【お土産】


――翌朝

澪「あれ?梓どうした、あんまり眠れなかったのか?」

梓「えぇ……まぁその……」

澪「?」

梓「あ、律先輩、ジャージありがとうございました。お返しします」

律「おう、そこ置いといてくれ」

澪「あ、律にジャージ借りたのか。言ってくれれば私のでも貸したのに」

梓「いえ、澪先輩やムギ先輩ですと……」

澪「?」

梓「胸のところの布が少し伸びてて、それを実感してしまうとみじめになりますんで……」

澪「……あぁ………なんかすまん」

梓「いえ、澪先輩のせいではないです」

律「だよなー。澪は悪くないよ澪のその胸の脂肪が悪い」

澪「うっ、脂肪……りつー!!」グサッ

律「うわああ、冗談冗談」

紬「にしても梓ちゃんもう帰っちゃうの?」

梓「えぇ、昼から憂たちと約束してまして」

紬「そうなの……憂ちゃんたちも来ればよかったのにね」

梓「あはは、今度はみんなでお邪魔します」

唯「ううう、あずにゃん……寂しくなったらいつでもきていいからね」

紬「ふふ、寂しいのはどっちかというと唯ちゃんのほうみたいね」

梓「はは、それじゃぁ私はこれで失礼します」ペコ

澪「梓っ!!」

梓「?」

澪「お土産にこの律を持って帰ってもいいぞ」ツカミ

律「テヘッ」

梓「いえ、それはいらないです」

律「中野ーっ!!」

唯「ふっふっふ、それなら私はどうかな?」

梓「いや、それもいらないです」

唯「あずにゃんひどいっ!!」





【通い妹】


純「♪~」

憂「純ちゃんやけにごきげんだねー」

純「だって、澪先輩の私生活に突撃だよ? ファンクラブの人にうらやましがられちゃうよー」

梓「別に澪先輩だけじゃないけどねー。そういえば憂」

憂「?」

梓「憂、結構頻繁に訪ねてたんだね。この前行った時その話を聞いてびっくりしちゃった」

憂「えへへ、お姉ちゃんが心配でついね……」

純「へー、憂ってどのくらいで行ってたの?」

梓「週に一回以上訪れる時もあるらしいよ」

純「………」

憂「えへへ」



【姉>モラル】


憂「あ、そこの角を曲がったところだよー」

梓「えっと、もう着きますって電話したほうがいいのかな?」

純「大丈夫じゃない? 今日行くっていってるんでしょ?」

梓「うん、まぁそうだけど……あ、ここだよ」

純「うわぁ、結構よさそうなところだねー」

梓「えっと、インターホンはこっちに……」


『うわああっ』


梓「唯先輩の声だよね」

純「なにかあったのかな?……って憂!?」

梓「ちょっ、まだインターホンも押してないのに玄関を開けようとしない」

憂「でもお姉ちゃんになにかあってからじゃ、遅いよっ!!」

純「(まったくこの子は……)」



【一直線】


澪「いらっしゃい、三人とも……」

純「どうもです、澪先輩!」

梓「えっと、さっき唯先輩の声が聞こえたんですけど、なにかあったんですか?」

澪「あぁ、今3人が来るって言うから、はりきって紅茶でおもてなしの練習をしてたんだけど……」

梓「あぁ……だいたい予想はつきました」

純「あはは……ってあれ?憂は?」

澪「えっ?今私の横をすり抜けて入っていったよ」

純「はやっ!!」



【紅茶の香りとクッキーと】

――リビング

唯「ははは……お見苦しいところを……」

梓「もう、なんで慣れないことをやろうとするんですか」

唯「どうしても、3人をおもてなししたかったんだよう……」

純「あ、でもこの紅茶とクッキーおいしい……」

唯「うふふ、どうあずにゃん?これが私の実力だよ」

梓「うっ……(本当においしいからなにも言えない)」

憂「うん、お姉ちゃんおいしいよ」

唯「えへへ、照れますなー」

紬「唯ちゃんのがんばりよね♪」

律「そのかわりに犠牲となったクッキーはあそこにあるけどな」

唯「あれは私のおやつになるから失敗じゃないよっ!」

梓「へぇ……あ、この少し焦げたやつですか?」ヒョイパク

憂「あ、梓ちゃん私も」ヒョイパク

純「どれどれー?」ヒョイパク

唯「あー、そんな失敗したの食べなくてもこっちにちゃんとできたやつあるよー」

梓「うん、少し苦いけどこっちもおいしいです」

純「うんうん、普通に食べれるよ」

憂「うん、別に失敗じゃないよ。お姉ちゃん」

唯「純ちゃん……憂……あずにゃん……」ダキッ

梓「あわわ、ちょっと3人同時に抱きしめないでくださいってー」

憂「お姉ちゃんの匂いだー……」

純「私真ん中だから一番苦しい……」



【レパートリー】


――月曜日

唯「ふっふっふ、今日はカレーだよ」

律「あーっ、今週は唯が当番か。……っと、結構うまいな」

澪「うん、唯もやればできるんだな」

紬「おいしいわ、唯ちゃん」

唯「エッヘン!!」

――火曜日

唯「今日はシーフードカレーです」

律「……うん、まぁおいしいな」

澪「あ、エビの殻入ってる……」

紬「うん、唯ちゃんおいしいわ」


――水曜日

唯「今日はチキンカレーです」

律「おい、オチがよめたぞ」

澪「………」モグモグ

紬「今日はちょっと辛めなのね」


――土曜日

唯「じゃじゃーん!!今日は肉じゃがにしてみました」

律「おおっ!!ようやくカレー以外のものがっ」

澪「うん、おいしい。……唯もカレー以外も作れたんだな」

唯「実はムギちゃんに教わっちゃいましたー、ブイ!」

紬「教えちゃいましたー、ブイ!」


――日曜日

唯「エッヘン、今日はシチューに」

律「結局カレー派生かいっ!!」

澪「カレー素材使わないと納得できないのかっ!」

紬「(はっ!私もなにかつっこまないと)」

紬「……えっとえっと………なんでやねんっ」ピシッ

唯「? ……おいしいよ?」



【明日はわが身】


澪「(明日からわたしだ)」

澪「(よく考えてみたら私もそんなに料理できるほうじゃなかった……)」

澪「(どうしよう……うわあああああぁああ)」

………

……


律「で、なんでまたカレーなんだよっ!!」

澪「うっ……」

唯「うまうま」

紬「やっぱり唯ちゃんが作るものとは少し味が変わってくるのね」



【りっちゃんはできる側】


澪「料理教えてください、ムギ!!」

唯「教えてください!!」

紬「……でも私も教えられるほど上手ってわけじゃ……」

澪「……ムギのあのレベル上手じゃなかったら、世の中の人のほとんどは下手になるぞ」

唯「だよね……ムギちゃんならどこにお嫁に出しても恥ずかしくないよっ!!」

紬「うふふっ、なら今度のおやすみに一緒につくってみよっか♪」



律「……いや、どうでもいいけどなんで私には一切教えを請わないんだよっ!!」



【令嬢】

唯「よく考えてみれば、ムギちゃんはお嫁に出すというよりどっちかというと婿をもらってくる側だよね」

澪「あー、まぁお嬢様だしなぁ。家を継ぐとかそのへんはどうなんだろう」

律「いやいや、案外認められない恋に落ちて、駆け落ちとかあるかもよ?」

唯「……女の子同士とか?」

律「身分的な意味でだよっ!!」



【闇に紛れて】

パチッ

――リビング

唯「あれ?停電だね」

律「あー、夜に停電になると目が慣れるまでまったく見えなくなるから困るよなー」

唯「あ、澪ちゃんたち大丈夫かな……部屋に戻っちゃったけど」

律「ふふ、今に見てろ……きっと澪がビビリながらおりてくるぞ」

唯「うーん、真っ暗で顔がみえないけど、今りっちゃんが悪そうな顔してるのはなんとなく分かるよ」

律「ふはは、この闇は澪にとっては最悪フィールド。ここは私の独壇場だー」

唯「あ、今扉が開く音がしたね」

律「きたかっ!! 唯、静かにしとけよ」

澪「うぅ……りつー?ゆいー?……いないのかー?」

律「(くっくっく、いいぞもう少しこっちに接近してこい……)」

澪「あれ……なんで二人ともいないんだろう……」ソロソロ

律「(よしっ、今だっ!!)」

澪「うわあああああああああああああ、なにかが私の胸を触ったあああああああ?」

律「(あれ?まだ私はなにも……)」

ペタリ

律「うわああああっ!! 私にもなにかが触った!!」

澪「律っ!? いるのか」

パチッ

唯「あ、タイミングよく電気ついたね」

澪「……あれ、律? 私に触ったの律?」

律「いや、それより澪、私の顔に触れた?」

澪「いや……」

律「………」

唯「どしたの二人とも?」

律「まさか……ほんものが!?」

澪「えええええええええええええ」

『ふっふっふ、呪ってやるー』

澪「うわああああああああ、……ってムギ」

律「もしかしてムギの仕業……?」

紬「うふふ♪ ごめんねこうやって驚かせるの、やってみたかったの♪」

澪「なんだ……よかった……」

紬「ふふ、澪ちゃんが下に降りていくのがわかったから、そっと後ろにつけたの♪」

澪「本当によかった……」

律「でもムギー、よくわたしの場所もわかったな」

紬「え? りっちゃんの場所?」

律「うん、だって私の顔をそっと撫でたのもムギだろ?」

紬「え……?ごめんなさい。なんのことかさっぱり……」

律「え?」

澪「え?」

律「つまり……」

澪「…ほん……もの……」パタリ

律「わぁ、澪が倒れた!!」

紬「ええっ、こういう場合はどうしようー」


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最終更新:2011年04月08日 01:05