(回想)

憂 (あなた方ですか?姉を苛めているというのは・・・・)

憂 (え?私?顔見て分からない?あなた方が苛めに苛め抜いた平沢唯の妹ですよ)

憂 (何しに来たって・・・ バカですか?これ、私の手にあるもの。見て分かりません?)

憂 (あはは。冗談って・・・ この期におよん・・・でっ!!!!)がごっ!!!

憂 (きゃははは!痛い?ねぇ、痛い??痛いよねぇ。痛くしてるんだもん。あなた方と一緒)

憂 (人が嫌がるの、痛がるのを分かっていて、私のお姉ちゃんを滅茶苦茶にしてくれたお前らと一緒だぁ!)どごっ!!

憂 (こんな事してただで済むと思ってるかって?思ってないよ。だってこれは私への罰でもあるんだも・・・んっ!!!)ごきゃっ!!

憂 (私に心配させないように、いつも通りに振舞ってくれてたお姉ちゃん。私・・・気付けなかった)

憂 (お姉ちゃんが壊れちゃうまで気付けなかった!私!私がああああああ!)ばきょむっ!!

憂 (はぁはぁ・・・・ 仕返ししたくなったら、いつでも来てください。でも・・・・)

憂 (私はお姉ちゃんのためなら何でもやれる女だって。分かってもらえましたよね?それが分かった上でくるのなら・・・)

憂 (それ相応の覚悟を持ってどうぞ)

憂 「・・・・・・・・」

憂 (分かってる。本当は私に和ちゃんを責める資格なんてないんだって・・・)

憂 (私も一緒。和ちゃんとおなんなじ、お姉ちゃんがこうなる前に何もしてあげられなかった・・・・)

憂 (でも、勝手だけど和ちゃん。今回のこと・・・不安だけど、期待しちゃっていいのかな?)


憂 「・・・・お金、お小遣いの前借り、お母さんにお願いしてみたら?」

唯 「え、でも・・・」

憂 「だいじょうぶだよ。私も一緒にお願いしてあげるから」

唯 「うん、ありがとうね。憂・・・・」

唯 「いつも本当にありがとう。ごめんね、迷惑ばっかりかけて・・・・」

憂 「・・・・そんなことないよ。なに言ってるの、やだなお姉ちゃん。さ、行こう?」




・・・
・・・・
・・・・・

唯 「和ちゃん。私、少し学校を休もうかなーって思うんだ」

和 「え、どうしたのよ急に」

唯 「あの人たち、私を眼の敵にして、それがここのところ特に酷くてさー」

唯 「いじめ・・・られてるみたいなんだ。・・・へへ」

唯 「少し休んで冷却期間をおいたら、あの人たちも飽きて嫌なこともされなくなるんじゃないかなぁって」

和 「・・・唯、だったらなおのこと休んじゃダメよ。ああいう卑劣なやつ等に弱みを見せたら、事態は更に悪化しかねないわよ」

唯 「そうなの?でも、正直もう辛いんだよ・・・」

和 「平気よ。なにかあっても私がいるじゃない。クラスの他のみんなも。唯は一人じゃないんだから、ね?」

唯 「う・・・うん。和ちゃんがそう言うなら、もうちょっとがんばってみようかな」

和 「偉いわ、唯。その意気よ!」


・・・・・
・・・・
・・・


がばっ

和 「・・・・・・・・」

和 「はぁ、何だってのよ。もう・・・・」

和 「と、もうこんな時間。早く支度して出かけないと。今日はギターを見に行くんだから・・・」

和 「・・・・・・・唯」



楽器店

和 「すごい・・・ギターがこんなにたくさん」

唯 「はぁ~~~~・・・」

律 「平沢さん、どれがいいか決めた?」

唯 「あ、えと・・・ その、選ぶ基準とか・・・どうすればいいのかなって・・・」

澪 「ギターって音色はもちろん、重さやネックの形や太さも色々あるんだ」

唯 「・・・・・・あ」

澪 「だから女の子はネックが細いほうが・・・て、あれ、平沢さん?」

唯 「このギター・・・ 可愛い・・・」

紬 「平沢さん、そのギターが気に入ったの?」

唯 「・・・よく分からない。けど、なんか気になるの」

律 「でも、そのギター25万円もするぞ」

唯 「本当だ・・・ これはさすがに手が出ないよ・・・」

律 「・・・・・」

唯 がっくり・・・

律 「平沢さんさ。これ、そんなに気に入ったの?」

唯 「え・・・・ でも、高すぎt
律 「はっきり言えって! 欲しいの欲しくないの?」

唯 「え、う・・・ほ、欲しいです・・・!」

律 「よしよし、やっと自分の気持ち、言ってくれたな」

澪 「律?」

律 「言いたいことはさ、考えるより先に口に出しておいたほうが気持ちいいぜ。そうすることによって開ける道もある」

唯 「え、どういうこと・・・・?」

律 「私に考えがあるっ!!」

律 「たしか予算で5万円持ってきてるんだったよな?」

唯 「うん、お小遣い前借りして・・・」

律 「だったら不足分はあと20万。うーん、楽勝じゃね?」

紬 「あの、言っている意味がいまいち分からないんですが・・・」

律 「だからさ。5万円手付けで払って分割にしてもらってさ。残り20万はみんなでバイトしてチャチャッと稼いじまおうぜ!」

唯 「・・・・え」

律 「ここに5人もいるんだ。一人頭4万円。けっこう現実的な額じゃねーの?」

澪 「なるほどな。律、お前にしては良い事を言うじゃないか。良いアイデアだ、見直した!」

律 「だってだって部長だもん♪」

和 「簡単に言うけど、4万といったら大金よ。口で言うほど楽には稼げないと思うけど、それでも協力してくれるの?」

律 「協力って・・・ お堅い人ですなぁ和ちゃんは」

律 「私たちはバンドをやるんだぜ。だったら、バンドで使うギターをみんなで買ったって、別に不自然じゃないだろ」

和 「律・・・・」

律 「それにさ、私もいま使ってるドラムがどうしても欲しくってさ。値切りに値切って、がんばって買ったんだよ」

澪 「あの時は店員さん、泣いてたぞ・・・・」

律 「だから、それくらい欲しかったんだって。やっぱりさ、自分が気に入った楽器で演奏したいじゃん。なぁ、唯?」

唯 「・・・・・!」

律 「ん、どしたー?」

唯 「う、ううん。あ、あの・・・・ あ、ありがとう・・・・」

律 「おう♪」

紬 「あの~、りっちゃん。値切るって、なんですか?」

律 「欲しいものを手に入れるために、努力と根性で負けさせることだよ!」

紬 「すごいですね!なんか憧れます!!」

澪 (憧れる要素がどこに!?)


紬 「よぉし!」

ずんずんずん!

和 「え、ムギ・・・どこに?」

紬 「ちょっと待っていてね(ふんす)!」

和 「ムギ、どうしたのかしら・・・」

律 「さぁ・・・ なんか店員さんと話してるみたいだけど」

澪 「お、なんだ?店員さんが電卓をたたいて・・・ あ、ムギが戻ってきたぞ」

紬 「このギター、5万円で売ってくれるって」

唯 「ひっ!?」

唯 「・・・・ひゅー・・・ひゅー・・・へぐっ」

律 「お・・・おお・・・ 唯が驚きのあまり、呼吸困難を起こしてるぞ・・・」

和 「しっかり、唯! ゆっくり息を吸うのよ!」

唯 「ああ・・んぐぅ・・・ ぜはぜは・・・」

澪 「い、いったいなにをやったんだ!?」

紬 「このお店、実はうちの系列のお店で」

和 「そ、そうなんだ・・・・」

唯 「ぜぇぜぇ・・・ も、もうだいじょぶ・・・」

律 「驚いたが・・・何はともあれ、良かったな唯!」

唯 「はぁはぁ・・・ う、うん。ありがとう・・・・琴吹さん」

唯 「足りなかった分は、きちんと返すから・・・」

紬 「どういたしましてー。気にしないでね?」

和 「ムギって、実はすごいお嬢様だったのね・・・・」

澪 「のようだな。どうりでどこか、浮世離れしてる雰囲気があるわけだよ・・・」

紬 「しゃらんらしゃらんら♪」

律 「しっかし、これでバイトは必要なくなっちゃったな。せっかくの私の大演説、無駄になった今となっちゃ恥ずかしいぜ・・・」

(くいくいっ)

律 「・・・ん、なんだ、唯」

唯 「そ、そんなこと・・・・ないよ。あの・・・ りっ・・・・」

律 「・・・・・・」

唯 「あぐ・・・・」

律 「なんだよ?」

唯 「・・・田井中さん・・・ あ、ありがとう・・・・」

律 「ああ、友達だろ。気にすんな」

唯 「ともだ・・・ち・・・」(かぁーー・・・)

和 「・・・・唯」



数日後。駅前の喫茶店!!


憂 「お姉ちゃんがね。笑ってたの」

和 「へぇ」

憂 「嬉しそうにギターを抱えて帰ってきて。夜にお風呂空いたよって部屋に呼びに行ったら、鏡の前でギターを構えてポーズをとってた」

和 「唯らしい。・・・昔の、だけど」

憂 「でね、私が見てるのに気がついたら、照れてはにかんで・・・ ミュージシャンっぽい?って」

和 「可愛いわね」

憂 「うん、可愛いひと。お姉ちゃんはもともと、こういう人だったんだなって」

和 「・・・・そうね」

憂 「あれから・・・ ギターを買ったあの日からお姉ちゃん、少しずつ笑顔を見せてくれるようになったよ。だからね、和ちゃん」

憂 「今回は、和ちゃんが正しかったのかも知れないね」

和 「憂・・・・」

憂 「軽音部の皆さんの事も少し話してくれたよ。学校の出来事を話すなんて、お姉ちゃんが壊れちゃって以来のことだもん」

憂 「嬉しかった・・・・」

和 「みんなのこと、唯はなんて?」

憂 「うん。ベースの秋山澪さんは背が高くて、格好良い大人の女性って感じの人。でも少し繊細だって」

和 「ふふ、そうね。サバサバしてるのに、本当は極度の恥ずかしがりやさんなのよね」

憂 「キーボードの琴吹紬さん、通称ムギちゃん。おっとりぽわぽわしていて可愛い人。そんで、かなりお嬢様っぽいって」

和 「そうなのよ。どうやらお金持ちの家の子らしいんだけど、いろいろ謎も多いのよね・・・ いつかお家にお邪魔してみたいものだわ」

憂 「それとドラムの田井中律さん・・・・」

和 「律のことはなんて?」

憂 「最初は怖かったって。ううん、今でも少し怖いって言ってた。元気いっぱいの姿が、いまの自分には眩しすぎるからって」

和 「そう・・・」

憂 「でも、本当はすごく優しい人だとも言ってたよ。人のために一生懸命になれる、とても優しい人・・・・」

和 「・・・・・」

憂 「軽音部が良い人ばかりみたいで良かった。あそこでならお姉ちゃん・・・・」

憂 「自分を取り戻していけるかもね。ちょっとずつ・・・・着実に・・・・ね、和ちゃん」

和 「ええ、きっとそうなるわ。だから憂も心配しないで。あなたにはあなたの夢もあるんだから。そっちにも専念しないとね?」

憂 「うん。それで今、ちょっと考えてる事があるんだ」

和 「なになに?」

憂 「えへへ、まだ秘密。でも、形になったら和ちゃんには真っ先に見せるからね」

和 「憂・・・ ええ、楽しみにしているわね」


憂の言ったとおり、それからの唯は時おり皆の前で笑顔を見せてくれるようになった。

昔の彼女からは程遠い、それはとても控えめな笑顔ではあったけれど。

また、笑顔と同じく控えめな態度と声で、皆の話の輪にも加われるようになってきていた。

軽音部でのふれあいの中で唯は少しずつ、亀の歩みのようにノロノロと。でも、着実に。

かつての自分を取り戻していっているようだった。

そして平穏な日々がゆったりと私たちの横をすり抜けて行き、気がつけばもう季節は夏。

私と唯が軽音部の仲間に加わって、はや三ヶ月が経とうとしていた。



ある日の軽音部!!


がらっ

和 「こんにちわ。あれ、澪ひとり?」

澪 「やぁ和。うん、まだ誰も来ていないよ。平沢さんは?」

和 「日直なの。日誌かいて来るから、少し遅れるわ」

澪 「そっか」

和 「・・・・・・あの、澪」

澪 「なに?」

和 「練習、しないの? 私よく分からないんだけど、あの・・・セッションとかいうの?合わせて演奏するやつ」

澪 「そうだよね。いつもお茶を飲んで時間過ぎちゃって、気がついたら下校時間になってるんだよな。

澪 「・・・私もこのままではまずいと思ってるんだけど」

澪 「和は家で自主練とかしてる?」

和 「一応。ボイストレーニングの本を買って声出しをしているわ」

澪 「そうか・・・ 初心者の和もがんばってるってのに。軽音部のこの体たらく。このままじゃ部全体がダメになる」

和 「澪?」

澪 「なぁ和。ちょっと相談があるんだけど」

和 「??」


そして30分後!


律 「よーし!全員そろったな!それじゃ~~、ムギ!!」

紬 「はーい、今日のおやつはモンブランよー♪」

律 「やったー!でっかい栗!でっかい栗!あ、これ私のー♪じゃあ、さっそくいただきm
澪 「ちょっと待ったー!!」

律 「な、なんだよ。嬉しいおやつ時に水をさすように大声で」

澪 「お茶の前に、みんなに言っておくことがあります!」

唯 「???」

澪 「和」

和 「うん。せーの・・・」

澪・和 「合宿をします!!!」

紬 「合宿?」


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最終更新:2011年04月19日 22:55