【フリーダム】


唯「っていう夢を見たんだよ!!」

梓「私はそれを聞かされてどうすればいいんですか……」

唯「ぶぅー、あずにゃんの夢を見たから報告しただけなのにー」

梓「いや、なんというか……で、なんでしたっけ、その夢?」

唯「もう、あずにゃん聞いてなかったの?」

梓「いやー、また唯先輩の突拍子もない話かと思って集中してませんでした」

唯「ひどいっ!! しかも「また」って言った! あずにゃんはいつもそんな風に私の話を聞いてたんだね……」

梓「それは言葉の綾というか……」

唯「思ってたんだね」グイッ

梓「うっ……」

唯「お・も・っ・て・た・ん・だ・ね?」

梓「……ほんの少し」

唯「あー、あずにゃん認めたー!ひどいっ」ヨヨヨ

梓「もうそんなバレバレの泣きまねにはひっかかりませんよ」

唯「……私のあずにゃんの性格が歪んでしまった……先輩として悲しいよあずにゃん」

梓「あぁっともう、そんなところで泣き崩れるマネしないでくださいよ。制服汚れますってば」

唯「あずにゃんはそんな私に手さえ差し伸べてくれないんだね……」じっー

梓「……ほらっ、立ち上がってくださいよ」スッ

唯「あずにゃーん!」ガバッ

梓「ああもう、なんで手を差し出したのに抱きつくんですかー」

唯「ふふ、やっぱりこの感触は私のあずにゃんだよ!!」

梓「唯先輩の所有物になったつもりはないですけど、満足そうならよかったです」

唯「あずにゃん……なんか手馴れたね……」

梓「そりゃぁ、抱きつかれるのにももう慣れますよ……」

唯「ってあれ?なんの話してたっけ?」

梓「唯先輩ってほんとに自由に生きてますね」



【闇の中】


唯「はっ!そうだ。夢の話だった!!あまりのあずにゃんの抱き心地に忘れちゃうところだったよ」

梓「今の反応でわかりましたけど、忘れるってことは唯先輩自身でどうでもいいと思ってる話題ですよね」

唯「違うよあずにゃん、私は夢の話しよりあずにゃんとの触れ合いを優先しただけで、夢の話も重要だよっ!」

梓「……まぁいいです。で、結局その夢ってなんだったんですか?」

唯「えっとそのね、さっき授業中に見た夢なんだけどね……あずにゃんがね……」

梓「私ですか?」

唯「そうあずにゃんがでてきて………」

梓「?」


梓「どうしたんですか?」

唯「忘れた……」

梓「はい?」

唯「あずにゃんと話してたら夢の詳しい内容をわすれちゃったよ!」

梓「……」

唯「うーん、楽しい夢だったような気もするんだけど……あっれー?」

梓「……」

唯「あずにゃん? もしかして気になるー?」ニヤニヤ

梓「なっ!? べつに気になってなんかいません」

唯「ふふ、かわいいやつじゃー。よしよし」ダキッ

梓「あー、もうやめてくださいって」



【連鎖】


――夜・梓の自室

梓「……とは言ったものの気になるなー」

梓「はっ!これじゃぁ唯先輩の思惑にはまった気がする……」

梓「……もう忘れて寝てしまおう……うんそうしよう」ヨイショ

――5分後

梓「……」ゴロン

――10分後

梓「……」ゴロ

――30分後

梓「……」ゴロッ

梓「あああ、寝れないよー!」

梓「唯先輩に明日文句いってやろう……まったくほんと唯先輩は……」ブツブツ

――1時間後

梓「ていうか、いつも唯先輩はそうなんだよ……練習しないし……」ブツブツ

――2時間後

梓「すぅーすぅー」


――朝

梓「……うーん……はっ」ガバッ

梓「……唯先輩の夢を見た」

梓「………」

梓「寝る前に唯先輩のことばっかりぼやいてたせいかな?」

梓「まさかこれも唯先輩の狙い!?」

梓「……なんか悔しいから唯先輩には絶対にこの話しはしないことにしよう」



【印象】


律「こんな夢を見た……ねぇ……」

澪「おっ、律が文学の話しなんて珍しいな」

律「へ?」

澪「え?」

律「え? いやなんで文学?」

澪「えっ、だって今“こんな夢を見たって”……」

律「あぁ、それか。いや唯と梓がそんな話しをしてたなぁって」

澪「なんだ、そういうことか。いやぁ律が純文学読むなんておかしいと思ったら……」

律「どういう意味だっ! 私だって本くらい読むわいっ!!」



【屈辱と逃亡】


梓「本くらいと言っておいて、さっきの反応で律先輩がこの話しを読んでないのはわかったわけで……」

律「うっ……」

澪「まぁ読んでたら、「なんで文学?」なんて言わないよな」

律「うう……」

紬「大丈夫、りっちゃんのいいところは他にいっぱいあるわ」

律「ムギ……!」

澪「でも「いいところは他にある」って、完全に問題から目を逸らしたよな」

梓「ですね」

紬「あはは……」

律「お前らっー!!」

唯「りっちゃん、正直に話すなら今だよ」ポン

律「唯に諭されるのはなんか屈辱だな……」

唯「!?」ガーン

律「ええい、いいんだよー! 本なんか読まなくたって生きていける!」

唯「おおっ、りっちゃんが開き直った!」

澪「いや、唯。あれはどっちかというとヤケになったといったほうが」

律「………ちくしょおおー」ダッ

梓「あ、逃げましたね」

唯「おお、りっちゃん足はやーい」



【たどりついた場所】


――生徒会室

律「のどか~!!」ガラガラ

和「えっ、律? え、どうしたの急に」

律「のどかー、軽音部で部長いじめが発生している。なんとかしてくれ」

和「……」

律「なんだその目は」

和「いや、いつものじゃれ合いかと思って」

律「なにをっー! こっちは真剣なんだぞ。生徒会長だろ、なんとかしてくれ」

和「はいはい、わかったからとりあえずそこに座ったら?」

律「むっ、なんか適当になってないか」

和「はいはい、それでどうしたの?」

律「いやぁ、さっきのことだけど、私が「こんな夢をみた」って呟いたら……」

和「あらっ? 律が文学なんて意外ね」

律「………」

和「?」

律「和なんて嫌いだああああ」ダッ

和「ちょ、律!?」



【仲間探し】


――廊下

澪「ったく、律はどこいったんだ……」

唯「あっ」

紬「あっ」

梓「え?二人ともどうしたんですか」

紬「りっちゃん、いたわ♪ ほらあれ」

澪「あれは生徒会室か……」

唯「でもまたどこかに走っていったよ? あ、おーい和ちゃーん」

和「唯?……って軽音部でぞろぞろとどうしたの?」

唯「りっちゃんのお迎えなのです!」エヘン

和「ああ、それなら律のこと任せていいかしら? なぜか急に大嫌いだー とか言って走ってどこかにいっちゃって……」

澪「和……ごめんな。また律が迷惑かけたみたいで」

和「え、ええ。それにしてもどうしたのかしら、文学なんて意外ねって言ったことが気に触ったのかしら」

澪「いや、そうじゃなくて……」

和「?」

澪「多分、自分と同じ仲間探しでもしてるんだと思う」

和「……? まぁ、よくわからないけど後はよろしくね。私まだ生徒会の仕事が残ってるのよ。」

唯「またねー、和ちゃん」バイバイ


【比較的自由な人達】

………
……

澪「……とりあえず部室に帰るか」

唯「えぇっー!? 澪ちゃん薄情だよ~」

澪「いや、だってどこにいったか分かんないし。どうせ飽きたら戻ってくるだろ」

梓「とりあえず唯先輩は練習しないといけませんしね」

唯「えっ?……やっぱり私はりっちゃんが心配だから探しにry」

梓「そういえば唯先輩、まだ部室にケーキ食べかけできましたよね」

唯「!!」

澪「そういや紅茶も飲んでる途中だったな」

唯「あずにゃん、澪ちゃん!!はやく部室に戻るよ!!」ダッ

梓「……こんなときだけ唯先輩は……」

澪「ま、とりあえず帰るか。な、ムギ……ってムギもいない!?」

梓「ムギ先輩はさっき楽しそうに律先輩の走っていったほうに走っていきましたよ」

澪「……あー、まぁじゃぁ、律はムギに任せる方向で」

梓「……そうですね」

澪「ていうか、同類探ししてるのに和のところに行くのが間違いだよなあ。和とか絶対本読んでそうだし」

梓「たぶん、とりあえず知り合いのところに行こうって考えたんじゃないでしょうか」

澪「……戻るか」

梓「……はい」


【分かる人、分からない人】


憂「それじゃ、純ちゃん帰ろっか」

純「いやー、悪いねー。掃除終わるまで待たせるどころか手伝ってもらっちゃって……ってなんか聞こえない?」

憂「え?」

「―――ういちゃーん」タッタッタッタ

憂「ほんとだ……でも聞いたことある声のような」

純「って憂、後ろー後ろ」

憂「え?」

律「ゼェゼェ……」

憂「律さん……?」

律「憂ちゃんは……」

憂「?」

律「憂ちゃんは「こんな夢を見た」なんていう本知らないよね?」

憂「へ? ……えっと夏目漱石ですか?」

律「……!!………そんな……年下の女の子にまで……」ガーン

純「え?律先輩なんの話しですか?」

律「純ちゃん! そうだ純ちゃんは「こんな夢を見た」なんて本知らないよな?」

純「……? 夢占いかなにかですか?」

律「純ちゃん……!! 結婚しよう」ダキッ

純「えええええー、ってちょ、ええ? なにどういうこと? え、どうなってるの?」

憂「あははは……」

純「いや、ホントどうなってるの!? 
  ていうか、あそこの廊下の柱のかげからムギ先輩が幸せそうな顔でこっち見てるんだけど……」

憂「えっと純ちゃん、私やっぱり先に帰るね」

純「えっ、ちょ、憂ー、うーいー……」


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最終更新:2011年05月18日 22:53