「たぶんさ、きっと違うんだ。私、そういう風に思う自分がすんごいいやだし、そういうのはきっとただの思い込みなんだ。決め付けちゃダメなんだ」
「周りがどうとか、澪がどう思うかとか、そういうことじゃなくて」
「まず自分で自分の気持ちに向き合わなきゃ、澪と一緒に居るにしても、いつか澪と離れることになったとしても、私に出口はないんだって、そう思った、いや、きっとそう思ってた、ほんとはわかってた」
「まぁ、・・・・まさか澪からキっ、キスされるとは思ってなかったんだけど・・・///」
「そっ、それは・・・・あ、あやまっただろ!!!////」
「いや、あやまったからってしていいことと悪いことがあると思うけど・・・」
「・・・・うっ///」
「えっと・・・・まぁ・・・その、だから、1度しか言えないし、すんごい緊張してるから声は震えるかもしれないんだけど」
「う、うん」
「言わせてほしいんだ」
澪ともっと近づきたいから、澪が傍で笑うとうれしいから
「澪が大好きなんだ。他の誰にも渡したくない」
「・・・・りつ」
「・・・・ん?」
「・・・・ありがとう、いままでごめんね」
「・・・・・うん」
ありがとう、と、ごめんね、かぁと私は思う。
どんな気持ちがこもってるのかなんて私にはわからない。
思いは言葉を超えられない時がたまにあるから、
私が澪の気持ちをわからなくても不思議ではないけど。
今はどうにかして、それを知りたいと思った。
謝ったからしていいってもんじゃないけどさ、
可能性があると確信してから行動をした私には、素直に澪はすごいと思えた。
怖がりで、泣き虫の澪じゃない澪も全然、大好きだ。
「澪」
「ん?」
「そっちへ行ってもいいか?」
お互いのいろんな側面を知っていって、少し驚いたり、戸惑ったりしながら
このまま2人で居られる2人でいよう。
変わっていくけど、変わらないでいよう。
「当たり前だろ」
うん、ほら、大丈夫だ。
だって、顔を赤くして微笑む澪の顔、私はすごく嬉しい。
もういろんなこと気にしなくていいんだ。
ずっと澪の手を固定するだけだった手をギュっと握り締めたら、澪もそれに答えるように握り返してきた。
顔をゆっくり近づけてみる。
「りつ」
「な、なに?」
「ずっと大好きだ」
心が、震えるね。
「ちょっとまったあずにゃん!!!!」
「うわ!?びっくりした!いきなり耳元で大きな声ださないでくださいよ!!!」
「ご、ごめん。それよりこれつけて!!」
「ん?」
唯先輩は私にイヤホンを差し出した。
澪フォンみたいな贅沢品ではなく、普通の、本当に普通のイヤホンだ。
「え?これ、音あるんですか?」
私は動画を見ることしか考えていなかったし、
隠しカメラってことだからてっきり音はないんだと思っていたんだけど。
私が尋ねると、ムギ先輩は返答のかわりにただニッコリと笑っただけだった。
こ、この人は・・・・・。
その笑顔を見て、唯先輩からイヤホンを大人しく受け取った。
両耳に装着しようとしたところ
「ちがうよ、あずにゃん!!!」
そう言うと、唯は私に左耳用だけを渡して、自身は右耳用を装着した。
こ、・・・・これはこれで、異議なし!!!!!
準備が整ったところで、2人で動画を見たのだけど・・・・・
キャハハでウフフな音声が聞こえてきた瞬間のイヤホンのありがたさと言ったら
もうね、ムギ先輩、この動画どうするつもりなんすか?フハハって感じでね。
隣で唯はそうそうに顔を真っ赤にしてダウンしていて、
動画と隣の唯とどっちを見ようかって
悩むほどだったんだけど。
「どうだったかしら?」
イヤホンを外す私に
シレッとしたいつもの態度で聞いてくるムギ先輩。
「えぇ、・・・・・まぁ・・・・・」
まさか、ヤッてる場面撮られて見せられて
「どうだったかしら」って感想を聞かれることになるとは2週間前の私は露知らず。
てか、「どうだったかしら」って何の感想聞いてるんだろう。
私はともかく、かわいそうなのは唯だよね。ドンマイ。後で慰めとこう。
「フフ。楽しんでくれたなら良かった」
いや、楽しかったとか、一言も言ってないんですけど。
「あずにゃん・・・・顔、にやけっぱなしだよ・・・・」
しまったぁぁぁぁっぁああああああ!!
うわあああああああああああああああああっはっはっはwwwwwwwwwwwwwwww
唯、かわいかったんだからしかたないじゃあああああああああああああっはっはっはwwwwwwwwww
顔に出ていたとは・・・・・不覚!!
「まぁまぁまぁまぁまぁまぁ。それより、この動画を見た後で気になることってなにかないかしら?」
「?」
「今、私たち、3人この教室にいるわ」
「そうだね」
「そうですね」
「ここにいない人がいるわよね」
「りっちゃんと」
「澪先輩ですね?」
ムギ先輩はクスっと笑った。
いや、その笑い方は悪役ですよ、先輩。
ブラックブラック
「DSには、なにが映し出されるかしら・・・?」
私と唯は、唯側の机の上においたDSに目をやる。
部室視聴用DS。
「もしかして・・・・・」
ゴクリ
「・・・・リアルタイム?」
Gokuri
「どうかしら。りっちゃんと澪ちゃんは唯ちゃんたちほど進んでないから。あと、梓ちゃん唾飲み込みすぎ」
「そ、そうなんですか・・・てか、唾飲み込みすぎなのは素直に認めます、すいません」
「え?なになに?どういうこと?教えてあずにゃん」
顔のほてりがとれないまま、唯が私に説明を求めたかわいいな
「てか、え?説明いるの?」
「なぁ?みお」
「ん?」
「とりあえず抱きしめてみたんだがこれからどうしよう」
「え?いや・・・どうしようと言われましても///」
「ここ部室だし」
「ですよね」
「みんなそろそろ来るかもしれないし」
「・・・ですよね」
「じれったいぃぃぃぃぃいいいいいいいいい」ムギュウウウウウウウ
「や、やっぱ見るのやめない?かわいそうだよ。ね?あずにゃん?」
「」ジー
「あずにゃん?」
「えっ?あ、っは、はい。そうですね(見入ってた)」
「唯ちゃん!!!」
「え?な、なに?(ムギちゃんこわい・・・・)」
「空気よんで!!!!」
「Σ(゚д゚;)」ガーーン
「え?私空気よめてない?」オロオロ
「・・・・・そ、そんなことないですよ(たしかに唯は空気読めてないよな)」
「唯ちゃん、今私たちは歴史的瞬間に立ち会っているのよ」
「歴史的・・・・瞬間?」
「そう。わが部の部長と副部長という幼馴染がようやくお互いの心を通わせ合ったの!!!!!!」
「(ムギ先輩今日どうしたんだろう・・・・・)」
「私たち、部員にはそれを見守り、何回も見守り、これでもか!ってくらい見守る義務があるわ」
「(見守りすぎだし、見守るってつまり「盗撮」じゃん)」
「ムギちゃん・・・・・私・・・・」
「間違ってたよ」デーン
「(落ちた♪)」ウヒョ~イ
「(落ちた)」ハァ
「じゃあ、さっそくみんなで2人を見守ろう!!」キリッ
「ふふ♪その意気よ、唯ちゃん」ラクショウラクショウ
「それにしても梓ちゃんはしっかりと見守ってるわね」
「で、ですね」ハハハ
「(この見え方からしてカメラは棚周辺にでも仕掛けてんのかな?)」ジー
「りつは・・・・こういうことするの、いやか?」
「いや、いやっていうか・・・・」
「ここ部室だろ?」
「いやか?」
「いや、いやじゃないけどさ・・・・」
「・・・・」
「・・・・」
「りつぅ」
「な、なんだ?」
「・・・さっきからなんだか・・・身体があつくて・・・・」
「へ!?///」
「と、とりあえず、ここ、部室だから(絶賛発情中?)そういうのは、ダ、ダメだ(たしかに、澪色っぽいな)」
「おっかしいなぁ・・・・」
「なにが?」
「いや、今日さ、ムギに『身体の調子がよくなる』っていう栄養剤もらったんだけど」
「ほう(・・・・ん?)」
「身体の調子がいいっていうか」
「なんかこう・・・りつを見てるとムラムラするというか・・・・」
「え?い、いや、そんないきなりムラムラするといわれましても///」
「み、みおちゃんが大胆!?」ドキドキ
「・・・・ムギ先輩」
「ん?なにかしら梓ちゃん」ニッコリ
「何か盛りましたね?」
最終更新:2011年04月13日 21:39