♯7
私は夢を見ている。夢の内容は幼い私とお母さんがお父さんの話をしていた。
お父さんの話は『陸』といった。お母さんはお父さんを愛している。真面目で、何よりもお父さんはお母さんの事を一番に考えてくれていた。お父さんがいなくなった時、お母さんはどうしたら良いか分からなくなった。
それでも私がいるから頑張ってこれた。お父さんを守れなかったから私を守ると決めてくれた。
最後にお母さんは、「お父さんの力はいずれ使うときが来る。真実に抗うときに来る。だから中途半端な気持ちで使うな。大切に使え」
目を覚ましてゆっくり起き上がる。薄暗い…何処かの廃ビルのようである。
「起きたか?」
唯「りっちゃん……ここは」
律「私の隠れ家。まあ寝床だけど」
唯「ここまで運んでくれたんだ。ありがとう」
律「ほいよ」
律はペットボトルに入った水を唯に投げ渡す。
律「心糸ってのは凄いんだな。二日寝てたぞ」
唯「二日……」
心糸を視た反動。つまり、心糸を視る事、操る事は精神に凄い負担がかかることである。おまけにあの時の私は思い出したくもないくらい怖かった。
蓋を開けて水を飲んだ。
律「で、唯はこれからどうするんだー?」
唯「憂と戦うよ。それしか道はないしね」
律「私と逃げないか?」
唯「逃げちゃダメだよ。澪ちゃんも帰ってこなきゃ……」
律「まだ信じてるのか?」
唯「えへへ」
律「お前はあいつに二回も裏切られてるのにか!?」
唯「澪ちゃんは大丈夫だよ」
律「…………」
意固地な唯に律は服を脱ぎ始めて唯に差し出す。
律「縫ってくれ」
唯「ん」
服を受け取り裁縫道具を取り出して修繕し始める。服はぼろぼろで澪との戦いの凄さがよく伝わってくる。
律「あいつは…」
律は背中を向けながら外に向かって呟く。もちろん唯には届いている。
マリオネット
律「本当に何も感じられなかった。命令を忠実に守る人形みたいだった。たぶん、片腕吹っ飛んでも戦いをやめなかっただろうな。痛みも感じないんじゃないのか?無痛症みたいに……そんな奴を信じられないぜ。仮に憂を倒しても人形には変わりない」
唯「そうかな?澪ちゃんは人形じゃないよ。普通に笑ったり怒ったり、どんな事があっても澪ちゃんは澪ちゃんだよ。そう信じなきゃ!……ってね」
「出来た」と言って服を律に返す。軽く礼を言って律は服を着る。
唯「じゃあ行くよ」
律「なーんか唯って私と似てるな」
唯「でもりっちゃんみたいに復讐じゃないよ」
律「…………勝てよ」
唯「もちろん」
そう言って私は律の寝床を後にして帰路に着いた。
――――
澪「おかえりなさいませ、唯様」
家に帰ると澪が出迎えてくれた。また口調は敬語になっていたので、敬語をやめさせる。
澪「決闘は今夜。放棄は唯の負けで強制連行だ」
澪は唯にメモを渡す。それをさらっと流し読みした唯はテーブルの上に置いた。
唯「わかったよ。でも迷子になったら迎えに来てね」
澪「了解。後、夕飯を作って置いた……と言ってもコンビニ弁当だけど…」
唯「それより澪ちゃんは何で……」
唯の質問を分かったように手で制して答え始める。
澪「それは唯のせいなんだ。前話したように私は唯が産まれたから私も作られたんだ。でも唯が統堂でない時点で私はいらない子になったんだ。それを憂様が拾ってくれたんだ」
唯「えっ?でも憂は私の妹でお父さんお母さん離婚しちゃったんじゃ……」
澪「違うんだ。唯のお母さんの操様が出てかれたんだ。その時に操様は唯だけ連れてって憂様は本家に残ってたわけ。そゆわけで、私は憂様に拾われなかったら死んでたな。唯を恨みながら」
唯「でも、私に仕える事を…」
澪「ああ。それは事実だけど、それだけだ」
唯「それだけ?」
澪「私は所詮人形さ。だから私には唯を愛する資格なんてないのさ」
悲しく言い放つ澪。
唯「澪ちゃんは人形なんかじゃないよ!普通の女の子だよ!」
澪「普通の女の子は心を殺さないよ。ちなみに心を殺す技は基本的主人と離れたときに使うんだ。心を殺せば何されたか分からないからな。つまり闇宮には必須なんだ。分かったか?私を普通の女の子なんて思うな。唯は全くわかってない。さっさと憂様に負けて惨めに死ね。それで少しは私の気が晴れる。あっでも憂様は唯のこと大好きだから惨めに死なせてくれないか」
唯「本当にそう思っているの?」
澪「計画通り」
全ては憂の計画通り。後は私が憂に負けて連行される。憂のシナリオ通りに進む。
澪は初めからそれをわかってて私を守ってくれた。笑ってくれた。憂のために。
澪「そうわかってながら私は何も出来なかった。ずっと騙してた。だから唯も私恨んでくれ!罵倒でも何でも……」
それが澪の償いだった。今私が何をしても許してくれる。彼女は受け入れてくれる。そのために来たのかも知れないから……
唯「………馬鹿だよ澪ちゃん」
そう言って唯は手を伸ばして彼女の頭を抱いて引き寄せた。
澪「え……」
唯「私は澪ちゃんを恨んだりしない。だからそんな悲しい事言わないでよ」
澪「何でだよ!?私は裏切ったんだぞ!」
唯「えへへ。でも私馬鹿だからさ。澪ちゃんを信じてるよ」
澪ちゃんは人形じゃない。ちゃんと温もりがある限り人形なんて言わせない。
澪「ヤメロォ!!」
澪が軽く突き飛ばす。澪にしては本当に軽くだが、それでも吹っ飛び背中を打つ。
悲しく言い放つ澪。
唯「澪ちゃんは人形なんかじゃないよ!普通の女の子だよ!」
澪「普通の女の子は心を殺さないよ。ちなみに心を殺す技は基本的主人と離れたときに使うんだ。心を殺せば何されたか分からないからな。つまり闇宮には必須なんだ。分かったか?私を普通の女の子なんて思うな。唯は全くわかってない。さっさと憂様に負けて惨めに死ね。それで少しは私の気が晴れる。あっでも憂様は唯の子と大好きだから惨めに死なせてくれないか」
唯「本当にそう思っているの?」
澪「計画通り」
全ては憂の計画通り。後は私が憂に負けて連行される。憂のシナリオ通りに進む。
澪は初めからそれをわかってて私を守ってくれた。笑ってくれた。憂のために。
澪「そうわかってながら私は何も出来なかった。ずっと騙してた。だから唯も私恨んでくれ!罵倒でも何でも……」
それが澪の償いだった。今私が何をしても許してくれる。彼女は受け入れてくれる。そのために来たのかも知れないから……
唯「………馬鹿だよ澪ちゃん」
そう言って唯は手を伸ばして彼女の頭を抱いて引き寄せた。
澪「え……」
唯「私は澪ちゃんを恨んだりしない。だからそんな悲しい事言わないでよ」
澪「何でだよ!?私は裏切ったんだぞ!」
唯「えへへ。でも私馬鹿だからさ。澪ちゃんを信じてるよ」
澪ちゃんは人形じゃない。ちゃんと温もりがある限り人形なんて言わせない。
澪「ヤメロォ!!」
澪が軽く突き飛ばす。澪にしては本当に軽くだが、それでも吹っ飛び背中を打つ。
澪「…唯……私は…………唯に優しくされる資格なんてない!」
唯「澪ちゃん……」
澪「唯は最低だ!どうして私を苦しめる!私を信じる!?」
唯「関係ないよ。でも澪ちゃんがそんなくだならない事を気にしてるならまずはどうにかしなくちゃ」
澪「くだらない?主と人形関係をくだらないだと?」
唯「そんなのくだらないよ!そんな言葉で闇宮を縛ってるならその呪縛から解き放つ!!」
悪いのは澪じゃない。澪を人形にしてそれを裏で糸を引いていた統堂である。
澪「憂様を倒すのか?」
唯「もちろん」
澪「そうか。シナリオ通りか」
曇った瞳のまま澪は話しをする。瞳は憂に対する恐れが見えた。
澪「憂様は嫌いじゃない。でも……所詮私は憂様の人形じゃない」
唯「じゃあ憂に勝って澪ちゃんを取り戻すよ!もう憂の言いなりにならなくて良いんだよ。戻ってこれるんでしょ?」
澪「そういう命令だからな」
唯「命令じゃなくて澪ちゃん自身はどうしたいの!?」
ちょっときつめに言ったら澪は黙って俯いた。何か言おうとしたがそれを止めて代わりに「人形は意思はない」と言った。
唯「わかった。なんとしても憂に勝たなきゃ澪ちゃんのためにならないし、本心も聞けないんだね」
澪「憂様は強い。唯より糸遣いとしては劣ってるけどそれをカバーするくらいの技術を持ってる。唯に勝ち目はないよ。ごめん。これ以上教えられない」
唯「どんな戦いでも勝つよ」
澪「…………それじゃあ、私は行くから」
そう言って澪は外へ出た。一瞬止まったが、振り向かず出て行った。
私は澪の勝ってきてくれた?コンビニ弁当を平らげて水を飲もうと流しに行った。そこで唯はあるものを見た。
唯「……………ふふふ」
服を着替えようとクローゼットをから昔お母さんが作った服を出して着替える。やたら隠しポケットなど多いので、匕首を隠しポケットに収めるとピッタリはまった。
着替え終わったときテーブルの上に見慣れないノートを見つけたのでぱらぱらめくる。執筆的に私のではなく澪が置いてったノートだという事が分かった。
そこで唯は知ってしまった。澪の本心と思われる事が書かれているページを読んで……
唯「……澪ちゃんは人形じゃない。良いじゃん。ふわふわ時間」
そう呟いて唯は家を後にした。
最終更新:2011年04月20日 23:00