放課後、教室
律「あったな、そんなのも。はぁ」
澪「ずっと部室にこもってるし、運動するのも悪く無いだろ
律「いきなり走る方が、却って危ないぞ」
紬「だったらしばらくの間、練習してみる?」
澪「それも良いかもな。バンドも体力があって、困る事は無いし」
律「やぶ蛇だったか」
唯「ヘビーだね」
紬「唯ちゃん、面白ーい♪」
律「いや。そうは思えんのだが」
和「マラソンの練習って、あなた達何部なのよ」
紬「でも私達、いつも遊んでると思われてるでしょ。だったら、たまには頑張るのも良いと思うの」
和「頑張りどころが違う気もするけれど。無理して怪我しないでよ」
唯「そこは軽音部っぽく、ゆっくりまったり練習するから」
和「意味ないじゃない、それ」 くすっ
唯「えへへー♪」
律「和ませる奴め。後は、梓の了承を得ないとな」
澪「梓の性格上、怒りそうな気もするけど」
軽音部部室
梓「皆さん、今日は遅かったですね」
澪「ん、ああ。・・・梓は、マラソンって知ってるか」
梓「それは、まあ」
律「どんな入り方だよ。その、なんだ。練習はするけど、マラソン大会へ向けての練習もしようと思ってさ」
紬「駄目、かしら?」 じー
梓「いえ、私は構いませんよ。体力を付けるのも、バンドにとって良い影響があると思いますし」
澪「悪いな、梓」
梓「でも、急にどうして?」
律「・・・って訳で、一応は体面とかも気にしてる訳さ」
梓「真鍋先輩が言うように、頑張りどころが違う気もしますけどね。確かに、あまり後ろの方を走るのは良くないかもです」
唯「えいえいおーだよ。えいえいおーっ」
澪「掛け声だけ頑張ってもな。それと梓が言ったように、それなりの順位ではゴールしないと」
律「ハードル上げ過ぎじゃないのか?」
唯「マラソンなのに?」
紬「唯ちゃん、面白ーい♪」
律「コンビ芸か、お前ら」
グラウンド外周
律「1、2、3、4っ」
梓「2、2、3、4っ」
律「けいおんっ」
梓「ふぁいおーっ」
律「けいおんっ」
梓「ふぁいおーっ」
澪「妙にはまってるな、二人とも」
律「いやー。たまには体育会のノリも良いな」
梓「同感ですっ」
澪(あずりつのフラグじゃないよな) たらー
唯「・・・」
紬「・・・」
澪「こっちは完全に沈黙だな」
梓「無理しないで、自分のペースで走った方が良いですよ。それと、こまめな水分補給も忘れずに」
唯「横っ腹痛くならない?」
紬「だったら普段は、縦っ腹が痛くなるのかしら?」
唯「あははー♪」
紬「あはははー♪」
律「どこへ向かってるんだよ、お前達は」
夜、平沢家リビング
唯「・・・という訳で、しばらくマラソン大会の練習をするから」
憂「大丈夫?あまり無理しない方が良いよ」
唯「でも軽音部として走るみたいな物だし、学校の行事だから真面目にならないとね」
憂「お姉ちゃん♪・・・ちょっと、横になって。マッサージしてあげる」
唯「ありがとー」 ごろーん
憂「よいしょ、よいしょ。・・・お餅みたいに、ふにゃふにゃしてるね」
唯「あー、極楽極楽♪」 とろーん
憂「足はやっぱり、筋肉が張ってるかも」
唯「でもそのくらいやらないと。私が足を引っ張る訳にも行かないし」
憂「私としては怪我をしないでくれれば、それで良いんだけどな」
唯「憂は優しいね。・・・今度は、私がマッサージしてあげる」
憂「う、うん♪」 ごろん
唯「ういしょ、ういしょ」 もみもみ
憂「お、お姉ちゃん。そこは駄目だよーっ」
唯「えー、何がーっ」 もみもみ
憂「お、お姉ちゃーんっ♪」
唯「ういー♪」 もみもみ
朝、教室
純「おはよー。・・・ん、どうかした?」
憂「な、何が」 びくっ
梓「さっきから、反応が変なんだよね。怪我でもしてるの?」
憂「何も、全然。本当、全然平気だから」
純「なら良いけど。あー、もうすぐマラソン大会かー。面倒だなー」
梓「軽音部は、しばらく練習するつもりだけどね」
純「・・・マラソン大会の練習って、あんた達何部なのよ」
梓「でも体を動かすのも面白いよ。普段は部室にこもってるばかりだし」
純「そうだけどさ。筋肉痛になったりして、大変そうじゃない。ねえ、憂」
憂「はは、そうだね。はは」 びくびくっ
純「もしかして、憂も筋肉痛とか?」
憂「それは無いよ」 びくっ
純「ふーん」 つんっ
憂「ひゃうっ」 がたっ
梓「ちょ、ちょっと。憂、大丈夫っ?」
純「ご、ごめん。やっぱり、怪我?」
憂「い、いや。その。マッサージが、ちょっと」
純「・・・いやらしい話じゃないでしょうね」
梓「何言ってるのよ、もう」 ぽふっ
軽音部部室、ドア前
ひぃーっ♪
梓「・・・なんだろう。ホラー映画でも観てるのかな。でも、澪先輩がいるのに」
澪「むひゃーっ♪」
梓「おおよそ、澪先輩とは似つかわしくない悲鳴だし」
澪「で、でもちょっと気持ち良いかも♪」
梓「まさか、純の言った通りとか?・・・済みません、遅れましたっ」 ばたんっ
唯「いらっしゃーい」 わしゃわしゃ
梓「いらっしゃいって何ですか。それと、その手付きは何ですか」
律「平沢式マッサージだってさ。梓もやってもらえ」 ぐったり
梓「・・・もしかして、憂にもやりました?」
唯「良く分かったね。涙を流して喜んでたよ」
梓「多分違うと思いますし、私は結構です。澪先輩に続きをやれば良いじゃないですか」
澪「私はもう結構だ。・・・むひゅっ♪」
梓(妙に、にやついてるし。唯先輩、じっと見てくるし)
数日後、放課後
唯「1、2、3、4っ」
紬「2、2、3、4っ」
唯「けいおんっ」
紬「ふぁいおーっ」
唯「けいおんっ」
紬「ふぁいおーっ」
律「なんだかんだといって、走れるようになってきたな」
澪「継続は力なりだ」
律「これなら、赤っ恥は掻かなくても済むんじゃないのか」
梓「後は本番を迎えるだけですね」
律「よーし、上位入賞目指して頑張るぞーっ」
唯、澪、紬、梓「おーっ」
マラソン大会当日
澪「ストレッチも終わったたし、後はスタートを待つだけだな」
紬「暑くもないし寒くもないし、良いマラソン日和になりそうね」
梓「けいおん、ふぁいおーです」
唯「ぜんざいも待ってるしね」
紬「じゃあ、ゼンマイも巻いちゃう?」
唯「ムギちゃん面白ーい♪」
律「もういっそ、落研に行けよ」
パーン
律「おーし、スタートだ。無理はしないけど、それなりのスピードで走るからな」
澪「みんな、辛くなったらすぐに言えよ。絶対我慢するな」
紬「梓ちゃんもね」
梓「はいです。唯先輩は大丈夫ですか?」
唯「ウサギとカメのノリで頑張るよ。でもリクガメって、結構足が早いよね」
梓「もう、唯先輩ったら」 くすっ
正門前、塀沿いの道
澪「みんな、結構真剣に走ってるな」
律「私達も負けてられないって事さ」
和「調子はどう?」
唯「あ、和ちゃん。私達はリクガメのように、意外と早く進んでいくよ」
和「・・・全然意味が分からないけど、無理しないでね。私、先行くから」 ぴゅーっ
梓「あっという間に見えなくなりましたね」
紬「ウサギというより、バックスバニーみたい」
唯「でもあれって、なんて鳴いてるのかな。ミッミッ?」
紬「鳴くのはバックスバニーじゃなくて、ロードランナーよ」
唯「あー、2コンに向かって叫ぶ」
梓「それはバンゲリングベイですよ。何言ってるんですか」
律「お前こそ、何言ってんだ」
商店街
紬「結構学校から離れたわね」
澪「みんなで走ってて良かったかもな。下手したら、道に迷う」
唯「あー、たまにいるよね。そういうおっちょこちょいな人」
律「突っ込み待ちか、それ」
唯「し、失礼な。私は憂と下見で何度か走ってるから、道は完璧に覚えてるんです」
梓「いつに無いやる気を見せてますね。何かのフラグですか」
唯「もう、あずにゃんはすぐそういう事言うんだから。平沢式マッサージ、やってあげないよ」
梓(その方が助かるんだけどな) たらー
ぶろろろー
澪「廃品回収の軽トラか。さすがに、あっさり抜かれてくな」
律「逆に言えば、あれに飛び乗ると楽な気もする」
梓「不正以前に、どこへ走って行くか分かりませんよ」
律「風の向くまま気の向くまま、のんびり旅をするのも楽しいだろ」
紬「りっちゃん、恰好良いー♪」
澪「あれに乗って、気ままに旅?無い無い、無いだろそれは」
律「澪はある意味、ムギ以上にお嬢様だからな」
梓「というか、普通誰でも嫌ですよ。ねえ、唯先輩」
唯「え、ああ。そだね。パンにはマーガリンよりバターだよね」
梓(全然聞いてなかったな。パン屋さんが見えたから、それを言っただけかな)
唯「私達の順位って、どのくらいかな」
紬「先頭集団ではないだろうど、上位グループには入ってるんじゃなくて?」
律「よーし、この調子で最後まで走り抜くぞ」
澪「練習の甲斐があったみたいだな」
唯「後は、平沢式マッサージのお陰だね」
律、澪、紬、梓(それはない)
郊外の急な坂
律「おー、ここは結構な難所だな」
紬「心臓破りの坂ね」
澪「さすがにここは、ペースを落とすか」
律「ひー、きつい」
梓「でも逆に、頑張り甲斐がありますよ」
紬「梓ちゃんは前向きね♪」
律「ちぇー。梓に負けてられるかっ」
澪「全く。・・・唯、どうかしたのか」
唯「え?」
澪「いや。さっきから、後ろを気にしてるから。誰か待ってるのか」
唯「そうじゃないよ。私は常に前向きだからね」
澪「そういう意味なのか?」 くすっ
唯「たはは。・・・ごめん、靴の紐が解けたから、先に行ってて」
律「先に行く程でもないだろ。待ってるから、早く結べよ」
唯「良いって、良いって。すぐに追いつくから」
律「まあ、そこまで言うなら。・・・ゆっくり走るから、すぐに来いよ」
澪「待ってるからな」
紬「唯ちゃん、また後でね」
梓「唯先輩。けいおん、ふぁいおーです」
唯「行ってらっしゃーい」
最終更新:2011年04月15日 00:28