[医務室]

イビル唯「ぐぅ~…ぐぅ~」zzz…zzz

さわ子マガツチ「唯ちゃん…」ポロ…ポロ…

~~~~~~~~~~~
ひゅおおおおおお
さわ子マガツチ「ん?遠くに数人の人間たちが見える…始末しておくか」

ひゅおおおおおおお!!


ザアアアアア(雨)

ハンター「む、なんだこのモンスターは!?」

ハンター2「おそらくイビルジョーの幼体だろう。個体数が非常に少ないから俺も資料でしか見たことないが」

幼イビル「くるるる!きゃん!!きゃん!」

ハンター3「はん!こいついっちょまえに威嚇してやがるぜ!オラァ!」蹴飛ばし!

幼イビル「っぐ!」

ハンター「てめえみたいなチビ武器を使うまでもねぇ!」どかっ!どかっ!

幼イビル「ぐっ…きゅう…!!」

ハンター4「待て!そいつ様子がおかしい!そこから一歩も動こうとしねえ!まるで何かを守っ」

ハンター2「オらァ!」ハンマーフルスイング!

幼イビル「ぶっ!」ぴゅ~~ん どかっ!ごろごろ…ピク、ピク

ハンター達「!?」

幼バトリオン「…く~ん」

ハンター「なんだこいつ!?」

ハンター3「あのチビ、腹の下にこいつを隠してやがったのか!」

ハンター4「おい、2、このモンスター分かるか?」

ハンター2「分からん。こいつはどんな資料にも載ってない…クシャルダオラにも見えなくもないが…」触り

ハンター2「痛っ!」

ハンター4「どうした」

ハンター2「見ろ、こいつ全身が鋭い逆鱗に覆われてる…触れるだけで肉が裂けるぞ」

幼バトリオン「…く~ん」

ハンター3「本当だ…こりゃあうかつに触れねえな」

ハンター2「見ろ、あそこでのびてるイビルジョーの幼体の腹を…傷だらけだ」

ハンター「傷だらけになるのもお構いなしにこいつを守ってたってことか…?」

ハンター2「そのようだな…とても信じられないが」

ハンター4「で…こいつらどうする?」

ハンター2「いちおう眠らせてジジイどもに持って行こう。新種の古龍かもしれん」

ザアアアアアア!!!!

ハンター「雨が強くなってきた…早く戻」

ドガガっ!!!ドガガっ!!!!(グランドクロス)

ハンター達(・・・・・・・)即死

さわ子マガツチ「ふぅ。ん?」

幼バトリオン「く~ん…く~ん」ぺろぺろ

幼イビル「う…う~ん」ぱちり

幼バトリオン「く~ん!」ぺろぺろ

幼イビル「う…うい…ごめんね…怪我はない…?」

幼バトリオン「お…ねえ…ちゃん」ポロポロ

ザアアアアアア

さわ子マガツチ「………」

幼イビル&幼バトリオン「!?」びくっ

さわ子マガツチ「イビルジョーと…アルバトリオンの…子供…」

ザアアアアアアア

~~~~~~~~~~
さわ子マガツチ「あの時…自分の体が逆鱗で傷つくのも構わず妹を守ろうとした優しいこの子が…」

イビル唯「くぅ~…くぅ~」zzz…zzz…

さわ子マガツチ「どうしてこんな悲しい運命を…」ポロ…ポロ…


[教室]

イャンクック「…以上じゃ。なにか質問のある者は?」

律レックス「ふっっざけんな!」だん!

ナルガ澪「律!?」

律レックス「あんた昔は[修羅]の異名を持つ最強の飛竜として恐れられてたんだろ!?」
律レックス「なんとかなんねーのかよ!!!」

イャンクック「神が定めた生物の本能じゃ。ワシの力じゃどうにもならん」

律レックス「くそっ!くそっ!!なんで唯なんだ!くそぉっ!!!」ポロ…ポロ…

憂バトリオン「…」(神が定めた…本能………神……)
憂バトリオン「!!」

憂バトリオン「校長先生!!」

イャンクック「なんじゃね?」

憂バトリオン「この世のどこかにいるという、伝説の祖龍なら!!!」

「「「!!!」」」

イャンクック「まあ話によると祖龍はいかなる願いも叶えられるそうじゃが…実在するか分からん伝説中の伝説じゃぞ?」

憂バトリオン「そういう話があるってことは、実在する可能性は0じゃないってことです!」

イャンクック「まぁそうかも知れぬが………お主…まさか」

憂バトリオン「はい!祖龍を探す旅に出ます!今すぐ!」

純オウガ「ちょ、ちょっと憂、本気なの!?」

憂バトリオン「本気だよ!私が…!!私がお姉ちゃんを呪われた運命から救ってみせる!!」がたっ

律レックス「よっしゃあ!私も行くぜ!」

憂バトリオン「いえ、律さんたちは…ここでお姉ちゃんを支えてあげて下さい」

律レックス「なっ」

憂バトリオン「律さんたちもいなくなったら…きっと…お姉ちゃんは……お願いです」

律レックス「わかった。唯は私たちにまかせろ」

憂バトリオン「ありがとうございます!」

イャンクック「…止めても無駄か…」

憂バトリオン「すみません校長先生」

イャンクック「ふむ。美しい姉妹愛じゃ。行ってきなさい」

憂バトリオン「ありがとうございます!お姉ちゃんには…適当に両親を捜す旅に出たとでも言っといてください」

イャンクック「ふむ。承知した」

憂バトリオン「それでは行ってきます!」ダダダだ!


[医務室]

憂バトリオン「~~~というわけなんです!」

さわ子マガツチ「これまた急ね…気をつけるのよ」

イビル唯「くぅ~…くぅ~」zzz…zzz…

憂バトリオン「お姉ちゃん…絶対助けてあげるからね」ちゅっ

イビル唯「えへ~…」zzz…zzz…

憂バトリオン「それでは先生、お姉ちゃんをお願いします!」だだだだ!

さわ子マガツチ「分かったわ」

ひゅおおおおおお!バサッ、バサッ、バサッ

憂バトリオン「待っててねお姉ちゃん!今度は私が…」

憂バトリオン「お姉ちゃんを救う番だよ!!」

~~~~~~~~~~~~

そして、

[現代]

イャンクック「…こういうことが、半年前にあったんじゃよ」

イビル唯「  」(そんな…) 

イャンクック「そしてこれが、憂くんが旅に出た本当の理由なんじゃよ」

イビル唯「  」(うそだ…)

イャンクック「辛いだろうが、事実として受け止めねばならん」

イビル唯「  」(私が…憂の腕を…)

イャンクック「唯くん…最近、食事中になにか変わったこととかなかったかな?」

イビル唯「!」(食事中…やっぱり…)

イビル唯「最近、ご飯の味がよく分からないんです…いや、というより…食事中は…なんだか意識がぼんやりして…」

イャンクック「ふむ。今朝なにを食べたか思い出せるかな?」

イビル唯「今朝…」(あれ…なに食べたっけ?…あれ?誰と食べたっけ?)

イビル唯「思い出せません」

イャンクック「食事中は意識が半分飛んでるんじゃな…それはつまりな…」

イビル唯「…」

イャンクック「イビルジョーの本能が目を覚ましつつあるんじゃよ」

イビル唯「!」

イャンクック「もう一ヶ月もすれば…君は…」

イビル唯「うそ…いやだ…」

イャンクック「空腹になる度に意識が飛び本能に支配され…」

イビル唯「やだ…やだ…やだ!」

イャンクック「眼に映る生き物を無差別に喰らうようになる。友達だろうと家族だろうとお構いなくな」

イビル唯「そんな!嫌です!助けて!先生!」ポロ…ポロ…

イャンクック「…これが…イビルジョーに生まれた者の運命なんじゃよ」

イビル唯「そんな!なんで!なんで私が!!うあああ!うわああああああん!!!!」

イャンクック「……力になれなくて…すまぬ…」

イビル唯「あああああん!!!うわあああああああああああん!!!!」

イャンクック「………気が済むまで…泣くといい…」

イャンクック(神よ…なにゆえこのような娘にこんな試練を…)

イビル唯「あああああああああああん!!!うわあああああああああああああん!!」

イャンクック「…………」


[深夜]

さわ子マガツチ「…いいの?りっちゃんたちに…お別れを言わなくて」

イビル唯「はい。いいんです。それに…会ったら…決心が…鈍っちゃうから」 

さわ子マガツチ「そう。それじゃ、明日の朝…みんなには私から伝えとくわ」

イビル唯「ありがとう…さ、…さわ…さわ…ちゃん…」グスッ

さわ子マガツチ「唯ちゃん!」ダキッ

イビル唯「ええええ~~~ん!!!さわちゃん!さわちゃああああん!!」

さわ子マガツチ「ごめん…ごめんなさい唯ちゃん!力になれなくて!ごめんなさい!」ポロポロ

イビル唯「うっ、うっ…ひっく、うわあああああああん!!!!」

イャンクック「………」ツー

~~~~~
存分に泣いたあと、唯はさわ子と校長に「憂が帰ってきたら自分は死んだと言ってくれ」と頼み、夜中のうちに深い森の中へと消えた。
自分がいたら、自分の大好きな大切な人達を傷つけてしまう。
自分の大好きな人達を傷つけない為には、自分が消えるしかない。
唯が出した答えは、遠い所へ旅立つことであった。

そしてこのシュレイド城には、唯はもちろんのこと、憂も帰ってくることはなかったのである。

第一部 完




第二部

[ココット村]

村人1「おい聞いたか?最近見慣れねーモンスターが森丘の生態系を荒らしまくってるらしい」

村人2「聞いたぜ。そいつはとにかく貪欲で、この辺のアプトノスが激減したらしいな」

村人3「草食竜だけじゃねえ。リオレウスとリオレイアもそいつに喰われたらしい」

村人1「なにっ」

村人3「古くから森にいすわるオオナズチも喰われちまったんだとよ」

村人1「…バケモンだな」

村人2「まぁしかし…そいつが暴れられるのも今日までだ。なんせ今朝…」

村人3「ああ。この村が生みし最強の竜人族ハンター『ココットの英雄』が出向いたからな」

村人1「だな…しっかし…なんだ?今日のこのどんよりした不気味な曇り空はよ…」

ゴゴゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ

村人1「…荒れるぜ…」


~~時は少し遡る~~

気が付くと私は綺麗な森と丘に来ていた。
こうしてまだ私が私として意識を持ってるってことは、まだ私の中の本能は完全に目覚めていないらしい。
でも…もうほとんど目覚めてるってのは分かる。
だって…
だって、私は、シュレイド城を出てから何を食べたかってことをまったく覚えていないんだもん。
空腹になった瞬間…私のお腹がぐぅ~って鳴った瞬間、私は急な眠気に襲われて意識が飛ぶ。

気が付くと、真夜中になっていたりする。
辺りにはまだ新しい血と肉片が飛び散り、骨や爪、甲殻が散らばってる。
私のお腹が満たされてる。
そして私の身体には新しい傷が増えていて、これがまたヒリヒリ痛むんだ。

空腹にさえならなければ意識が飛ぶことはないのかなって思って、石や草を手当たり次第に飲み込んだことがある。
でも、すぐに吐き戻しちゃった。 

なんで

なんで、ものを食べるって行為に私はこんなに苦しまなきゃいけないんだろう。

どうして

どうして私はイビルジョーに生まれてきたんだろう

「森の中」

イビル唯「ん…ん」ゴクゴク

イビル唯「ぷはーっ!ここの泉の水は美味しいなぁ」

「へぇ~、あんた、見ない顔だね」

イビル唯「ん?」くるっ

・・・・・・・・・シーン

イビル唯「あれ?後ろから声がしたと思ったんだけど…」

・・・・・・・・・・シーン

イビル唯「…空耳かな」くるっ

「ここだよ、ここ」

イビル唯「ん!?」クルッ!

・・・・・・・・・・シーン

イビル唯「だれ…?どこにいるの…?」

「眼の前にいるじゃん」

イビル唯「え!?どこ!?」

「だから眼の前だっつの」

イビル唯「だから誰もいないってば!」

「ぷっ…あははははは!」すう~

イビル唯「あっ!」

クリスティーナズチ「あはは。ごめんごめん。ちょっとからかっちゃった」

イビル唯「すごい!透明になれるの!?」

クリスティーナズチ「まぁね。あんた、どこから来たの?」

イビル唯「えっと…」

クリスティーナ「ああ、アタシはオオナズチのクリスティーナだ。クリスとでも呼んでちょうだい」


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最終更新:2011年05月15日 22:42