所変わってお城。
梓「ふぅ、やっと終わった」
澪「お疲れ様です梓国王」
和「5万人中反ペロリストは15人でしたね。日に日に増えていってるのが気になります」
梓「……」
和「国王?」
梓「ん? ああ……そうだな」
澪「どうかされましたか?」
梓「な、何でもないぞ!」
和「さてはあのペロリストが気がかりになっておられるのですね?」
梓「なっ」カァァ
和「図星ですか。全く、国王はわかりやすいですね」
澪「私は認めてないからな! あんな者が梓国王を……!」
紬「かの者達の処置終わりました。
あら? また随分と賑やかね。何のお話かしら?」
和「お疲れ様。今日梓国王をイかせ(ry」
梓「こらあーーー!」
和「ふふ、冗談ですよ。あの唯とか言うペロリストの話よ」
紬「ああ……あの子ね。可愛かったわね~」
澪「ふんっ、梓国王の何万分の1だがな」
和「で、王宮に呼ぶのですか? 国王」
梓「え゛?! なんでわかったの!?」
和「バレバレですよ」
梓「むむむ……、さすが賢者の和と言われるだけのことはある」
和「国王がわかりやすすぎなだけですよ」
澪「私は反対です!!! あんなものを入れては王宮、敷いてはこのあずにゃん王国の汚点となりましょう!」
梓「でも……」
澪「梓国王の専属ペロリストは私達だけで十分でございませんか!?
それとも私達に至らぬことがありますか!?」
梓「あの……その……」
和「ほら、澪。国王が怖がってるじゃない」
澪「あっ……失礼しました」
紬「よしよし」
梓「……ん」
和「この国を収めるためとは言えあまりにも荷が重すぎるわよね……」
梓「わ、私は……大丈夫だ」
澪「梓国王……」
梓「三人の時は呼び捨てでいいです。澪先輩」
澪「……もう先輩じゃないだろ、梓」
和「そうね……私達にはもう帰る場所もない。ここしか……ね」
紬「……」
梓「……暗い話はやめにしましょう。せっかく平和が戻って来たんです。少しでもそれを長引かせられるよう努力しましょう」
澪「ああ……そうだな」
和「例え恨まれることになろうとも……ね」
紬「ええ」
すると三人は同時に片膝をつき、目を閉じる。
澪「我らペロの三騎士。どこまでも貴方と共に」
紬「我らペロの三騎士。どこまでも貴方と共に」
和「我らペロの三騎士。どこまでも貴方と共に」
梓「ならばあずにゃん王国、国王として命じる。唯をこの王宮に迎え入れろ」
澪「ははっ」
紬「ははっ」
和「ははっ」
唯の家
唯「ただいま~遅くなってごめんね~憂」
憂「おペ姉ロちぺゃんロ」
唯「これ! 今日友達になった子が作ってくれたんだぁ。食べさせてあげるね」
憂「わぺぁ楽ろしぺみろ」
唯「はい憂。あ~ん」
憂「ペロあーんペロ」
舌が下に下がった瞬間を狙ってデコカレーを咀嚼させる。
憂「ゴホッゴホッ」
唯「憂っ!? 大丈夫!?」
憂は何故かカレーを吐き出してしまう。
憂「ごペめロんねペお姉ロちゃん……ペロペロ」
違う、噛めないのだ。
ずっとペロペロしているが故に。
これがペロペロ病。
常に舌をペロペロしていることからついた病名だ。
治す手段は未だに見つからず、一度かかれば後は疲れはて、舌が動かなくなったのが最後……舌は壊死し、口の内部から腐って行く。
そして最終的に待っているものは……死だ。
唯「憂……前は少しはペロペロするの我慢出来たのに……」
憂「……ペロんねペロちゃん」
侵攻状況により具合は異なるが酷くなれば憂のようにご飯さえ食べられなくなる。
舌と体が別物になってしまうのだ。
それが嫌になって自らの舌を噛みきり、自殺するものも珍しくはない。
唯「……食べさせてあげるね」
憂「無理ペロ……お姉ペロ」
唯「大丈夫だよ、憂」
そういうと唯はデコカレーを自分の口に含み、噛む。
憂「ペロペロ?」
唯「ほら、口開けて」
憂「ペロペ……ん」
唯はそのまま憂に口移しでデコカレーを流し込む。
喉に詰まらせないように唯の舌が憂の舌を絡み付けるように抑え込む。
憂「んん……ん」ヌチャ
唯「そのままごっくんして」ヌチャリ
憂「……」ゴクリ
唯「良くできました」よしよし
憂「……ペロペロ」ニコ
唯「さあもう一口どうぞ」
そしてまた一連の行動を繰り返す。
お皿の上のデコカレーが全てなくなる頃には1時間が経過していた。
唯「美味しかった?」
憂「」コクコク
ペロペロしているのを見られたくないのか口を閉じてただニコニコ頷く憂。
しかし頬の動きから内部では高速でペロペロしていることが容易に伺える。
唯「……じゃあ歯を磨いて寝よっか!」
憂「うん」
口を開けたまま、喉の動きだけで短い言葉を返した。
唯「ごっしごっし」
憂「……」
汚れを落とす葉っぱを木に巻き付け、それで歯を擦る。
それがこの時代の歯の磨き方だった。
憂「……」
憂の手が止まる。
唯「どうしたの? 憂」
優しく聞き返す唯、しかし憂が言い出す前にそれを察した。
唯「ふふ、お姉ちゃんに任せなさい!」フンスッ!
憂「」ニコリ
この棒だと前歯は綺麗に出来ても奥歯はどうしても舌が邪魔をして上手く磨けないのだ。
唯はそれを瞬時に察していた。
唯「ごっしごっし♪」
憂「ペロペロ♪」
唯「じゃあおやすみ、憂」
憂「おペやロすペみロ、お姉ちゃん」
そういうと憂は何かを口に嵌める。
それは木の棒の先端を歯形に合わせて掘っており、そこに歯を乗せる。
半開きとなった口の中ではペロペロと絶え間なく舌が動いていた。
寝ている最中も当然ペロペロしてしまうこのペロペロ病、故にもし寝ている間にうっかり舌を歯で挟んでしまったら大変だから、と唯が憂の為に作った歯止めだった。
唯「くぅ……くぅ……」
窓から薄明かりが二人の葉っぱのベッドを照らす。
憂「……ッ……ッ……ンッ……」
そこで唯に背を向け、憂は小さく体を震わせながら泣いていた。
唯「憂……?」
憂「!?」
唯「どうしたの?」
寝返る形で振り向いた唯はそのまま憂の背中のすぐ傍まで来た。
憂「ヒック……ック……」
唯「泣いてるの……? 憂」
憂「……」
憂はゆっくりと歯止めを外し、唯に向き直る。
憂「こんな妹でごめんね」
舌を噛みそうになりながらも、涙を流しながらも、はっきりとそう告げた。
唯「憂……」
憂「お姉ちゃん……!」
そのまま姉の胸に抱きつく。
それをゆっくりとなでながら、「そんなことないよ……憂は大切な妹だよ」と囁いた。
唯「絶対に治してあげるからね……どんなことをしたって……必ず」
翌朝
澪「話によると……ここか……」
そこは唯と憂の家と書かれた立て札があるだけで、見た目は張りぼて同然の家だった。
澪「すまない、誰かいるか?」コンコン
憂「」そぉ~チラッ
澪「ああ、妹さんかな? 私はあずにゃん王国の三騎士、剣者の澪だ。突然の訪問すまない」
憂「」フルフル
澪「唯はいるか?」
憂「」コクコク タッタッタッ
澪「喋れないのかな……」
しばし待つこと10分。
唯「ふぁ~い」
澪「遅いっ!!! 貴様この私を10分も待たせるとは!!! 梓国王の命でなければ斬り捨てているところだっ!」
唯「ふぉ? なんのごようですかー?」
澪「うむむむ……! まあいい。梓国王がお呼びだ。一緒に王宮まで来てもらおう」
唯「へ? なんで?」
澪「ぐぬぬぬぬ……! 梓国王がお呼びだとさっき言ったろう!!! 早く支度をしろ!」
唯「ふぁ~い」トタトタトタ
澪「一つ一つの行動がなんて遅いやつなんだ……! 見ててイライラする!
梓国王はなんでこんなやつを専属ペロリスト何かに……」
憂「」そぉ~チョコン
澪「ん? なんだ? くれるのか?」
憂「」コクコク
澪「ふむ、国民からの差し入れとあっては断るわけにはいかないな。どれ、頂くとしよう」
澪「」モグモグ
澪「……これは……憂草のお団子か?」
憂「」コクコク
澪「優しい味だな。苦味もない。よく調理出来ている」
憂「」ニコニコ
唯「よしっ! 準備完璧っ! さあ行きましょう!」フンスッ!
澪「更に用意に1時間……だと」カタカタカタ
澪「お、落ち着け……梓国王の命令だ……抜くわけには」カタカタカタ
唯「それじゃ行ってくるね、憂。ちゃんと留守番してるんだよ」
憂「」コクコク ニコニコ
澪「憂?」
唯「さあ行きましょう! え~とぉ」
澪「澪でいい」
唯「じゃあ行こっか! 澪ちゃん」
澪「ちゃん……ま、まあいい」ワナワナ
憂「行っペてらロっしゃペいロ」フリフリ
唯「いってきま~す」フリフリ
澪「あれは……」
澪「……妹さん、ペロペロ病なのか」
唯「えっ、なんでそれを……」
澪「あずにゃん王国を舐めるな。医療も最先端だ」
唯「それじゃ……!」
澪「それでも……ペロペロ病の原因も治療法もわかっていないのが現状だがな」
唯「そう……なんだ」
澪「心配するな。うちの医師、紬は天才だからな。ペロペロ病が治るのも時間の問題だ」
唯「ほんとに!?」
澪「ああ。妹さんの病気が治ると、この剣に誓って約束しよう」
唯「わぁ~っ!」
唯「ありがとう澪ちゃんっ!」ぎゅっ
澪「お、おいっ! やめろっ! くっつくなっ!」
唯「そういえば何で私はあずにゃん国王に呼ばれたの?」
澪「お前……なんか昨日と雰囲気違うな」
唯「昨日は憂にちゃんとしていきなさいって怒られちゃってー」テヘ
澪「……まあいい。何で呼ばれたかは梓国王に直接聞くといい」
唯「……はっ! まさか私昨日のことでやっぱり舌をチョンパされちゃうんじゃ……!」アワアワ
澪「それはないから安心しろ。寧ろお前にとってはいい話だ。とてもな」
唯「いい話……?」
澪「いいからちゃんとついてこい。この辺りはデコ族がいるからな。いくらまとめているとは言え何してくるかわからん連中だ。
離れるなよ」
唯「……はーい」
唯「とうちゃ~く」
澪「ふぅ、全く。歩くのが遅い! 私だけなら半分の時間でつけた」
唯「ごめんなさい……」
澪「まあいい。一応は客人だからな」
唯「うわぁ~綺麗だね~」
澪「ああ。ここがこの世界の中心、黄金都市あずにゃん王国だ。もっとも黄金なのは前王の趣味らしいがな」
唯「あ~いい匂いがする~」フラフラ
澪「あ! おいっ! どこへ行くっ!」
~黄金と平和に染められし都市~あずにゃん王国
屋台の親父「へいらっしゃいっ!」
唯「うへ~美味しそう~」
屋台の親父「1つ2ペロになるよ」
唯「2ペロ? なにそれ」
澪「通貨だ。全くそんなことも知らないんだな、田舎者は」
唯「通貨?」
澪「お金だよお金。ここあずにゃん王国ではペロという通貨で物のやりとりをしてるんだ」
唯「ほへ~何か凄いね~」
澪「うちの執務官が考えた制度でな? これが綺麗に決まってだな……コホンッ! そんなことはいい。寄り道せずにさっさと王宮に行くぞ」
屋台の親父「あ、あなた様は澪様! このペロまんじゅうを是非食べてください! ささ、お連れの方もどうぞ」
澪「民の差し入れとあれば……」
唯「わーい!」モグモグ
澪「やれやれ……」モグモグ
唯「ん~おいし~」モグモグ
澪「全く……貴様はここに何しに来たんだ」
唯「唯でいいよ~」
澪「お前の名前など覚える必要はない」
唯「ひど~い」
澪「ふんっ」
あずにゃん王国の民「澪様! お帰りなさいませ!」
澪「ああ、ただいま」
あずにゃん王国の民「澪様! うちの生まれたばかりの赤ん坊です! 抱いてやってください」
澪「可愛いな。梓国王みたいないい子に育てよ」
赤ん坊「おぎゃあおぎゃあ」ギュッギュッ
あずにゃん王国の民「こら! 澪様の髪を引っ張るなんていけませんよ!」
澪「構わないさ。気に入ってもらって何よりだよ」
あずにゃん王国の民「まあまあすみません」
剣者澪の兵「お帰りなさいませ! 澪隊長!」
澪「見張りご苦労。変わったことは?」
剣者澪の兵「異常なしであります!」
澪「よろしい。午後からは稽古だ。しっかり食べておけよ」
剣者澪の兵「はっ!」
きらびやかな門を潜ると二人は王宮に足を踏み入れた。
下には赤の絨毯が無限と敷かれており、上にはシャンデリア、側面にはエメラルドやダイヤモンドが散りばめられた壁が宮殿を覆い尽くす。
最終更新:2011年05月09日 03:02