Episode.10




《ヒウンシティのどこかのビル》


澪「それでゲーチス様、私が残った意味はなんでしょう?」

ゲーチス「ええ、“シッポウシティ”へ行ってほしいのです」

澪「“シッポウシティ”へ?」

ゲーチス「シッポウの博物館…、そこから盗んできてほしいものがありましてねえ」

澪「分かりました」

ゲーチス「プラズマ団の下っ端も数人お貸します。ではお願いしますね」

澪「はっ!」タッ!

…………
………
……

「ウエ~ン!!」

唯「あっ、あの子だ!」

アーティ「なにかあったのかい? お嬢さん」

「ん…? あ…アーティさん」

アーティ「おや…、君は…」

律「知っているんですか?」

アーティ「うん。
…どうしたんだい? アイリスちゃん」

アイリス「“ちゃん”…?」ムカッ

アーティ「うん…?」

アイリス「子供扱いしないでよっ!!」キィー!

アイリス「私も立派なトレーナーなんだから!!」

アーティ「ご…ごめんごめん…」

律「さっきまで泣いてたくせに…」ボソッ…

アイリス「はああ!?」ギロッ

律「ひぃっ!! な、何でもございまへんっ」

アイリス「村のみんなもみ~んな、子供扱いするんだからあっ!!」ムキーッ

アーティ「お、落ち着いて、アイリスちゃん!
僕が悪かった! 僕が悪かったよっ!」

アイリス「んー……」ムスー

唯「とりあえず何があったのか言って? ね?」

アイリス「……まれたのよ」

唯「ふぇ?」

アイリス「盗まれたのッ!! 私のポケモンがッ!!」

唯「え…」

アイリス「私の大事なキバゴがぁ~!!」ワンワン…

アーティ「わ…わぁ、泣かないでくれ…」

律「盗まれた…!?」

アイリス「そうなの…。変な奴らがいきなり……、こんなビルだらけなところじゃなかったら取り返せたのに!!」

律「変な奴ら、か…」

唯「やっぱりりっちゃん、それって…」

唯律「プラズマ団…!!」

アーティ「プラズマ団って…あの?」

唯「! プラズマ団を知っているんですか!?」

アーティ「まあ“ポケモン解放”の演説の話でね…。
ていうか、こんな事態に話に出てくるなんて…、なに? プラズマ団って悪い人達?」

律「はい。ポケモン解放といっては、人を襲ったりポケモンを奪ったりする…」

唯「悪い人達です!!」

アーティ「………そうか。
…まずはアイリスちゃんのキバゴを盗んだ犯人を探そう。まだ“ヒウンシティ”にいるかもしれないからね」

アーティ「ぼかぁ、“ヒウンストリート”を。
唯くんは“スリムストリート”、律くんは“モードストリート”を頼んだよん」

アーティ「それからアイリスちゃんは危ないからジムに…」

アイリス「イヤよ!!」

アーティ「!!」

アイリス「私も探す!!」

アーティ「でもアイリスちゃん、君は都会になれてないのに動き回るのは…」

アイリス「キバゴも私が来るのを待っているはずよ!!」

アイリス「私はキバゴのトレーナーなの…!!」

アーティ「アイリスちゃん…」

律「よし、分かった!」

唯「りっちゃん?」

律「アーティさんと唯はそれぞれで探してくれ!
私はアイリスと犯人を探す!!」

アイリス「…!」

律「それならいいですよね? アーティさん」

アーティ「…しょうがないなあ」ポリポリ

アーティ「わかったよ。三手に別れて探そう。
みんな、頑張ってくれ」

唯律「はい!!」

アイリス「……」

…………
………
……

《ヒウンストリート》


アーティ「ん~…探すといっても、ここはイッシュ最大の大都市……。
ここで人探しなんて、雲を掴むような話なんだけどなあ…」

アーティ「どうしようか…」

アーティ「……」

アーティ「とりあえず、色々とあたってみようか」

…………
………
……

《スリムストリート》


ブツブツ…

ヒヒヒヒ……!

唯「なんだろう…。ここ、恐いなあ……」オロオロ

唯「ん…?」

カランカラン♪

唯「あーっ! カフェだぁ!!」

唯「わぁーい♪」タタッ

…………
………
……

《モードストリート》


律「さあ、探すか…」

アイリス「…」タッ!

律「!? ちょ、どこ行くんだよ!!」タッ

アイリス「犯人、もうヒウンにはいないと思うわ」タッタッ

律「はあ? なんでそんなことが言えるんだ!?」タッタッ

アイリス「シックスセンス…第六感……。“勘”よ、“勘”!!」タッタッ

律「はあ!? 勘って…、そんなんで…」

アイリス「私の勘は当たるの!! いいから、ついてきなさい!!」ダッ!!

律「あっ!!」

アイリス「」タッタッ

律「なんつう運動神経だ…。
ったく、……待てよお!!」ダッ!!

…………
………
……

《4ばんどうろ》


律「はあはあ…」

アイリス「まったく、このくらいで息切れなんて…、子供ね!」

律「うる、せえ…。あんな長い道を一気に走り抜けたら、誰だってこうなるよ…」

アイリス「なっさけないわねぇ~」

律「……。つうか、ここはどこだ?」

アイリス「“ヒウンシティ”の北、“ライモンシティ”へと結ぶ砂漠道……“4ばんどうろ”よ!」

律「砂漠は初めてだけど…。
すげえな、砂けむりで視界が霞む…」

アイリス「…そうなのよ」

律「へ?」

アイリス「この砂…。隠れるには絶好の場所じゃない?」

律「あ、確かに…」

アイリス「実は犯人達はね、『“4ばんどうろ”へ逃げるぞ!』って言ってたのよ」

律「…勘じゃないじゃん」

アイリス「細かいことはいいのよ!」

律「でも知ってたなら、アーティさんに言えば良かったのに…」

アイリス「ダメよ! そんなことしたら、アーティさんまで来ちゃって、犯人に警戒されちゃうわ」

律「…なるほどな。
でも、こっちから犯人が見えないと意味がないぞ?」

アイリス「わかってるわよ!
だから今から探すの!!」

律「はーいはい、わかったよ」

ズザッ!

律「うわ、結構深いな。この砂…」

アイリス「歩きにくい…」

ズズズ……

アイリス「…?」

律「…なんか……」

律「砂が動いてないか!?」

ズズズ……!!

アイリス「…!!
あ、あれ!!」

律「渦…!?」

アイリス「違うわ! 注目すべきは真ん中のあのポケモン!!」

「ビィー!!」ズザザァッ!!!

律「あのポケモンは…!?」ピッ

ポケモン図鑑『ワルビル、さばくワニポケモン
めを おおう とくしゅな まくが ぶったいの ねつを かんちするため くらやみでも まわりが みえるのだ。』

律「く…、“眼をカバーする膜”があるからアイツはこの砂の中でも平気なのか…!」

アイリス「言ってる場合!?
ワルビルはね! “数匹で群れをなして行動する”の!! でもあのワルビルは一匹!!
ということはよ…!!」

「野生のポケモンじゃあないってことだなあ!」

律アイリス「!?」

プラズマ団下っ端「プラーズマー! 俺はプラズマ団下っ端!」スタッ

下っ端女「同じく!」スタッ

アイリス「あんた達…! 私のキバゴを盗んだ奴ら!!」

律「やっぱりお前らの仕業か! プラズマ団!」

下っ端男「へへ、こいつのことか?」スッ

キバゴ「キバキバー!」ジタバタ

アイリス「キバゴ!!」

アイリス「あんた達! キバゴを離しなさい!!
じゃないと、ひどいわよ!!」

下っ端男「へっ、別にキバゴに危害は加えねえよ」

下っ端女「私達はポケモン解放をするために、人からポケモンを奪うのよ。ポケモンを傷つけるなんて以っての外ね」

律「ふざけんな! そのキバゴ、嫌がってるじゃねえか!! やめろ!!」

アイリス「! あんた…」

下っ端男「へっ…。ポケモンには危害は加えないと言ったが……、トレーナーは別だぜ?
…ワルビル!!」

ワルビル「ビィー!!」ビュワアアッ

律「くっあ…!!」ドオオッ!

アイリス「キャアア!!」ドワアッ!

下っ端男「ワルビルの技、“すなじごく”!!
生き埋めにしてやるぜえ!!」

ブワアアアアアッ!!!!

シーン……

下っ端男「へへ…、呆気ないもんだぜ」

下っ端男「さーて、七賢人様方と合流するぞ…」

ドガアアッ!!!

下っ端女「キャアア!!」

下っ端男「な、なんだ!?」

「グリュー!!」バッ!

下っ端男「モグリュー!?」

律「へっ、残念だったな!」

下っ端男「お前…!!」

律「そう簡単に埋められてたまるかよ!!
モール! “きりさく”!!」

モール「グリュー!!」シャキンッ!

下っ端男「くっ…!
ワルビル! 受け止めろォ!!」

ワルビル「ビィー!!」ザンッ!

ガキイイッ!!!

モール「!!」

ワルビル「ビィー!!」ブンッ

モール「グリュー!?」ドサアッ!

下っ端男「はッ!! モグリュー程度、相手になんねえな!!」

律「…へへっ」ニヤッ

ボオオオオオ!!!!

下っ端男「うおお!!?
…ほ、炎!?」

シママ「シマー!!」ボウッ!!

下っ端男「シママ!?
モグリューは囮?! 砂の中に隠れていたのか!!」

ボオオオオオ!!!!

下っ端男「くううっ…!」

律「すごい炎だろ? “ニトロチャージ”だ。でもな、シママの最大の武器は炎じゃない! この膨大な熱量を生み出す“電気”だ!!」

律「“10まんボルト”!!」

シママ「シマー!!」バリバリ!!

下っ端男「ぐああっ…!!」

律「いいぞ、シママ! …いやなんかよそよそしいな…、そうだな……。“ボルト”だ!! お前のニックネームは“ボルト”!!」

ボルト「シマー!!」

律「あいつを逃がすな、ボルト!
確実に狙って、“でんげきは”!!」

ボルト「シマー!!」ビリッ…

下っ端男「調子に……」

律「…!」

下っ端男「乗るなあッ!!!」

ワルビル「ビィー!!」ブンッ!

ボルト「!?」ドガッ!!!

律「ボルト…!!」

下っ端男「威勢良く出てきたはいいが…、これなら埋まってた方が良かったな?」

律「くそ…」

律(アイリスは…まだ埋まってるのか…? 早く助けないと…!!)

下っ端男「終わりだァ!! ワルビル!!」

ワルビル「ビィー!!」ダッ!

律「く…!!」

ドッ………!!

ワルビル「…!?」ピタッ

ドドド……!!!

下っ端男「なん…だ? この地鳴りは…」

ドドドド…!!!!

ドオオオオオオン!!!!!!!

ワルビル「ビィー!!?」ズサアッ!!

アイリス「あんたこそ調子に乗らないでね…。私があの程度で埋められると思った?
私はキバゴのトレーナー! キバゴを助けるんだから!!」

律「アイリス!!」

「リュウウウ!!!」

律「…と、このポケモンは?」ピッ

ポケモン図鑑『ドリュウズ、ちていポケモン
モグリューの進化系。ちちゅう 100メートルに めいろの ような すあなを つくる。ちかてつの トンネルに あなを あけてしまう。』

律「へえ…こいつが…」

下っ端男「なにが来ようと同じだ!! いけえ! ワルビル!!」

ワルビル「ビィー!!」ダッ

アイリス「ドリュウズ、“ドリルライナー”!!」

ドリュウズ「リュウウウ!!!」ギュオオッ!

ワルビル「!!?」

ドガアアアアン!!!!

ワルビル「ビィー!?」

下っ端男・女「ギャー!!!」

ドン! ドン! ドン!

アイリス「やったあ!」

律「す、すげえ…」

アイリス「ドリュウズ、戻って!」シュウウッ

キバゴ「キバキバー!」タタッ

アイリス「キバゴ!!」

ダキッ!

キバゴ「キバー!!」

アイリス「よかったあ。一時はどうな…る……こと、か……」バタッ

キバゴ「キバー!?」

律「ア、アイリス!?
そうか…この砂漠の暑さでやられ……、うっ……」クラッ…

律「ダ、メだ…。私も……」バタッ


………
……

ザッザッ…

「ん…、ここに倒れているのは…我らの同志…」

「…と……、トレーナーですかね?」

「どうします? カトレアさん」

カトレア「…報告は受けています。このトレーナー達はどうやら我らの邪魔をしたみたいですね」

「…連れていきます?」

カトレア「そうしましょう、シキミさん。
ギーマさんとレンブさんも手伝って」

ギーマ「分かりました」

レンブ「…承知した」

シキミ「では、行きましょうか」

カトレア「はい。ゲーチス様の元へ…」

ササッ…

キバゴ「キバァ…」




Episode.10 fin



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最終更新:2011年04月05日 22:52