唯「とうとう……買ってしまいました!」

\ジャジャーン/
   和
/ジャジャーン\

唯「ジャジャーン!和ーナビ!」

唯「和ちゃんが目的地まで音声案内してくれるという和ちゃんマニアにはたまらない一品です!」フンスッ

唯「さっそく使ってみよ~っと」

唯「説明書は~……読むのめんどくさいからいいや~」

唯「電源ポチっとな!」

ポケットから眼鏡ケースを取り出すと素早く、装着。

電源ON──

和「」スチャ

和「全く…私がいないとすぐ迷子になるんだから」

唯「ほぉああっ」ゾクゾクゾクッ!


唯「……」ピッ!

眼鏡ケースを素早く取り出し、流動的なフォームで眼鏡を外すと、収納。

──電源OFF

和「じゃあ私、生徒会行くね」

唯「ふぁぁあああっ」ゾクゾクゾクッ!

唯「眼鏡がある和ちゃんとない和ちゃんを楽しめる様にしてるなんてわかってるぅ!
しかも眼鏡のはずし方とかこうシュッて感じでカッコいい!」

唯「もっかいつけます!」ピッ!

和「全く、私がいないと」

唯「切ります!」ピッ!

和「じゃあ私、生徒会」

唯「つけます!」ピッ!

和「全く(ry」

唯「切りま(ry」

和「こら、電気は大切にしなさい」

唯「えへへ怒られちゃった。なるほど、三回以上付けたり消したりすると和ちゃんに叱られるんだね!
それもまたよし……えへへ」ニタァ

唯「さて、どこに行こうかな~」

唯「え~と、確かこのノート型ウインドウに行きたい場所を書き込んで見せればいいんだよね」カキカキ

唯「出来たよっ! さあ和ーナビちゃん私をここへ案内して!」

唯『最近駅前にできた新しい喫茶店』ミセミセ

和「……」

和「もっと具体的にお願い出来ないかしら?」

唯「具体的に? うーん……あ!」

唯「ならこうして~っと」カキカキ

唯「ほいさっ!」

唯『最近駅前にできたチョコレートパフェが美味しい喫茶店』

和「……店名とかわからないのかしら?」

唯「店名? うーん……わかんない」

和「……」

唯「……」

和「そうなんだ。じゃあ私、生徒会行くね」スチャ

唯「ええっ!?」

和「」シーン

唯「勝手に電源落としちゃやだよぉ」ピッ!

和「ふふ、あなたはどっちかって言うと人生の迷子ね」

唯「おぉ! 違うパターンもあるんだ!
でもさらっと酷いよねそれ」

和「目的地を早く決めなさい」

唯「う~ん……確かお店の名前の最初に「せ」がついたような……」

唯「そうだ! 確か検索も出来たはず!」

唯「え~と~桜が丘の喫茶店の~お店の名前の最初が「せ」~と」

せ 生徒会長(第三十三代目) 真鍋和 住所××-○○-△△

 生徒会長(第三十二代目) 曽我部恵 住所△△-○○

唯「何故か歴代生徒会長の住所が出てきたよ!」

唯「というかどの文字検索かけても生徒会関連ばっかりだよ!」

和「じゃあ生徒会行きましょう」

唯「えぇ~……」

和「音声案内を開始するわね」スタスタ

唯「あぁんっ待ってぇ~行くからぁ!」

和「……ほら、シートベルトしなさい」

唯「ん? でも私達歩きだよ?」

和「……いいから、ほら」

和ーナビはそう言いながら左手を唯の掴み易い位置に差し出す。

唯「……んふっ、は~い♪ へっへへ~♪」ぎゅむ

唯はその差し出された手に子犬のように飛び付き、腕を絡めた。

和「じゃあ行くわよ」
唯「ほーい」

和「しばらく直進ね」スタスタ
唯「ふむふむ。直進と」スタスタ

和「300m先の信号を左折ね」スタスタ
唯「左折と」スタスタ

和「次の信号を右ね」スタスタ
唯「右と」スタスタ



和「……ここどこかしら」

唯「えぇっ!?」


唯「まだ二回ぐらいカーブしただけだよ!?」

和「ルートから外れたみたいね。仕方ないわね、唯は」

唯「和ーナビちゃんについて来たんだよ私!?」

和「ルートの再検索をするわね」ピピピー

唯「おぉっ! なんかカッコいいっ!」

和「ふふ、こっちね」

唯「さすが和ーナビちゃんだよ! ルートの再検索も早いよ!」


\ピンポーン/
和「」唯「」
/いらっしゃいませー\

唯「あれ? ここローソンじゃ……」

和「すいません、世界地図ください」

コンビニの店員「世界地図はちょっと今切らしてて……」

唯「なにやってるの和ーナビちゃん!?」

和「何ってルートの再検索をするために世界地図を買おうとしてるのよ」

唯「自分で出来なかったの!? それに世界地図じゃわからないよ……? 多分」

和「唯、地球は丸いのは習ったわよね?」

唯「う、うん」

和「つまり世界は繋がっているのよ。この桜が丘然り、ね」キラリッ

唯「う、うん?」

和「てわけで買うわね」

唯「う、うん?」

店員「すいません、日本地図ならあるんですけど……」

和「……じゃあそれで」

唯「買うんだ!」

和「買わないと行けないじゃない、喫茶店」

唯「喫茶店行こうとしてくれてたんだ……! ありがとう和ーナビちゃん!」

和「じゃあ改めてルートの再検索をするわね」ペラペラ

唯「頼んだよ! 和ーナビちゃん!」

和「ぁ……載ってな」

和「コホン、こっちね」

唯「さっき載ってないって言おうとしなかった!?」

和「気のせいよ。音声案内を再開するわね」

唯「心配だよぉ」

和「早くシートベルトしなさい」

唯「はーい」ぎゅむ

和「500m直進ね」スタスタ
唯「直進と」スタスタ

和「しばらく道なりね」スタスタ
唯「道なりってなんか安心するよね~」スタスタ




和「目的地のワンピース(一つなぎの大秘宝)まで残り15kmね」

唯「安心じゃなかったよ!!!」


唯「いつの間に目的地ワンピースになったの!?」

和「唯が喜ぶかなって思って。あなた単行本持ってるじゃない。
それにすぐ近くにあったからついでに寄ってこうかなって」

唯「そんな近くにあるものなの!? 絶対ワンピース売り場とかだよそれ!」

和「私はそんな嘘つかないわよ」

唯「ん~ぅ……でも15キロは遠いよ~」

和「そうね。徒歩じゃちょっと遠いかしら」

唯「じゃあやっぱり喫茶店いこ!」

和「ええ。わかったわ。こっちね」
唯「は~い」ぎゅむ

和「」スタスタ
唯「」スタスタ

和「」スタスタ
唯「」スタスタ

和「」ジー
唯「ん?」

和「渋滞だわ……」
唯「えっ? どこどこ?」

和「私の行き詰まった唯への思いが……渋滞なのよ」

唯「も/// もうっ! 和ーナビちゃんったら!」ドキドキ

和「こういう運転手を飽きさせない機能もあるのよ」

唯「あ……そうなの」

唯「それにしても和ーナビちゃん」

和「何かしら?」

唯「こっち駅じゃないよ?」

和「……」

唯「……」

和「」スチャ

唯「あわわ…また自ら電源を落とそうとしてる……」アタフタ

和「ごめんなさい……二度も道を間違えるなんて……これなら私なんかいない方がいいわよね」

唯「そんな! そんなことないよ和ーナビちゃん!」

和「!」

唯「私はこうやって和ーナビちゃんと一緒に歩くだけで楽しいよ?」ニコッ

和「唯……」

唯「二人で一緒に探そ。ね?」

和「……ええ」

唯「え~と駅は確か~」

和「待って、唯」

唯「んぅ?」

和は指に軽く唾液を纏わすと風に当てる。

和「風は南南西から吹いてるわ……あっちが海だから……駅はこっちね」キリッ

唯「わかるの!? 和ーナビちゃん!」

和「潮風が当たる場所に駅を作らない筈よ。錆びちゃうしね」キリッ

唯「おぉ! 何かそれっぽいよ和ーナビちゃん!」

和「さ、行きましょう」クイッ


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最終更新:2011年04月18日 02:20