唯「ムツゴロウさんってあのムツゴロウさん?」

律「そう。あのムツゴロウ先生」

唯「取り返そうよ」

律「なんで?」

唯「だってあの人本当に動物が好きなのか怪しいよ」

律「いや動物好きだろ」

唯「そうかな?」

律「そうだよ」

唯「それに軽音部はどうなっちゃうの?」

律「それが、問題なんだよ」

唯「あずにゃんを取り返しに行こう!」

律「分かったよ」

唯「ありがとうりっちゃん」

律「でも唯、私たち2人だけで大丈夫かな?」

唯「そうだね。澪ちゃんとムギちゃんにも助けてもらおう」

律「とりあえず今日は帰ろう。行動は明日からだ」

唯「分かったよ。じゃあね」

律「うん。また明日な」

唯「絶対あずにゃんを取り戻そうね」

律「ああ、絶対だ」


翌日

澪「梓を?」

紬「助ける?」

律「ムツゴロウさんから取り返すんだ」

唯「だからみんなで協力しよう」

澪「それはもちろん協力したいけど、ムツゴロウさんってどこにいるの?」

律「そりゃムツゴロウ王国だろ」

唯「外国だね」

紬「パスポートとか用意しなきゃ」

唯「えー?急には難しいよ」

澪「私も……」

律「仕方ない。密入国するか」

紬「それはやめた方がいいんじゃ…」

律「梓のためだ!腹をくくろう」

唯「私はやるよ」

澪「み、みんながそうするなら私も」

律「決まりだな」

唯「あずにゃん、すぐ助けてあげるからね」

澪「でもさ、ムツゴロウさんって動物を大切にする人なんだろ?」

紬「ムツゴロウさんは動物のおっぱいを直飲みする変態なのよ」

律「そりゃ変態だ」

唯「しかもおしっこも飲むんだよ」

澪「ええー?」 ガクブル

澪「もしかして…私たちってとんでもない人を敵に回そうとしてるんじゃないのか?」

律「今更後には引けないんだ、澪。分かってくれ」

澪「分かったよ。パパやママには伝えておく」

律「それもダメだ澪」

澪「なんで?」

律「あまり、多くの人を巻き込みたくないんだ」

紬「私たち4人だけでやり遂げないと!」

唯「私も憂には内緒にしとく」

律「作戦開始は明日だ」

澪「うん。もう成るように成れだ」

紬「吹っ切れたわね、澪ちゃん」



翌日


律「みんな、揃ってるな?」

律「梓救出隊!番号!」

澪「いち!」

紬「に!」

紬「唯ちゃんが居ません!」

律「なんだって!?」

澪「まさか唯もムツゴロウさんに……うわーん!」

律「落ち着け澪」

紬「そうよ、まだ食べられたと決まったわけじゃ……」

澪「え?食べる!?うわーん!!」

律「余計怖がらせるなよ」

紬「ごめんなさい」

唯「お待たせ~」

律「遅いぞ唯隊員!」

唯「ごめんね。憂に秘密にしてるから1人で起きなきゃいけなくて」

澪「心配しただろーっ!」

唯「ごめん澪ちゃん。ごめんねー」

紬「とにかく、全員揃ったね」

律「出発だ!」

ガタンゴトン ガタンゴトン

唯「わーい電車電車~」 キャッキャッ

澪「あんまりはしゃぐなよー?」 キャッキャッ

律「お前もな」 キャッキャッ

紬「りっちゃんもね」 キャッキャッ

唯「ムギちゃんもね」

澪「それにしても…なんで鈍行なの?」

律「軍資金が足りなかった」

紬「そんな?私がカンパしたじゃない?」

唯「おやつ代で消えました」 モグモグ

澪「どれだけおやつ食べる気だよ!」

唯「ごめーん」

澪「まったく、肝心な時に」

律(だめだ、早くもチームワークが崩れ始めてる…こんなことじゃ梓を助けるなんてとても無理だ)

律「な、なあみんな。おやつの限度額を決めなかった私が悪かったんだ!」

澪「律……」

律「だから唯を責めないでやってくれ。モチベーションを落としたくないんだ」

紬「わ、分かった。別に鈍行でも大丈夫だから、ね」

澪「うん!こんなことで怒ったりしちゃ駄目だよな」

唯「次からちゃんとしてねりっちゃん」

律「うん」

律「うん?」

ガタンゴトン ガタンゴトン

律「暇だなぁ」

唯「私トランプ持ってきたよ。遊ぶ?」

澪「いいね。やろうやろう」

紬「じゃ、大富豪やらない?」

唯「やろうやろう!」

澪「大富豪?それを言うなら『大貧民』だろう」

律「あ、ああ。私も『大貧民』って言ってたけど全国的には『大富豪』のがメジャーらしいぞ」

澪「知らなかった……」

律(やばい。澪のテンションが急降下してる。なんとか顔を立ててやらないと)

律「まあ名前くらいどうでもいいじゃないか!大事なのは中身だろ?」

澪「う、うん。そうだね」

唯「澪ちゃんの作る歌詞はタイトルも中身も最高だよ」

律(いいぞ!ナイスフォローだ唯!)

澪「ホント!?実は新しいの考えてあるんだ」

澪「『アイスクリームチョコレートマーマレードめろでぃ♪』っていうんだけど、どう?」

唯律紬「……」

澪「『M.P.H.M.』っていうのもあるよ。『ママレモン・ピュアピュアハート・マジック』の略なんだ」

唯律紬「…………」

どよん

律(空気が凍った)

律「とにかく大富豪やろうぜ大富豪!うわー楽しみだなぁ!」

ガタンゴトン ガタンゴトン

唯「5回連続大貧民……」

律「たまたまさ、元気出そうよ?」

唯「私って何をやってもダメダメだよ」

唯「今日も私なんて最初から居ない方がよかったんだ…」

律(こいつら本当にめんどくさい)

紬「唯ちゃん、そんな風に考えちゃ駄目よ!」

澪「そうだ唯。ポジティヴシンキングで行こう!」

唯「…さっき澪ちゃんとムギちゃんのおやつ食べちゃったけどポジティヴシンキングで許してくれる?」

澪「」 ブチッ

紬「」 ブチッ

律「最悪だわ」


H海道 S津町

律「やっと到着したなぁ」

紬「…ええ」

澪「…そうだなー」

唯「お腹いっぱい」 ゲプッ

律(マジで梓の救出どころじゃない状況…)

律「きっ今日はもう疲れたしどっかで休んでかない?」

紬「あ、そう言えば私この近くに別荘持ってるの」

唯「本当!?」

律「そこ泊まれたりする?」

紬「うん。多分大丈夫よ」

澪「急だけどいいの?事前に家の人に許可取ったりしないと……」

紬「有事のときは別よ!みんな許してくれると思うわ」

唯「じゃあムギちゃんの別荘にお世話になろうか」

律「ありがとな、ムギ」

律(最悪だった空気が一気に暖かくなったぞ!)

紬「ここよ。あんまり大きくなくて申し訳ないんだけど…」

唯「ううん、充分すぎるくらいだよ!」

律「でもムギ、鍵あるの?」

紬「持ってないわよ」

澪「じゃあどうやって中に…」

紬「大丈夫。ドアを…」

紬「ぶち壊すわ!」

ドカンッ

唯「わぁっ。ワンパンで大穴が開いた」

律「ムギの怪力はきっと役に立つな」

紬「入りましょ?」

澪「お邪魔しまーす」

紬「誰もいないわよ?」

澪「うん、分かってるけど一応」

律「良かったぁ。寝床だけは確保しておきたいからな」

唯「りっちゃんってば無計画なんだからー」

律「お前に言われたくねえよ」

紬「ここを私たちの活動拠点にしましょう」

澪「律、明日の作戦会議をしよう」

律「よし。ムギ、リビングに案内してくれ」

紬「こっちよー」

唯「広ーい」

紬「お茶淹れるわね」

澪「ありがとなムギ」

唯「どうやってあずにゃんを取り返す?」

律「まず向こうの窓を見てくれ」

澪「ん?」

律「あそこに見えるのがムツゴロウ王国だ」

唯「わー」

紬「どうやって入るの?」

律「かっこよーく正面から突入だ!」

律「と言いたいところだが、ムツゴロウさんの手下の動物達が通してはくれないだろう」

律「だから森に入って奥から侵入しよう」

紬「泥棒みたいね」

澪「梓を持って行ったムツゴロウさんこそ泥棒だよ」

唯「ムツゴロウさんとあずにゃんは王国のどこにいるの?」

律「あのデカい建物の中にムツゴロウさんの部屋があるはずだ」

唯「そうなんだ……。たどり着くまでが大変そうだね」

紬「王国の動物たちに見つからないように慎重に行動しないとね」

律「日の出ている間は難しいな。明日の夜の内に梓を見つけよう」

唯「今夜はおやすみ♪」


翌日

ムツゴロウ動物王国

唯「澪ちゃん大丈夫?」

澪「夜の森っていうのはどうしてもいやだな…」

紬「この塀の中はもう日本じゃないのね」

律「行こう、国王から梓を奪還するんだ!」

唯「おー!」


澪「ねえ、何か足音がしない?」

律「うん?確かに聞こえるような」

紬「馬よ!馬が走ってるのよ!」

唯「馬!?」

律「ムツゴロウさんに見つかったんだ!一旦ムギの別荘まで逃げよう!」


ダダダダダッ

「馬くんが暴れ出しましたね」

「こんな時間にお客さんですか」

「どうせ私の新しいお友達を盗みに来たんでしょうけど……」

「そんなことはさせませんよ」

「ね、あずにゃん」


2
最終更新:2011年05月04日 21:25