梓「あ、純~! こっちだよ~!」
梓が駅の入り口で大きく手を振った
純「梓ー! 会いたかったよ~!」ダキッ
純は梓に抱きつく
梓「ちょ…アンタは唯先輩か!」
純「はは、ごめんごめん それじゃ行きますか」
梓「そうだね」
移動中 タクシーの車内
梓「最近どう?」
純「んー……まあまあかな?」
梓「何それ」
純「そういう梓はどうなのよ? って知ってるけど」
梓「次は全国ツアーやるかも」
純「マジで!? すごいじゃん」
梓「えへへ……」
純「そっかー……なんか梓がどんどん遠くに行っちゃうような気がしてお婆さんは寂しいですよ……」
梓「何よそのキャラ……」
純「まあ…寂しいってのは本当だけどね」
梓「純……」
純「ってしんみりしないでよー」
梓「ああごめん」
純「それよりそろそろ着くんじゃない?」
梓「へ? あ、本当だ」
タクシーはとあるホテルの駐車場に入って行った
梓「7階の宴会場だって、人数が人数だからあんまり大きい部屋は借りてないけど」
純「いいよいいよ、でもなんか悪いね」
梓「そんなの気にしないでよ」
純「まあ、梓たちが一番稼いでるからねー……今日はお言葉に甘えますか」
梓「おい」
純「冗談だよ、でもありがとね」
梓「だからいいって……あ、律先輩」
部屋の前には律が立っていた
律「御苦労だったな梓」
梓「ただいまです」
律「そして……よくきた純!」
純「律先輩お久しぶりです」
律「もう憂ちゃんも来てるからさ、中に入っててよ」
梓「あとは…先生だけですか?」
律「うん」
梓「じゃあ、行こっか」
純「オッケー」
宴会場
唯「純ちゃ~ん!」ダキッ
純「わっ!?」
唯「相変わらず可愛いね~」
純「唯先輩も相変わらずですね」
澪「純ちゃんはちょっと背伸びた?」
純「そうですか? 自分じゃ分からないけど」
憂「もう私より結構高いもんね」
純「まあ憂はすっかり綺麗になって……」
憂「そんなことないよ~」
紬「でも懐かしいわね」
和「そうね、でも良かったの? 私軽音部じゃないけど」
紬「和ちゃんにはお世話になったから絶対呼ばなきゃって私も皆も」
和「ありがと、私も久しぶりに皆に会えて嬉しいわ」
紬「私もよ」
30分後
律「さわちゃん遅いよ~」
さわ子「ゴメンゴメン、化粧してたら遅くなっちゃった」
律「別に化粧なんていらないだろ、知ってる者どうしなんだし」
さわ子「20代は黙ってなさい」
律「は、はい……」
さわ子「みんなもう来てるのね」
律「うん、じゃ入ろうか」
さわ子「ええ、お邪魔するわね」
律「みんな待たせたな! 我らが恩師のご到着だ!」
唯「さわちゃん!」
さわ子「みんな久しぶりね~、元気にしてた?」
唯「元気元気~、さわちゃんはちょっと老けたね~」
さわ子「あーん?」
唯「く、口が滑りました!!」アセアセ
律「みんな忙しいのに来てくれてありがとな!」
憂「いえいえ、お姉ちゃんと皆さんに会えるのが楽しみでした」
律「憂ちゃんは相変わらず出来た妹だ……」
唯「じゃあみんな飲み物持って~」
律「今日は軽音部の同窓会でーす! 昔話でもしながら楽しみましょう!」
唯「じゃあ行くよ~…かんぱーい!!」
一同「乾杯!!」
さわ子「唯ちゃんたちはお酒飲むの?」
唯「うーん、私とりっちゃんは結構飲んでるかなー」
和「飲み過ぎるのも大概にしときなさいよ」
唯「分かってるよ~、大丈夫だって~」
さわ子「でもすっかり有名人になっちゃったわねアンタたち」
律「なっちゃったってなんだよ~」
さわ子「ううん、何か遠くに行っちゃうなーって けっこう寂しいのよ? 教え子が離れて行くって」
律「私たちも先生には感謝してる、ありがとう」
さわ子「ちょっと……いきなりしんみりしないでよ」
律「あはは、でも懐かしいなー」
唯「お菓子食べて、練習して、お喋りして……本当楽しかったなあの頃」
憂「時の流れって残酷だよね」
さわ子「憂ちゃん…それは私への当てつけかなぁ!?」
憂「ち、違いますよ!」
紬「まあまあ先生、もう一杯」
さわ子「あらありがとう」
澪「純ちゃんはまだベース続けてる?」
純「はい一応は でも最近は弾く時間もないんですけどね」
澪「そうなのか、純ちゃん上手いから勿体ないな」
純「そんなことないですよー」
梓「確かに純のベースは上手かった」
澪「私とどっちが上手い?」
純「へ?」
梓「澪先輩とー? 純かなー」
純「ちょ」
澪「私も純ちゃんのほうが上手だとおもーう」
梓「あはは、澪先輩顔真っ赤ですよー」
純「もしかしなくても二人とも……既に酔ってる?」
澪「酔ってない酔ってないー」
梓「そうだよー」
律「早くも堕ちたか……」
純「律先輩、この二人は……」
律「すぐ酔いが回るんだよ澪と梓は……あと澪は酒癖悪いから、純は離れたほうがいいぞ」
純「あ、そうします」
唯「純ちゃんもこっち来て話そうよー」
純「はーい」
律「私たちが卒業した後の軽音部だけど、部長として梓も頑張ってくれてたけどさ 純は大変だったでしょ?」
憂「純ちゃんは軽音部の副部長の他にジャズ研の部長もやってたからね」
純「今更ながら思うけど……副部長は憂がやれば良かったんじゃない?」
憂「え~、純ちゃんで良かったよ」
純「それは褒め言葉として受け取っておいてあげる」
唯「卒業式かー、今でも卒業ライブ思い出すと泣いちゃうな」
憂「打ち上げでの梓ちゃん可愛かったよね」
唯「うんうん、『せんぱい行かないでー寂しいよお』ってメチャクチャ泣いてて可愛かった」
梓「まあ先輩たちの卒業式の日は、人生で一番泣いたんじゃないかってくらい泣きましたけど」
唯「わあっ!? あずにゃん!」
律「梓、大丈夫か?」
梓「回復は早いですから私」キリッ
和「澪は?」
梓「あそこで寝てます」
律「なんと……!」
律「しょうがないな~」
澪「うーん…………」
律「おい澪ー、ダウンするにはまだ早いぞ」
澪「なんだよ律……」
律「ほらお前も話に混ざれって」
澪「うー……」
律「とりあえず水でも飲め」
澪「ああ……水で中和する……」ゴクゴク……
律「(中和…?)」
澪「ハァ……ちょっと楽になった……」
律「じゃあこっち来いよ」
唯「あ、澪ちゃん復活」
憂「澪さん大丈夫?」
澪「ああ何とか……」
澪「で、何の話してたんだ?」
紬「卒業式の話よ」
澪「卒業……」
唯「澪ちゃん?」
澪「うわああああああん……」ポロポロ
梓「澪先輩!?」
澪「卒業したくないよ……ひっく……」
律「いや、もう卒業してるから高校も大学も」
澪「うえええええん!!」
律「今日は暴れるより泣きわめくほうだったか……」
純「冷静に分析してないで止めて下さいよ~田井中部長」
律「任せてもらおう鈴木副部長!」
唯「ぶっちょう! ぶっちょう!」
紬「部長! 部長!」
梓「部長!」
律「大丈夫だよ澪、私たちずっと一緒だから」
澪「本当……?」グスッ
律「ああ、放課後ティータイムは永遠に不滅だ!」
澪「ありがと……」
唯「はうっ! 萌え萌え~キュン」
澪「すー…すー…」
唯「寝ちゃった……?」
律「ちょっと寝かしとこう 目が覚めたら少しは抜けるだろ酒」
唯「澪ちゃん弱いね~お酒」
純「ところでさわ子先生と会長は?」
唯「あそこで飲んでるよ」
さわ子「やるじゃない」
和「先生こそそろそろ止めたほうがいいんじゃないですかぁ?」
さわ子「いいえ! まだまだ教え子に飲み比べで負けるわけにはいかないわ」
和「後悔しますよぉ~」グビ
唯「和ちゃん酔ってるね……」
律「さわちゃんが飲み過ぎなんだよ」
唯「まだまださわちゃんには勝てないね~」
律「でもさ、高校卒業前はいろいろあったよな……」
梓「…………」
唯「うん、あずにゃんとか、あずにゃんとか、あとあずにゃんとか」
純「あの時の梓、毎日悲しそうで正直見てられなかったよ」
梓「ちょっと恥ずかしい話していいですか?」
唯「いいよ、どんどんしなさい!」
梓「律先輩」
律「ん?」
梓「本当のこと言うと、私すっごく嫌だったんです」
律「…………」
梓「先輩たちが卒業した後も軽音部にいるのが……」
梓「でも、あの時律先輩が『梓、私たちの軽音部よろしく頼む』って言ってくれたから私頑張れたと思うんです」
紬「あの時のりっちゃん男らしかったわ~」
唯「うん、『私たちのとこに来い!』だもんね」
梓「それに純と憂にもホント感謝してる」
憂「梓ちゃん……」
純「面と向かって言われると何か照れる……」
梓「憂、軽音部に入ってくれてありがとう」
憂「こっちこそ…ありがとう梓ちゃん」
純「私もありがとう 梓の部長凄くカッコ良かったよ」
梓「純も副部長でいてくれて、私を支えてくれてありがとう」
純「うっ……泣かせる気かこの~」ポロポロ
純は泣きながら梓の体を抱きしめた
回想――
梓「……はぁ」
もうすぐ3月、それはつまり別れが近いということ
5人でバンドできるのも残り数日……
純「最近梓元気ないよね……」
憂「無理もないよ、もうすぐお姉ちゃんたち卒業しちゃうから」
梓「……はぁ」
最終更新:2011年04月12日 23:35