――唯の部屋

「ってば……おい……」

どこか遠い意識の向こうで私の名前が呼ばれた気がする

律「おい、唯、起きろってば!!」

唯「……はっ!!」

律「ようやく、起きたか。まったくお前今日2限から講義だろっ!!」

唯「むむ、りっちゃん今何時~?」

律「自分で時計を見ろ!!」

そう言ってりっちゃんが私の前に携帯のディスプレイを突きつける


……10時10分

たしか2限目の始まる時間は10時40分からだ
そしてここから学校までのんびりといくと30分ほどかかる
つまり

唯「あわわわ、遅刻かな?」

律「かな? じゃない!! はやく起きて着替えろ!!」

唯「うわあああああ、どうしよおおお」

律「ったく、唯と住んでると憂ちゃんの苦労が少し分かった気がするよ」

唯「ああ、着替えはこれとこれと……」

律「なんで目覚ましかけないんだよ……」

唯「ちゃんとセットしてたんだよー」

律「なら、なんで……」

唯「………テヘッ」

律「テヘじゃない。いいからはやく手を動かせ」

唯「ところでりっちゃん」

律「?」

唯「私これから着替えるんだけど……りっちゃんのエッチ~♪」

律「だああああ、一緒に風呂に入ったこともあるのにいまさらそれぐらいどうってことないだろっ!!
  ていうか、速くしろ。一応唯のこと待っててあげてるんだぞ」

唯「りっちゃん……!!」

律「唯……ってこんなコントやってる場合でもないわけで」

唯「りっちゃんのいけずぅー」

律「…………もういいや。先行くわ」

唯「ああん、りっちゃん待って。ちょ、本当に待ってってばー」




――通学路

律「ほら、もうちょっとはやく走れ!!」

そういって私を急かしながらも私に付き合ってくれるりっちゃんはやっぱりいい子です

唯「ほふは!? ほうほれひひょうはひへはいほ~」

律「パン食ったまま喋られるとなんて言ってるかわからん」

唯「むぐ……」モグモグゴクン

律「…………」

唯「そんな!? もうこれ以上走れないよ~」

律「いや、そんな律儀にいいなおさなくていいから。てか、結構余裕そうですねー唯さん」

唯「ねぇりっちゃん、ところで澪ちゃんとムギちゃんは?」

律「あぁ、あの二人なら今日は1限からだから、とっくに出て行ったよ」

唯「ほほう、ご苦労様ですな~」

律「…………完全に他人事だけど、お前も明日は1限からだろう」

唯「………りっちゃん、明日も起こしてくれるよね?」

律「残念だが、私は明日は昼からだ。だから澪かムギに頼むんだな」


唯「むむ……りっちゃんの役立たず……」ボソッ

律「……よし、これから唯のことは起こさない」

唯「ああん、嘘です。ごめんなさい」

律「一度目は許そう」

唯「……このやりとり前もしたけどね」

律「お前は許してほしいのか、許してほしくないのかどっちなんだ」

唯「ごめんなさい!! 許してほしいです」

唯「にしても、慣れたよね~」

律「なにが?」

唯「この共同生活?みたいな」

律「まぁ、もうすぐ大学に入ってから3ヶ月もたつしなぁ」

唯「そだねー。………あっ今週の晩御飯当番誰だろう?」

律「……ほんと唯さんはマイペースっすねー」

唯「いやいや、りっちゃん褒めてもなんにも出ないよ」

律「褒めてねーよ。てか今週って………たしか」

唯「?」

律「うん、たしか今週から唯だよな」

唯「うぇっ!?」

律「いや、いい加減自分の当番くらい覚えろよ。先週が私だったから今週はお前だろ」

唯「…………」

律「いやまぁ、それは後でいいからさっさと行くぞ。のんびりしてる時間はないからな!」

唯「りっちゃん…………」

律「ん?」

唯「どうしようもなかったら米だけでもいいよね」

律「いいわけあるか!!」テイッ

唯「あいたーっ!」

律「ああもう、絶対遅刻じゃないか。あの教授は10分以上遅刻したら部屋入れてくれないぞ」

唯「うう……最近りっちゃんのツッコミが激しくなった気がする……」

律「いや、まぁ、さすがにこうな? 遠慮ってものが薄れていくっていうか……なっ?」

唯「つまり私とりっちゃんは深くネットリとした関係なんだねっ!!」

律「………やっぱり唯は置いてくればよかったか……」

唯「ひどいっ!!」



時間は3月まで遡る
卒業して間もない頃、彼女達は1つの問題を抱えていた

唯「うーん、やっぱりあんまりピンとくるところないねー」

澪「おいおい……はやく決めないとすぐに四月だぞ……それに契約とかもあるんだからな」

唯「えーそんなこといっても……みんなはもう決めたの?」

澪「私とムギはだいたい目星はつけたしな。律……」

律「あーあ、決まんねー。どっかに格安で、ある程度広さもあって風呂とトイレも別々のところないかなー」

澪「律は理想が高すぎるんだよっ!!」

紬「ふふっ、でも一人暮らしってちょっと楽しみ~♪ あ、でもやっぱり危ないのかしら」

澪「うっ……まぁ世の中そんなに危ない人ばっかりじゃないし……」

律「澪とかストーカー被害にあったりしてな。こう下着とかを……」

澪「………やめろー! あぁ、やっぱり一人暮らし怖くなってきた……」

唯「うわーん、やっぱり決まらないよー」

律「!! いいこと思いついた」

唯「なになにりっちゃん?」

律「いっそ私と唯でルームシェアするか。家賃も半分、家事も分担、危険も多少減る。いいことづくめだ!」

唯「りっちゃん………」

律「なっ、なんだよ……」

唯「いいね!!」

律「へっ?」

唯「うん、それだよっ!!さすがりっちゃん、やるときはやると思ってたよ」

律「………だ、だろっ? 我ながら名案だと……」

澪「まじめにやれ!」ポカ

律「あイタッ……なんだよ澪……結構真面目に……」

唯「そうだよー澪ちゃん。真剣に考えてるんだよ」

澪「……本気で言ってたのか……なぁムギ、ムギからもなんか言ってやってくれ」

紬「………」


紬「それならもういっそ一軒家を借りるのはどうかしら♪」

唯「おおっ、一気に話が進んできたよ!」チラッ

澪「うぅ………」

律「だなぁ。とりあえずその方向で探すかー」チラッ

澪「………」

紬「うーん、それじゃあ物件探しを……」チラッ

澪「……うう、やっぱり私も一緒に住むー」

唯・紬・律「(おちた!!)」


色々あってルーム(ホーム?)シェアすることになりました



【表札】


律「よく考えてみればこの家には表札がない!!」

唯「?」

紬「?」

澪「急になにいってるんだ?」

律「だから、この家には表札がないんだってば!!」

澪「うん、それはわかったよ。で、なんで急にそんなこと言い出したんだよ」

律「いやぁ、だって宅配便の人とか不便だろうなって?」

澪「………」

律「なんだよ」

澪「律もまともな気遣いができるようになったんだなって、少し感動してた」

律「うおぉい! それぐらいできるわ」

紬「でも、表札ってどうするの……? みんな名字バラバラだし……」

唯「全員の名前を書いておく、とか?」

律「まぁ、それも考えないといけないけど、とりあえず」

澪「とりあえず?」

律「ジャジャーン! 帰りにホームセンターで木製プレート買って来た」

澪「また無駄なところではりきって……」

紬「これは門のところにかけておくの?」

唯「うん、たぶんそだね。というか、りっちゃんやけに準備いいね」

澪「むかしっから、こういう無駄なことは早いんだよなー」

律「……澪の名前は儒にしといてやるからな」

澪「おい、やめろよー」

紬「とりあえず、横ならこうかしら」

田井中律
秋山澪
平沢唯
琴吹紬

律「……なんか普通だな」

唯「じゃぁ、縦書き?」

田秋平琴
井山沢吹
中澪唯紬

律「だから、普通だって。」

紬「りっちゃんだけ、出っぱっちゃてるね」

律「しかたないだろー、名字が3文字なんだから」

唯「ぷくくっ、おでこがでてるから名前も凸なんだね」

律「………唯の名前は進にしとくからな」

澪「いや、それは本気でまずいからまて」

唯「冗談だよ~、冗談……ぷくくっ」

律「ゆ~い~っ!!」

唯「あわわ、ごめーんりっちゃん」

澪「もうどっちでもいいから、はやくしよう……」

律「待った! これじゃあ普通すぎる」

澪「………もう私お風呂入って来るから、好きにしてくれ」

律「うーん……そうだ!! 血文字で書いておくとかどうだろう」

澪「やめろっーー!!」

律「なんだよみおー、好きにしろって言ったじゃんかよー」

澪「やっぱり私も考える」

紬「ねぇねぇ暗号とかどうかしら~♪」

澪「いやっ、一目でわからないと意味ないだろっ!!」

律「面白いけど、暗号考えるのがめんどくさいからパスだな」

紬「………」ショボン

唯「ここは点字だよ!! 目の見えない人にも配慮した最高の文字。点字!!」

澪「もはや表札の意味をなしてないよな」

律「だんだん趣旨がずれてきたな」

唯「ぶーぶー、それならりっちゃんは面白く、かつあらゆる人がわかって、表札としての意味も果たす案があるの

?」

律「なっ……」

紬「わくわく」

澪「………律?」

律「………いやぁ、やっぱり普通が一番だよなー。こういうのはやっぱりシンプルイズベスト。
  横書きにしよう。うんそうしよう」

澪「(思いつかなくて逃げたな……)」

紬「………」

澪「ん、ムギどうした?」

紬「よく考えてみれば、この家には女の子しかいませんよ っていってるものじゃないかしら、これって」

澪「………」

律「………」

唯「………」

律「やっぱり、白紙にもどそうか。この問題」

唯・澪・紬「……うん」

律「うん、じゃぁ、それじゃ解散で」

澪「……さぁ、お風呂はいろーっと」

唯「あ、澪ちゃんお風呂空いたら呼んでね。あ、その間に課題もやらなくちゃ」

紬「うーん、私もいったんお部屋に戻るね」

律「…………」

………

……


――唯の部屋

唯「(あれ?)」

――紬の部屋

紬「(そういえば)」

――お風呂場

澪「(別に下の名前を)」

――リビング

律「(書かなかったらいいんじゃなかったんだろうか)」

………

唯・澪・紬・律「まぁいっか」



【内の敵】


――玄関

澪「それじゃ行ってきます」

紬「行ってきます」



――通学路

澪「うーんやっぱり一限目からの時は眠いな」

紬「うふふ、そうね。りっちゃんと唯ちゃんはまだ夢の中かしら」

澪「あいつら、時間割組むときになるべく一限目はさけてたしなぁ」

紬「今日は昼からって言ってたね」

澪「だな……でもいつも思うんだけど」

紬「?」

澪「律と唯を家に残していくのはなんでこんなに不安なんだろう」

紬「……泥棒さんとか押し入りさんとか?」

澪「いや、まぁそれもあるんだけど、そうじゃないんだ」

紬「?」

澪「火とかガスとか水周りとか」

紬「あぁ………」

澪「………」

紬「………」



【案の定】


律「うわ、やっべ。急げ唯。もうこんな時間だぞ」

唯「あわわ、りっちゃん早いよー」

律「ったく、唯が暢気に昼ごはん食べてるからだぞ」

唯「えー、りっちゃんがなかなか起きなかったからだよー」

律「あっ……!!」

唯「どしたのりっちゃん?」

律「……鍵閉めたっけ?」

唯「うーん………あれ?」

律「………」

唯「………」

律「戻るぞ唯っ!」

唯「あ、そういえば電気も消し忘れたような」

律「いいからはやく戻るぞ」

唯「うぅ……」


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最終更新:2011年04月08日 01:02