───次の日
唯「ん……くぅー……、よく寝た」 ムクッ
唯「少し身体が痛いな。やっぱり急に動かすのは───」
紬「……すぅ……すぅ」
唯「そっか、お風呂から出て、ムギちゃんと一緒に寝たんだっけ」
紬「んー」
唯「かわいい寝顔だな」 ナデナデ
紬「むふふ、唯ちゃーん」 ムニャムニャ
唯「どんな夢見てるんだろ。起こすのも悪いし、そろそろ帰ろっかな。憂も心配してるだろうし」
唯(憂にはムギちゃんの家に泊まるって連絡は入れてあるけど、きっと心配してるだろうなぁ)
唯(うまいこと言い訳考えておかないとね)
唯「たっだいまー」
憂「お姉ちゃん!」
唯「おっとと、憂おっはよー!朝から元気ですなー」
憂「家に帰ってこないで、そのままムギさんの家に泊まるってメール見たときは驚いたよ」
憂「今、ムギさんすごく大変みたいだし、それに……」
唯「それに?」
憂「ううん、なんでもないの」
唯「そっかー。それよりもお腹すいたよー、ういー」
憂「朝御飯食べてないの?」
唯「んー、あまり長居するのは迷惑かと思って、帰ってまいりました!」 ビシィ
憂「そっか。じゃあ、今から作るね!」
唯「はーい」
唯(言及してこない、か。ま、そっちのが好都合だからいいけどねー) モグモグ
憂「お姉ちゃん、おいしい?」
唯「うん!憂の作った卵焼きは日本一だねー」 モグモグ
憂「やだなぁ、大げさだよお姉ちゃん♪」
唯「えへへ」
憂「ところでお姉ちゃん、今日はお休みだけど、予定はあるの?」
唯「むー、二度寝する予定かなっ!」
憂「それは予定があるって言わないよー。お休みはギターの練習頑張るんじゃないの?」
唯「明日から!それは明日から頑張るよー。今日はゆっくり休養して、鋭気を養うんです!」
憂「そっか。じゃあ今日はゆっくり休んでね、お姉ちゃん」
唯「あいあいさー」
憂「おねーちゃーん?食後のデザートにパイナップルどう?」 ガチャッ
唯「すやすや」
憂「もう寝ちゃったんだ、ふふ」
憂(あ、服が脱ぎ捨ててある。よっぽど眠かったんだね、お姉ちゃん)
憂(せっかくだから、たたんでおいてあげよう。……あれ、ポケットに何か入ってる)
憂(これって、飛び出しナイフ!?どうしてこんなものがお姉ちゃんのポケットに)
憂(ナイフの柄に文字が彫ってある。……七ツ夜)
憂「……」 タタッ
唯「……うーん、困ったな」
───次の日 学校
唯(憂には気付かれちゃったみたけど、態度は相変らずか。見なかったことにするなら、私も合わせておこう)
律「おっすー。難しい顔してどうしたんだ、唯」
澪「何か悩みでもあるのか?よければ相談にのるぞ」
唯「あはは、実は朝御飯食べすぎちゃって、ちょっとお腹痛いんだー」
律「なんだ、腹痛かよー」
澪「保健室行くか?」
唯「しばらくしてれば治ると思うから、大丈夫だよ」
律「唯、そういうときはな、トイレでふんばればすぐ治るぜ!」
澪「そういうのはやめろっ!」 ポカッ
律「あふん!」
憂「……」
梓「憂、ねぇ憂ってば」
憂「あ、ごめん梓ちゃん。聞いてなかった」
梓「もー、しっかりしてよ」
純「なんだか今日の憂変だね。授業中もボーっとして先生に怒られてたし」
梓「具合が悪いの?」
憂「ううん、違うの」
純「もしかして、唯先輩と喧嘩したとか?」
憂「……」
梓「そうなの?」
憂「やだな純ちゃん。お姉ちゃんと喧嘩なんてするわけないよー」
純「そっか、そうだよね。仲良しシスターズだもんね」
梓「それならいいけど、何かあったのなら相談にのるよ?」
純「うんうん、ばーんと頼りなさい」
憂「ありがとう、梓ちゃん、純ちゃん」
純「あ、でもお金関係は無理かも……」
梓「もう、純ってば」
憂「あはは」
───お昼休み
律「相変らず今日も食堂は混んでるな」
唯「そーだねー。今日は席とれるかなぁ」 キョロキョロ
澪「なぁ、あそこにいるの憂ちゃんたちじゃないか?」
律「お、丁度近くがあいてるじゃねーか!せっかくだし、一緒に食べようぜ!」
澪「そうだな、そうしよう」
律「おーい、憂ちゃーん!」
憂「あ、律さん」
梓「今日は食堂でお昼ですか。珍しいですね」
律「そういう梓たちもな。普段は教室で食べてるんだろ?」
純「実は私がお弁当忘れちゃって、あはは」
唯「そっか、それで食堂なんだねー」
憂「……お姉ちゃん」 ボソッ
澪「どうかしたのか、憂ちゃん?」
憂「いえ、なんでもないんです」
純「実は、具合が悪いみたいなんですよ」
律「そうなのか?」
憂「ええ、少し」
律「そっか、ここは騒がしいから、つらいようなら保健室に行ったほうがいいな」
梓「保健室、行く?」
憂「大丈夫だよ、教室に戻れば落ち着くと思うから」
純「じゃあ、私たちは教室に戻ろうか」
憂「うん、それでは失礼します」
梓「また後で、先輩方。憂、待ってー」
純「失礼します!」
澪「憂ちゃん、つらそうだったな」
唯「そうだね……」
律「朝から具合が悪いのか?」
唯「私は気付かなかったけど、我慢してたのかも」
律「なぁ、唯」
唯「なーに、りっちゃん」
律「……いや、なんでもない」
唯「変なのー」
澪「憂ちゃん、このまま体調をくずさなければいいな」 グゥー
唯「変な怪獣の鳴き声が聞こえましたぞ!?」
律「気をつけろ、この近くだ!戦闘体制をとれ!」
澪「私の……お腹の音だ……」
唯「知ってるよ」
律「からかったんだよ」
澪「ふ、二人のばかー!」
律「さて、ようやく昼飯だなー」
唯「わー」
澪「……」 モグモグ
律「ほらほら、あまりがっつくと喉につまるぞ、澪」
唯「よっぽどお腹がすいてたんだねー」
澪「う、うん」
唯「澪ちゃんのカレーもおいしそうだけど、りっちゃんのハンバーグランチもおいしそうですなー」
律「やらないぞ!」
唯「いけずー」
澪「……」 ムシャムシャ
律「ハンバーグと言えば、最近ハンバーグ専門のレストランがオープンしたよな」
唯「えっと、駅の近くだっけ?」
律「そうそう、あそこめちゃめちゃうまいって評判なんだぜ」
唯「ゴチになります!」 グッ
律「おごらねーよ。それに、値段が高いってことでも有名なんだ」
唯「でも、お客さんはけっこう入ってるみたいだね」
律「値段のだけはあるみたいだからなー。いつか食ってみたいぜ」
澪「私、そこに行く」
律「ゴチになります!」 グッ
澪「か、家族と行くんだ」
唯「じゃあ私妹役ね」
律「なら私は姉か」
澪「そこまでして行きたいか!?」
澪「今夜、お父さんの仕事が早く終わるから、家族でどうかって」
唯「いいなー、澪ちゃんいいなー」
澪「そ、そうかな?」
律「家族水入らずで羨ましいな。しっかり、楽しんで来い」
澪「ああ!」
唯「おみやげのハンバーグも忘れずにね!」
律「そこが一番重要だな」
澪「絶対買ってこないっ!」
───放課後
律「ゆーい、一緒に帰ろうぜ」
唯「うん、いいよ」
律「しっかし、澪も羨ましいよなー。あの有名店のハンバーグが食べられるなんてさぁ」
唯「そうだねー。今からおみやげおみやげって二人でメール送ろうか!」
律「ナイスアイディアだぞ、唯!」
唯「えへへ」
律「……」
唯「……帰ろうか」
律「うん」
律「部活もないから、家に早く帰っても暇なんだよな」
唯「そーだねー」
律「なぁなぁ、帰りに本屋に寄らないか?欲しかった漫画の新刊が出てると思うんだー」
唯「ごめん、実は今日も予定があって」
律「もしかして彼氏か……?」
唯「……」
律「お、おい」
唯「うふ☆」
律「ゆいっー!!」
――――
紬「あ、唯ちゃん!いらっしゃい」
唯「やっほー、ムギちゃんあれからどう?」
紬「もっと手こずると思ったのだけど、唯ちゃんの働きのお陰で、だいぶ落ち着いてきたの」
唯「そっかー、私頑張ったもんねー」 フンスー
紬「うん、とても感謝してるわ。だからね、今日はそのお礼がしたくてうちに招待したの」
唯「ケーキ!?」
紬「ええ、いーっぱい用意したから、たくさん食べてね」
唯「ムギちゃん愛してるー♪」 ガバッ
紬「ゆ、唯ちゃんったら……」 テレテレ
唯「うぷっ……、食べ過ぎた」
紬「お腹パンパンね」 ポンポン
唯「ぐふっ!た、叩いたら出ちゃうよ!」
紬「ごめんなさい、うふふ」
唯「これじゃ夕飯食べれないかも……」
紬「もしよかったら、またうちに泊まっていけばいいんじゃないかしら?」
唯「でも、憂が心配するから」
紬「そ、そうよね……」
唯「今度、お泊りにくるから。だから、そのときは一また緒に寝ようね」
紬「うん、約束ね!」
唯「それで、何か話があるんじゃないのかな?」
紬「うん、今後の唯ちゃんのお仕事なんだけどね」
唯「……」
紬「もう、こないだみたいなことはないと思うの」
唯「そうなんだ」
紬「反対派の中でも、とくに力のある分家の当主が殺されたことが、相当きいたみたい」
唯「そりゃ何より」
紬「でも、安全だとは言い切れないから」
唯「吸血鬼事件の犯人探しもあるしね」
紬「そうね、犯人もきっとなりをひそめると思う」
唯「それを探し出すのはさすがに専門外だよー」
紬「分かってるわ、そっちは任せて」
唯「なら、普段はムギちゃんのボディーガードをしていればいいのかな?」
紬「うん、唯ちゃんと一緒なら私も安心して学校に行けるわ」
唯「まかされよー」
――――
唯(さて、ムギちゃんの件は一段落したと思っていいのかなー)
唯「たっだいまー」
憂「……」
唯「憂、ただいま」
憂「あ、おかえりなさい」
唯(こっちもなんとかしなくちゃね)
憂「私、晩御飯のしたくするね」
唯「ねぇ、憂。ちょっといいかな?」
憂「後でいい?」
唯「今」
憂「わ、分かったよ」
唯「私ね、ムギちゃんから全部聞いたんだ」
憂「っ!」
唯「私の本当の名前は七夜唯で、平沢家の子供じゃないこと」
憂「……」
唯「本当は、憂とは姉妹じゃないことも」
憂「お、お姉ちゃんはお姉ちゃんんだよ!
平沢唯だよ!」
憂「だから、姉妹じゃないって言わないで。お姉ちゃんは私の大切なお姉ちゃんなんだよ!」
唯「分かってるよ、ごめんね。それにさ、前に言ったじゃない。私はこれからもずっと憂のお姉ちゃんだって」
憂「ほんと?」
唯「ほんとだってば。おねーちゃんを信じなさい」
憂「うぅ、おねーちゃん……」
唯「よしよし」
憂「うっ、ひっく、うぇええん」
唯「落ち着いた?」
憂「う、うん」
唯「そう」
憂「ごめんね、お姉ちゃん」
唯「いいんだよ。憂は知ってたんだね、私が本当はこのうちの子じゃないって」
憂「お父さんに聞かされて。でも、私は本当のお姉ちゃんだと思ってたよ」
唯「私も」
憂「嬉しいな」 ギュッ
唯「急に甘えん坊さんなったね、憂」
憂「だ、だってだって」 モジモジ
唯「はいはい、かわいいかわいい」
憂「からかってるでしょー!お姉ちゃん、今日のデザート抜きだよ!」
唯「そ、そんなぁ」
最終更新:2011年05月07日 23:25