夏休み、ハンバーガーチェーン店内

律「あちーよ、もう。異常気象だな、今年は」

澪「毎年言ってるだろ、それ」

律「でも、澪だって暑いだろ」

澪「・・・心頭滅却すれば火もまた涼しだ」

律「それはやせ我慢って言うんだよ。あーあ、早く秋にならないかな」



   平沢家、リビング

唯「ういー、アイスー」 ごろごろー

憂「アイスばかり食べてると、お腹壊すよ」

唯「うーいー」

憂「はい、これ」 こぽこぽ

唯「アイス?」

憂「熱いほうじ茶だよ」

唯「真夏に飲む物でもない気がするけど。・・・あちあち」 ずずー

憂「どう?」

唯「ちょっと、気分がすっきりしたかも」

憂「うふふ♪」

ピロピロピロ

唯「・・・ムギちゃんからメールだ」

憂「海外に行ってるんだよね」

唯「昨日帰ってきたみたい。・・・今すぐ駅前に集合だって」

憂「駅前」

唯「ギー太持参って書いてある」

憂「私、着替えの用意しておくね」

唯「どして」

憂「多分、合宿のお誘いだよ」

唯「そかな」

憂「お姉ちゃんは、ギー太の準備をお願い」

唯「分かったよ。でもその前に」

憂「アイスは、めっ」

唯「うーいー」


   駅前

唯「お待たせー」

律「遅いぞー。というか、それなんだ?」

唯「着替えとタオルとお菓子と、後は水着と」

律「どうして」

唯「合宿だから」

澪「え?」

紬「せいかーい♪」

梓「えっ?」

紬「大丈夫よ。一応、一通りの物は揃えてるから」

澪「どういう事だ?」

紬「お父様の知り合いが別荘でバンドの練習をしてたのだけど、予定を早めて戻って来たの。だからそこを使わせてもらうの」

梓「私、ギターしか無いんですけど」

紬「のーぷろぶれむ♪」

澪「私も、ベースだけだぞ」

紬「ゆーあー、うぇるかむー♪」

律「私なんて、スティックだけだ」

紬「ぐっ、じょーぶっ♪」

律「それは違うだろ」


   特急電車内

がたん、ごとん、がたん、ごとん

律「お、段々緑が増えてきたな」

梓「山に行くって事か?」

紬「山というか、高原に近いかしら」

澪「もったいなくて、罰が当たりそうだ」

律「人間真面目に生きてれば、いつか良い事があるんだよ」

澪「それはもっともだが、お前が言うな」 ぽふっ

唯、紬、梓「あはは」


律「でもちょっと、お腹空いてきたな。シェイクを飲んだだけだし」

唯「そうだろうと思って、じゃじゃーん」

梓「おにぎり、ですか」

唯「憂が握ってくれたんだ。一人に一つずつあるよ」

澪「本当に良く出来た妹だな」

律「じゃ、遠慮なく。・・・ナイスおかか♪」

梓「たらこラッキー♪」

紬「ゆかりデリシャス♪」

澪「普通に食べろよ。・・・おおっ。いくらグッジョブ♪」

唯「ういー、ありがとー♪」

がたん、ごとん、がたん、ごとん


 がたん、ごとん

澪「・・・ああ、寝ちゃってたか」

律「うーん。重いよー、重いよー。澪が重いよー」 ぐー

澪「・・・嫌な寝言だな」

唯「おはよー」

澪「そこまで寝てないんだが。・・・ムギと梓も寝てるのか」

唯「ご飯食べたばかりだからね」

澪「唯は大丈夫か、乗り物酔い」

唯「薬飲んできたから。それに少し寝てきたのが良かったかも」

澪「準備万端だな」

唯「そういう事・・・」 くー

澪「お休み、唯」 くー


 しゅー、がこんっ

唯「とーちゃーく」 すたっ

澪「・・・なんか、空気が違うな」 すー、はー

梓「本当、良い匂いがしますね」 すー、はー

律「澪の匂いがか?」

梓「なんですか、それ」

律「たはは、冗談冗談」

梓(全く、危ないとこだった) くんか、くんか

紬「ここからは歩きなの。ちょっと遠いけど」

澪「贅沢は言わないよ。荷物はベースだけだし」

律「風も気持ち良いし、景色も良いし。ちょっとした散歩気分だな」

梓「本当、高原って雰囲気ですね。」

唯「あ、あずにゃーん」 よたよた

梓「はいはい。バッグの取っ手、片方貸して下さい」

唯「ありがとー」

梓「どう致しまして。さ、行きましょうか」 にこっ

唯「うんっ♪」 


   コテージ風別荘前

紬「えーと。・・・ここで間違い無いみたい」

梓「うわぁ・・・。ドラマに出てきそうな、まさしく高原の別荘ですね」

澪「裏手に小川が流れてて、正面が林か。スーパーも駅前にあったし、結構良い場所だな」

律「小鳥なんかさえずっちゃってさ。生きてる間にこんな思いが出来るとは思わなかったぜ」

唯「私はもう、この玄関先で満足だよ」

紬「まあまあ♪取りあえず、中へ入りましょうか」

カチッ

梓「へぇー。内装も、外観のイメージ通りの素敵なコテージですね」

紬「お父様がフィンランドで見かけた家を、そのまま移築したんですって」

唯「遠くからようこそっ」 びしっ

律「いや。それは私達もだから」

澪「フィンランドでそのまま移築なら、もしかして?」

紬「勿論、サウナ完備でーす♪」

律「おいおい。私達は、一体どこの国のお姫様なんだよー」

梓「なんだか夢みたいな話ですね」

澪「それは良いけど、合宿という大前提を忘れるなよ」

律「真面目な奴め。なあ、唯。ん、唯?」

唯「サウナは暑いから、私は良いよー」 ぐったり

澪「確かに、室温は100度になるらしいからな」

唯「・・・それって、入って平気なの?ねえ、りっちゃん」

律「私に振るなよ。その、なんだ。暑いと思うから駄目なんじゃないのか?」

梓「そういう精神論の問題でしたっけ」

唯「たるみきってる私達には、ちょっときついんじゃない?」

律「どうして私のお腹を見るのかな、平沢さん」


   コテージ内スタジオ

唯「と-どけー♪」 じゃーん

律「んー。場所が違うと、音も違って聞こえるな」

梓「アンプやスピーカーも、すごいのが揃ってますからね」

澪「うん。久し振りに、良い演奏が出来た♪」

紬「そろそろ、夕ご飯の買い物に行く?」

澪「本格的に、合宿っぽくなってきたな」

唯「となると、私の出番が」

律「出前頼もうぜ、出前」

唯「りっちゃん、しどいよ」

澪、紬、梓「あはは」


   駅前スーパー

律「結構普通に揃ってるな」

澪「後は、何を作るかだ」

唯「カレーじゃないの、カレー」

梓「合宿ですし、確かにそれが良いかも知れませんね」

紬「それと、デザートも買わないと」

唯「アイスー」

律「食べ物の事になると、途端に積極的だな」

澪「でも、アイスか。良いな、それ」

紬「大きいのを一つ買って、分けながら食べるのはどう?」

唯「うーいー♪」

梓(何故ここで、憂)


   コテージ内キッチン

ことこと

澪「・・・良い感じになってきたな」

律「シーフードだから、あまり煮込まない方が良いだろ」

紬「ご飯炊けましたー♪」

梓「サラダも出来ました♪」

唯「スプーン、持ちましたー♪」

律「気が早い」 ぽふっ

澪、紬、梓「あはは」

唯「ごちそうさまー」

律「あー、食った食った」

梓「私、食器洗いますね」

紬「だったら私も。唯ちゃん達は休んでて」

唯「では、お言葉に甘えてー」 ごろーん

律「豚になるぞ、お前」

唯「ぶひぶひ」

律「わっ。唯が豚になったっ」

澪「あはは、何だそれ」

唯、律「たははー」


   キッチン、シンク前

たははー

紬「みんな、楽しそうね」 カチャカチャ

梓「その。今更ですけど、色々とありがとうございます」 カチャカチャ

紬「私こそ、ありがとう。急に誘ったのに、こんな遠くまで来てくれて」

梓「そんな」

紬「本当はちょっと心配してたのよね。誰か一人でも来られなかったらどうしようって」

梓「え?」

紬「それだと来られない人も寂しいし、来た人も寂しいじゃない。やっぱり、5人が全員揃わないとね♪」

梓「はいですっ♪」

梓「でも結局、いつも通りって気がしますけど」

紬「そう?」

梓「唯先輩はふにゃふにゃしてて、律先輩は突っ走っちゃって、澪先輩は真面目で。ムギ先輩はみんなを見守ってくれてて」

紬「梓ちゃんも、普段通りに過ごしてる?」

梓「え、ええ。まあ」

紬「私はそれで良いと思うのよ。どこに行っても、変わらず過ごせるのは」

梓「変わらない、ですか」

紬「そう。いつものようにくつろいで、みんなで仲良くしてくれる。私はそれが、一番嬉しいわ♪」

梓「ムギ先輩♪」


むひゃーっ


梓「・・・向こうは何してるんでしょうね、もう」

紬「うふふ♪」


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最終更新:2011年04月30日 01:40