「おじゃましまーす」

澪の部屋はいつ来ても安心する。

昔からよくこの部屋で一緒に遊んだからか。

タンスの上に置いてある芳香剤が私の鼻を良い具合にくすぐる。

「お茶、淹れてくるよ」

「ああ……ありがとう……」

いつもなら少しおちゃらけた言葉を一つや二つ投げかける。

いつもなら。


しかし、私はそうする気にはなれなかった。

相手は「澪」だ。

以前の関係よりも深まってしまった「澪」だから。

何故か、言えない。
明るく、ふざけられない。


―――――


「おい、今………」
私は澪を驚きの眼差しを以て見つめた。

澪は俯いている。
時々私の方を見ては、その度に顔を下へ向けた。

私は理解に苦しんだ。
澪に限って、そんなことは十に一つも無いと思っていたのに。

澪の部屋に、泊まりに来た時だった。
澪が私を呼んだのは、これを言うためだったのだ。

「だっ、だから……」

澪は再び言おうとした。しかし、口から言葉は出なかった。

瞳は潤み、頬は薄く紅潮している。

「くぅ………」

澪は辛そうだった。
自分をまだ認めたく無いのだろうか。
自分が、社会的にも人間的にも「異」であるということを。

「あの~澪…?あまり無理は…」

「いや、いいんだ、もう一度聞いてくれ!」

私が次に見た澪の瞳は、とても毅かった。

明らかに決意した、熱い眼差しだった。

「私はっ!!」

息を飲み、澪を再び見つめた。
いつの間にか私は澪を応援していた。

最初とは全く逆の気持ちになっていた。言え、言ってしまえと。

頑張れ!!
澪!!

「私は同性愛者だっ!!……しっしかも!!律!お前が好きだ!!」

大きな声だった。

大きな、声だった。
澪は椅子に座り、机に伏せ泣き始めた。

安堵。
混乱。
不安。

「きっと」こんな感情が澪の中で渦巻いていたのだろう。

私には察することしか出来なかった。

そして冷静になって、改めて戸惑った。

私は異性愛者だ。
澪のことは「親友」として大好きだ。

しかし、私は「親友」だと思って付き合っていたのに、澪は私を「恋人」として見ていたのだ。

「ひっ……ぅぅ……うっ……うっ……」

私は澪を慰めることも、抱き寄せることもできなかった。


「澪………」

ただ、呆然と立っていた。

すると突然、

「わっ………澪っ!?」

澪は私に抱きついてきた。

「私は律のことが好きだ!!好きになってしまったんだよっ!!!」

「澪…………」

痛かった。
心がこんなにも鋭く痛むなんて。

澪の体温が服越しに伝わってきた。

暖かい。
暖かい。
熱い。

澪は良い匂いがする。
澪特有の、とてもとても安心する良い匂いだ。

私は澪を抱き返した。長い黒髪を手で撫でながらゆっくりと梳いた。


「私も澪のことが好きだ。……けど、私は今まで澪を「親友」とでしか見ていない。……恋愛感情が芽生えるかどうかは分からない。……それでもいいか?……」

澪は私の胸に埋もれたまま、うん、うんと頷いた。
そして、また嗚咽を漏らし始めた。

私も泣いた。
こんなに苦しそうにしている澪を見ていると、何かに締め付けられるように、心が痛んだ。


―――――
―――

「はい」

「あ、ありがとう」

澪の淹れてきた紅茶を少しずつちびちびと飲むが、その間味は全く脳に伝わってこなかった。

澪の事を考えていて、舌にまで神経を回す余裕が無かったのだ。

晴れて私は澪の「恋人」となったのだが、やはりといったところか、私の澪に対する見る目は幾分変わっていた。

いや、澪は澪だ。レズだからなんだっていうんだ?
澪の前で固くなるなんて……私のバカ!

「ふふ…なんだ……たどたどしいな…いつも通りにしてれば良いじゃないか。」

「そうだな……あ、一つ聞きたいことがあるんだが………その……いつから私のことが好きだったんだ……?」

澪は手にしていたティーカップを机に置いた。そして、ポツポツと語り出した。

「……中学2年の頃からだ。あの頃は律のことを毎日想っていたんだ……」

澪は続ける。

「あの頃からかな、何故だか律を見ていると胸がドキドキし出したのは。」

「…………」

「今だから言えるが、律のことを想いながら自慰行為もした。そして、終わった後に激しく嫌悪した。自分はサイテーだって。好きな人がいやらしいことをされているところを想像しながら自分の欲を満たすなんて、今思っただけでも……!」

「澪……」

澪は震えていた。

「そして、自分は異常なんだって悟った。女子が女子を好きになるなんて、そんなこと許されていないのに…!家に帰って悩んで悩んで悩み抜いた!!時には吐いた!私は異常で……!!異端で―――」

「澪!!」

私は澪に抱き付いた。

「――!?」

「お前がレズだろうが何だろうが、そんなことは関係無い!私とお前だけのことだ!!周りがどうのこうの、そんなのもどうでもいいんだ!私が居る!!」

私は息を切らしながら澪をしっかり見据えた。


なんだ、私も澪のことが好きだったんだ。
本当に「親友」としてだったら、こんなことは言えない。


「親友」だったらこんなセリフ、恥ずかしくて口に出せない。

「律…ありがとう」
澪も私を抱きしめた。
お互いの心臓が共鳴するように鼓動する。

とくん、とくん、と。


澪が欲しい。

澪をもっと知りたい。

私は、私を抱き締める澪から一旦離れた。

「律……?」

可愛い。欲しい。愛したい。感じたい。感じたい。感じたい。

私は無言で澪の手を引き、ベッドの近くまで連れてくると一気に押し倒し、キスをした。

5秒
10秒
15秒

「……っぷぁ……」

澪は顔を真っ赤にしてこちらを見ている。

「律………」

この性に対する高ぶりは、もう誰にも止められない。

私はもう一度澪と唇を重ねた。

「ん………」

舌と舌が絡み合う。
唾液と唾液が混ざり合って、ぬちゃぬちゃといやらしい音をたてた。


「んん……ふぅっ……」

舌の先で澪の舌をなぶる。
上下から、左右から侵略していった。

私は十分に澪の口を堪能した後、唇から離れた。

「ん……はぁっ……はぁっ……」

息が荒い。
澪は宙を見つめたまま、顔を赤らめながらボーっとしていた。
そして私を切なそうな顔で見た。

もっと、して。
そう言わんばかりに。

私は着ていた服を脱ぎ、下着姿になった。

「……胸、分けてもらいたいよ…」

澪も着ていた服を脱ぎ、下着姿になった。

「ふふ……」

セックスだ。
これは完全なセックス。

私が澪の初めての相手となる。

私が澪の初めての相手……

私は白い下着の上から、澪の秘部を指でつぅっとなぞった。

「ひうぅ…!」

澪はベッドのシーツをぎゅっと握りながら、体を震わせて感じていた。

円を描くようにして澪の花園を愛撫し、侵していく。

時々人差し指も併せて使い、弄ぶ。

「んぁっ……つうっ……はぁっ…!」

澪の下着は愛液で塗れており、既にその先にある花弁をうっすらと覗かせていた。

私は澪の乳房を手で鷲掴みにし、こねくり回した。

「私もこれくらい有ればなぁ……」

「ふっ……うんっ………やっぱり……律も女の子だな……」

澪の下半身に位置していた私の右手は、いつの間にか澪のもう片方の乳房に移動していた。

両手で、澪の「女の証」を揉みしだいた。

乳頭を甘噛みする。
「やっ……」

澪の息遣いが更に荒くなる。
今度は乳頭を舌で舐めまわした。

丁寧に、やっくりと突起のコリコリとした感触を味わいながらなぶった。

乳頭は今にもはちきれんばかりにピンと立っていた。

「り……律ぅ……」
私は構わず乳頭を弄った。手で、舌で。
私の頭の中は乳房をなぶることでいっぱいだった。

乳輪の辺りを口でちゅうと吸う。

「あっ!!律!!も、もうっ…!!」

「はぁっ……はぁっ……!!」

興奮して、興奮して、興奮して、興奮していた。

右手で澪の乳頭を弄り回し、口でもう片方の乳頭を吸う。

イけ!!イってしまえ!!

「あ、あああ!!あああああああああ!!!!!……」

遂に澪は、大きく淫靡な声を出してベッドの上にグッタリと、ただただボーっとして居た。

快感が一瞬で体中を走り回り、雷に打たれたような衝撃が下半身に伝わる。

陰核からは透明な液体が溢れ、ベッドのシーツに染みを作っていた。

全身の筋肉は弛緩しきり、ピクンピクンと痙攣を起こす。その痙攣が起こる度に、全身がまた気持ち良くなる。

脳にまでその快感は侵入し、最早何もかんられなくなる。全てがどうでもよくなる。

澪は一瞬にしてオーガズムの虜になった。


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最終更新:2011年04月01日 04:12