数日後の放課後 軽音部!!

壮行会当日!!


律 「いえーーい♪それでは皆さんお待ちかね!これより我らが専属ボーカル ノドカ・マナベのぉーーー・・・」

紬 「どこどこどこどこどこ・・・どどん!!」

律 「壮行会を開始したいと思いまーす!!!」

澪 「ぱちぱちぱち!」

唯 「ちぇけらっちょい!」

和 「ノリが・・・」

律 「引くな引くな、主役ぅ。今日は、楽しく飲み食いしようぜー!」

澪 「もちろん飲み物はお茶とジュースだけど、な」

紬 「みんな、ちゃんと隠し芸考えてきた?一人一芸だからね、たくさん和ちゃんを笑わせた人が勝ちー」

律 「ふっふっふ。抜かりはないぞ!部室中を笑いの渦に巻き込み、一人残らず腸捻転で病院送りにしてくれる!」

唯 「私も負けないもん。みんな笑いすぎて、下顎もげちゃうよ。きっと!!」

和 「何だか物騒ねぇ」

律 「よーし、騒ぐぞ!楽しむぞーー!」

おーっ!!

和 (唯・・・見た感じ普通だけど、大丈夫かしら・・・)

和 (あ、だめ。今日は私のための壮行会。せっかくのみんなの好意なんだから。私も楽しむことに集中しないと)

和 (でも・・・)


そして一時間後!!


律 「なぁ、澪」

澪 「ん、なんだ?」

律 「あのさ。コーヒー飲むとトイレが近くなるのは、なんでだと思う?」

澪 「・・・・行ってこい」

律 「はいはーい。ちょっとごめんよ、すぐ戻るからな」トコトコ・・・バタン

唯 (りっちゃん・・・ 今なら!)

澪 「まったく。・・・ん?唯、どこに行くんだ?」

唯 「あ、うん。私もちょっとトイレに。へへへ」

和 (唯・・・・)

唯 「ごめんね。ちゃちゃっと済ませてくるから」トコトコ・・・バタン

澪 「連鎖反応というやつだろうか」

紬 「そうね、一緒にトイレは女の子の基本よねー」

澪 「そ、そうか?」

紬 「うふふふふふ♪」

和 「・・・・」


気になる。

唯、きちんと自分の想いを言葉に託せるかしら。

託せたとして、律にその気持ちは届くのかな。

気持ちが通じたなら、二人は相思相愛となって、恋人になって。

ハッピーエンド。唯はきっと幸せで、花を咲かせたように笑顔がもっともっと輝いて。

そうなって欲しい。唯には幸せになって欲しい。この気持ちは真実。偽りなんてない。

        • ないはずなのに。

苦しい。胸が苦しいよ。

二人が上手くいった後の事を思うと、まるで心が押しつぶされる様。

交錯する、私の二つの想い。これは一体、なんなんだろう。


紬 「・・・・ちゃん?」


私は、私の心が・・・


紬 「・・・どかちゃん?」


自分の心が分からない・・・!!


紬 「和ちゃん!」

和 「えっ!?」


和 「む、ムギ・・・ え?な、なに?」

紬 「何って・・・大丈夫?和ちゃん」

和 「え・・・?」

紬 「なんだかとっても、辛そうな顔をしてる」

和 「私が・・・?」

澪 「どうしたんだ?具合でも悪いのか?」

和 「ううん、違う。ごめん、なんでもないの。あ、でも」スクッ

和 「ちょっと私もトイレに行って来るわね」

澪 「一人で平気か?なんだったら一緒に行っても・・・」

和 「あは、大げさね。一人で平気よ。でも、ありがとう」


気になる。唯の告白がどうなったのかが。

本当はこんな覗きのような下衆なまね、褒められたことではないんだろうけれど。

でも、このまま考えあぐねていたら、きっと耐えきれなくなる。

      • 見届けなくちゃ、唯の告白を。



階段 踊り場!!


律 「話って何だよ。早くしてくれないと、私の尿意が臨界点突破しちゃうだろ」

唯 「あ、ごめん。でもその、すぐ済むから・・・あのね・・・」

和 (あ・・・唯。こんな、部室のすぐ下で。相変わらず天然ね。誰かに見られたらどうするのよ・・・)

和 (・・・て、私が見てるんだけれどね。とりあえず手すりの陰に隠れて・・・と)

律 「で、話って?」

唯 「うん・・・・」

和 「・・・・・」

唯 「りっちゃん、前に言ってくれたよね。言いたいことがある時は、考えるより先に言ってしまえって」

律 「ああ、言ったな」

唯 「その言葉、とっても励みになったんだよね。私、色んなことを内に込めて考え込んじゃうの、癖になっちゃってたから・・・」

律 「以前はそうだったな。でも今の唯は・・・て、ん?」

唯 「だからね・・・私ね・・・」フルフル

律 「・・・唯。ちょっと震えてんぞ?顔も心なしか赤く・・・はっ!?尿意か!?尿意がまんしてるのか!?」

律 「ちょっ、そんなんなるまでがまんするなって!話はトイレに行ってから聞くk
唯 「りっちゃん!」

律 「はいっ!?」

唯 「好きです!!」

律 「ふへっ!?」

和 (・・・・言った!)

唯 「・・・・・」かぁ~~~

律 「な、へ?あ、ちょ・・・ビックリした。なんだよ、唐突に。んなの、私だって唯のことは大好きだぞ。はは・・・」

唯 「・・・違うよ。その好きじゃなくって、もっと・・・」

律 「!? ・・・あ。いや!ちょ、ちょっと待って」

唯 「いま口をつぐんだら、きっともう言うことができなくなっちゃうと思うんだ。だから」

律 「待て、待てって・・・」

唯 「りっちゃん。ずっと。あの日、ギターを買いに行った日からずっと。ずっとりっちゃんのことばっかり考えちゃうようになっちゃって・・・」

律 「だから、ちょっと待ってくれって・・・」

唯 「寝てても起きてても、ご飯食べてても。いま、りっちゃんは何をしてるのかな?会いたいなって」

律 「唯・・・」

唯 「顔を見てお話したいな。ずっと一緒に、隣にいたいなって・・・ ね、りっちゃん」

律 「やめてくれよ」

唯 「だから私、一世一代の決心をしてきたよ。りっちゃんに教えてもらった、大切なこと。言うべきことを言うんだって、私」

律 「・・・・!」

唯 「りっちゃん、大好き。私とつきあってk
律 「唯っ!!」

唯 「っ!」ビクッ

律 「やめろって言ってるだろ・・・」

唯 「り、りっちゃん・・・・」

律 「確かに言いたいことは言えって言ったけどさ、相手がやめろって言ってるのに我を押し通せと話した覚えはないぞ」

唯 「・・・あ。ご、ごめん・・・」

律 「・・・・・」

唯 「・・・・・」

律 「いや、私も大声出して悪かったな。でもさ、そっから先は言うなよ。な、唯」

唯 「え、それって・・・・」

律 「みんな楽しく、さ。波風立てずにやって行きたいだろ?そういうわけだからさ、な?」

唯 「りっちゃん・・・・うん、わかったよ・・・ごめんね・・・」

律 「・・・・」

和 (・・・・・)

律 「と、とりあえずさ、溢れんばかりのこの尿意をどうにかしてこようぜ。もう私、漏れちゃいそうでさー・・はは」

唯 「うん、そうだね。じゃ、ト・・・イレ・・・にっ」

唯 「・・・・・・・・・・」

唯 「・・・・・う~~~~」ポロポロ

律 「ゆ、唯・・・・」

唯 「っ」ダッ!

律 「あ、唯!ちょっと待・・・」

律 「・・・・唯」


かたっ


律 「え・・・・?」

和 「・・・・・律っ」

律 「和?」

律 「ははっ、なに。見てたの?ずっと?」

和 「・・・・」

律 「覗き見とは高尚な趣味だな。ええ、和」

和 「唯の想いに応えてあげないのね」

律 「・・・・応えられるわけないだろ」

和 「二人のこと、ずっと見ていたから意外だったわ。律も唯のこと、まんざらでもないって思ってたもの」

和 「唯のこと、好きじゃなかったのね」

律 「・・・・・・好きだよ」

和 「っ!?・・・だ、だったら・・・」 

和 「だったらなんで!?」

律 「好きに決まってるだろ!大好きだ!和やムギと同じ、とっても大好きな友達だ!」

和 「・・・・・え」

律 「・・・・・・」

和 「澪・・・なの?」

律 「・・・・・・」

和 「・・・そう。分かったわ」タッ

律 「おい、どこに行くんだよ?」

和 「唯を追いかける。放っては置けないでしょ」

律 「そうか・・・その前に、さ。和・・・」

和 「・・・なに?」

律 「なんでお前・・・和まで、泣いてんの・・・?」

和 「え・・・?」

うそ。私、泣いてる?

気がつかなかった。律に言われて初めて、私の頬を涙の粒がポロポロポロポロと。

とめどなく溢れ出ていることを知った。

ポロポロポロポロ後から後から、まるで瞳が決壊したみたいに際限なく。これは・・・・

これは一体、何に対する涙なのだろう。


和 「これは、べっ、別に・・・」グシッ

零れ落ちる涙を袖で乱暴にぬぐう。

和 「律には・・・関係ないっ」

律 「まぁ、関係ないかもだけどさ。だけど、和・・・」

律 「・・・・・」ジー

和 「な、なによ。人の泣き顔をまじまじと見て!」

律 「・・・・なぁ和。これはお前と一緒で、ずっと和と唯を見ていて思ってたことなんだけれど」

和 「だから、なに?」

律 「和こそ・・・もしかして、唯のことが好きなんじゃないのか?」

和 「・・・え?」

律 「もちろん、唯が私に言ってくれた”好き”と、同じ意味合いとしての、な?」

和 「な、何を言って・・・ふざけるのも大概にしてよ!」

律 「この状況でふざけられるわけないだろ」

和 「ぐ・・・だ、だって!だって私は唯の親友なのよ!」

律 「・・・っ!んなの関係あるかよっ!!」

和 「っ!」

律 「・・・和、もし私の言ってる通りなんだったらさ・・・」

和 「・・・・律」

律 「ん、ああ・・・」

和 「・・・・私、唯を追うから。せっかくの壮行会、途中で抜けてごめんね。皆にはうまく言っておいて・・・」

律 「分かった・・・」

和 「それじゃ私、行くね」タッ

律 「・・・・・・」

律 「・・・・トイレ、行くか」


軽音部!!


律 「たっだいまー・・・」

澪 「おかえり。ずいぶん遅かったな」

律 「あ、あー・・・限界までがまんしてたからかな、出たら止まらなくなっちゃってさ」

澪 「相変わらず、下品なやつだ・・・」

紬 「あれ、唯ちゃんと和ちゃんは?途中で一緒にならなかったの?」

律 「あいつらね、うん。その・・・唯、ちょっと具合悪くしたみたいでさ」

澪 「え?それでどうしたんだ!?」

律 「心配ないよ。和が連れて一緒に帰った。だから、今日の壮行会はこれでお開きだな」

澪 「そ、そうか・・・仕方がないとはいえ、ちょっと残念だな」

紬 「じゃあ。ここを片付けたら、私たちも唯ちゃんのお見舞いに行きましょうか」

澪 「そうだな。さっきまで元気だったのに、急に体調を崩すなんて心配だし。じゃあ、手早く片付けて・・・」

律 「いや。大げさにしても気を使わせるだけだろ。ここは和に任せておこうぜ」

紬 「うーん・・・心配だけど。そうね、じゃあ代わりにお見舞いメールでも送ってあげたらどうかしら?」

澪 「ああ、大勢で押しかけるより、その方がいいかもな」

律 「・・・・」

澪 「・・・律?」

律 「あ、ああ。じゃあ、ちゃちゃっと片付けて帰ろうぜ」

澪 (・・・?)


帰り道!!


紬 「それじゃ私、こっちだから。みんな、また明日ねー」

澪 「ああ、気をつけてな」

律 「明日なー」

澪 「さて、律・・・二人きりだな」

律 「え、なに!?なんでそんなこと言うの!?私を犯す気!?!」キャー

澪 「・・・気持ち悪いこと言うなよ」

律 「なんつてな。はっは」

澪 「・・・なにがあった?」

律 「・・・・」

澪 「・・・律」

律 「ちぇー。澪には全部お見通しか」

澪 「付き合い、長いからな。それに律は分かりやすい」

律 「はは・・・は。いや・・・笑ってる場合じゃないんだけどさ。はは・・・」

澪 「私でよければ、話を聞くぞ」

律 「ありがと・・・・」



マック 店内!!


澪 「告白された!?」

律 「声大きいって!・・・私から言ったって、言うなよ?」

澪 「誰にも言えないよ、こんなこと。しかし、そうか。あの唯がなぁ・・・」

律 「気づいてなかった?」

澪 「律ほど分かりやすくないしな、唯は。まぁ、律に好感を抱いてるとは思っていたけど、それが恋心だったとは・・・」

律 「恋心とか言うなよ。ハズいから・・・」

澪 「なんか、いつもと逆だな。私の言葉で律が恥ずかしがるなんて。なんだか新鮮だ」

律 「茶化すなよ。こっちは真剣なんだ」

澪 「・・・・真剣に応えるってことか?唯の気持ちに・・・」

律 「応えられないから、真剣に悩んでるんだ」

澪 「そっか・・・」

律 「なぁ、澪・・・」

澪 「ん?」

律 「真剣って言えばさ。唯もほんと、真剣な顔でさ・・・私のことを好きだって言おうとしてくれたんだ」

澪 「うん」

律 「でもさ・・・私も気が動転しちゃってて。唯の告白を最後まで聞いちゃったら、私も答え、ハッキリと出さなきゃならなくなるだろ?」

澪 「それはそうだな」

律 「・・・・どう答えて良いか分からなかったんだ。だからさ、最後まで言わせなかった」

澪 「・・・・」


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最終更新:2011年04月19日 23:15