憂「梓ちゃん、泣きながら部室戻って来たから……」

純「律先輩が泣かしたんだ!」

澪「最低!」

律「泣かしたのはお前だ!」

澪「そして最低なのも私だ!」

律「ご最もだよ!」

憂「何があったんですか」

澪「知らないでばーかって言ったの?」

純「ごめんなさい」

律「澪が梓を2度もフったんだ」

澪「しかも2回目は告白されてないのにフったんだ!」

律「威張るな」

澪「威張ってない!」

純「澪先輩って梓のこと嫌いなんですか?」

澪「大好きだよ」

憂「うそ……」

律「うん、こればっかりは本当なんだよ」

澪「これが嘘だったら私の行動の全てが辻褄合うのにね」 ヘラヘラ

律「全くだよ!へらへらしやがって」

澪「もう一度梓に会いたい」

澪「会って気持ちを伝えたい!」

律「『嫌い』って?」

澪「そんなわけないだろ馬鹿!」

憂(情緒不安定だなぁ)

純「でも梓帰っちゃいましたよ。部室戻るなり」

憂「菫ちゃんが追いかけて行きましたけど」

純「多分追いかけるふりして帰りました」

律「駄目じゃん」

憂「梓ちゃん、相当ショックなはずですよ」

澪「本当に悪いことしたと思ってるよ」

澪「でもこれで良かったと思ってる私もいる」

律「ほんっと訳分かんないよ澪」

純「どんな形であれ、澪先輩が幸せならそれでいいですけどね」

澪「幸せになりたきゃ麻薬でもやってればいいんだ!」

律「お前こそジャンキーだ」

澪「軽々しく幸せが欲しいなんて言う奴は嫌いなんだよ」

純「ごっごめんなさい?」

律「今の澪には何一つ偉そうなこと言う資格無いからな。そもそも脈絡が無いよこの話」

澪「ああ、梓可愛い」

律「よく可愛い子にあんな酷いこと言えたもんだ」

澪「反省してるってば」

憂「あの、失礼なこと言うようですけど」

澪「何?」

憂「澪さんは梓ちゃんと付き合わない方がいいんじゃないかなって思うんです」

澪「あはははははははははははははは」

澪「もう一度言ってみろ」

憂「梓ちゃんに嫌われたがってる澪さんがいるなら」

憂「もし梓ちゃんと付き合えても、またその内ギクシャクしちゃうんじゃないかなって」

澪「それは、一理あるかも」

憂「梓ちゃんが傷つくようなら付き合わない方がいいかなって…ごめんなさい」

澪「一理あるって言ってるだろ!」

純「難しい話だなぁ」

澪「ごめんね」

律「でも澪、梓を諦められるのか?」

澪「嫌だ。諦められないよ」

律「だよね」

澪「梓が好きだ!死ぬほど好きだ!」

澪「死んでやる!」

律「じゃあみんな、そろそろ帰ろうか」

憂「はい。ありがとうございました」

律「いやいや、何もしてないけどさ」

澪「むしろ練習潰させちゃってごめんね」

憂(たまに普通の澪さんに戻る……)

純(やっぱ軽音部って面白いなぁ)


澪の部屋

律「行かなきゃ良かったな」

澪「そう?私は梓に会えて嬉しかったけど」

律「ポジティヴすぎて引く」

澪「私最近変かな」

律「変ってレベルじゃないよ」

澪「片想いって辛いな」

律「早く両想いになってもらいたいよ。私が疲れる」

澪「あ、でも梓は私の事好きなんだから既に両想いだよ」

律「さあ、今日から大嫌いになったかもな」

澪「いやだよー……」 グスン

律「怒ったり笑ったり泣いたり忙しいな」

澪「その点お前は暇人だな」

律「ぶん殴ってやる」

澪「そう言いつつ決して私を殴らないのが律の良いところだよ」

律「そんな感じでとっとと梓を口説いて来い」

澪「梓の前だと緊張するんだってば」

律「情けない澪」

澪「情けなくないもん!」

律「めんどくさい澪」

澪「それは認める」

澪「私はこれからどうすればいいんだろう」

律「今からメールで梓に謝れば?」

澪「うん。でも……」

律「怖いの?」

澪「もし無視されたら……」

律「そんな奴じゃないだろ梓は」

澪「状況が状況だし」

律「信じろよ、好きな子だろ」

澪「好きだから信じるっていうのは、何か違うだろ」

律「違わないよ。梓はお前を無視したりしない」

澪「それは信じてるんじゃないよ。ただ都合の良い未来を妄想してるだけだ」

律「めんどくさ」

澪「ごめん」

律「ホントに」

澪「でもメールするよ」

律(結局実行するところが余計めんどくさいんだよな)

澪「なんて送ろうかな……」

律「今日はごめんなさい。また今度ちゃんと話がしたいです」

澪「今度っていつだ!」

律「知るか!お前らで決めろ!」

澪「うふふ…『お前ら』か」

律「そこにカップルという意味合いは全く無いからな」

澪「持ち上げてから落とすなっ」

澪「送ったよ」

律「よくできました」

澪「からかうな」

唯「澪ちゃんやっほー」

澪「あっ」

律「唯」

唯「おー、りっちゃんも居る」

澪「どうしたの?」

唯「憂にね、澪ちゃんを励ましてあげてって言われたんだけど」

律「本当いい子だなぁ憂ちゃん」

澪「うん」

唯「澪ちゃん何かあったの?」

律「色々あるんだよ」

澪「まあいいじゃないかその話は。唯、今夜は遊ぼっか」

唯「いいねー!」

律「おっ?じゃあムギ呼んでくる!」

澪「うん!」

唯「澪ちゃん落ち込んでるのかと思ったら結構元気そうだね」

澪「唯が来てくれて元気になったのかな」

唯「そういう波動が出てるからね、私は」

唯「波動って何?」

澪「自分が言ったんじゃん」

紬「お邪魔しまーす」

律「ムギ連れてきたぜ!」

澪「みんな晩ご飯食べた?」

唯「まだだよー」

紬「私もまだ」

澪「じゃ、何か作るよ」

ヴーン ヴーン

律「澪、メール」

澪「……梓からだ」

律「ほら、やっぱり来たじゃん!早く読めよ」

澪「やだ……」

律「何で?」

澪「怖い」

紬「澪ちゃんどうしたの?」

唯「さあ?」

澪「やだよ、もし会いたくないって内容だったら……」

律「届いちゃったもんはしょうがないだろ」

澪「やだー」

律「澪!」

紬「じゃ、私読んでもいい?」

澪「えっ」

紬「澪ちゃんが読みたくないなら、私がメール読んであげる」

澪「……うん」

紬「じゃ、携帯借りるよ」 ニコッ

紬「『ごめんなさい。もう口も利きたくありません』」

唯「」

律「」

澪「」

紬「うそです」

律「嘘かい!」

唯「本当は何て書いてあるのー?」

紬「はい」

───

ごめんなさい。
もう顔も見たくありません。

───


律「ほぼ一緒じゃん!どっちかって言うとこっちのが酷い!!」


律「澪……」

澪「……」

澪「まあ五分五分ってとこだな」

律「えっ」

澪「梓と付き合いたがってる私は大ショックだけど」

澪「梓に嫌われたがってる私は大勝利だ!」

律「そろそろ考えを固めろ」

唯「澪ちゃんが怖い……」

紬「澪ちゃんと梓ちゃん、何かあったの?」

律「うーん、まあ」

澪「話すよ。別に秘密にすることじゃないよ」

唯「あずにゃんが澪ちゃんに告白して?」

紬「澪ちゃんが断って?」

唯「今日桜高に出向いて?」

紬「追い打ちをかけた?」

澪「そういうことだ」

律「……呆れるよな」

唯「ううん、そんなことないよ。私は澪ちゃん応援するよ」

紬「梓ちゃんだって本当は澪ちゃんと仲直りしたいはずよ」

澪「ありがとう」

澪「呆れてるのはお前だけだ馬鹿律!」

律「私が悪いみたいに言うな!」

律「澪の奴、梓のことになるとちょっとばかし感情がおかしくなるんだ」

澪「だれがキレる10代だ」

唯「恋は盲目って言うもんね」

澪「誰がスティーヴィー・ワンダーだ」

紬「青春してるわね澪ちゃん!」

澪「ははっ青春なんてそんなもんじゃ……」

澪「もんじゃ食べに行かない?」

律「お前自分で何か作ろうとしてたじゃん」

澪「そうだっけ?」

澪「とにかく梓に嫌われちゃったよ……」

紬「大丈夫よ澪ちゃん」

紬「さっきも言ったけど、きっと梓ちゃん寂しがってるわ」

澪「そうかなぁ?」

唯「あずにゃんが本当に澪ちゃんを嫌ったりするわけないよ」

律「そうだぞ澪。簡単に諦めるなよ」

澪「そうだな!梓は私にゾッコンだ!デキアイだ!そうに違いない!」

唯「立ち直り早いね」

律「いや、あれはああやって自分に言い聞かせてるんだよ。ほっといてやろう」

紬「自己暗示……」

律「澪、晩ご飯なら私が作ってやるよ」

澪「いいのか?」

律「おう。何食べたい?」

澪「梓」

律「ばーか」

唯「澪ちゃん、もう一度メールしてみなよ」

澪「えっ?でもなんて……」

紬「さっきは何て送ったの?」

澪「『さっきはごめんなさい。また今度話がしたいです』」

紬「じゃあ、『どうしても話したいことがあるから』とか」

唯「『今日のことは本当に悪いと思ってるよ。素直になれなかったんだ』とかね」

澪「うん!分かった」ポチポチ


澪「あっ」

唯「どうしたの?」

澪「『うん!分かった』って送っちゃった」

唯紬「」


――――

律「適当に作ったよーん」

律「って澪?」

澪「あばばばばばばば」

律「どうしたのこの子」

紬「また自爆しちゃったみたい」

律「駄目だこりゃ」

唯「と、とりあえずご飯食べようよ。いただきまーす」

紬「りっちゃんのご飯美味しいものね!ほら、澪ちゃんも食べよ?」

澪「え~このたび。公営ギャンブルを、どぅのように廃止するか、という問題につきまして」

律「駄目だ、魂が抜けてる」

澪「先頭は予想通りホタルノヒカリ!期待のコウタローは大きく遅れて第10位というところであります!」

澪「各馬一団となって、ミオゴロー、アズサナカノ、ウンタンツムギジュンチャンユイタイナカ、ういうい」

唯「おいしいねりっちゃん!」

律「あはは、まあこのくらい余裕だぜ」

紬「澪ちゃん、食べないの?」

澪「あ……梓……」

紬「私梓ちゃんじゃないわよ」

澪「梓に食べさせてほしい」

紬「えっ」

澪「あーん」

紬「……」

澪「あーん」

紬「…はい」
ぱくっ

澪「美味しい!梓の料理は世界一だ!」

律「作ったのは私だ」

澪「いやいや、梓ならいいお嫁さんになれるよ」

澪「え?澪先輩のお嫁さんになりたいだって?」

唯「重症だね」

紬「恋の病ってレベルじゃないわよ」

律「医者に見せられないからタチが悪いよ」

澪「え?梓、お医者さんごっこがしたいの?」

澪「仕方ないな、しっかり診察してくれよ」

律「もうやだこの幼馴染」

唯「澪ちゃん!帰ってきて!現実に帰ってきて!」 ユサユサ

澪「はっ」

紬「お帰り」

澪「私は何を……」

律「ムギにあーんしてもらって私の料理を褒めて唯に揺さぶられてた」

澪「変な奴だなぁ」

律「本当にね」


3
最終更新:2011年05月22日 02:03