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♯2
その日は死体と律と言う化け物に会っただけで終わった。収穫の死体は直視できないのであまり良い収穫ではないが、テレビより正確だった。……あっ裁縫道具りっちゃんに取られたままだった。
家に着いて鍵を開けるが、鍵は開いていた。出掛ける前にはちゃんと閉めたので泥棒が侵入したのか頭をよぎる。別に取られるものはないが怖い。
扉を開ける。

?「おっおかえりなさいませ///ゆっ唯様///」

メイドがいた。と言うより、黒のゴスロリ服を着てレースのカチューシャを付けていた美人な女の子がいた。ただ、服装が恥ずかしいのか顔は真っ赤だし、お辞儀もぎこちなかった。別に唯はぎこちなくても構わなかったが、ただ一点だけ唯がムカついた点は胸だけだった。

唯「……どちら様?」

?「みっ澪って言います///」

唯「えっと最近のメイドさんは自宅訪問まで出来るの?でも私頼んでないし、お隣さんの間違いじゃないかな?」

澪「えっえっと……とっとにかく詳しい話をしますから///」

オロオロするゴスロリ少女澪に従って家の中に入る。テーブルには夕飯があったためそれを頂く事にした。……夕飯と言う名のアイスを。

唯「えっと……澪ちゃんって何者?」

やっと落ち着いてきた澪にアイスを食べながら問う。もちろん。落ち着いてきた澪はゆっくり答える。

澪「私は唯様専属の人形です」

唯「あ、ちょっと待った!」

澪「何でしょうか?」

唯「別に私偉くないから澪ちゃんのいつものしゃべり方で良いよ」

澪「しかし……」

唯「しかしって事は素の澪ちゃんがいるんでしょ?私専属なら私の前だけは素になる事。同年代でしょ?」(多分だけど)

澪「……わかった」

唯「それで澪ちゃんは何しに来たの?」

澪「私は妹様の命でここに来たんだ。唯を唯のお母さんの実家に連れて来るようにな」

スプーンを止めて澪ちゃんを見る。

唯「お母さんの実家の人?」

澪「いや、私は唯専属人形で統堂に仕える者」

唯「お母さんって姓って統堂なんだ」

澪「そう。それで統堂は糸遣いの家系」

質問をどんどん答え更に先の質問まで答えていく澪。聞いてもないのに無駄な解説も混ざるが、説明は丁寧らしい。らしいと言うのは私が全く詳しくないからである。
結局、中々理解できない私に痺れを切らした澪が唯でもわかりやすいように超簡単に説明してくれた。要するに私が跡継ぎだから帰って来いとの事。そしてお祖父さんが逢いたがってる事。

唯「ふ~ん。ばいばい」

澪「えっ?何言ってるんだ?」

唯「えっ?」

澪「私は唯に仕える事が本職なんだ」

唯「でも私統堂じゃないよ」

澪「関係ないね。私は唯のために作られたんだ」

次の日。例の通り魔事件がニュースで報道されていた。もちろん。お腹から裂けて死んだのではなく、刺殺と綺麗な死に方だった。
学校に出掛けるとゴスロリ少女が送ってくれた。学校行かないのと聞いたら気にするなと言っていた。気にしたくなるが、時間も危なかったので1人渋々学校に行く事にした。

?「また通り魔だって。怖いわね。唯も気をつけなさいよ」

と、朝のSHR終了後にクラスメイトの立花姫子が心配そうに話しかける。それもそのはず、狙われているのは皆女性だからである。クラスでは天然のレッテルを貼られている唯の事を心配するのは席が隣同士としては当たり前であるのだ。

唯「私は狙われないよ~。だって早く帰るもん」

姫子「どうだかね……ところで唯はダイエット食品に興味ある?」

唯「私は食べても太らない体質だから」

姫子「じゃあこれはいらないわね」

唯「なにこれ?」

姫子「ダイエット食品」

唯「姫子ちゃん飲んでるの?」

姫子「まあ物は試しで……」

とりあえず、チャイムが鳴ってそのまま姫子と別れる。結局その日の学校は平穏に終わり帰路に着く。
鍵が開いていたのでそっと開けてみる。

澪「おかえりなさいませ」

黒のゴスロリ少女が出迎えてくれた。

唯「普通にお帰り良いんだよ!!」

昨日は素に戻っていた澪だが、今日になったらまた元に戻っていた。ただ、初対面の頃より恥ずかしがってはいなかった。学校に持って行った鞄は澪が持っていて足が停止中の唯を後ろから押して中に入れる。

唯「ところで澪ちゃんっていくつ?」

澪「唯と同じだよ」

唯「じゃあ中卒?」

澪「……まあ。ただ、頭脳は進学校のトップ並だぞ。いや、学校がそれくらいのところでな」

唯「高校行かなかったの?」

澪「唯に仕えるために高校行かなかったんだ///」

とりあえず、再び家事をしていたら結構時間がかかってしまった。もっとも手伝うと言って余計に悪化させている人物がいるからであるのだが、一生懸命やっているのを見ていたら、辞めてくれなんて言える訳がない。
一通り終えてから出掛ける準備をする。もちろん事件の調査だ。

澪「出掛けるのか?」

唯「ちょっとね」

澪「ふ~ん」

と、澪は付いて来る。

唯「お見送り?じゃあ行ってくるね」

澪「いってきまーす」

唯「え?」

澪「ああ。唯のボディガード」

唯「いらないよぉ」

澪「まあまあ。早く犯人見つけるなら急がないと」

結局、どんなに言っても言う事を聞かないから仕方がなく唯はしぶしぶ認め澪は付いて来た。当然、澪は唯が美人と言うのは本当の事で……おまけにゴスロリ服が効いてるのか、私よりも澪の方が注目の的になっていた。
せめて普通の服着てよ澪ちゃん。

そしてもちろん絡まれた。そこらじゃ有名な2人組みに。

「よう姉ちゃん。暇ならお茶しないか?可愛い服着てるね」

「馬鹿だなお前。今時そんな口説き方じゃ寄って来ないぜ」

澪「はぁ?何様のつもりだ。死ねカス共」

澪の普段の顔が消え、皆が鬱陶しい奴に絡まれた顔になった。台詞が一番怖かったが。

唯「………えっと今忙しいから……」

「ちょっと待てよ」

何故か2人組みは私をスルーして澪ちゃんを囲む。なんか悲しい。そんなに魅力がないのかな?

「強気な女の子は俺のタイプなんだぜ。へへっ」

1人の男が澪の肩を掴む。

澪「触るな!!」

澪が怒鳴り、男が宙を舞った。信じられないのが澪は片手で男を宙に舞わせている。そのまま男は地面にダイブし転げまわる。

澪「貴様等の様なしまむらーが触って良い服じゃねーんだよ!」

二度目の澪の怒鳴りが響く。澪を怒らせてはいけない事を唯は肝に銘じていた。

「こっこいつがどうなっても良いのか!?」

いつの間にか私は人質になっていた。

澪「最低な屑だな。私のご主人様に手を出すとは……」

「ひっ!」

澪の威圧に逃げ出す男。人質から解放されていた私はそれをぼーっと眺める。

澪「逃げるな!」

一瞬で澪が追いつき止めを刺す。男は撃沈した。
唯は澪がとても強いことを肝に銘じた。私なんかよりも…糸遣いよりも…。

澪「大丈夫か唯」

寧ろ澪の方が大丈夫かと声を掛けたかったがさっきのを見て大丈夫だと実感した。

唯「あっありがとう」

澪「どういたしまして。でもこれが私の仕事だから。でも唯は人質にされたときくらいかわしたり出来なかったのか?」

唯「そうなんだけど……この力で昔犬か猫を殺しちゃったんだ」

澪「力を無意識に使って傷つける典型的だな」

一言で片付けないでよ。お母さん泣かしちゃったんだから……。

澪「とりあえず、ここから離れよう。人が来た」

近くのファーストフード店で一息ついて澪の家の事等に着いてについて詳しく聞いてみる。

唯「なんで澪ちゃんは私を守ってくれるの?」

澪「統堂の人達を守るためだよ」

唯「みんな澪ちゃんみたいに強いの?」


澪「まあな。でも私より強い人なんてたくさんいるし……でも強さの9割がセンスなんだよな。後は訓練なんだよ。統堂の人達は糸が遣えるんだけど弱いだろ。唯もそれは自覚してるだろ?だから私達みたいな人がいるわけ」

それは私も自覚している。実際さっきので澪の強さがわかったし、体力も筋力も持久戦や他人数だと不利である。りっちゃんが言っていた人形はこの事だったのだ。私を守る人形。弱点を克服するために存在する人間。それが人形。

澪「でも私達は戦う事が好きな馬鹿な家だから統堂の下にいなかったら滅んでた異能さ」

唯「澪ちゃんも異能なんだ」

澪「そう。心も殺せる戦闘だけに特化した異能だよ」

唯「だから家事がだめなんだ」

澪「ぐっ…まあ本当だから仕方がない」

それから澪は統堂の家と澪の家の話をした。澪の家は戦う事を好み化け物や異能をどんどん殺した殺人一族の事。その後廃れて行った事。統堂に負けてから傘下に入って統堂の影を支える人形になった事。統堂を支える事によって殺人一族から変わった事。
ただ、そんな話はB級映画よりつまらなかった。寧ろ澪個人はどうなのか。そこだけだった。

唯「澪ちゃんどうなの?」

澪「……ごめん。家の話じゃなくて私について聞きたかったんだよな」

唯「うん。こんな私の面倒みてくれるなんて辛くない?」

いや。そんな事はないぞとはっきり言う澪。

澪「恥ずかしい事なんだが私は唯に会える日を待っていたんだ。私は唯が生きているから今があるし、唯が全てだし……///」

多少顔が赤い澪は答えた。が、すぐに俯いて謝罪をした。そしてこう言った。これが統堂との関係だと…。

澪「統堂の傘下に入ってから私達の一族は姓を捨てたんだ。統堂を守る影。だから私達は闇宮と呼ぶようになったんだ」

唯「前の姓は?」

澪「さあな。でも一応闇宮はたくさんだから細かい姓があるんだ。要するに私は姓を2つ持ってるんだ。闇宮が大まかな姓。コードネームみたいなのが…秋山でな」

家に着いたのは日付は変わっていた。収穫はない。ため息は出た。

澪「疲れたな。唯は大丈夫か?」

唯「まあ。でも歩きつかれたね」

澪「ふぅん。マッサージしてやるよ」

と、言葉とともにマッサージが開始される。抵抗は出来ない。(力的に)

澪「なあ唯、やっぱり私達には情報量が足りないんだ」

唯「でも、テレビや雑誌は当てにならないよ」

澪「そりゃあマスメディアは第三の勢力だしな。適当な情報でも大衆は簡単に洗脳出来る。ただ、内部はちゃんとした資料はあるぞ」

唯「内部?コネとかないよ」

澪「拝借してくるよ」

スパイがいた。

唯「そんな!危ないよ」

澪「それくらい簡単だよ。朝飯前だ。それに私は唯の人形。唯の為ならなんだってするぞ」

唯「人形ってその言い方辞めて」

澪「で、どうするんだ?」

唯「調査は私の仕事だよ」

澪「唯の仕事は私の仕事でもある。私は唯の……」

唯「それ以上言ったら怒るよ」

澪「ごめん。でもまた犠牲者が増えるぞ。早く事件を解決したいだろ」


澪「唯」

澪が唯の手を握る。

澪「唯は優しいな。でも私は唯の役に立ちたいんだ。それが生きがいなんだよ。だから……私の事を考えてくれてるなら……」

真剣な顔で澪は唯に訴える。本当にいいのかと問うともちろんと答えた。

唯「じゃあお願いできる?通り魔事件の詳しい情報を……」

澪「了解だ。おまけに犯人も見つけてきてやろう。ちゃんと連絡もするよ。でも連絡がなかったら私をほっといて1人で統堂に帰ってくれ」

唯「えっ?」

澪「連絡がない場合、私は殺されたか、拷問されてると思ってくれ。殺されてる方が良いが、拷問は唯の事を漏らす場合もある。だから唯は統堂に匿って貰ってくれ」

唯「それは出来ないよ」

澪「なんでだ?」

唯「澪ちゃんが敵に捕まったなら助けるよ」

澪「私なんかに唯は危ない目に遭う必要なんて…」

唯「さっき助けてくれたでしょ。そのお返しだよ」

澪「あれくらいで……それにさっきも言った通り唯の役に立つ事が生きがいなんだ。もし唯が私のために何かあったら…」

最後は少し嗚咽を含んだ小さい声で呟く。己の身体を抱きしめて震える身体を抑えている。

唯「あっごめん。澪ちゃんを困らせるわけじゃ…」

澪「こっちこそごめん。ただ、唯は命を軽々粗末にしないでくれ」

唯「じゃあ澪ちゃんも自分の命を捨てないで、帰ってくる事」

澪「命令だな」

唯「命令じゃない!!これは約束。だからさっきの情報の拝借も命令じゃない。お願いだよ」

澪「ふふふ。わかったよ。じゃあこれをお守り代わりに……」

そう言って澪はどこからか匕首を取り出し唯に差し出す。

澪「じゃあ言ってくるよ」

唯「絶対死なないでね!!」

澪は笑みを作った。
しかし次の日、澪との連絡が途絶えた。



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最終更新:2011年04月20日 22:45