鈴木家。
純「今日さ、夜桜見物にでも行かない?」
憂『えっ、今日?』
純「そうそう」
憂『もしかして駅前の?』
純「そうだよ」
憂『うーん。どうしようかなぁ』
純「明日から学校だし、春休み最後の思い出作りに。
梓も呼ぶからさ」
憂『じゃあ、いいよ』
純「おっ、やったー。それじゃあ、八時に駅前ね。遅れちゃダメだよ」
憂『うん。分かった』
純「またあとでね」ピッ
「よし、次は梓に」
プルルルル、プルルルル、ガチャ
梓『はい』
純「よー、梓」
梓『純、何か用?』
純「今、暇?」
梓『まぁ、暇かなぁ』
純「じゃあさ今日、夜桜見物にでも見に行かない?」
梓『夜桜見物?』
純「駅前の近くでやってる、桜の通り抜けだよ」
梓『あぁ、そういや何かやってたね。でも、なんでまた』
純「思い出作りだよ」
梓『はい?』
純「春休み、私達あんまし遊んでないじゃん」
梓『まぁ、先輩達の準備に付き合ってたからね』
純「そうなんだ」
梓『憂も一緒だったよ』
純「……ごめん。泣いていい?」
梓『はっ?』
純「いや、なんでもない」
純(誘っても断られた理由はそれか!)
純「それで、どうする?」
梓『うーん……まぁ、いっか。私も純と遊びたかったし、これからの部活についても』
純「それは明日でよくない?」
梓『こういうのは早い方がいいんだよ』
純「あっそ……んじゃ、八時に駅前ね。遅れないでよ」
梓『それはこっちの台詞だよ。じゃ、またあとで』
純「あいよー」ピッ
純「よし、これでいいや」
母「純、ご飯よー」
純「はーい」
―――
駅前。
純(さて、まだ憂と純が来てないワケだけど……
にしても、相変わらず人が多いなぁ。梓は小さいから今頃、人の波に飲まれてたりは……ないよな)
憂「純ちゃーん」
純「あっ、憂」
憂「こんばんは」
純「はーい。よく来たねぇ」
憂「あれ、梓ちゃんは?」
純「誘ったんだけど、まだ……」
梓「お待たせ」
純「おっ、来たな」
梓「あれ、もしかして私が最後」
純「まっ、そうなるかな」
梓「ふーん」
純(えっ、何?)
憂「梓ちゃん、こんばんは」
梓「あっ憂、こんばんは」
純「よし。とりあえず揃ったから、夜桜見物に行きますか」
憂「そうしよう」
梓「そうだね」
―――
通り抜け会場。
憂「人が多いね」
純「毎年こんなもんだよ」
憂「毎年来るの?」
純「家族とね。夜店とか出てるから」
憂「賑わってるね」
純「憂、焼とうもろこし買ってくるね」ダッ
憂「あっ、純ちゃん。また夜店に行った」
梓「夜桜見物なのか……夜店見物なのか……はっきりしてよ」パクパク、モグモグ
憂(綿飴食べてる梓ちゃんが言っても)
純「おまちどー。はい、憂の分」
憂「えっ、いいの?」
純「気にしないで、付き合ってくれたお礼だよ」
憂「ありがとー」
梓「純、私のは」モグモグ
純「梓は綿飴食べてるでしょ」
梓「これは、自腹だし」パクパク
純「厚かましい奴だなぁ」
梓「……」ムシャコラ
―――
梓「そういや、夜桜見物なんてしたことないなー」
純「ないの?」
梓「大抵ウチは、昼間とかだし」
憂「私もないかなぁ。夜はあんまり、出歩かないから」
純「ふーん」
憂「でも、夜桜見物もいいもんだね」
梓「うん。なんてゆーか、昼間見るよりも綺麗に見える」
純「ライトアップされてるから?」
梓「そういう言い方はどうかと思う」
―――
梓「なかなか終点が見えて来ないね」
純「まぁ、まだ先だからね。もしかして、疲れた?」
憂「うーん、ちょっと」
梓「人の数が多いからね」
純「じゃあ、あそこのベンチで休もうよ」
憂「ふぅー、疲れたー」
梓「なんかいつもより疲れる」
憂「同じく」
純「じゃあ私、三人分の飲み物買って来てあげるよ」
憂「いいの?」
純「そんなに疲れてもないし。だから私が行く。それで、何がいい? 私の奢りじゃないけど」
梓「私、オレンジジュース。はい、これ」
純「憂は?」
憂「じゃあ、グレープフルーツ。はい、お金」
純「あいよ。ちょっと待っててね」ダッ
憂「純ちゃん。なんか張り切ってるね」
梓「春休みの間、一度も遊ばなかったから、寂しかったんじゃない?」
憂「そうかもね。私達、お姉ちゃん達の準備を手伝ったりしてたから」
梓「まっ、これから一緒の軽音部だし。一緒の時間もたくさん増えるよ」
憂「でも今年、受験だけどね」
梓「……そうだね」
純(とりあえず二人の分は買った)
純「私は何にしようかなぁ」
「よし、サイダーにするか」
ガコン!
純「ふぅー」
ヒュー
純「風が出て来たかな?」
梓「純、遅いなぁ」
憂「自販機が見つからないとか?」
梓「人が多いから並んでるとか?」
憂「売り切れとか?」
梓「道に迷って泣いて……」
純「はーい、お・ま・ち・ど・う!」
ピタッ!
二人「冷たーい!」
純「わっはっはー」
憂「純ちゃん!」
純「どう、驚いた?」
梓「驚くよ!」
純「ちょっとした私からのサプライズ」
梓「そんなのいらないし!」
純「じゃあ、このジュースもいらないんだね?」ニヤニヤ
梓「いやいや、その解釈はおかしい」
純「冗談だよ。ほい、梓」ポイッ
梓「わっ、と」
純「憂」ポイッ
憂「よっ」
純「じゃあ、みんなで飲む前に……梓」
梓「?」
純「明日から新しい軽音部の部長になるんだから、なんか一言お願いします」
梓「えっ」
純「ほらほら」
憂「梓ちゃん、頑張って」
梓「えー、明日から軽音部の部長になる
中野梓です。よろしくお願いします」
純「なんか固いなぁ」
憂「リラックスしてよ」
梓「うぐっ! と、とりあえず頑張って新歓ライブを成功させ、新入部員を多く獲得します!」
憂「いいよー、梓ちゃん」
梓「じゃあ、かんぱーい!」
二人「かんぱーい!」
プシュー!
梓(なんか、飲み会みたいだ)ゴクゴク
憂「おいしーい!」
純「サイダー選んだのミスった」
梓「それと明日からみっちり練習するから、覚悟しといてね」
憂「はい、頑張ります!」
純「お手柔らかに」
梓「純、憂。マジで期待してるから」!
憂「う、うん」
純「過度の期待は、禁物かなぁ」
梓「今の私が頼れるのは二人だけだから、お願いします!」
二人「……」
純「よっしゃ! 私に期待しなさい!!」
憂「私も梓ちゃんの力になれるよう、頑張るよ!」
純「だから梓は大船に乗ったつもりで……」
梓「泥船じゃないよね」
純「違うやい!」
憂「もぉー、梓ちゃんたら」
梓「ふふっ」
梓(ありがとう憂、純)
最終更新:2011年04月06日 01:42