梓「…その、受験。がんばってくださいね」
唯「うん……ありがと、あずにゃん」
唯「きれいだねえ」
梓「そうですね……」
唯「あっちがおうし座で」
梓「はい」
唯「おおいぬ座と、こいぬ座」
梓「……あは」
唯「?」
梓「私たちみたいだなって」
唯「……えへへ」
唯「こねこ座って、ないかなあ」
梓「あるかもしれませんね」
唯「こんど、見つけとくね」
梓「……はい」
唯「なんだか、ねむくなってきちゃうね……」
梓「……はい」
唯「あれは……冬の第三角形の上のほうだから、ふたご座かな」
梓「はい」
唯「あれは……なんだろう、四つの星が、こうつながってるやつ」
梓「あ、それはたぶんトラック座ですよ」
唯「へえ……あずにゃんもの知りだねえ」
梓「えへへ・・・・わっ」
唯「へ?!」
梓「トラック座がこっちに近づいてきます! 唯先輩避けて!!」
唯「なっ……きゃあっ!!」
――――――
――――
――
梓「……ぃせんぱい、唯先輩っ!」
唯「ほぇ…あずにゃん?」
梓「起きてください、唯先輩!」
唯「あれ……いつの間に」
梓「はぁ・・・もうプラネタリウムおわっちゃいましたよ」
唯「あはは……一瞬ねちゃってたよ」
梓「まったく、自分から連れてきておいてなんですかっ」
唯「ごめんってぇ…あ、じゃあせっかくだからどっか食べにいこっか?」
梓「もう……そんなので忘れませんからね?」
唯「ええー、なんでぇ…!」
梓「……唯先輩、無防備すぎますよっ」
唯「ほえ?」
梓「とにかく行きましょうよ、もうみんな出ちゃいましたよ」
唯「あ、うん・・・・」
梓「・・・・」
唯「あずにゃん、おこってる?」
梓「・・・そりゃあ怒りますよ、自分から言い出したのに途中で寝ちゃうとかありえないじゃないですか」
唯「……えへへ」にやにや
梓「なっなんですか」
唯「…あずにゃんってさ、本当に怒ってる時って『怒ってない』って言うもんねぇ」
梓「……!」
唯「よかったよかった。さ、あずにゃんいこ?」
梓「もう唯先輩なんてしらない・・・・」
唯「でも。ごめんね、あずにゃん」
梓「・・・・気にしてないですよ」にこっ
梓「それに、唯先輩は明け方までずっと勉強してるんですもん。私のほうこそ気を使えなくてすいません」
唯「あ、……う、うん! いっやーもう大変なんだよ、ずっと英単語をたっくさん・・・・あははっ」
梓「・・・・してるんですかー?」じとっ
唯「き、昨日はちょっと夜更かししちゃったかな・・・・あははっ」
梓「正直にいってください。寝たの何時ですか」
唯「ええーっと・・・・四時過ぎかな、いや五時かな?」
梓「はぁ・・・・まったくもう、無駄に起きててどうするんですか」
唯「だってギー太がぁ・・・・ひっく、えぐっ」
梓「・・・・まあ、息抜きも大事ですけどね。きょうみたいな日だって、うん」
唯「ところであずにゃん、いいことあったの?」
梓「え、なんでですか」
唯「だってなんか、うれしそうだし」
梓「しりませんっ」
唯「じゃあ晩ごはんどうしよっか?」
梓「唯先輩はなにか食べたいものとかあります?」
唯「えーっと……じゃあ、駅前のサティ行こっか! 屋上レストラン行こうよ!」
梓「いいですね! ……でもお金、大丈夫ですか?」
唯「だーいじょうぶ! きょうのためにたーくさん貯めといたんだよっ」
梓「きょうのために、ですか?」
唯「それにお母さんがね、偏差値あげたらボーナスくれるって言ってたからがんばっちゃったよ。えへへっ」
梓「あ、それでこないだの模試で…」
唯「えっへん!」
梓「・・・・調子にのって遊んでばっかだと、また下がりますよ」くすっ
唯「あずにゃん、てきびしい・・・うぅ・・・・」
梓「でも、……ありがとうございます」
唯「……えへ」
唯「ふわぁ……」
梓「……って、言ってるそばからあくびしてるじゃないですか」
唯「らって、昨日ねむれなくってぇ…」
梓「もう、勉強もいいですけど夜更かししすぎは身体によくないですからね」
唯「そうだねぇ……ふぁあ」ふらふら
梓「ちゃんと前みて歩いてください。あぶないですよっ」
唯「ごめんってぇ……あ、じゃああの劇団トラック座の看板のとこを右だよ」
梓「はい。……でも結構遠いんですねえ」
唯「プラネタリウムへの行き道はあんなにすぐだったのにねー…」
梓「きっと行く道は楽しみだから早いんですよ」
唯「そうだね……いき~はよいよい、かえりは♪」
梓「きゃ?! 唯先輩あぶないっ! 看板が落ちてくる!」
ドンッ
唯「あ、あぶなかったぁ・・・・」がくがく
梓「そ、そうですね・・・・」ぶるぶる
唯「ちょっと今ので目が覚めたよ…」
梓「唯先輩はあぶなかっかしいんです、気をつけてください」ぐいっ
唯「あ、あずにゃん待ってよぉ!」
唯「あれ? サティ、この辺のはずなのに……」
梓「道間違えちゃったんでしょうか・・・・?」
唯「うーん、じゃあたしか駅の反対側にそごうがあったはずだからそっち行ってみようよ」
梓「はい!」
唯「・・・・あれー? おっかしいなあ…」
梓「ほんとにそごう、このビルなんですか?」
唯「うん……たぶんこの、ヤマダ電機だと思う・・・・・」
梓「そうだったんですか・・・」
唯「ヤマダ電機じゃ、ごはん食べられないよねえ・・・」
梓「・・・あ、じゃあいっそ東京の方いってみませんか?」
唯「おお、それはいいかも!」
梓「じゃあ駅に急ぎましょう! 遅くなっちゃいますよっ」
唯「うん!」
がたんごとん
唯「そういえば、雨あがってたね」
梓「あ、そうですね。気づきませんでした」
唯「えー、もう8時かあ・・・あ、そろそろ着くね」
梓「どこ行きましょうか?」
唯「ふふん、いいとこ知ってるんだぁ」
梓「それは楽しみですね」くすっ
ぷしゅー
梓「着きましたね」
唯「こっちだよ、あずにゃん!」
てんぼうれすとらん!
梓「ちょ・・・こんな高いとこ、大丈夫なんですか?!」
唯「そりゃ11階だもん! あ、あずにゃん高所恐怖症?」
梓「そっちじゃないです! お金の話ですよっ」
唯「ここね。今日はれでぃーすでーなんだよっ」
梓「へぇ・・・すごいですね」
唯「むかしはおばあちゃんや憂と三人でよく来たんだよねぇ♪」
ウエイター「お席は喫煙と禁煙どちらにいたしましょうか」
唯「あ、禁煙でおねがいします!」
ウエイター「それではこちらにどうぞ」
梓「わあ・・・・・!」
梓「すごい・・・」
唯「なんだか・・・空を飛んでるみたいだよね」
梓「はい・・・街の灯って、こんなにきれいだったんですね・・・」
唯「ささ、ごはんたべようよ!」
梓「・・・あ、はい!」
唯「みとれちゃった?」にこっ
梓「・・・はい、ちょっとだけ」くすっ
唯「ほら、あずにゃんの来たよ」
梓「はい・・・おいしそうですね」
唯「ピラフ、すきなの?」
梓「えっと・・・好きっていうか、小さい頃よく食べてたんで」
唯「ほえー……」
梓「たまにこういうレストランとか連れてってもらった時、いつも同じもの食べてたんですよね」
唯「へえー・・・じゃあわたしと一緒だね!」
梓「ハンバーグ、ですか?」
唯「思い出の味だよ!」
梓「ふふ、いっしょなんですね」
唯「えへへ」
唯「ふぅ! おいしかったなっと」
梓「まだデザートが残ってますよ」くすっ
唯「あ、そうだったね・・・ふぁ」
梓「もう、またあくびなんかしちゃって。ていうか口よごれてますよ」
唯「あずにゃんふいてー」
梓「はいはい。……あの」
唯「んー?」
梓「きょうは、誘ってくれてありがとうございました」
唯「んーん! あずにゃんと会いたかったんだもん!」
梓「・・・えへへ」
キキーッ
ドンッ
――――――
――――
唯「――はっ」
梓「大丈夫、ですか・・・?」
唯「ごめんごめん、一瞬寝ちゃってたかも・・・」
梓「あの、無理しないでくださいね? 身体の方が大事ですから」
唯「あずにゃんごめんね、心配かけちゃって」
梓「・・・それはいいんです。気にしないでください」
唯「そんなことないよぉ」
梓「だって、心配できるのも・・・一緒にいるうちだけですし」
唯「あずにゃん・・・!」
梓「ほら、アイスとけちゃいますよ。ていうかまたアイスですか」くすっ
唯「だって好きなんだもん・・・えへ」
唯「じゃあ・・・帰ろっか」
梓「はい・・・」
唯「あずにゃん、どしたの?」
梓「いえ、・・・でもなんか、一日が終わっちゃうなあって」
唯「家に帰るまでがデートだよ、あずにゃんっ」
梓「またそんな遠足みたいな」くすっ
ぴろりーん♪
梓「あれ・・・ええっ?!」
唯「どうしたの?」
梓「いや、純からメール来たんですけど……」
唯「なになに……ええっ、電車で人身事故?!」
梓「うわー…踏み切りでトラックが……」
唯「うーん、当分帰れないね・・・どうしよっか?」
梓「とりあえず、マックで時間でもつぶします?」
唯「そうしよっかあ」
梓「はい!」
唯「・・・あずにゃん、なんだか楽しそうだねっ」
梓「そっそんなことないですよっ」ぎゅー
唯「いたた、手にぎるのつよすぎだよぉ」
梓「あ……ごめんなさい」
唯「んーん、わたしもあずにゃんと一緒にいれてうれしいもん!」
梓「……そんなこと、言わないでくださいよぉ」
唯「・・・?」
梓「離れられなく、なっちゃうじゃないですか・・・」
唯「・・・・あずにゃん」
梓「?」
唯「行こっか」
梓「・・・はい」
唯「ねえ、帰りはこっちのエレベーターのろ?」
梓「あ、はい」
唯「ここね、壁がガラスになっててすーごいきれいなんだよ!」
ぴんぽーん♪
唯「さ、のってのって」
梓「はい・・・わ、すごいですね!」
唯「……ぎゅー」
梓「ひゃっ」
梓「……」
唯「……あずにゃん」
梓「……」
唯「……また、行こうね」
梓「……」ぎゅっ
唯「また、遊びにいけるよ。きっと」
梓「……はい」
ぴんぽーん♪
唯「えっと・・・駅ってどっちだったっけ」
梓「こっちですよ。もう、しっかりしてください」くすっ
梓「・・・あ、そうだ」
唯「ほえ?」
梓「せっかくですし、TSUTAYA寄ってきませんか? たぶんまだ時間かかりますし」
唯「いいねえ!」
梓「たしかこの辺にあるって……あ、あれだ」
つたやさん!
梓「あ、このCD」
唯「どれどれ?」
梓「この緑のやつです。アイスランドのバンドなんですけど、すっごいきれいなんですよ」
唯「へえ・・・」
梓「ここ試聴できるみたいですよ。よかったら聴いてみましょうよ!」
唯「うん!」
~♪
唯「なんだかゆったりして・・・この女の人、かわいい歌声だねぇ」
梓「唯先輩の声とちょっと似てませんか?」
唯「え? そうかなあ。てへへ」
梓「……なんだか聴いてると、ちょっと眠たくなっちゃいますね」くすっ
唯「ふふ、そうだね。」
梓「……あ、このアルバムの4トラック目が――」
ガッ シ ャ ー ン
梓「うわあ……」
唯「あの人、買ったばっかりだったのに・・・」
梓「ま、まあ落としちゃったのは仕方ないですよね」
唯「あ、うん。私もベッドから起きた時にCD踏んじゃったことがあって」
梓「それはちゃんと片付けてないからでしょっ」
唯「ごめんごめん」
梓「もう・・・憂にばっかりまかせっきりだからそうなるんですよ。上京したらどうするんですかっ」
唯「は、はんせいします・・・・」
梓「そろそろマックにでも行きます?」
唯「あ、うんそうだね」
最終更新:2011年04月11日 22:54