放課後 ジャズ研部室
後輩「お疲れ様でしたー」
純「あいよお疲れ様」
片づけを済まして、純もそろそろ帰ろうとした
律「練習終わった？」
純「あ、律先輩……？」
律「ちょっと純ちゃんに話があるんだけど……いいかな？」
純「いいですよ」
律「最近の梓どう？」
純「梓…ですか……元気ないですね……」
律「やっぱりか」
純「軽音部ではどうなんですか？」
律「普段通りに私たちとは接してる、けど私には元気なさそうに見える」
純「そうですか……」
律「なあ純ちゃん」
純「はい」
律「梓のこと……元気づけてやって欲しい 私たちは、先輩で同級生じゃないから……対等な目線で話せるのはきっと純ちゃんと憂ちゃんだけだと思うから…さ」
純「分かりました、何とかやってみます」
律「悪いけど頼むわ じゃ、そろそろ下校時刻だし帰ろうぜ」
純「そうですね」
翌日
純「憂」
憂「ん？」
純「最近の梓さあ……」
憂「うん、元気ないね……って言う私もそこまで元気じゃないんだけどね……」
純「そっか……もうすぐ憂のお姉ちゃんも憂から離れていっちゃうもんね……」
憂「休みになったら帰ってきてねって言ってるけどさ、やっぱり寂しい……」
純「憂……」
憂「…………」
純「大丈夫！ って言っても慰めにならないかもしれないけど、憂には私がいるよ！」
憂「純ちゃん……ありがと」
純「梓もさ、憂と同じ気持ちだと思う」
憂「うん、分かるよ……」
純「私、律先輩に梓を元気づけてくれって言われてるんだ」
憂「律さんって部員の細かい変化には敏感だからね」
純「引き受けたはいいけど……どうすればいいかな？」
憂「うーん……」
梓「二人とも何してるの？」
純「梓！？」
憂「梓ちゃんおはよう」
梓「二人して何の相談？」
純「ねえ梓、今日部活終わったらちょっと付き合ってくれない？ 憂も」
梓「何々？ ３人で遊ぶの？ いいよ」
憂「私もいいけど……」
純「じゃあ決まりね！ おっとそろそろHR始まるから行こう」
憂「そうだ、お姉ちゃんにメールしとかなきゃ」
３－２組
唯「あ、メールだ」
『お姉ちゃんへ 今日帰り遅くなりそうだから、晩ご飯私が帰るまで待つ？ それとも自分で作る？』
唯「なんと…！！」
憂から今日の晩御飯はどうすると聞かれた唯は……
軽音部部室
唯「ハンバーグ……はこの間食べたしなあ……」
唯「チャーハンとか？」
律「さっきから何ブツブツ言ってるんだよ」
唯「今日さ、晩御飯何がいいかなーって」
律「食べたいモンでいいんじゃねーの？ 憂ちゃんなら何でも作れそうだし」
唯「憂は今日帰るの遅いみたいだから、自分で作らなきゃいけないんだー」
律「唯が……料理？」
唯「何さその顔」
律「いや……唯が料理できるイメージないからなあ……作りに行ってやろうか？」
唯「え！ いいの！？」
律「おう、ちょっと聞きたいこともあるしな」
唯「聞きたいこと？」
律「まあその……アレだ、とりあえず材料買いに行くぞ」
唯「イエスマム！」
喫茶店
憂「ここの紅茶美味しいんだよね」
純「確かに……そこらへんの紅茶とは違うなあ」
梓「純はホントに違い分かるの？」
純「ねえ梓」
梓「ん？」
純「最近元気ないよね」
梓「何……いきなり……」
憂「純ちゃん……それはちょっとストレートすぎじゃ……」
純「やっぱり寂しい？」
梓「うん……」
純「そっか……」
梓「しっかりしなきゃって思ってるけど……なかなか踏ん切りがつかなくて……」
純「うん、分かる……」
梓「純ありがとね」
純「え？」
梓「私を元気づけようとしてくれたんでしょ？」
純「でも……私じゃ大した力になれなかったみたいだね……」
梓「そんなことないよ！ それに律先輩にもお礼言わないとね」
純「梓……知ってたの？ 私が律先輩から梓を元気づけてくれって言われてたこと」
梓「律先輩はさ、普段はあんなだけど部員のことを誰よりも気にかけてるから 私が元気ないのもとっくに気づいてたんだろうなって」
純「梓……」
梓「ありがとう純、憂 私は大丈夫」
憂「梓ちゃん……」ポロッ
梓「あはは……なんで憂が泣く……の……」ポロポロ
純「梓～……憂～……」ポロッ
私たちは肩を抱き合って泣いた
同時に嬉しかった
私には純と憂が、親友がいるんだ……
その頃の平沢宅
唯「りっちゃん相変わらず料理上手いねー、エクスタシーだよ～」
律「うはは、もっと褒めるがいい」
唯「そーいえばさ、何か話があるって言ってたよね」
律「そうだな……なあ唯」
唯「ん？」
律「私たち、あと数日で卒業だな」
唯「う、うん……」
律「ムギや澪……それに唯とは同じ大学に行くわけだから、みんなとはこれからも一緒にいられる……」
律「でもな、私が心配してるのは梓のことだ」
唯「あずにゃん？」
律「軽音部はさ今５人じゃん、私たちが卒業したら梓１人になっちまうしな」
唯「りっちゃんってさ……」
律「ん？」
唯「そーいうところ……部長だよね」
律「それは誉めてんのかぁ？」
唯「ちゃんと誉めてるよ～ で、あずにゃんが最近元気ないと……」
律「やっぱ唯も気づいてたか」
唯「どうしたらいいかな？」
律「そうだな～……」
唯「あ、いいこと考えた！」
律「いいこと？」
唯「ライブしよう！ 卒業ライブ！！」
律「卒業ライブ？」
唯「うん！ 卒業式の後に講堂で」
律「へえ……唯にしてはいい考えだな」
唯「でしょ！？」
律「でも許可取れるかな？ 一部活が」
唯「そこはさわちゃんに頼もう！」
律「よしっ、そうするか……さわちゃんなら何とかしてくれそうだしな」
唯「これであずにゃん元気出してくれるといいな……あの子ライブ好きだし」
律「あーそうだな、それと唯」
唯「何？」
律「覚えてるか？ 武道館ライブ」
唯「うん、覚えてるよ」
律「私さ……結構本気だから」
唯「勿論、分かってるよ」
律「ははっ、それでこそ唯だ」
唯「えへへ」
翌日の放課後
律「おーす」
梓「あ、律先輩こんにちは」
律「まだ梓一人か？」
梓「はい」
律「ちょーどいいや、二人きりだし今のうちに言っとくか」
梓「来年の……ことですか？」
律「ああ」
梓「…………」
律「私たちは今年度で卒業しちゃうけど、やれそうか？」
梓「はい、私には憂と純がいますから 律先輩が立ち上げたこの軽音部、きちんと受け継ぎます！！」
律「ははっ サンキュー梓 いい友達をもって良かったな」
梓「律先輩こそ、ありがとうございます」
律「んー？ 何のことだ？」
梓「そうやっておどけてる方が似合いますよ」
律「はっはっは！ 言うようになったなー ところで梓」
梓「はい？」
律「梓って進路はどーすんの？」
梓「進路……ですか？」
律「うん」
梓「まだ……決めてはいないですけど……将来も音楽活動できたらいいなとは思ってます」
律「そっか……」
梓「…………」
梓「はい」
律「私たちと一緒に来ないか？」
梓「えっ……」
律「来年さ、私たちの行く大学に来いよ それでまたみんなでバンドしよう！」
梓「律先輩……」
律「ごめん……梓には梓の夢があるんだよな」
梓「律先輩ぃぃ……」ポロポロ
律「お、おい泣くなって……」
梓「ちが……違い……ます……私……嬉しくて……」
律「嬉しい……？」
梓「私に夢があるなら それは、先輩たちと、放課後ティータイムでずっとやっていくことです！」
律「梓……ありがとう」
その時、ドアの入り口から声が聞こえた
澪「わわっ 唯押すなって……」
ガッシャーン！！
梓「あ……」
律「お前ら……来てたのか」
唯「りっちゃんカッコ良かったよ！」
紬「ええ、とっても男らしかったわ」
律「男らしい……それは喜んでいいのかな澪」
澪「お前の取り柄だろ」
律「まあ……確かに」
唯「そうだあずにゃん、今度ライブやることになったんだ」
梓「えっ、本当ですか！？」
律「卒業ライブ！ 卒業式の後に」
澪「正真正銘、高校生活最後のライブだな」
紬「それでね……りっちゃん」
律「ああ、梓は放課後ティータイムの曲でどれが好き？」
梓「えっと……全部好きですけど、中でもふわふわ時間は特別に好きかもです」
律「よし、卒業ライブでふわふわ歌うか」
梓「わ、私がですか？」
律「お前以外に誰がいるんだよ」
唯「大丈夫！ あずにゃんならいけるよ！！」
澪「歌い方とかは私と唯が教えるからさ」
梓「分かりました……やってやるです！」
律「それでこそ梓だ！」
紬「じゃあ、とりあえずお茶にしましょうか」
唯「ティーターイム！！」
そして、卒業式当日
既に卒業式は終了し、講堂には生徒をはじめ大勢の人々がいた
緞帳の下りたステージの上
そこに放課後ティータイムのメンバーがいる
５人は肩を組んで円陣を作っている
唯「いよいよだね……」
澪「最後のライブ……」
紬「楽しんでいきましょう」
梓「最高の、最高のライブにします！」
律「澪、唯、ムギ……私たちの高校生活最後のライブだ そして梓、今日軽音部の部長をお前に託す！」
梓「はいっ！！」
律「みんな……悔いのないライブを！！ 楽しんでいくぞーっ！！」
「おおーっ！！！」
パチパチパチ……
その声が聞こえたのか、講堂は早くも拍手に包まれた
律「よっしゃいくぜっ！！」
そしてステージの幕が開く……
おわり
最終更新：2011年04月12日 23:37
