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むかしむかしの、ある王国のお話です

王様とお后様にはなかなか御子が生まれませんでしたが

熱心な信心の甲斐もあってかようやくひとりの女の子を授かることができました


唯「澪ちゃん、でかしたよ!澪ちゃんにそっくりなかわいい女の子だね!」

澪「名前は何にしようか」

唯「唯王と澪妃のあいだを取って……律という名にするよ!」

澪「えっ」


女の子は律と名付けられ、その誕生をお祝いする宴が開かれることとなりました

宴には国中の人々のほか、七人の妖精が招待されました

妖精たちがかしましくおしゃべりしながら城へやってきました

和「あらあら立派なお城ね」

純「それにすごい料理もならんでますよ~」

和「こらこらはしゃがないの。私たちはお姫様のお祝いに来たんだから」

いちご「ヤダ」

純「さっきからこの方『ヤダ』しか言わないんですが」

和「しかたないじゃない。ここで七人もキャラ出しちゃったらあとで困るからね

  さあ、席につきましょう」

純「はあ」

さわ子「ちょっとちょっと~!私の席がないじゃない!」

純「あ、さわ子妖精先生」

和「先生、王様に招待されてたんですか?」

さわ子「されてないわ」

純「されてないのに来ちゃったの!?」

和「……先生、酔ってます?」

さわ子「酔ってないわよ!」

さわ子妖精は力のある妖精なのですが、

何かというと酔って泣きながらヘビメタを演奏し始めるので少し嫌われていました

和「ともかく、先生はおとなしくしててくださいね」

さわ子「ぐぬぬ…許せないわあ……」

和「さあ皆、お姫様に祝福の言葉を述べにゆくわよ」

純「はーい」

いちご「やだ」

姫子「先生、さよなら」


さわ子「ふ、ふふふ……」

和「(なにか企んでるわね)」


律「だーだー!」

唯「元気いーねー」

澪「おい、こら、律!あばれるな!」


妖精たちは律姫を抱きかかえる澪お妃のもとに歩みより、ひとりひとり魔法の言葉をかけてゆきます

姫子「お姫様がきれいな人になりますように」

いちご「やさしい人になりますように」ボソッ

純「おしとやかな女の子に育ちますように」

澪「何故か三つ目の願いはかないそうもない気がするな……」


六人目の妖精が言葉をかけ終えたとき、その後ろからさわ子妖精があらわれました


唯「あれ?さわちゃん妖精、呼んでたっけ」

さわ子「唯ちゃん。よくも私を仲間外れにしてくれたわね。ふふふ」

純「ちょっと、先生!」

さわ子「いい?この姫はお年頃になった時、ドラムスティックのせいで死ぬわ!」

純「!?」

澪「ひ、ひどい……」

唯「なんでそんなこと言うの!」

さわ子「言っちゃったもんはもう取り消せないわ。ざまーみろよ!」

唯「ひ、ひどいよう……そんなのって…」

澪「り、りつ~!!」

さわ子「(ちょ、ちょっとやりすぎちゃったかしら……)」


和「安心しなさい、唯」

唯「和ちゃん妖精!」

和「いい?その子はドラムスティックが頭に刺さって死ぬわ」

澪「ひいっ!?」

さわ子「そこまで具体的に言った覚えはないんだけど……」

和「だけどそれは本当の死ではなくただ眠っているだけなの。

  律姫は100年間眠ったのち、素敵な王子様のキスで目を覚ますでしょう」



~その夜~

律「だーだー」

澪「りつぅ……」ぐすっ

唯「和ちゃんはああ言ってたけど、大丈夫かなあ…」

律「ばぶばぶ」


翌日、王様は国中におふれを出しました

唯「すべてのドラムを廃棄しなさい!とくにスティックとか!

  え?演奏はどうするのかって?

  ドラムがないならカスタネットを使えばいいの!」

澪「それはちょっと無茶なんじゃあ…」

唯「私と澪ちゃんのりっちゃん姫の命のためだもん、ほっとけないよ!」


両親の心配とはうらはらに、律姫はすこやかにお転婆に成長してきました


暴れます

律「確保ー!」

梓「ひいいいいいいいっ」

澪「また召使を追いかけてる」

唯「元気いーねー」


いたずらします

律「おーい、澪ー!」

澪「おい、律!母上と呼びなさい」

律「いいホラービデオが手に入ったんだけどー……」

澪「ひいいいいいいっ!?」


なんとやらは高いところに登ります

律「うわーん、降りられないよー!」

梓「姫……」


我が子が無事に育てば育つほど唯王と澪妃は不安になってきました

唯「澪ちゃん…」

澪「りつ、大きくなってきたな…」

唯「うん…」


さわ子妖精のあの言葉がいつでも二人の心に暗い影を落としていたのです

さわ子「ゲァーハッハッハー!姫は年頃になったときドラムスティックに頭を貫かれて死ぬのだ!ひょほほ」

――――

律「明日はなにして遊ぼうかなー♪」

いろんな意味でなにも知らない姫はのんきなものでした



ある日のことです

律「今日はこの塔に登って遊ぶ!」

梓「ダメです!その塔は古いから危険だって話ですよ!」

律「よし、ついてまいれ」

梓「ダメですってばー!」


律「なんか上の方から音が聴こえるぞ」

梓「な、なんでしょう……引き返しましょうよ」



塔のてっぺんにはずうずうしくもさわ子妖精が住んでおりました

さわ子「うぉおおおおおおお!薔薇も恥じらう紅い唇!」

律「おーい、何やってんの?」

さわ子「星も羨む青い……ああ?何よアンタぁ」

男にふられたばかりなので大変がらが悪いのです

律「何やってたの今?」

さわ子「んなもん、見りゃわかんでしょ」

律「分からん!」

さわ子「バンドの演奏よ、バンド!」

梓「え……バンドって、一人で?」

さわ子「私に友達がいないって言いたいの!?」ギロッ

梓「め、めっそうもない!」

さわ子「そうだ……あんたたち丁度いいところに来たわ。一緒に演奏していきなさいよ」

梓「えっ」

さわ子「あなた、ベースやりなさい!」

梓「ベースなんか弾けないです!」

さわ子「お黙りい!」

律「なんかよく分かんないけど面白そうだな!」

さわ子「おっ、ノリいいわね。じゃあ、お転婆さんはそっちのドラムよ」


さわ子妖精は若干ひきこもり気味で世間と没交渉だったので

「ドラムを廃棄せよ」という王様のおふれを知らなかったのです

よしんば知っていたとしても、ひねくれもののさわちゃんのことですからすなおに捨てたとも思えません


律「よーし、この棒で太鼓をたたけばいいんだな」

梓「よしましょうよ律姫」

さわ子「んじゃあ行くぞテメェラ!」

♪チャーラーラーチャララララララー

さわ子「Maddy Candy! Maddy Candy! Maddy Candy!!」

律「うおおお!」

その歌はまったく律姫の趣味ではありませんでしたが

スティックはふしぎと手になじみ、見事なビートを刻みます


曲の盛り上がりが最高潮になった時に悲劇はおきました

さわ子「tasty cherry!!tasty cherry!!tasty cherry!!召し上がれぇ!!」

バキッ

律「ひゃんっ」

梓「姫!?」

さわ子「あわわ……折れたスティックが頭に…!」

梓「姫、しっかりしてください、姫!」

さわ子「わ、私知らないわよー!」スタコラサッサ

梓「姫ーーーー!」


――――

唯「り、りっちゃーん!」

澪「律、目を覚ませよ、律ー!」

和「さわ子先生の呪いがとうとう現実となってしまったようね」

梓「うう、私のせいです……うわーん!」

和「じゃあ私、生徒会行くわ」

唯「の、和ちゃん待って!」

和「冗談よ」

唯「ののの和ちゃん、どうしよう!りっちゃんがー!」

和「落ち着きなさい」

唯「ででででも!」

和「死ねっ!」バシン

唯「ぐふっ」

澪「こ、殺したー!?」

和「安心しなさい、安らかに寝てるだけよ」

澪「でも今『死ねっ』て……」

和「単なる掛け声よ」


梓「そもそも王様を殴りましたよね?」

和「気のせいよ」

澪「いや、でも……」

和「聞きなさい。唯も姫も寝てるだけ」

梓「ちょっとこっちの話も聞いてください」

和「姫は100年後には目覚めるけど、その時お城にひとりきりじゃ困るでしょ?」

澪「まあ確かに」

梓「この馬鹿姫ですからね」

和「でしょう?だからあなたたちもその時が来るまで眠るの」

澪「なーるほど…って、え?」

梓「眠るってどうや、ぐふっ!?」

和「さあ、次は澪の番よ」

澪「!?」



お城は一晩のうちに鳥の声一つしない廃墟となりました



100年後、隣の王国には憂リアム王子というみめ麗しい王子様がいました

憂リアム王子は武芸百般はもちろん諸学に精通し、人柄も良好

下々の者たちにまで優しいと評判でした

そんな王子のもとにはよその国から結婚の申し出が次々にやってきましたが

何故か王子はなかなか結婚したがらずにまわりの人々を困らせていました


純「憂リアム王子、どうして結婚しないのー?」

憂「あ、お付きの純ちゃん」

純「なんで説明口調?」

憂「うー…だって、なかなか私の理想の人と出会えないんだもん」

純「王子の理想の人って?」

憂「まずね、こう、ほあーってしてる暖かそうな人なの」

純「うんうん」

憂「人懐っこくて抱きつくのが好きで」

純「ふむ」

憂「それでね、髪の毛は茶色」

純「ほうほう」

憂「髪型はあまり長すぎずかといって短くもなく、ちょうどいいボブヘアーで」

純「ずいぶん具体的だね」

純「ていうか王子、そんな感じの人知ってるんだけど」

憂「え?どこどこ?」

純「髪ほどいて鏡みてごらん」

憂「あ、そうそうこんな感じ…って」

純「……」じーっ

憂「ち、ちがうの!」

純「憂リアム王子ってもしかしてナルシスト?」

憂「違うってば、もう!」


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最終更新:2011年04月28日 22:15