澪「というわけで…」
紬「というわけで…」
澪・紬「「勝負だ(よ)!!!!」」
澪「…」
澪「……」
紬「……」
澪「勝負、ホントにするの?」
紬「いえ、なんとなくノリで…」
澪「私も…」
紬「……」
澪「……でもさ、痩せたいよな」
紬「……そうね」
澪「ダイエット、できるかな?」
紬「澪ちゃんの今までの戦績は?」
澪「聞かないでくれ」
紬「ごめんなさい…」
澪「ムギのほうは…」
紬「聞かないで…」
澪「ごめん…」
紬「で、でも大きなリバウンドはしてないの。すぐに元に戻っちゃうだけで」
澪「そもそも私はリバウンド以前に痩せたことがないんだけどな」
紬「……」
澪「ウエストも上がる一方だし…」
紬「ま、まあ結果痩せてないなら同じだと思うわ」
澪「……そうかもな」
紬「やっぱりダイエット、してみようかな?」
澪「私はいいや。結果は見えてるし」
紬「ここは、『一緒にやろう』の流れだったんじゃないかしら?」
澪「無駄な時間を過ごすくらいなら作詞でもしてたほうがいいよ」
紬「……」
澪「律にもバカにされそうだしさ」
紬「いくらりっちゃんでもこのことでバカにするなら許さない…」メラメラ
澪「私は怒る気力もない…」
紬「唯ちゃんが羨ましいわね」
澪「そうだな、ところで…」
紬「なぁに?」
澪「……何キロ増えた?」
紬「……私は『禁則事項』キロ……」
澪「……私は『閲覧禁止』キロ……」
紬「……」
澪「……」
紬「お互い辛いわね」
澪「そうだな」
紬「泣いていいかしら?」
澪「私は涙も涸れたよ」
紬「胸、借りていいかな?」
澪「恥ずかしいけど、いいよ」
紬「澪ちゃん!」ムギュッ
澪「よしよし、って私も他人事じゃないんだけど」
紬「うわあああぁぁぁぁん!!!」シクシク
澪(ムギっていいにおいするんだな)スンスン
紬「グスグス…(澪ちゃんってやっぱり胸が大きいのね)」
澪(何故か心が安らぐな)
紬「…(別に太ってるんじゃなくて単純に胸が重いだけなんじゃないかしら?)」
澪(こうやってムギと抱き合ってると、悩みがちっぽけなものに思えてくる)
紬(落ち着いてきたけど…もっとこうしていたいわ)
澪「もう、大丈夫か?」
紬「うん、でももう少しこのままで…」
澪「分かったよ」
紬(ここで離れるなんてもったいないもの)
澪(ホントにいいにおいだなぁ)クンカクンカ
紬「……」ムニュムニュ
澪「意図的に胸に顔を押し付けるのはやめてくれ…」
紬「ふふっ、バレちゃった?」
澪「全く…(気持ちよくなっちゃうだろ)」
紬「そろそろいいかな(少し名残惜しいけど)」
澪「そうか(少し名残惜しいな)」
紬「それで、もう1つお願いがあるんだけど」
澪「…言ってみて」
紬「抱きしめてもよかですかい?」
澪「だからどこの人だよ」
紬「ダメかな?」
澪「うん、まあいいけど…」
紬「では失礼して…えいっ!」ムギュ
澪「むぐぅ(今度はムギのほうが私の顔を胸に…)」
紬「あったかくて抱き心地いいわね~」
澪(なんだろう、柔らかくて凄く気持ちいい)
紬「澪ちゃん、そのままでいいから聞いて」
澪「うん」
紬「ありがとね。抱いて抱かれて気が晴れたみたい」
澪「まあ何の解決にもなってないんだけどな」
紬「ううん、スッキリして前向きになれた気がする。これって進歩じゃないかな?」
澪「ははっ、そうかもな。そろそろ放してくれ。暑くなってきた」
紬「え~、もっとこうしてたいな~」
澪「汗だくになっちゃうぞ」
紬「汗をたくさんかいたら痩せるかも…」
澪「下着が濡れると気持ち悪いからダメだよ」
紬「ざ~んねん」パッ
澪「…ふぅ」
紬「……澪ちゃんはどう?」
澪「ん?」
紬「気は、少しは晴れたかな?」
澪「言われてみると…さっきほどは落ち込んでないかも」
紬「よかったわぁ。抱きしめた効果はあったかしら?」
澪「あった、みたいだな」
紬「元気になってきたところでまたお願いが…」
澪「まだあるのか!?」
紬「うん、我侭言ってごめんね?」
澪「いやまあいいんだけどさ(抱きしめたあとだから…今度はまさかえっちな…)」
紬「あのね、私のこと、叩いてほしいの!」
澪「この話の流れでそれかよ!」ペシッ
紬「きゃっ!」
澪「はっ、思わずツッコミを…」
紬「……」
澪「だ、大丈夫か? 軽くだったはずだけど…」
紬「いいわぁ」
澪「へ?」
紬「やっと澪ちゃんに叩いてもらえた! 私、今凄く幸せ!」
澪「そ、そうなんだ」
紬「ありがとう澪ちゃん! 今日一日で澪ちゃんと凄く仲良くなれた気がする!」
澪「ははっ、それじゃあまるで今まで仲良くなかったみたいじゃないか」
紬「あ、ごめんなさい。そういう意味じゃなくて…」
澪「分かってる分かってる。ちょっと冗談」
紬「もう、澪ちゃんったら~」
澪「…案外何でもないことなんだな」
紬「え?」
澪「いや、叩くことがさ。前のときは凄く叩きづらくて、結局無理だったのに」
紬「もっとどんどん叩いていいのよ?」
澪「私はそんなに暴力的じゃありません」
紬「うふふ、知ってるよ。澪ちゃんが暴力的なのはりっちゃんにだけだもんね」
澪「あれはアホに対する突発的な処置だ」
紬「私も盛大にボケれば突発的な処置、してくれる?」
澪「頼むからムギはムギのままでいてくれ…」
紬「それはダメよ。だってこれから痩せるんだもの」
澪「あ、そこに話が戻るんだ」
紬「初心を忘れるべからずよ」
澪「それ、なんか違くないか?」
紬「むぅ、そこはツッコミ所なのよ澪ちゃん! ちゃんと叩かないと」
澪「今のは分かりにくかった…」
紬「難しいのねボケって」
澪「仮に計算してたとしても、ある程度ナチュラルさを出さないとツッコミを入れる気にはさせられないからな」
紬「りっちゃんのように?」
澪「まあそうだな」
紬「りっちゃんって凄いのね。私では真似しきれないわ」
澪「ムギはムギのままでいいんだよ。ムギは
田井中律じゃない、
琴吹紬なんだからさ」
紬「澪ちゃん…」ジーン
澪「っていうかムギが律化したら私が困る。ただでさえ最近は悪ノリ気味なのに…」
紬「もっとはしゃいだら私もりっちゃんのように叩いてもらえるのね」
澪「意図的にそれが目的でふざけるようならもう二度と叩かないぞ」
紬「冗談よ、そんなことはしないわ。だって…」
紬「私は私のままでいいんだよね?」
澪「そうそう」
紬「でも、変わらなければいけないこともある……」
澪「あ、それは私も同意」
紬「この身体から」
澪「この身体から」
澪・紬「少しでも脂肪を追い出さなければならない!!」
紬「私、燃えてきました!」
澪「私も、少しはやる気が出てきたような気がする」
紬「では改めて…」
澪「ああ…」
澪・紬「「勝負だ(よ)!!!!」」
澪「…」
紬「…」
澪「……」
紬「……」
澪「勝負、ホントにするのか?」
紬「いえ、やっぱりなんとなくノリで…」
澪「私もだ…」
紬「でもね」
澪「うん」
紬「一緒にやりたいとは思ってるの」
澪「そうだな、私も同じ気持ちだ」
紬「ダイエットにはパートナーがいるといいって聞いたことがあるわ」
澪「一人では挫折しそうだけど2人ならあるいは…」
紬「一緒に頑張りましょう澪ちゃん!」
澪「ああ! でも無理は禁物だぞ?」
紬「その辺も2人なら調節し合えるんじゃないかしら」
澪「成功したことがない私にあまり期待されても困るけどな」
紬「失敗は成功のお母様よ!」
澪「うん、まあ程々に頑張るよ」
紬「ちなみに私は叩かれれば叩かれるほど痩せる体質なの~」
澪「……それもボケなのか?」
紬「……うん」
澪「まあ本気で一瞬、そんな簡単なことで痩せられるなんて羨ましい、と思ってしまったのは内緒だ」
紬「バラしてるわよ澪ちゃん。それともボケなのかしら…?」
澪「いや、言葉どおり本気で…」
紬「……ごめんなさい」
澪(試してみようと本気で思ってしまったことこそ内緒なんだけどな)
紬「…一応試してみる」
澪「いやいや滅相も無い!」
紬「じゃあ明日から始めてみようか?」
澪「そうだな。でもさ」
紬「ええ」
澪「まずは軽い運動から始めないか? いきなり食事制限とかしたら周りにいらない心配をかけそうだしさ」
紬「そうねぇ、お弁当が減ったりティータイムのお菓子が減ったりしたら不審がられるかも」
澪「まあ本音を言えば、お菓子を減らせばそれだけ目標体重への近道になると思うんだけどな」
紬「私も、摘み食いをやめられれば…」
澪「摘み食い?」
紬「あ、いや、何でもないの!」
澪「ムギはそんなことしてたのか。ちょっと意外かも」
紬「バレちゃった…」
澪「ハハハ、自分からバラしたんだろ」
紬「みんなには内緒にしてね?」
澪「バラしたりなんかしないよ」
紬「ダイエットのことも、2人だけの秘密ってことでどうかな?」
澪「律あたりがうるさいだろうからなぁ、それでいいと思うよ」
紬「ううん、そうじゃなくて」
澪「?」
紬「2人だけの秘密が欲しかったの」
澪「え?」ドキッ
紬「……」
澪「……」
紬「なんか、恥ずかしいね」
澪「自分から言ったくせに…ムギ、顔赤いぞ」
紬「澪ちゃんこそ」
澪「そ、そんなことないぞ」
紬「……」
澪「……」
紬「……ふふふっ」
澪「な、なに笑ってるんだよぉ」
紬「澪ちゃんが可愛いなって思って」
澪「からかうなよ」
紬「そんなつもりはないわ、これは私の本音。もちろんさっきのもね」
澪「ムギ…」
紬「2人だけの秘密、仲良しさんの証みたいでいいなって」
澪「秘密がなくても、わ、私達は仲良しだろ」
紬「澪ちゃん顔真っ赤」
澪「言わないでくれ…」
紬「テレなくてもいいのに」
澪「ムギだってさっき顔真っ赤にしてただろ!」
紬「あ、うん…」
澪(あ、また赤くなった)
紬「2人だけの秘密って、ちょっと恋人っぽいなって思ったから…」
澪「えええ!?」
紬「……」ドキドキ
澪「……」ドックンドックン
梓「……何見つめ合ってるんですか?」
澪「わわっ!」
紬「きゃっ!」
梓「2人とも驚きすぎです」
澪「いつの間に…」
梓「今来たばかりですけど…」
紬「全然気付かなかったわ」
梓「2人とも顔を真っ赤にして見つめ合ってるから、声をかけるべきかどうか一瞬迷いました」
澪「そ、そうなんだ」
梓「2人して風邪ですか?」
紬「ううん、そんなことないわ。あ、今お茶淹れるわね」
梓「ホントに大丈夫ですか?」
澪「ああ、もちろんだ」
梓(なんか怪しいなぁ)
唯「澪ちゃんあずにゃんおいーす」
律「たのもーっ!」
梓「遅いですよ唯先輩律先輩」
唯「いやー掃除当番だったもので」
律「そういう梓だって今来たところなんだろー。廊下を歩いてる後姿がチラっと見えたぞ」
梓「ぐっ、細かいことはいいんです!」
紬「みんな揃ったのね。今2人の分のお茶も淹れるから待ってて」
澪「いやムギ、さっそく練習だ!」
律「え~? お茶くらいいいじゃんいいじゃん」
唯「お菓子食べてからにしようよぉ」
梓「もう時間もないですし、練習しましょうよ」
律「梓だって遅く来たくせに」
梓「だからこそ責任を感じて一刻も早く練習を」
律「あーはいはい梓ちゃんは真面目でちゅね~」
梓「むぅぅぅ」
紬「澪ちゃん、少しくらいお茶しても…」ヒソヒソ
澪「ムギ、ダイエットはもう始まってるんだ」ヒソヒソ
紬「……キュピーン!」
澪(目の色が変わった!?)
紬「これはチャンスね!」ヒソヒソ
澪「ああ、時間がおしてる今ならお茶をしない理由ができる。つまりは食べなくても不審がられないってワケだ」ヒソヒソ
紬「みんな! 早く練習しましょう!」
律「おおっ、ムギがいつになくやる気だ!」
唯「いつものムギちゃんじゃない…」
梓(やっぱり澪先輩との間で何かあったのかな?)
澪(最初は全然やる気がなかったダイエットだけど…)
澪(考えてみれば痩せられるわ練習時間が増えるわでいい事尽くめじゃないか)
紬「澪ちゃん澪ちゃん」
澪「ん? どうしたんだムギ」
紬「明日の早朝から毎日一緒にジョギングしましょう」
澪「ああ、まずはそこからだな」
紬「うふふ、朝から澪ちゃんとデートできるなんて嬉しいな~」
澪「で、デートって…」カァァ
梓「…内緒話してないで早く始めましょうよ」
律「乗り気だったはずのムギはどこ行ったんだー?」
紬「ふふっ、ごめんねみんな」
澪「べ、別に内緒話なんかしてないんだからな!」
梓「は、はぁ…」
唯「きみをみてると~いつもはーとどきどきぃ♪」ジャカジャンジャカジャン
澪(早朝のジョギングデート、か…)
唯「ゆれるおもいはましゅまろみたいにふ~わふわ~♪」ジャンジャン
澪(うん、いい詩が浮かんできそうだ)
唯「い~つもがん~ばる~」
紬(明日から楽しみね)
唯「き~みのよこがお~♪」
紬(デートも楽しみだけど、でも絶対に痩せてみせる!)
唯「ずぅとみてても~ き~づ~か~な~い~よね~♪」
紬(……澪ちゃん、負けないからね!)
おしまい♪
最終更新:2011年04月01日 21:17