唯「あーあ、あずにゃんってば自分ばっかり旅行行っちゃってズルイよ」

唯「その間どうやってあずにゃん分を補給しろってのさぁ」

「これこれ、そこのお嬢さん」

唯「はい?」

「お暇なら少しうちの商品を見ていかんかね」

唯「商品? おばあさんこんなところでお店開いてるの?」

「ほっほっ、色んな品があるからの。ゆっくり見ていくといい」

唯「ふーん……あ、これなんだろ」

「ほっほー! お嬢さんお目が高い。そいつは゛育つあずにゃん゛でございます」

唯「育つあずにゃん……?」


――

唯「ただいま~」

憂「あ、いいタイミング。ちょうど夕飯が」

唯「憂~。うちに植木鉢あったよね? ほら、小学校のとき使ってたやつ!」

憂「植木鉢? あるにはあるけど……お花でも育てるの?」

唯「ちっちっちっ! お花かな~、お花じゃないよ」

唯「あずにゃんだよ!」

憂「……梓ちゃん?」

唯「じゃじゃーん! 憂、これ見て! なんとこれは育つあずにゃんなのです」

憂「どう見ても、なにかの植物の種みたいなんだけど」

唯「まぁまぁ、とにかく。さっそく育ててみよう!」

憂「その前にお姉ちゃんが育つために夕飯食べようね」

唯「はい!」

・・・

唯「るんるん~♪」

憂「えっと……あれ、育て方は普通のお花と一緒だね? 水もあげるんだ~」

唯「水だけじゃなくてね~愛情もたぁっぷり注いであげるんだよ~」

憂「お花には注いであげてないの?」

唯「よーっし、これでOKかな。あとは芽が出てくれるのを待つだけだね!」

唯「そうだ! せっかくだし、観察日記つけよっと!」

憂「なんだか楽しそうだね」

唯「まぁね~。まだかな、まだかなぁ」

憂「ふふ、そんなにいきなりは生えてこないよ」

唯「生えたよ~!!」

憂「は!?」

唯「ほ、ほらほら! もう芽が出てる!」

憂「うそ……だってまだ生めて少しお水あげただけなのに」

唯「可愛い双葉だね~」

憂「葉っぱが……黒い」

憂(気のせいかな、梓ちゃんのツインテールにそっくり)

唯「ほれほれ~、つんつん」ツンツン

育梓『』ビクン…ビクン…

唯「うははは! 見てみて! すんごい動いてる! ほら、ほらぁっ」

憂「か、可哀想だよお姉ちゃんっ。今日はこのままにして放っておこう?」

唯「ん……それもそだね。じゃあね、育つあずにゃん。また明日!」

育梓『』ペコペコ

唯「見て~!! お辞儀したぁ~!!」

憂「忙しいなぁ……」


数日後

唯「うーーーーいーーーー!!」

憂「ん~……お姉ちゃん、うるさぁい……まだちょっと朝早い……」

唯「いいから来て! スゴイんだよっ、育つあずにゃんが!」

憂「?」

・・・

育梓『……』

憂「……」

憂(地面から頭が出てきてる……ッ!!)

唯「ねっ? こんなに大きくなった!」

育梓『ゴグッ…ケセ、ラ…キキッ』

憂(う、うう……なんか呻いてるよ……)

唯「かっわいいねぇ~」

憂「そ、そうだね」

育梓『ミ…ミミミ…』

唯「せっかくだし名前を付けてあげよう。その方がよく育つよ~」

憂「梓ちゃんじゃダメなの?」

唯「これはただのあずにゃんじゃないからね! んー……」

育梓『バ、グ、ブブブ…』

唯「決めた! お花みたいなあずにゃんだから、花あずにゃん! 略して花あず!」

花あず『ブブブブー!』

唯「えへへ、気に入ってくれたみたい」

憂「そう、なの……?」

花あず『ズニャーン、ズニャーン』

唯「さっきから何か伝えようとしてるみたいなんだけど」

憂「もしかして、お腹……ていうかお水欲しいのかな?」

唯「おお、なるほど。ほれ~、おいしいおいしいお水だよぉ~」ジャバー

花あず『ヲ、オオオ』

唯「喜んでる。かっわいいなぁ、もうっ」

憂「このまま大きくなったらどうなっちゃうんだろう」

唯「あ、日記つけなきゃね! ○月×日……」

花あず『ダイアリー』

唯「ふふ~」

憂「お姉ちゃん、そんなに見られてたら花あずちゃんも緊張しちゃうよ」

花あず『ザナドゥ』

唯「そう? それもそっかぁ」

憂「それよりおねえ『ネ、エ…オネ…エ…』

唯・憂「え?」

花あず『オネ、エ…チャン…』

憂「……今、お姉ちゃんって言った」

唯「……うん」

花あず『オネエ…チャン』

唯・憂「!」

唯「すごい! すごいよ花あず! 言葉が喋れるんだね! すごーい!」キャッキャ

花あず『ファザナドゥ』

憂(お姉ちゃん、これ本当にどこで買ってきたんだろ)


次の日

唯「今日は花あずに言葉を教えてあげようと思います!」

憂「まだ喋れるのお姉ちゃんってだけだからね」

唯「いい、花あず? 私は、ゆ・い。ゆ・い。で、こっちはう・い。う・い、だよ」

花あず『ユ…ウ……イイイ…』

唯「も、もうちょい! 頑張って!」

花あず『セ、パ…』

花あず『ユイ、センパ…イ……ウ、ウ……ウィー』

唯「おお……おおぉ!! いいっ、いいよ! お見事だよ~!」

憂(なんか教えたのとちょっぴり違うや)

唯「お利巧な君にはご褒美をあげよう」サ

憂「バナナ……って、食べるの?」

唯「説明書にはバナナが好物だって書いてたよ」

憂「ふ、ふーん……そうなんだ」

花あず『ウ…マ、ウマ』モグモグ

唯「おいしー? ふふっ」

憂「不思議な生き物……でも愛着湧いてきちゃった、かな?」

唯「でしょ~? よしよし、この調子で色んなこと教えちゃおー」

花あず『ドントコイ』


数日後

花あず『ユイセンパイ、ダラダラ、シテバカリ、ダメデス』

唯「うっ、本物のあずにゃんみたいなこと言うなぁ……」

憂「この短期間でよくこんなにペラペラ喋れるようになったね」

花あず『フタリノオカゲ。カンシャカンゲキ』

憂「ふふっ、そう言われると教えた甲斐があったかな」

唯「よーし、今度はカタコトじゃなくてもっとペラペラ喋れるように」

花あず『キョウハ、モウツカレチャイ、マシタ…』シナシナ

唯「あらら……じゃあしょうがな……ん?」

ポツ、ポツ…ザー

唯「あ、雨!」

憂「大変! 洗濯物取り込まなきゃっ」

花あず「~……」


唯「ふぅ」

憂「お姉ちゃん手伝ってくれたから早く取り込めちゃった。ありがとう」

唯「いえいえ~」

憂「今日は降らないって天気予報言ってたのに……うそつきっ」

唯「そんな日もあるもんだよー。ねぇ、それより小腹空いちゃって」

憂「じゃあ、ちょっと早いけどおやつの時間にしちゃおっか」

唯「いっえーい!」

・・・

唯「うまうま、ビスケットうまうま~」モグモグ

憂「急いで食べて喉に詰まらせないでね」

唯「大丈夫だって~……あ!」

憂「どうしたの?」

唯「花あず外に出しっぱなしだったよぉっ!」

唯「は、花あずっ」

花あず『ウボァ…』

憂「大変! 萎れてる……!」

唯「説明書に水は適度にあげてって書いてたからもしかして!」

憂「とりあえず中に入れようよ!」

・・・

花あず『モルスァ…』

唯「花あずぅー……元気出してぇ……」グスン

憂「大丈夫だよ。きっと良くなるよ」

花あず『シンパイ、シナイデ…クダ、サイ…』

唯「枯れちゃったらやだよぉ~!! あ~んっ!!」ポロポロ

憂「お、お姉ちゃん……」

唯「んん、花あずぅ……」

花あず『ユイセンパイ、ネテル、デス』

憂「あ、花あずちゃん! 元気になったんだね」

花あず『ウイィ』

憂「お昼から付きっきりだったから疲れちゃったんだね」

憂「お姉ちゃんったら私以上にとっても心配してたんだよ。このまま枯れちゃったりしないかって」

花あず『ゴメン、チャイ』

憂「ううん、あやまるのはこっち。ごめんね……」

唯「ん~……ごめんね、ごめんね……くー……」

花あず『……』

花あず『ユイセンパイモウイモ、トッテモイイヒト、アタタカイ。ダイスキデス』

憂「そっか。お姉ちゃんが聞いてたらきっと喜ぶよ」

花あず『ユイセンパイガ、ヨロコンデ、クレタラ、ワタシモウレシイ。ダ、イスキデス、ユイセンパイ』

唯「ぐぅ、ぐぅ……」


次の日

唯「ん~……あ、れ? 朝……」

唯「!」

唯「花あず! 花あずは!?」

花あず『ハイ、ココニイマスヨ』

唯「は、花あずぅー……よかったぁ」ギュゥッ

花あず『モウ、シンパイ、シナクテ、イイッテ、イッタ、デショウ』

唯「そんなの無理だよぉっ。よかったぁ……ほんとによかった」

花あず『トコロデ、ユイセンパイ。ワタシ、ソロソロ、セイチョウ、シソウデス。シンカ、デス』

唯「え! ほんと!?」

花あず『モ、モウスグ…ウイニモ、ミセテ、アゲタイ、カラ、ヨンデ、キテ…」グググ…

唯「まっ、待ってて~!」

花あず『ウヌヌゥ』グググ…

唯・憂「……」ドキドキ

花あず『ングゥフッ』グググ…

唯「頑張って! 踏ん張りどころだよ! 花あずっ」

憂「見てるこっちも力が入っちゃうね……」グググ…

花あず『アズニャンニャーーーーン』グググ!

…ニョキ

花あず『カラダガハエマシタ』

憂「!?」

唯「おおおっ、おめでとぉ~!! おめでただよ花あずー!」

花あず『エヘヘ、デモモウコノオウチハ、チョットチイサイデスネ……』

唯「よし、引越しだ! お庭に植えてあげようよ!」

憂「そ、そうだね……」

花あず『アタラシイオウチ、ワクワクシマス』

憂「これで、よしっと」

唯「花あず、どう? 新しいお家の居心地は」

花あず『マンゾクデス』

唯「今度雨が降ったときはこのパラソル立ててあげるから安心してねー」

花あず『アリガトウゴザイマス、ユイセンパイ』

憂「とにかく気に入ってもらえてよかった。でも」

唯「どうしたの、憂?」

憂(足まで生えたんだから、もう土に植える必要もないような気もするんだけれど……)

憂「ま、まぁいいよね。別に」

唯・花あず「?」


数日後

唯「和ちゃんが遊びに来たよ~!」

和「えっと、これが唯が言ってた例のアレ?」

花あず『アレデハナク、ハナアズデス』

和「そう、花あずちゃん」

唯「可愛いでしょ~」

和「ええ、ほんと梓ちゃんそっくり(でもすっぽんぽんで恥ずかしくないのかしら)」

花あず『ハナアズハハナアズデス』

和「そうよね、ごめんなさい。そしてよろしくお願いね」

花あず『ユイセンパイノオトモダチハ、ワタシノオトモダチ。ナカヨクシマショウ』

和「ふふ、いい子じゃない。とても唯が育てたとは思えない」

唯「む、失敬な」

花あず『ウイノオカゲデス』

唯「花あずぅっ」

花あず『チョットシタハナアズジョークデス』


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最終更新:2011年03月30日 23:09