい」

唯「はい…失礼します」ペコ

上司「あ、そうそう…。仕事を辞めるのかどうか、少し真剣に考えてみてね?」クスクス

唯「…はい。失礼します」ペコ



……

唯「ただいま…」ガチャ

憂「お帰りお姉ちゃん。今日もお疲れ様」

唯「………」

憂「お姉ちゃん?」

唯「うぃ~…。私今の仕事辞める…」

憂「お姉ちゃん、そのセリフ何回目?」

唯「だってぇ…。客はわがままなのばかりだし、それに上司は嫌いだし…」

憂「そのセリフも何度も聞いたよ」

唯「とにかく私は辞めたいのぉ~!」

憂「そんなに辞めたいなら早く次の就職先探しなよ…。話はそれから…」

唯「いやだ~!今すぐ辞める~!」

憂「………」

憂「なら好きにしなよ。でもお金はどうするの?生活費は?その他諸々の支払いは?」
憂「生活費はまだ何とかなるかもしれないけど…。他のことに関しては流石に面倒見切れないよ」

唯「……憂のケチ」

憂「ケチなんかじゃないよ!大体社会人にもなってお父さんやお母さんや私に頼ってばかり…。いつまでも子供じゃないんだからもっとしっかりしなきゃだめだよ!」

唯「…憂は学生だからいいよ…。働く者の苦しみなんてわからないんだ…」

憂「ちょっと!その言い方だと私が何も苦労してないみたいじゃない!」

唯「ごめん…今日はもう寝る…」

憂「あ、お姉ちゃん!」




仕事どうしよう…。確かに憂の言う通りいつまでも周りに甘えるわけにはいかない。
でも仕事は辞めたい…。でも辞めたら家族にまた迷惑かけちゃうし………。
そもそもなんで私は今の職場に就職したんだっけ?あれは確か………

唯『ねえ憂!ここなんてどう思う?』

憂『どれどれ…。スーパー琴吹?』

唯『そう!ここなら家からも近いし仕事の内容も楽しそうなんだよ!』

憂『なになに…。主に接客、品出し等がメインです。あなたの笑顔でお店を明るくしてみませんか?か…。うん。ここならお姉ちゃんにも向いてると思うよ。頑張ってみたら?』にこ

唯『うん!私頑張るよ~♪』


―プルルルルルルッ ガチャッ

憂『はいもしもし平沢です。え?は、はい!少々お待ちください!』

憂『お姉ちゃん電話!スーパー琴吹から!』

唯『えっ!?わかった!!』

唯『…も、もしもしお電話かわりました!』

唯『はい…。はい…。え!?ほ、本当ですか!?はいっ!!ありがとうございます!!
  …はいっ!わかりました!…こちらこそ、よろしくお願いしますっ!』

唯『……ふぅ』ガチャ

憂『お姉ちゃんもしかして・・・!』

唯『~~っ!やった~!やったよ憂!採用だって!!』

憂『おめでとうお姉ちゃん!!』

唯『これも憂のおかげだよ~!ありがとう憂~!そうだ!みんなにも連絡しなきゃ!』

律『え~、それでは唯の就職を祝して…』

唯憂律澪紬和梓『かんぱ~いっ!!!』

律『いやいやしかし、無事に就職が決まってよかったな~』

和『ほんとね。このまま見つからないんじゃないかと思ってたけど…』

唯『もう!和ちゃんのいじわる!』

澪『ははは、そういえばなんてとこに就職したんだ?』

唯『スーパー琴吹ってところだよ~』

紬『あらあら♪そこは私のお父様の系列のお店よ♪』

唯『へぇ~そうなんだ!』

梓『今度先輩が働いてるところ見に行きますね!』

唯『うんうん!まってるよぉ~♪』

律『しかしそのスーパー唯みたいのを雇っちゃって大丈夫なんだろうか?』

唯『ちょっとりっちゃんどういう意味!?』

澪『まぁまぁ。でも唯がんばれよ?あんまり失敗ばかりしてるとそのうち誰にも相手にされなくなるぞ?』

和『まあ確かにそれは心配ね。唯は昔から同じ失敗ばかり繰り返すし…』

唯『ちょっと二人とも~!私なら大丈夫だよ!それよりみんなも大学頑張ってね』

律『なにを頑張るんだよ…』



確かに仕事は楽しかった。もともと人と接するのが好きな私は仕事にやりがいを感じていた。
でもそれも最初だけ…。和ちゃんの言う通りいつも同じ失敗を繰り返す私は、澪ちゃんのいった通り
そのうち誰にも相手にされなくなった。職場の人たちはきっと、何度いってもわからない私に愛想が尽きたのだろう。
それから徐々にやりがいを感じられなくなり、あんなに楽しかった接客も、今じゃただ面倒くさいだけ。

唯「…こんな筈じゃなかったのになぁ。とりあえず明日はちゃんと謝ってまだ辞めないでおこう」

この判断も何度目だろう。いつも辞める辞めるって騒いではそれを実行した試しがない。
要は新しく仕事を探すのが面倒くさいんだ。新しい環境を自分で作るのが。
私は昔からちっともかわってないなぁ。いつになったら大人になれるのかな?
いや、もう大人か。なんたって社会人なんだから。

唯「今日はもういいや…。寝ちゃおう…」

そう、寝ちゃおう。



___

―ジリリリリリッ!

唯「う~ん…うるさい……」ピッ
唯「…あと五分だけ…」

憂「お姉ちゃんもう朝だよ!」

唯「あと五分だけ寝かせてよ……」

憂「また?毎朝同じこと言わせないでよ」

唯「わかったよ~。…あのね憂?」

憂「なぁに?」

唯「…仕事まだ続けてみるよ」

憂「そういうと思ったよ。このやり取りも何回目だか…」

唯「えへへ…。面目ない」


……

唯「おはようございまーす。」

上司「あらおはよう」

唯「あ、あの…昨日のことなんですが…」

上司「答えは出たの?」

唯「はい…。き、昨日はすみませんでした!
 私はまだ続けようと思います!」

上司「…そう。ならがんばって」

唯「はい!ありがとうございます」

唯「………ふう」

これでしばらくは仕事が続けられる。
ちょっと嫌だけど、新しい仕事を探すよりはいいよね


唯「いらっしゃいませー」

?「お、いたいた!唯~!」

唯「あれ?りっちゃん!」

律「すげー久しぶりだな!かれこれ半年はあってないよなぁ」

唯「そうだね!…ごめんね?いつも誘ってくれるのに行けなくて」

律「いーよいーよ気にするな!唯は働いてて忙しいけど私たちは暇な大学生なんだからさ!」
律「それよりさ、私たちこれからみんなで遊ぶんだけど唯も仕事終わったら来ないか?」

唯「うん!行く!」

律「わかったよ。なら仕事終わったら連絡くれよな!まってるからさ」

唯「わかったよ~♪またあとでね♪」


えへへ…。久しぶりにりっちゃん達と遊ぶの楽しみだなぁ♪
早く仕事が終わればいいのに♪

上司「平沢さん?ちょっときてもらえるかしら」

唯「え?わかりました…」


上司「先ほどの方はあなたのお友達かしら?」

唯「はい。そうですけど何か…」

上司「お友達とあんな大きな声でおしゃべりして、一体どういうつもり?
  あなたはまだ仕事中なのよ?」

唯「はい…すいません」

上司「あなたねぇ…。社会人としてのモラルが欠けてるんじゃない?」

唯「はい…」

上司「だいたいいつもいつも……」


また始まった…。もう聞き飽きたよお前の話は…。
大体ちょっと友達としゃべっただけでなのに。いちいちうるさいなぁ…。
はぁ、早く家に帰って憂の美味しいご飯が食べたいなぁ。今日の晩御飯はなんだろ?



上司「……平沢さん!?」

唯「は、はい!?」

上司「ちゃんと話聞いてるの!?」

唯「は、はい!もちろんです!」

上司「まったく…。そういうわけだからもういいわ」

唯「どうもすみませんでした!失礼します…」

上司「はい。今までお疲れ様」

唯「………ん?」

今までお疲れ様………?

唯「あ、あの…」

上司「あら?まだ何か用かしら?」

唯「あの…今までお疲れ様って…どういう意味ですか…?」

上司「ふぅ…。あなたやっぱり人の話聞いてなかったのね。だからあなたはクビってこと」

唯「……へ?おっしゃっている意味がよく…」

上司「だからあなたはクビよ。クビ。意味わかる?もう来なくていいの」


……なにをいってるんだこの人は?
私がクビ?そんな…、家族には…、憂にはなんて説明すればいいの…?
お姉ちゃん明日から無職だよ~☆なんて言えるか?言えない。
どうしよどうしよ……。



憂「お姉ちゃんお帰り。今日もお仕事お疲れ様~」

唯「はっ!?う、憂!?いつの間に!?」

憂「?お姉ちゃん何言ってるの?私が家にいたらおかしい?」

家…?本当だ…。なんてことだ…。言い訳を考えてるうちに家についてしまうとは…。
憂にはなんて説明しよう…?

憂「お姉ちゃん?また仕事で何かあったの?」

唯「な、なにもないよ~♪」ダラダラ

しまった!とっさに嘘をついてしまった…!どうしようどうしよう……!

憂「お姉ちゃん汗すごいよ?本当は何か隠してない?」

唯「か、隠してない隠してないっ!!憂に隠し事するわけないじゃん嫌だなぁ!あはは…」ダラダラ

憂「ふ~ん?」ジー

ああ、そんなじーっと見ないでよ!ぼろが出ちゃう!やめてー!これ以上私をみないでー!
もう限界!ここは避難する!

唯「お、お姉ちゃん疲れたから部屋に戻るね!じゃ!」

憂「あ!お姉ちゃん!」

…どうしよう。憂にはなんて言おう。クビになったことなんて恥ずかしくて言えないよ…。
なにかいい案はないだろうか?う~ん………。


…そうだ!ばれる前に新しい仕事を探せばいいんだ!ふふふ…。私って天才かも…!
そうときまれば明日から行動に移すぞ~!

唯「お~!」

がちゃ

憂「お姉ちゃんうるさい…」

しかし私はこの時大事なことを忘れていた…。
けっして忘れてはいけない大事な約束を…。


……

律「唯の奴何やってんだよ。電話の電源切ってるみたいだし」

澪「まだ仕事中なんじゃないか?」

紬「かもしれないわね。どうせ暇だし見に行ってみましょうか」

梓「そうですね。そういえば私唯先輩の働いてるところまだ見たことないです」

律「よ~し!そうときまったら早速行ってみようぜ!」


律「さて、ついたのはいいけど…」

梓「唯先輩どこにもいませんね」

紬「ちょっと聞いてみましょうか」

律「あ、すみません!」

店員「はい?なんでしょうか」

澪「ここに平沢唯って人が働いてると思うんですけど…」

店員「ああ、彼女なら辞めましたけど…」

律「えっ?」

梓「唯先輩が…」

紬「辞めた…?」

ピンポンピンポ~ン!

誰だろうこんな遅くに?まぁ遅くっていってもまだ夜の10時だけど…。

「は~い!」

まぁお客さんのことは憂に任せて…。私は明日の為にもう寝よっと…。
明日は…まず職安にでも行ってみようかな…。そういえば私、何か忘れているような…?

「お~い!唯~!」
「いるんでしょ唯ちゃん!」

そうだ!遊ぶ約束忘れてた!でもそれなら携帯に…。!そうだ!いつもは仕事中に電源切りっぱなしだった!やっぱり電源入れ忘れてるし…。
みんな怒ってるのかな…?とりあえず下に行こう…


唯「ごめんみんな…」

律「唯!お前…!」

うわ…!りっちゃんすごい怒ってる…!どうしよお…とりあえずもっと謝らなきゃ!

唯「や、約束忘れてたのは本当に悪かったよ!ごめんなさい!」

律「違う!私が怒ってるのはそんなことじゃねぇ!」

え?じゃあ何に怒ってるの?私他に何かしたっけ…?

澪「…さっきスーパー琴吹に行ってきたんだ」

梓「そこで話…聞いてしまいました」


………え?


憂「話?話っていったい・・・」

律「なんだよ唯!憂ちゃんにも話してなかったのかよ!」

澪「律!少し落ち着け!」

梓「憂。話っていうのはね…」

あああああ!あずにゃん!お願いだからそれ以上のことは言わないで!お願い!

梓「実は唯先輩が…」チラッ

!あずにゃんと目があった!あずにゃんなら!あずにゃんなら私のアイコンタクトできっとわかってくれる!

唯(言わないで~!あずにゃ~ん!)パチッパチッ

梓「…今日仕事を辞めたんだって」

あずにゃああああああああああああああああん!!!!


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最終更新:2010年01月09日 02:28