•中野家、リビング
私は唯先輩に抱かれながらピザを食べさせられていた。
唯「あずにゃん、沢山食べて大きくなぁれ。」
梓「美味しいです。」
唯先輩の指に付いた油を口で綺麗にすると今度は私が食べさせる番だ。
梓「唯先輩あーん。」
唯「あーーむっ。」
小さな口を精一杯開けてピザを食べる唯先輩はそれはもう可愛い。
勿論空いてる方の手は繋いでいる。
二人でいる時は一秒も離れたくない。
唯「うまいっ!」
笑顔が眩し過ぎる。
明るさは電球三十個相当だろうか。
唯「あれ?メールだ。」
梓「誰ですか?」
唯「和ちゃんから。」
なんとなく嫌な気分。
唯先輩にメールが来ただけで嫉妬するなんていよいよ私も末期だな。
自重しないといずれ耐えられなくなる。
梓「そうですか。」
でも恋人と二人でいる時に携帯弄られるのは嫌だよね。
きっと誰でもそうだよ。
私は唯先輩の手に指を絡める。
貴女の恋人が寂しがってますよー。
携帯を見つめながらも唯先輩は手を握り返してくれる。
唯「ふぉーゆああいずおんりーってどうゆう意味?」
梓「For Your eyes Only ですか?」
梓「確か、貴方に見せる為だけの物。って意味だと思います。転じて機密文章に使われる場合は読んだ後に焼却処分しなさいって事ですね。」
唯「読んだら削除すればいいんだね。」
梓「はい。」
どんな内容だろう。
凄く気になる。
梓「そんな事より明日こそは練習しますからね!」
唯「えぇー、まだ筋肉痛治らないのにー。」
昨夜私が中々イかないから唯先輩が筋肉痛になった事を思い出す。
梓「私の所為だって言うんですか。」
唯「私の技量不足だよ。今日の夜も練習しようかな?」
唯先輩はニヤニヤしながら指をいやらしく動かす。
なんの練習をするつもりですか。
梓「泊まるんですか?」
唯「今日は泊まらないよ。二日連続で一緒に登校したら怪しいでしょ?」
期待させておいて…
梓「学校の近くまで来たら、少し離れればいいじゃないですか。」
唯「うーん、でも泊まる道具持って来てないよ。」
唯先輩に往復させるのも申し訳ないケドまだ一緒に居たい。
梓「じゃあ唯先輩の家に泊まりましょうよ。」
唯「そだね。あずにゃん、そんなにエッチしたいのかなー?」
梓「違いますよっ!」
唯「あずにゃん、可愛い!」
唯先輩には先に帰ってもらい、私は泊まる準備を始めた。
もう雨は止んだようだ。
•真鍋家
弟達が眠りに着いた頃、唯から返事が帰って来た。
『りょーかいであります!
あ、これからあずにゃんとお泊りなんだー。ふんすっ!』
和「本当にわかったのかしら…」
時計を見ると時刻はまだ十時だった。
明日は早めに学校に行って早く帰れるようにしよう。
憂のお見舞いにも行きたいし。
私は眼鏡を布団の傍に置き眠りに着いた。
•翌日、生徒会室
少し早く来過ぎたか。
今日は昼休みに委員長会議、放課後に部長会議を控えている。
どちらも私が進行を務める。
全ては私次第。
顧問教諭へのコンタクトを取り、
ホワイトボードに生徒会役員への役割指示を書いておく。
通常業務を進めていると生徒が大体登校する時間になっていた。
私は席を立ち、放送委員長の元へ向かった。
•3年3組
和「失礼します。放送委員長さんいるかしら。」
放送「あ、おはよう。」
和「おはよう、今日のお昼の放送の確認取れてるかしら。」
放送「うん、心配しなくても大丈夫だよ。」
和「そう、じゃあ私生徒会行くね。」
放送「行ってらっしゃーい。」
生徒会行くね。と言いつつ私は自分の教室の席に座る。
唯はまだ来ていない。
本当に毎回遅刻ギリギリね。
チャイムが鳴ったが先生はまだ来ていない。
唯「はぁ、みんなおはよー。」
やっと来た。
和「おはよう。先生が来てたら遅刻扱いだからね。」
唯「ごめんごめん、あずにゃんがまたさー、あ、なんでもない。」
唯が慌てて誤魔化す。
私に隠し事とは良い度胸ね。
和「それより昨日のメールちゃんと読んだの?」
唯「ゆああいずおんりーだよね。ちゃんと消したよ。」
和「そうじゃなくて、放課後の事。」
唯「大丈夫だよ。皆の部活知ってる範囲で書いたから。」
さわ子「はぁ、皆おはよー。」
唯と同じ台詞で先生が現れた。
•2年1組
梓「…」
HRが終わって直ぐに唯先輩が現れた。
教室に入って来ないが私を観察している。
担任「ではこれにてHRを終了する。」
日直「起立、礼。」
あ、唯先輩が担任に見つかった。
なにやら話し込んでいるが、唯先輩の表情…
唯先輩が担任に敵意を向けている…
梓「唯先輩!」
私は席を立ち唯先輩に駆け寄った。
唯「あずにゃん、おはよう。」
梓「あ、おはようございます。」
担任「上級生に二年の廊下を歩かれては困るんだよ。」
唯「私も後輩がイジメられては困りますね。」
梓「唯先輩、私は大丈夫ですから…」
唯「あずにゃんの為だけじゃないんだよ…」
担任「もうイジメは起こらない。君の担任は誰なんだ?」
唯「担任?山中先生ですけど。」
担任「そうか山中先生に話されたくなければ、もう二年の廊下をうろつくなよ。」
唯「…私を怒らせても良いコトありませんよ?」
梓「唯先輩、どうしちゃったんですか?なんだか怖いです…」
唯「あずにゃんと憂が笑えない学校なんて私が壊してあげるからね。」
唯「とりあえず、帰るよ。」
担任「もう来るなよ。」
唯「…だまれ」
唯先輩は口を僅かに動かし聞こえない程度に捨て台詞を吐くと、三階へ戻って行った。
結局その後、唯先輩がこのクラスへ来る事は無かった。
•昼休み、生徒会室
スピーカーから全校に放送が流れる。
放送『本日昼休みは委員長会議です。昼食を済ませた各委員会の代表の生徒は速やかに生徒会室へ集まって下さい。』
放送が終わり一分もしない内に放送委員長が生徒会室に訪れた。
和「お疲れ様。お昼は食べたの?」
放送「うん、いつも放送室で食べるから。」
和「そう。」
次に書記と会計が顔を出した。
書記「お疲れ様です。」
会計「まだ揃っていないようですね。」
和「えぇ、座って待っていて頂戴。」
四人で世間話をしていると、続々と委員長クラスの生徒が入って来た。
風紀委員会会長
保健委員会会長
環境委員会会長
放送委員会会長
図書委員会会長
学級委員会会長
生徒会書記
生徒会会計
そして私
合計九名がロの字のテーブルに腰掛ける。
和「皆さん、お集まり頂き有難う御座います。」
和「それでは常任委員会代表者会議を始めたいと思います。」
和「書記さんメモよろしくね。」
書記「はい。」
和「本日の議題はホワイトボードに記入してある通りです。」
和「それでは、各委員会の活動報告からお願いします。」
風紀「あたし達風紀委員会は服装のチェック、持ち物検査、遅刻者のチェック等を行って参りました。異常はありません。以上!」
『異常はありません』ねぇ…
風紀委員会会長に続いて全ての委員長が活動報告を終えた。
和「有難う御座いました。」
和「続いて委員会の追加予算に付いてです。追加予算が必要な委員会は挙手して下さい。」
誰も手を上げない。
いや、上げさせない。
和「…無ければ次の議題に移りたいと思います。」
和「例年通り生徒会選挙に向けて選挙管理委員会を設立したいと思います。」
和「生徒会会則に則り特別執行委員会の設立に付いて常任委員会の了承を得たいと思います。異議はありませんね?」
和「それと未定ではありますが虐め撲滅週間に向けて虐め撲滅委員会を設立致したいと思います。」
会計「えっ?」
書記「…?」
和「質問が無ければ、本日の常任委員会代表者会議を終了したいと思います。」
風紀「ちょっと、どう言う事?」
和「イジメの撲滅に取り組む委員会を立ち上げると言う事です。」
風紀「あたし達風紀委員会の存在を忘れてないかしら?」
和「無能過ぎて忘れてたわ。」
風紀「…」
書記「和先輩…?」
和「皆さんご存知かと思いますが、先日第二学年の教室で警察を巻き込む事件がありました。」
和「風紀委員会だけで手が回らないようならもう一つ執行機関を用意させていただきます。異議はありませんね?」
風紀「予算はどうなるのよ?」
和「虐め撲滅委員会に予算は
一円もかけません。自分達の足だけで学校全体を取り締まります。」
和「風紀委員会の予算は変わらないのでご安心を。」
和「それでは常任委員会代表者会議を終了したいと思います。お疲れ様でした。」
それぞれ無言のまま席を立つ。
和「放送委員長さん少しいいかしら。」
放送「なに?」
和「今から放送を頼みたいの。」
放送「え…今から?」
和「えぇ、放課後私の権限で生徒総会を開くから講堂に生徒を集めて欲しいの。」
放送「う、うんわかった、先生の許可は取ってあるの?」
和「うちの学校では生徒総会を開くのに先生の
許可はいらないわ。生徒会長の権限だから。」
放送「でも、全校放送をするには先生の許可が必要だよ?」
和「私が取っておくから。お願い!」
私は顔の前で手を合わせ、一生に一度のお茶目スマイルを見せた。
放送「…わかったよ、急ぎの事情があるんだね。」
和「ありがとー!」
私は生徒会室を飛びたした。
なんだかワクワクして来た。
•職員室
和「失礼します。」
顧問「おぉ、真鍋君どうした?」
和「本日、放課後に生徒総会を開きます。」
顧問「総会、…今からでは間に合わんよ。」
和「既に講堂で副会長が準備を進めています。」
顧問「どうやって生徒を集めるんだ?」
放送『えー全校生徒の皆様、本日放課後に生徒総会が行われます。HRを終えた生徒から速やかに講堂に集合して下さい。』
職員室がざわめいた。
顧問「ん…そうか職員は必要かな?」
和「いえ、生徒だけで進めます。」
私は放送委員会の顧問に説明をし、なんとか事後報告で許してもらった。
•3年2組
唯「あ、和ちゃんおかえりー。」
和「ただいま、そっちはどう?」
唯「大丈夫だよー。」
•放課後
純「梓ー、生徒総会なんて入学してから初めてだよね。」
梓「だね、なにするんだろう。」
私はバックに教科書を詰めながら純と話しをしていた。
生徒総会に部長会議、今日はまた練習出来ないかな…
純「バック持ってくのかな?」
梓「皆持ってってるみたいだし…」
純「じゃあ私達も行こっか。」
私は渋々講堂へ向かった。
最終更新:2011年05月06日 01:45