部室

唯「こんちはー」

澪「おう」

律「うーす」

梓「こんちはです」

紬「今、紅茶入れるわね」

唯「ありがとー」

唯「そういえば昨日テレビで腐女子っていう人達の特集してたんだ」

澪「……」ピク

唯「男の子同士で妄想なんておかしいよね」ケラケラ

澪「唯はそういう趣味無いのか?」

唯「えー、漫画もアニメもゲームもするけど、普通に楽しむだけだよ」

唯「妄想なんてしないなー」

梓「それはおかしいですね」

唯「んにゃ?」

梓「先輩は既にギターを擬人化しています」

澪「素養はあるよな」

律「擬人化は基礎中の基礎」

紬「はい唯ちゃん、ミルクティー」コトン

唯「あ、ありがとムギちゃん……でもなんか皆の様子が……」

紬「ええ、唯ちゃんもお勉強しましょうね」

唯「えぇ……」


律「第一回! 唯を腐女子にしよう大勉強会~~!!」ドンドンパフパフ!

唯(興味無いよぉ……でも逃げたらもうお菓子抜きって言われたし……)

律「まずはこの場における腐女子の定義をハッキリさせたいと思います」

律「それでは講師の澪さん、お願いします」

澪「ああわかった」

澪「まず唯、お前の思う腐女子ってどんなイメージだ?」

唯「え、えーと……オタクな女の子で……」

澪「他には?」

唯「お、男の子同士でエッチな妄想をしている……」

澪「うん、大体そんなもんだろうな」


澪「細かく分けると耽美系とか色々あるんだが、一度には覚えられないだろ」

澪「そこで今回は『本当は少年向けなのに勝手にホモにしちゃうぜ』系の腐女子に話を絞る」

澪「ここはテストに出るぞ!」キリッ

梓「……」カリカリ

唯「うわ……メモしてる……」

澪「さぁいよいよ本番だ。唯、ジャンプは読むか?」

唯「え、うん、たまに」

澪「今人気の作品はなんだ?」

唯「ワンピース! ルフィがどうやってエースを助けるか気になるよね!」

唯「あ、ハンターハンターも復活したね!」

澪「ジャンプと言えばナルト×サスケだろうが! このド素人が!」バン!

唯「ひっ!?」


唯「な、ナルト? まぁ好きだけど……キラービーとか……」

澪「ほほう、キラービー×鬼鮫とは渋いところをつくな」

唯(言ってないよ)

律「ナルト×サスケはガチだからなー」

梓「愛憎渦巻く友情劇にハラハラドキドキです」

澪「主役なのにヤンデレホモとは岸本先生は天才過ぎる」

唯(何言ってるのかわかんない……)

澪「二部での再会シーンは鳥肌立ったな」

律「あー、大蛇丸のアジトに乗り込むところな」

梓「耳元での囁きなんて少年誌でやっちゃダメですよぅ」ドキドキ


澪「ジャンプでは他には、銀玉、リボーンなんかが人気だな」

唯「ふーん」

澪「ではここで私がジャンプ最強の漫画を紹介してやる。ズバリ……」

唯「ズバリ?」

澪「キン肉マンだ!」

唯「え? キン肉マンって昔のやつだよね?」

澪「これだから素人は……名作とはいつ読んでも色褪せない物なんだ」

律「うんうん」

澪「ガチムチ超人達がパンツ一枚でぶつかり合うたびに私の胸に熱い物が込み上げてくる」

澪「ロビンがザ・サムライに受けとめられたシーンなんか『弾ける肉の温もり』なんて言ってるんだぞ」

澪「正直絶頂した」

唯「そ、それは友情の表れなんじゃないかな……」

澪「バカ言え、肉の温もりだぞ肉の」

澪「ふふふ、ロビンマスクめ、試合中になのに堅くして厭らしい奴だ。みたいな会話があったに違いない!」

唯「病気だ……」


澪「さらには二世でとんでもない事実が判明した!」

澪「キン肉スグルはいつもテリーマンにマスクを結んで貰っていたんだ!」

唯「そ、それがなんなの?」

澪「婚約者がいるのに、テリーにやらせるんだぞ!」

澪「きっと……」ホワンホワン


スグル『テリー、マスクを結んでくれ』

テリー『そんな大役をミーにやらせていいのか?』

スグル『お前だから頼むんじゃい』

テリー『キン肉マン……』

スグル『テリー……』

テリー『キン肉マン! いや、スグル!』ガバッ

スグル『おわー! 私の屁の突っ張りがテリーに蓋されちゃうぅぅぅ!』


澪「マッスルドッキングーー!!」クワッ!

唯「澪ちゃんが鼻血吹いて倒れた……」

律「迂闊な奴め……校内での妄想は控えろと言ったのに」

梓「ふふふ……次は私の番ですね」


梓「澪先輩は勝手な妄想で倒れましたが、私は違います」

梓「唯先輩に腐女子趣味の良さをたっぷり教えてあげましょう」

唯「お断りします」

紬「じゃあこれからケーキは無しね」

唯「あう」


梓「教育に使う題材ですが……」ゴソゴソ

唯「ヘタリア? 可愛い絵だね」

梓「こんな軟弱なものは、こうです!」ビリビリ

唯「え?」

梓「腐女子だろうがオタクだろうが……無い物から妄想する、それがあるべき姿なんです!」

梓「最初からBL向けなんか読んでる奴は二流!」キリッ!

唯「よ、よくわかんないよ?」


梓「いつまでも補助輪の付いた自転車じゃ恥ずかしいでしょう? そういう事です」

唯(上手いこと言った気なのかな)

梓「ここにギー太があります」ドン!

唯「いつの間に!」

梓「ふふ……ギー太のケースを脱がしちゃいますよぉ」

唯「止めて!」

梓「ほらほら、もうギー太を包む物は無いですよ」

唯「いや……」

梓「ネックをさすってあげたり……」

唯「だめ! 止めて! 私のギー太がぁ!」

梓「さぁギー太? ご主人様の見てる前でイっちゃいましょうね?」スリスリ

唯「いやぁぁぁっ!!」

梓「これが……腐女子です!」ビシッ!


唯「え……」


梓「その気になれば無機物でさえ妄想の餌にする無限のパワー!」

梓「存在さえ認識できるなら、既に妄想は終えている……」

梓「ここまでして初めて腐女子の第一段階と言えます」

唯「あ、あずにゃんがおかしいよ……」


律「普通だろ」

紬「うふふ」

梓「さっきも言いましたが、元々ギー太を擬人化したのは先輩の方です」

梓「天然で擬人化なんて……ある意味才能ですよ」

唯「嬉しくない」


梓「ちなみに私の最近のお気に入りはギー太×ムッたんです」

梓「ムッたんはツンデレ気味で、自由奔放なギー太がアンプ君とばかり一緒にいるのが気になるんです」

梓「でもそこへエフェクたんが現れて、ムッたんは揺れ動き……」

唯「お願いだから二度とギー太に触らないで」


梓「そ、そんな! 今週は第176話『ギー太とムッたんのドキドキセッション』が……」

紬(脳内アニメが放映されてるとは……やるわね梓ちゃん)

梓「神回なんですよ! アンプ君と一晩を過ごしたギー太がやはりムッたんを忘れられずに……」

唯「ギー太はそんな不埒な子じゃないもん! 真面目な良い子だもん!」

梓「違います! ギー太はフラフラしてて、いつも胸元を肌蹴てて……」

梓「『彼氏は一人なんて法律は無いぜ』とか言っちゃうけど、危険な香りにムッたんは逆らえなくて……」

梓「あぁ! これ以上は学校では言えない!」

唯「ギー太が汚された……」


律「梓、退いてろ。唯は私が倒す」

梓「律先輩……」

律「まったく、手のかかる子猫ちゃんだ」

紬「ハァハァ」

唯(何この小芝居……)

律「唯、どんなに否定してもお前にも腐女子の素質があるのは事実だぞ」

唯「て言われても……」

律「澪や梓は一気に道を開こうとしすぎて失敗した……」

律「いきなり妄想力を高めろっても無理な話だ」

律「やっぱ身近な物からじゃないとな」

唯「私の周りに同性愛者はいないよ~」

律「ふふふ、ヒントは日曜の朝にある!」


唯「仮面ライダー?」

律「そう、ふたなりで一人……違う、二人で一人のW!」

律「公式的な妄想の材料は十分! しかも特撮、つまり三次元だからイメージもしやすい!」

律「腐女子入門としては最適と言えるぞ」

唯(ダメだこのりっちゃん……誰も得しない……)

紬「ちなみにりっちゃんはやっぱり主役の二人が良いのかしら?」

律「あぁそれも良い。梓の趣味を入れるならドライバー×ファングなんか最高だ」

律「荒々しいファングに蹂躙されるショタドライバー……そもそも普段から二本差しだしな」

律「だが頂点は……」

律「テラー×ナスカ!!」


律「くくく霧彦君、ガイアメモリの売り上げが下がっているじゃないか」

律「すいません、また仮面ライダーが邪魔を」

律「こっちの売上高は上がっているというのに……」

律「あ、ああ! おとうさん、私には冴子が……!」

律「さぁ、ワシのコネクターで自慢の息子をマキシマムドライブさせなさい」


律「わかったか!?」

唯(退部届ってどこにしまったかなぁ)


律「唯がWの魅力を理解したところで……」

唯「してないからね、いやWは面白いけど」

律「いよいよ私の本命、行くぞ!」

唯「まだあるの!?」

律「特撮は深い……時代を先取りした作品がいくつもある、グリッドマンとかな」

紬(分かる人いるのかしら)

律「中でも最高傑作と呼べるのが、ウルトラマンガイアだ!」

唯「そうなんだ」

律「我夢と藤宮は最高やで……」

律「最初は反発しあっていたが、やがて和解し、共に闘う仲間に」

唯「それだけ聞いたら普通に良い話なんだけど」

律「変にベタベタしないとこがまた良いんだ」

律「アルケミースターズ時代はどうだったとか考えるだけでご飯三杯はいける」

律「梶尾リーダーやコマンダーと我夢の関係も見逃すな!」キリッ!


2
最終更新:2010年01月14日 00:48