こんにちは、平沢憂です。
今日はお友達の中野梓ちゃんのことをお話します。
梓ちゃんはとってもかわいくていい子なのですが、最近は思春期真っ盛りで、ちょっと困惑しちゃうことがあります。
あれは、6月の終わりごろのことでした。

―――

憂「やっぱユリかなぁ?」

純「ええ?バラの方がよくない?」

梓「おはよう憂、純」

憂「おはよう梓ちゃん」

純「おはよう梓」

梓「二人で何話してたの?」

憂「お姉ちゃんがね、今度の紬さんのお誕生日にユリとバラ、どっちあげようか悩んでて」

憂「それでどっちがいいと思うか、純ちゃんに聞いてみてたの」

梓「それなら断然百合でしょ」

純「えぇ?バラの方がよくない?」

梓「いいわけないじゃん」

純「なんでさ、お嬢様とバラ、すっごく似合ってるじゃん」

梓「似合ってるって……ムギ先輩は腐女子じゃないんだからね!」

憂(婦女子って……お嬢様だからそんな古風な言い方するのかな?)

純「そう?すっごく似合うと思うんだけどなぁ……」

梓「だいたいムギ先輩は百合が大好きなんだよ」

憂「そうなの?」

梓「そうだよ、女の子同士が好きなんであって、同性同士が好きなわけじゃないんだから」

憂純「???」

梓「そこら辺の腐女子みたいに男同士が好きなんて、気持ち悪い趣味ないんだから」

純「……梓、あんた何言ってんの?」

憂「あの……花束の話なんだけど……」

梓「え、え~~~!!!」


―――

最初はこの程度だったんですが、夏休みに入ると、さらに梓ちゃんの暴走は酷くなっていってしまったようです。


―――

梓「海外旅行かぁ」

梓「あ、和先輩」

和「え?あら、梓ちゃん」

和「どこか旅行行くの?」

梓「軽音部のみんなで卒業旅行って話が出てて」

和「へぇ、私も生徒会の皆と行く予定してるの」

梓「わぁ、同じですね」

和「私はもう一度京都へ行きたいなって思ってるんだけどね」

和「行きたかったのに、行けなかった所がずいぶんあるし」

梓「そうなんですか」

和「軽音部はどこ行くの?」

梓「皆さん、海外がいいって」

和「いいわね!」

和「モヘンジョダロとか、アンコールワットとか、マチュピチュとか」

和「行ってみたいなぁ」

梓「マツピチュ?」

和「マチュピチュ」

梓「マチュピツ」

和「あぁ……」

和「なれないと言い辛いよね」

和「ペルーにアル文化遺産よ」

梓「そうなんですか」

和「もしマチュピチュに行くなら、せっかくだから、クスコなんかも見てきたいわね」

梓「クスコ、お好きなんですか!?」
和「え、えぇ、好きかと聞かれればそうね」

和(なんか変ね)

梓「あ、あの、それなら私のコレクション、お見せしましょうか?」

和「え?……ああ、写真ね」

梓「いいえ、実物です。日本産ですけど……」

和「???…」

和(会話が噛み合っていないような?)

和(とりあえずスルーね)

和「私、インカに興味があって」

梓「私もです!」

梓(まさか和先輩が淫行に興味があるとは)

梓(まあ、こういう真面目そうな人こそ、エッチだったりするのは定番だけどね)

和「あらそうなの?」

梓「はい!」

和「私は特に最近はマンコカパック関連のこととか調べてるの」

梓「なんと!!!」

梓(クスコでまんこクパァ!!!)

梓(こんなところでカミングアウトだなんて……大胆な人だったんだなぁ)

梓「わ、私嬉しいです……こんなところに共通の趣味の人がいたなんて」

和「そ、そう……私も嬉しいわ、なかなかこんなものに興味を持つ女の子、少ないもんね」

和(なんかやけにテンション高いわね……)

梓「ほんと、そうですよね!!!」

和「あ、あははは、とりあえず、鼻血大丈夫?はい、ティッシュ」

梓「ありがとうございます」

梓(なんか気使われた……)

梓「和先輩!よろしければ、そのお話、もっと聞かせてください!!」

和「そうね、でもこれから用事あるから、また今度ね」

梓「はい……残念ですけど、用事があるなら仕方ありませんね」

和「あ、そうそう、今、それ関連の本持ってるから貸してあげるわ」

梓「本当ですか?」

和「はい、これ」

梓(わわわわわっ!こんなところでそんな本をむき出しで!!!)

梓(急いでしまわないと)

梓「あ、ありがとうございます!」

和「じゃぁ、またね」

―――

梓「ふぅ……」

梓「急いで帰ってきたら疲れちゃったよ」

梓「でも疲れてなんかいられない」

梓「ふふ、ふふふふふ」

梓「それでは、お待ちかねの、和先輩に借りた本……ハァハァ」ガサゴソ

梓「それにしてもペルーがクスコの産地とは知らなかったなぁ」

梓「うん????」

『マチュピチュ (写真で分かる謎への旅)』
『マヤ・インカ文明の謎』

梓「…………」

梓「…………」

梓「…………」

梓「うわぁーん、騙されたぁー!!!」

―――

梓「はぁ……昨日は肩透かし食らっちゃった……「

梓「期待が大きかった分落胆も大きくて……「

梓「でもそんなことばっかり言っててもしょうがないよね」

梓「さて、気持ち切り替えて部活部活!「

梓「うん?もう誰か来てるのかな?」

梓「この声は澪先輩と律先輩?」


澪『野外?』

律『この時期とかさ、夕方涼しくなってからの野外って良さそうじゃないか』

澪『そうだな、開放感もあるし、気持ち良さそうだ』

梓(なんと!?澪先輩にそんな趣味が)

律『なっ、だからやろうぜ、野外』

澪『でも……野外って、知らない人もたくさん見るんだろ……なんか恥ずかしいじゃないか』

梓(違います!違いますよ澪先輩!!それがいいんじゃないですかっ!!!)

律『え~?それがいいんじゃないかよぉ~』

梓(おっ!律先輩は意外と分かってるんですね!!!)

澪『でもなあ』

律『いいじゃんかよ~』

梓(こ、これは……う、うまくいけば野外で澪先輩の痴態が……ハァハァ)

澪『ううん……』

律『なぁ、みーおー』

梓(そうだ!押せ!もっと押せ、田井中ぁぁぁ!!!)

澪『でも……やっぱり恥ずかしい……』

律『そんなこといわずにさぁ、やってみようぜぇ、みーおー』

梓(田ー井中っ!田ー井中ッ!)

澪『うぅ……』

律『みんなも一緒だから大丈夫だろ』

梓(たーいなかっ!たーいな、え!!!?)

梓(みみみみ、みんなって私も!?私も澪先輩や律先輩と野外プレイ!!!ハアハア)

ガチャ

梓「澪先輩!律先輩!」

澪律「!!!」

律「あ、梓か」

澪「びびび、びっくりしたじゃないか」

梓「先輩!私も野外やりたいです!!皆さんと一緒に!!!「

律「おう、乗り気だな」

澪「聞いてたの?」

梓「はい、聞こえちゃいました!」

律「な、澪。梓もこう言ってることだしさぁ」

澪「じ、じゃあ唯とムギがいいなら……」

梓「ありがとうございますっ!澪先輩!!!」ガシッ

澪「う……うん」

律「じゃあ場所だよなあ」

律「駅前のでっかい公園なんかどうだ?」

澪「あ、あんな人が多いところでか?」

律「人が多いところじゃないと意味ないだろ?」

梓(確かに人通りが多いところの方がいいけど)

梓「でも、ムギ先輩は大丈夫ですかね?」

律「え?なんでだ?」

梓「私たちはいいですけど、家の人とか、お父さんの会社の取引先の人とかに見られたらまずいんじゃ?」

澪「それは大丈夫なんじゃない?」

律「軽音部に入ってるのは言ってあるはずだしな」

梓「え?」

澪「いまさら野外ライブぐらいでとやかく言われないだろ?」

梓「や、野外ライブーーー!!!?」

澪「そ、そうだけど……?」

律「なんのことだと思ってたんだ?」

律(こいつまさか)ニヤニヤ

梓「うわぁーん、また騙されたぁー!!!」


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最終更新:2011年05月21日 02:25