私は昨日テレビで見た見よう見まねのティロ・フィナーレがあまりにも
面白いくらいきまってしまって驚いてるのが建前上。
冷静のようでいて、全く冷静なんかじゃないのが本音。
澪は澪で無表情で、なんだか怖いくらいだ。
だからここはぜひとも本音と建前をうまく使い分けたい。
小学生の頃の2人なら、きっとすぐに笑い転げられてただろう。
でも、今はお互いに無言で、身動きひとつせず、というか
私は、どうすればいいのかわからないんだ。
そうだな・・・。
ある意味、「成長」ということの悲しい側面を目の当たりにしてる気分だ。
幼さの代わりに私は、欲望を手に入れたようだ。うんうん。たんたん。
これはある意味私にとってはチャンスなのだが
いかんせん、私はこの状況を先へ進める言葉も保つような言葉ももってない。
そろそろなにかアクションを起こさなければおかしい時間が経過しているよな。
唯たち、遅いな・・・・
「澪」
それにしても澪はどうしてなにも言わないのだろうか
「ん」
昔は表情を見れば、澪が何を考えているかだいたいの見当をつけることができた
「痛くなかったか?その、なんだかすまんな・・・・」
「いいよ、別に」
ほら、まただ
その顔、やめろよ
「いや~まさかあんなにきれいに技が決まるとは。私ってば、次期魔法少女の才能があるのかもわからんね!名前考えて変身の練習を夢の中でしておかなきゃ!!」
澪は、口をいくぶんか堅く結んだだけで、なにも言わない。
私、スベったじゃん。
澪が澪じゃないから、ただの空回りになってんじゃん。
魔女化するじゃん。
いつもみたいに殴るでもマミられてでもなんでもいいから、リアクションしてよ。
てか、この体制がまず普通じゃないか。
そろそろ、このまま覆いかぶさりたいくらいだけどたちあがらないと。
「まぁ・・・・とりあえずそろそろ、どくな」
一人で会話を続けなければならない辛さ、誰か、知ってくれ
「よっこいしょー」イチ
今、「イチ」を読んだそのタイミングだ。そのタイミング。
そのタイミングで、私の頬に温かいものが触った。
それが澪の指であることは視覚情報として既に私の中に入っているが
うん。皮膚感覚ってのは・・・・反則だよ。
こんなふうに触られたら、アニメみたいにありえないくらいいきなり汗がしたたりおちるだろーが。
次に起こったことはきっとムギがこの部室に仕込んでいる隠しカメラの映像を
ぜひとも後で自分でもしっかりと部長権力発揮して見ておきたいくらいのあまりにも一瞬だったのだが
効果音をつけるとしたら
ガシッ !? グラッ ボインっ ばよえ~ん だ。
もう一度いう。
ガシッ !? グラッ ボインっ ばよえ~ん だ。
唯たち、今、くるんじゃないぞ。
唯とムギと梓はなぜか待てども待てども全然来なくって。
やはりというか、それが自然というか。
律は待つことに飽きて遊びだした、私で。
いかにも企んでるって感じの顔をしながら私に近づいてきて
「ティロ」
「へ」ガシットネ
「フィナァアアアアアアアアアアアアアアアアアレっーーーーーーーーーーーーー!!!!!」
おいおい、・・・・ったく。
おまえまさかのマミさん派かよ。ハハハ
5人中唯一の必殺技保持者、巴マミ。
お前がほれるのもわからんでもないが、私は圧倒的にほむほむ派だ。
つーか。
どんだけ気合いれてんだよ。いきなり意味わかんないし。
私の首を飛ばしたいならその前にお前がどっか飛んでいけ、バカ律。
とまあ、律は私を床に押し倒した。
殴るまでのセリフはこんなもんかな、と
いつものように頭の中に思い浮かんできたのだけど
私はそれを発することができなかった。
ぬうううう・・・・・・顔が、ちかい。
いつもの見慣れた律の顔だけど、この角度からというのは、初めてだ。
目をはなせない。
私は色んな律を知ってるって思っていたけど、まだ知らないことがあるということに少し驚く。
でも、ちょっと考えてみたらそれはしかるべきことだ。
昔は並んでいた肩も、今では私のほうがちょっと高い。
いつまでも、同じ角度では見ていることはできない。
「澪のほうが背が高くなったね」と言ったときの律の顔を思い出した。
似つかわしくない、ちょっと寂しげな顔。
「澪」
名前を呼ばれた
「ん」
向き合ってる状態で名前を呼ばれるってのはなかなか
「痛くなかったか?その、なんだかすまんな・・・・」
恥ずかしいもんがあるな・・・・照れる・・・・
「いいよ、別に」
顔に出さないようにしないと
「いや~まさかあんなにきれいに技が決まるとは。
私ってば、次期魔法少女の才能があるのかもわからんね!
名前考えて変身の練習を夢の中でしておかなきゃ!!」
夢の中で練習って・・・
律、練習しても意味ないんだよ。だって、魔法少女はいずれ・・・。
律はどんな願いを願って魔法少女になるんだろう・・・・・
きっと必殺技の名前とか、考えるんだろうな、律は。
そうだな・・・たとえば
デコフリャッシュ、あ、噛んだ。
自分の中で思っただけだけど心なしか口の中がいたい。
怒られそうだからいうのは止めとくか。ふふ。
デコフラッシュ・・・ふふ。
ちょっと、不機嫌そうなのは、私がさっきから何も言わないからかなぁ。
それにしても、この角度の律、かわいいな・・・・
「まぁ・・・とりあえずそろそろ、どくな」
なに!?こらこら、どくなどくな。
もうちょっとだけ、この角度を・・・
「よっこいしょー」
あ、律のほっぺた
あったかい
このままひっぱってしまおう。
さっきの技のお返しだ。
「ちょっと・・・・2人とも、いいかしら?」
2年生の教室に唯先輩を迎えにいった私と、
HRが終わってから私が来るまでに一体何をしていたんだ、と
投げかけたくなるくらいに急いで通学バックに教科書やらなんやらを詰め込んでいる唯先輩に
ムギ先輩は近づいてきながらニッコリそう言った。
隙がないこの先輩は、アニメでは私とあまり接する場面が少ない。
1回1期をみただけでは、けいおん部の財布係りとたくあんのイメージしかない。
2期をではちょっとは触れ合う機会もあったけど、心の距離はそれほど縮まってはいない気がする。
されども、ムギ先輩は嫌いというわけではない。
断じて、それはない。
私は原作のムギ先輩のほうが好きだ。
もっと具体的にいうと、同じおっとりぽわぽわでもたれ目のムギ先輩のが好きだ。
あれ?なに言ってんだ、私。
「うん?ムギちゃん、どうしたの~?あ、ムギちゃんも一緒に部室いこうよ~。
今日、なんかりっちゃん1人でさっさと行っちゃったしさ」
「ムギ先輩も一緒に行きましょう。唯先輩は早く準備をしてください」
私がそういうと、ワタワタと準備の続きをする唯先輩・・・
くはっ!!今日もかわいいなぁ~~
「あ、えっとね、そうじゃないの。けいおん関係のことではあるんだけど・・・。
ちょっと2人とも私と一緒に来てほしいの」
ほえ~という声が聞こえそうな顔をした唯先輩と、
相変わらずニコニコしたムギ先輩、その後ろを歩く私。
私と唯先輩はムギ先輩に連れられて、とある空き教室に連れてこられた。
ムギ先輩はなにごともなく教室の扉を開けて
入って、と私たちに入室を諭した。
「ここって、勝手に入っていいんですか?」
「ちゃんとあらかじめ生徒会に届けは出してあるから心配しなくても大丈夫よ、梓ちゃん」
「は、はぁ・・・」
大丈夫って言われても、全然不安なんですけど。
この人、何するつもりなんだろう。
「ム、ムギちゃん!!!」ハイハイハイ
元気よく先輩が右手を掲げた。
きっと授業中にはこんなに元気よく手を挙げる先輩は見ることはできないだろう。
一緒に授業を受ける機会はないが、簡単に想像がつきます、はい。
「なにかしら、唯ちゃん」
「お菓子はあるとですか!!!!」
「ふふ。ちゃんとあるわよ。さ、入って」
うひゃ~~といいながら、唯先輩は教室に入り、私もその後におずおずと続いた。
教室はそこに生徒がおらず、少し机の配置や数が違うだけで
私たちが普段使っている教室となんら大差はない。
勝手がわかっているぶん、教室の静けさに逆に違和感を覚える。
「机はまぁ、ここにあるのを使いましょう」
教室の隅っこにあった4つの机を規則正しく並べてムギ先輩は私たちを席に座らせた。
こんな空き教室まで借りて、一体ムギ先輩はなにを考えているのか。
私の思っていることは顔に出ていたのだろうか、ムギ先輩は
「そんなに心配しなくても、変なことはしないから大丈夫よ」と言った。
いや、十分、心配です。
ムギ先輩が率先して行動するってことは結構すごいことなんだって、私はそう思ってます。
とりあえず、横でさっきから、おかしおかし、聞こえてくるんで
唯先輩にお菓子を至急お願いします。
これが私たちのペースといわんばかりに
ムギ先輩は私たちにお菓子をまず出してくれた。
唯先輩はおいしそうに今日のお菓子であるマドレーヌをほおばっている。
そういう顔されると、こっちも自然と顔が緩むってもんだ。
いやはや、この人は存在が罪だよ、罪。
そんな私たちをやはりニコニコしながら見ているムギ先輩もいつもとかわらない。
お菓子をたいらげ、唯先輩がようやくおとなしくなった頃、ムギ先輩は口を開いた。
「今日は2人にちょっとこれを見てもらいたいと思って」
そう言って、ムギ先輩はバックから何かをとりだして
机の上においた。
「あれ?これって・・・・」
「DSと、それと・・・・PSP・・・・ですか?」
「そうよ」
「学校にこんなものもってきてムギちゃんいけないんだ~~」
「まぁまぁまぁまぁまぁまぁ」
まぁ多いなっ!!
「でも、ムギ先輩がゲーム機もってるなんてめずらしいですね」
「ふふっ」
ニコっと笑ってムギ先輩はDSを私に、PSPを唯先輩に渡そうとしたが、
唯先輩が「DSがいい」といったので、私がPSP,唯先輩がDSを受け取った。
PSPのずっしりとした重さを感じながら、PSPを見る。
外見的には普通のPSPと変わりはないけど、ムギ先輩のことだからきっと何かあるに違いない。
最終更新:2011年04月13日 21:37