5-3話 純「五月雨二重奏」



澪「やっぱり私には才能なんてないのかもしれない結局詩の方もみんな陰で笑ってんだろぁぁあああ」ブツブツブツブツブツブツ

純「(なんか澪先輩の変なスイッチ入ってもうたーーーー!!!!)」エエエエエ

純「ま、まぁ、澪先輩!!!そんなことお気になさらないで・・・・」

澪「」ブツブツブツブツ

純「(えwwwなんかいつもの澪先輩からは想像できないくらいねちっこい落ち込み方なんですけどwww)」

純「(だ、誰か澪先輩の取り扱い説明書もってこい!!!!)」アタフタアタフタ

澪「」ブツブツブツブツブツブツ

純「(てか、さっき澪先輩『技術より音楽は楽しむことが大切だ』みたいなこと言っちゃって本当は自分が一番きにしてんじゃないの!?
   こんなに落ち込んじゃってさぁ~。私は澪先輩のマネして演奏しただけなのになぁ~~)」

純「(手の先だってこんなに・・・ボロボロだっての!!!!めっちゃ痛いっての!!!
   人が本来進化の過程で望んでた手の先の使い方とはベースはかけ離れすぎだっての!!! 
   親指ははじくためのものじゃないの!!!)」

純の手の先「ボロッ」

純『くそったれぇごまんたれぶぅ・・・・才能がないやつが努力するなんて当たり前ジャン・・・
  しかも、私の性格上それをあからさまに隠すなんてもっと当たり前ジャン・・・
  ついでにいうと演奏の仕方マネしたのだって手の先があの演奏方法だと痛くないからだっつの!!!』

純『私みたいなやつが澪先輩よりもちょっとばかしうまく弾いたからってそれですか、その態度ですか。
  私みたいなやつは、うまく弾いちゃいけないんですか!?あぁ!?』
  ※澪より純はうまく弾いてません

純『でもそれでも私はうまくならなきゃいけないんだおぉぉおおおおお!!!!』

純『さすがの澪先輩でもなんだかイラっ☆ときちゃったもんねぇぇぇぇええええ!!!!』

純「(な~~~んて澪先輩にいえたらどれだけいいでしょうね。ねぇ、今の私)」プヒョ

澪「」ブツブツブツブツブツブツ

純「(こんな状態の先輩に私の感情を畳み掛けたところで、
  それはもう・・・・今の苦しみのやつたありにしか私は思えないよ。今の私)」

純「(・・・まぁ、さ。少なくとも、澪先輩の演奏方法を完コピはできたみたいだし・・・・
   それで、今は、今の自分を誉めようぜ、過去の私)」

純「(・・・誘われたときには、待たせちゃいけないんだからさ。
   今はたくさん侮られていいんだ。心の垢をためてためてためまくって、
   いつの日かそれを私の力にすればいいんだ・・・・)」

澪「」ブツブツブツブツブツブツ

純「(よっし・・・)」

♪~~~~

澪「ツブツブツb・・・・このイントロは・・・・」ハッ

純「(よし、なんとか気をひけたかな・・・あとは・・・たしかここはこうで・・・・)」ベベンベ~

純「いたっ!?」

澪「ど、どうしたんだ!?」

純「あ、いえ・・・・な、なんでもないです・・・・
 ちょっとはりきりすぎて溢れんばかりの負けん気を抑えきれなくなって・・・・
(サヨナラ指の先のひふぅうぅwwwww)」ハハハハハ

澪「?・・・・大丈夫なのか?それは」

純「あ、はい。大丈夫ですからまったくご心配なく」hahahaha

澪「そ、そうなのか・・・よかった・・・というか、ちょっとボーっとしていたよ。すまん」

純「は、はぁ・・・ボーっと・・・ですか・・・?(ひょっとして澪先輩ってちょっとヤンでる人?)」

澪「それより・・・さっきのは・・・」

純「あぁ・・・HTTの新曲ですよね?」

澪「うん。新曲というか、一番新しい曲だな・・・その曲も梓が?」

純「はい。梓が『ベースが特にかっこいい曲だよ』って言って渡してくれましたよ」

澪「そうか・・・べ、っベースがかっこいいか・・・///」ツェレッ

純「でも、かっこいいけど、これかなり難しいんですよね」

澪「えっと・・・どこが難しいんだ?」

純「たとえば・・・ここですかね?」ベベドゥドゥベーダゥダゥ

澪「あぁ・・・そこか・・・」

純「私の弾き方だと、どうも指の動かし方が悪いんだろうことはわかるんですけどね。
  そっからどうすればいいのかがまるっきりわかりません」サッパリサッパリ

澪「そこはだな・・・ちょっとまってて・・・」

純「はい」

澪「百聞は一見にしかずっていうしな。私がちょっと弾いてみるから・・・」ガサガサゴソゴソ

―15分後―

純「なるほどーそこはタッピングからの流れるようなグリッサンドで薬指がしなやかにぐんなりとー」

純「ってそんなことできるわけないじゃないですかっっ!!!」カッ

澪「ぴひゃ」ビクッ

純「あ、いきなり大声だしてすいませんした」謝罪

澪「ははは・・・ま、まぁ・・・なれるしかないかな・・・私もかなり練習したし」タハハハ

純「そうなのですか・・・澪先輩がかなり練習したなら、
  私はその10倍は練習しなきゃならんですな!」

澪「そ、そんなおおげさな・・・・」

純「」メモメモメモ

澪「て、聞いてないし・・・・」ションボリ

純「で、さっきのとこが・・・」メモメモ

澪「・・・・」

澪「なぁ」

純「はい、なんでしょうか」ニコっ

澪「純ちゃんはさ、その・・・どうしてそんなに熱心に私達の曲を練習してるのかな?」

純「へ?そんなのHTTが好きだからですよ」サラッ

澪「いや・・・いくら好きでもさ・・・なんというか・・・・
  私も、さっきの曲を含めて2曲しか聴いてないけどさ、どうやら私の演奏を真似ているっというか。
  ・・・・むしろ、コピーをしようとしてるような感じがものすごく一緒に練習してて伝わってきたんだ」

純「・・・」

澪「多分さ、2曲だけじゃなくてもっと私達の曲弾けるんじゃないかな?私みたく」

純「えっ!?な、なにをおっしゃる澪先輩!!
  いくらHTTが好きだからってそんな何曲も弾けるわけないじゃないですか!」シドロモドロ

澪「でも、どうもそうには思えないんだよな…その、ボロボロな左手見てる限りでは、さ」

純「」サッ

澪「無我夢中にベース弾くとそうなるんだよな…私も経験あるからわかるよ」

純「えっとぉ…」

澪「別に、責めてるわけでも怒ってるわけでもなくてさ、純粋に『興味』があるんだよ」

純「きょうみ?」

澪「うん。どうしてそこまでベースにこの人は熱中しているんだろう、
  この人をここまでベースに向かわせているものは何だろうっていう『興味』」

純「……(興味か)」

澪「あ、いや、その、無理に聞こうとかそういうのは全くなくてただ、その…ゴニョゴニョ」

純「……あの」

澪「………うん、な、なんだ?」ゴクッ

純「取り敢えず、聞きたいんですけど」

澪「お、おう」ゴクッゴクッ

純「自分たちの曲を私みたいなやつに、こう……、なんというか、
  私は梓を通して音源手にいれて。
  いわば、根回しみたいなそんなことさせて練習してるんですが、
  それについて嫌悪感とか沸きますか?」

澪「嫌悪感…」

純「嫌悪感ってか…気持ち悪いとか、私に対して思いましたか?」

澪「え…いや、うん、ぜ、全然嫌な気持ちはしなかったよ」

純「…」

澪「純ちゃんは一生懸命弾いてくれてるからかな…
  私は嫌な気持ちは本当にないよ」

純「よ、よかった」ホッ

澪「…逆にどうして純ちゃんは・・・・」

澪「私達の曲をそんなに一生懸命弾くのかなって思うくらいだよ」

澪「本当に、なんでなんだ?」

純「……」

純「梓のためです」

澪「梓?」

純「ベース弾くのは元々は自分の趣味です。
  でも、やっぱ今こんなにベースに打ち込むのも、
  HTTの曲ばっか練習するのも梓のためです」

純「いや、むしろ梓のおかげですかね、うん。
  前の私はやっぱベースに対してもっとチャランポランだった気がするし…」タハハ

澪「……」

純「澪先輩?」

澪「えっと、…どうして梓のためなのかな?」

純「だって…先輩たち…」

純「梓残して卒業しちゃうじゃないですか」

澪「……」

澪「なら、こんな風にこっそり隠れるなんてしないで、
  今からでもけいおん部に入ってくれればいいじゃないか」

純「私も最初はそう思ってたんですよねー。 
  で、HTTの曲をある程度弾けるようになってから入部して
  みんなを驚かせてやろう、と」

純「ほら、ヒーローってかならず後から現れるってのが相場でしょ?」ズビシッ

澪「あ、あぁ…?」

純「でも、今日ここに来て考えが変わりましたえぇ、変わっちゃいました。
  そりゃ、もう365度ほどね!!」

澪「………(この子の頭は律並なのかな・・・?)」

純「いつかどこかでなにやらお偉いさんが言ってました

『空間を造るのは場所じゃない、人だ』と」

澪「……」

純「けいおん部。今、その言葉通りのことが起きてます。
  私は、この身をもって体験しました」

純「けいおん部を造るのは、場所じゃない、人である、と」

純「だから、私が今けいおん部に入ったとしても、
  それは梓のためにならない。私のためにだってならない」

純「先輩たちが卒業した後に自分から入っても、
  きっと梓はそれを同情としか受け取らない!!」

純「私は心から梓と演奏したいのにっ!!!!」

純「梓に、『先輩たちがいなくなって、今傍にあるものがすべてなくなったって、
  また私たちと始めればいいんだよ』なんて、・・・・そんなこと、」

純「・・・・・言えませんよ」タハハハ 

澪「……」

純「出来れば、今あるものを全て引き継ぎたいです。雰囲気も、空間も、音楽も…」

純「てか、演奏者が変われば、演奏自体かわるし…。そんなこと出来ないなんてこと、判ってますけどね」フヒヒ

澪「純ちゃん…(いいセリフなのに笑い方が気持ち悪い・・・)」

純「なんでしょう?」

澪「私、色々純ちゃんを見直したよ」

純「え!?惚れ直した!?」

澪「」

澪「ほ、ほ、惚れ直してない惚れ直してない…///」ブンブンブンブン

純「いや、冗談なんでそこまでマジに否定されると悲しくなるというか・・・」

澪「」

純「あ、冗談なんで本気で受け止めないでくださいね」

澪「」

純「(澪先輩からかうのおもしれーーー!!!)」

純「(梓もコレくらい素直になってくれればいいのになぁ~)」ウンウン

澪「(く、くそぉ・・さっきから純ちゃんのペースにはまりまくってる私がいる・・・・///)」

純「まぁ、だからとにかく、梓が認める私になるしか私に道はないのですよ、澪先輩」オK?

澪「……なんだか、ごめんな、純ちゃん…」

純「ははは、いいんです。自分が好きでやってることですから」

ドアガチャ

澪純「?」

ムギ「二者面談が終わって、ベースの音がきこえたから澪ちゃんがいると思ったんだけど・・・」チラッ

澪「あぁ・・・ムギか・・・今日は部活は休みだよ」

純「」ドキドキ

ムギ「えぇ・・・でも、きちゃったから、お茶いれるわ」ニコっ

純「(私の存在スルーwww)」

ムギ「」チラッ

純「(あ、よかったwww今チラッとみたwww私存在してないかと思ったwww本当によかったwww)」

ムギ「ええぇっと・・・そちらは・・・」

純「私は梓の友達の純です!はい。それ以上でも以下でもありません」

ムギ「そうなの。お茶、飲むわよね?」ニコニコ

純「えっと・・・、でも・・・・」

ムギ「お茶はみんなで飲んだ方がおいしいから。純ちゃんの迷惑でなければ、ね?」ニコニコ

純「あ・・・なら・・・・ぜひ・・・・お願いします」

ムギ「はーい」ランランルー


ズズッ

澪純「おちゃがうめ~~~」ホッ

ムギ「ありがとう」ニコニコッ

澪「ペチャクチャペチャクチャ」

ムギ「ペチャクチャペチャクチェ」

純「(どうしてこうなった!)」ズズッ

純「(いやーまさか、興味でけいおん部の部室に来てみたら、
   まさか澪先輩にベースを教えてもらえて。
   あまつさえムギ先輩のお茶までいただけるなんて思ってもみなかった)」ズズッ

純「(あ、そういえば、梓の予想は違ってたな)」チラッ

澪「やいのやいの!!?」

ムギ「すったもんだすったもんだ♪」

純「(唯先輩と律先輩じゃなくて、澪先輩とムギ先輩がきたよ)」クヒヒ

純「(まぁ、なにが起こったとしても私はベースを弾くまでだよ、梓くん♪)」ズズッ

純「(うん、やっぱ、どっちにしろ憂は私専属のお茶係として入部決定だな)」ウンウン

ムギ「あ、純ちゃん、窓の外みてみて」

純「へ?」

澪「雨、いつの間にかやんでたんだな」

ムギ「きれいねぇ~~」ハァ

澪「なんだか、久しぶりに見るかも」

純「・・・・あ」




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最終更新:2011年04月05日 18:45