─部室─

唯「ねぇねぇ、今度の休みに みんなでバスに乗ろうよ~」

律「ん?」

唯「バス」

澪「うん、バスは分かるけどさ」

梓「どこへ行くつもりなんですか?」

唯「バスに乗るんだよ~」

律「いや、だからバスに乗るのは分かった」

唯「じゃあ乗るんだね?」

梓「いやいやいや」

唯「なんでそんなにイヤがるの?」

 「あずにゃんはバスに激しい憎悪を抱いているの?」

梓「いや、バス自体は好きですけど」

律「お前、そんなにバス好きだったの?」

梓「あっ、いや、よく考えたら そこまで好きではなかった」

紬「唯ちゃんはどうしてそんなにバスに乗りたいの?」

唯「う~ん、そうだね……」

 「じゃあムギちゃんはスペースシャトルに乗りたいと思ったことはない?」

紬「無いわ」

唯「そっか……」

澪「……」

律「……」

梓「……」


紬「♪」

梓「赤インクって思い切って飲み干すと気持ち悪いんですよ」

澪「いきなりなんだ?」

紬「なぜ思いきる必要があるのかしら」

律「そもそも飲み干さなくても気持ち悪くなることは想像にたやすい」

唯「どちらかというと、突然そんな話をし出したあずにゃんが気持ち悪いよ」

梓「気持ち悪くないですよ!!」

唯「じゃあ気持ちいいの?」

梓「気持ちいいです!!」

澪「いったい何が起こっているんだ」

律「今、なんで赤インクの話をしようと思った?」

梓「なんかこう、気まずい沈黙が流れたので……」

澪「今も十分、気まずいよ」

梓「そうやって一生、後輩をバカにしていればいいんだ」

唯「なんだか私達が悪者みたい」

律「いや、唯は悪いだろ」

唯「なんで?」

澪「バスに乗るとか おかしな事を言うから」

唯「バスに乗るのが おかしな事なの?」

澪「いや、バスに乗るのはおかしくないけど」

唯「澪ちゃんの言う事は矛盾しているよ!!ばーか」

澪「悔しいなぁ」

唯「え?」

澪「私がもっと気が強かったなら唯を暴力で叩きのめしていたのに……」

唯「ダメだよ~」

澪「くっ」

紬「みんな、お待たせしました~」

律「なにが?」

紬「さっきの梓ちゃんの話を参考に

  赤インクで紅茶を淹れてみたの」

澪「すごく間違ってるよ」

紬「なにが?」

律「こらっムギ!!お金持ちだからって

  食べ物を粗末にするなんて いけない事だぞ!!」

紬「食べ物って?」

律「紅茶に赤インクなんか淹れたら飲めなくなる」

梓「紅茶って食べ物というより飲み物ですけどね」

唯「私も そっち派だよー」

澪「というより紅茶を食べ物とカン違いしているのは

  地球上で律だけだ」

律「へへっ、アタシがナンバー1かよ」

梓「コイツ、バカの世界チャンピオンだな」

律「中野、心の声が出ているよ?」

梓「ははっ」

紬「そもそもこの紅茶、お茶っ葉が入ってないから

  何も粗末になんかしていないわ」

澪「それは紅いお茶というより

  ただの赤インクだ」

紬「でも、温かいわ」

律「『でも』ってなんだよ」

唯「大正デモクラシーだね」

律「かしこいヤツめ」ナデナデ

唯「えへへ~」

澪「じゃあ練習するか」

律「『じゃあ』ってなんだよ」

唯「おいしいごはんが炊けるよ」ジャーン

澪「そして、今日の演奏で一番ミスが多かったヤツには

  この赤インクティーを飲んでもらう」

紬「いいわね」

梓「やってやるです!!」

唯「や、やだよ~!!そんなの、私が飲むことになるに決まってるもん!!」

梓「でしょうね」

律「で、でも、唯のちっちゃな胃袋が

  あ、赤インクでパンパンパンに満たされるなんて

  さすがに興奮するよなww」ハァハァ

紬「えっ」

唯「怖いよ~」

梓「『さすがに』の意味がまったく分からないし

  分かりたくもありません」

澪「私も」

紬「私も」

律「アタシも」

澪「お前は分かれよ」

律「分かった」

唯「分からなくていいよ!!」

律「分かった」

紬「分かったのか分らないのかどっちなの?」

律「な、なにが?」

澪「律のアタマは今チンプンカンプンになってるぞ」

梓「私のアタマも今チンプンカンプンです」

律「ア、アタシは一体 誰だ?」

澪「知るか」

唯「えっ、澪ちゃん この人 知らないの?」

澪「いや、知ってるよ。幼馴染だし」

唯「やっぱり澪ちゃんの言う事は矛盾だらけだよ!!」

梓「もう澪先輩が犯人で間違いありません!!」

澪「私は何の疑いがかけられていたんだ」

梓「どうなんですか唯先輩」

唯「えっとえっと、なんか……わるいことがうたがわれているんだよ!!」

澪「悪いのは貴様の頭だろ」

唯「くやしいなぁ……」ショボーン

紬「澪ちゃん、あんまりよ」

澪「私が悪いのか?」

梓「そりゃそうですよ」

 「それに私、見ちゃったんですから」

澪「何をだよ」

梓「み、澪先輩が、自転車で

  急な上り坂に差し掛かったとき

 『ガンダムッ!!』って叫んでいたところを……」

律「怖っ」

澪「おい、やめろ」

紬「ひぃぃぃ怖ぃぃぃっ」

紬「どうしてガンダムって叫んだの?」

律「きっとキツイ上り坂を自転車で登りきるため

  澪の心のバーニアを噴射させたに違いない」

澪「うるさいよ!!うるさいよ!!」

唯「私は澪ちゃんの気持ち分かるな~」

 「坂道を登る時って気合いを入れたくなるもんね」

澪「分かってくれるか」

唯「澪ちゃん!!」ガシッ

澪「ゆ、唯~!!」ガシッ

紬「さっきの敵は今の友ね」

梓「美しいなぁ。私、けいおん部に入って本当に良かったです!!」

律「ふ~ん」

澪「ちなみに唯は坂道で なんて叫ぶんだ?」

唯「『あれ……鼻なんだ』

  『 あずにゃんの鼻なんだよ!セシリー!セシリィィィィイイイ!!!』」

澪「なに言ってんだコイツ」

梓「そもそも、それはどういうシチュエーションなんですか」

唯「宇宙空間に漂う あずにゃんの鼻を見つけたシーブックが」

梓「なんとおおおおぉぉっ!?」

紬澪「「ふははは!!怖かろう!?」」

律「なにコイツら。ホント怖い」

澪「ところで唯、なんであんなにバスに乗りたかったんだ?」

唯「う~ん、そうだね……」

 「じゃあ澪ちゃんはスペースシャトルに乗りたいと思ったことはない?」

澪「特に無いなぁ。宇宙って暗くてさびしそうだし怖いし」

唯「そっか……」

律「……」

紬「……」

唯「……」

澪「……」

梓「……」プゥッ

澪「屁だ!!」

律「梓が屁をこいたぞ!!」ヒャッホホホォォィィwwwwww

紬「この空気をビニール袋に封入して秋葉原で売るわ!!」ファサッ

梓「やめろ!!」

梓「学校が火事になればいいなぁ、と思ったことありません?」

澪「あるわけ無いだろ」

律「アタシは あるぞ」

唯「私も」

紬「私も」

澪「私も」 ← !?

唯「澪ちゃんの言う事は矛盾だらけだよ!!」

澪「一人ぼっちはイヤだもん……」

律「ところで唯はなんであんなにバスに乗りたかったんだ?」

唯「う~ん、そうだね……」

 「じゃあ、りっちゃんはスペーシャトルだよね?」

律「違うよ、アタシはマシーンじゃない」

紬「クェスの父親代わりなどできない」

澪「もうガンダムの話をやめろ」

唯「なんだかノドが乾いちゃった」ズズッ

梓「あっ、唯先輩 その紅茶は……」

唯「オェエアオォロロロロr」トシャトシャ

澪「唯が 赤インクを 吐いた」

紬「どうして飲もうと思ったのかしら」

律「お前が用意したんだけどね」

唯「スペースシャトルとシャトルバスって似てるよね」ゲホゲオ

梓「似ているというかシャトルという共通する文字はありますね」

澪「それよりも唯の口から血がダラダラ垂れ流れているみたいで怖いんだけど」

唯「じゃあ澪ちゃんにムチュウウウウウゥゥゥ」ブチュッ

澪「んんっ!?」ブチュウゥゥ!?

紬「あら、ディープキス」

レロレロレロレロレロ

律「うひょうひょwwww澪の口も真っ赤に染まっていくぞ!!」

 「真っ赤wwwwまっかっかっかッカッカwwwwwwww」ピヒーーーーーー!!

梓「この人は何故こんなに赤インクに興奮しているのか」

紬「キチガイなのよ」


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最終更新:2011年05月01日 22:54