唯「あ~あ、もうムギちゃん家に着いちゃったよぅ」
紬「本当、一緒にいるとあっという間ね」
唯「それじゃ、また明日だね」
紬「ええ。唯ちゃん、送ってくれてありがとう」
唯「えへへ~」
紬「それじゃあね」
唯「あっ、待って!」
紬「なあに?」
ちゅっ
紬「ゆ、唯ちゃん///」
唯「えへへ、送り狼になっちゃった///」
紬「んもうっ///」
そんな2人を、琴吹家の防犯カメラが見ていた……
琴吹家会議室。
ここには琴吹父をはじめ、執事の斎藤と、紬の世話係のメイド2名が集まっていた。
琴吹父「さて、諸君に集まってもらったのは他でもない……」
斎藤「はい、詳細は聞き及んでおります」
メイドA「由々しき事態ですよね、お嬢様に恋人などと」
メイドB「でも恋愛は個人の自由ですし、あまり大袈裟に騒ぐのもどうかと思いますが」
琴吹父「しかしね、相手は女の子なんだよ?」
メイドA「
平沢唯。私がずっと狙っていたお嬢様を横からかっさらうなんて、とんだ泥棒猫ですよ」
琴吹父「ちょっと待て、お前は何言ってんの?」
メイドA「ああ、私ガチレズなんです。そんな私がお嬢様みたいな美少女をどうにかしたいと考えるのは、ごく自然の成り行きじゃないですか」
メイドB「成る程、だからお嬢様の着替えを手伝うとき、先輩は獣のような目つきで眺めてたんですね」
琴吹父「知らなかったよ! 僕は娘の世話を狼にさせてたのかよ!?」
斎藤「う~む。これは配置換えが必要なレベルですな」
メイドA「待ってください。お嬢様が私の手の届かない場所に行ってしまった今、お嬢様のブラチラなしでどうやって生きて行けっていうんですか?」
琴吹父「知らないよ!?」
メイドB「まったく女同士なんて不毛ですよね。女の喜びはチンコやキンタマと戯れることにあるって言うのに」
琴吹父「それもどうかと思うが!?」
メイドB「ちなみに私は中年以上の男性にしか興味がありません」
琴吹父「知らねぇよ! 何で性癖暴露大会になってんの!?」
斎藤「旦那様、落ち着いてください」
琴吹父「あ、ああ、すまない。少し興奮してしまったようだ」
メイドA「斎藤さん、他人事のような顔をされてますけど、Bが狙ってるのはあなたですよ?」
斎藤「なんと!?」
メイドA「斎藤さんの下着がなくなるのはこの子のしわざです」
斎藤「次々襲い来る衝撃の事実! マジでございますか!?」
メイドB「やだ、先輩! バラすなんて酷いですぅ///」ポッ
琴吹父「ぽっ、じゃねぇよ! 犯罪じゃん! そんなもん盗んで何やってんの!?」
メイドB「はァ!? オナニーのおかずにするに決まってますけど!?」
琴吹父「何で逆ギレしてんだよ!?」
斎藤「Bさんには同年代でお似合いな方が大勢いらっしゃると思いますよ?」
メイドB「いえ、私、男の人って50代からが本番だと思うんですよ」
琴吹父「ずいぶん遅い本番だな、おい」
メイドB「そんな年上の男の人の専用肉便器になるのが夢なんです///」
琴吹父「Aのこと色々言ってたけど、君も十分普通じゃないからね?」
斎藤「ふむ……。50代と言えば、旦那様も50代になりましたな」
琴吹父「おい」
斎藤「男性に身も心も服従するのが夢でいらっしゃるなら、旦那様はうってつけの相手かと」
琴吹父「何言ってんの!? 斎藤、僕を売った? ねぇ、今、僕を売った!?」
斎藤「いえいえ、単なる一般論でございます」
メイドB「も、盲点でした……/// 濡れるッ!」
琴吹父「おい~~~~! 何で熱っぽい視線でこっち見んだよ!? 怖ぇよ!」
メイドA「目覚めましたね」
斎藤「やれやれ、ですな」
琴吹父「お前はほっと胸を撫で下ろしてんじゃねぇよ!」
メイドA「確かに旦那様はお嬢様に眉の形が似てらっしゃいますからね」
斎藤「それはありますな」
琴吹父「いや、紬が僕に似てるんだけどね。って言うか、僕の価値は眉毛だけなの?」
メイドB「では早速、旦那様のことを今日からご主人様と……」
琴吹父「呼ばせねぇよ!? お客様とかどうしたのかと思うじゃん!」
メイドB「ですから今日から私をご主人様専用の肉便器に……」
琴吹父「だから嫌だっつの! 大体僕、奥さんいるじゃん! 奥さん愛してるっつーの!」
メイドA「まぁ。金持ちの癖に愛人を欲しがらないとか、意外に一途ですね」
琴吹父「金持ちの癖に、って何だよ。思いっ切り偏見じゃねぇか……」
斎藤「奥様が聞いたら喜ばれるでしょうな」
メイドB「私、別に奥様に成り代わりたいとか思ってませんよ? 穴がひとつ増えたぐらいに考えてくだされば」
琴吹父「だからその考えが怖ぇっつーの」
メイドB「って言うか、ご主人様、ドMの気持ちとか全然判ってなくて超笑えるんですけど」
琴吹父「理解したいとか、これっぽちも思ってませんが何か!?」
メイドB「ちなみに私の夢はリモコンバイブで虐められたり、イラマチオを強要されたり、アナルの開発をされたりすることです」
琴吹父「聞いてねぇし、知りたくもねぇよ!」
斎藤「旦那様、落ち着いてください」
琴吹父「ああ……って、落ち着けるか! そもそもお前が僕にこいつを押し付けたんじゃねぇか!」
メイドA「それより旦那様、私、大変なことに気づいてしまいました」
琴吹父「ん? どうした?」
メイドA「旦那様の言動、たまにリア充丸出しでイラッします」
琴吹父「知らねぇよ!! 何で使用人に駄目出しされてんの、僕!?」
メイドA「そんなことどうでもいいんで、これからは言動に気をつけてくださいね」
琴吹父「何で使用人の機嫌をとって気をつけなきゃなんないの……。この館の主人は僕なのに、何、このアウェー感……」
メイドB「ご主人様! 是非その怒りを私のいやらしい穴の中にぶちまけてください!」
琴吹父「しねぇよ!」
メイドB「でもご主人様、好きな男の人に膜をぶち破られたい乙女心を理解しないなんて、人の上に立つ者としてそれはどうなんでしょう?」
琴吹父「何で乙女心の表現がいちいちおっかねぇんだよ。って言うか、お前未経験なの!?」
メイドB「はぁ。キスどころか男の人と付き合ったこともありません」
斎藤「おやおや、意外に純情なんですな」
琴吹父「どこがだよ!? 何で未経験なのにいきなりヘビーな性癖持ってんの!?」
メイドB「はァ!? じゃあ処女はエッチなこと考えちゃ駄目だ、って言うんですか!?」
琴吹父「だから何でキレるんだよ!? 何ギレだよ、それ!?」
メイドA「でも確かに使った事もない穴をいやらしいだなんて、ちょっと自惚れ過ぎなんじゃないの?」
斎藤「まったく。他人事ながらドン引きですな」
琴吹父「なに涼しげに他人ヅラしてんの!? ついさっきまでガチの当事者だった癖に!」
メイドB「ああ、ご主人様が私の昔の男に嫉妬してるなんて……/// 濡れるッ!」
琴吹父「嫉妬なんかするかっ! 大体斎藤は君の昔の男でもないよね!?」
斎藤「皆さん、お静かに! 話が脱線し過ぎていませんか? 今大切なのは、お嬢様のことではありませんか!」
琴吹父「うるせぇよ! 何でお前が、自分だけがまともです、みたいなツラしてんだよ!?」
メイドB「やばい……ご主人様が激怒されてる……頭がフットーしそうだよおっっ///」
メイドA「お嬢様のことはもういいじゃないですか。どうせもう他の女のものになってしまったんです」
琴吹父「お前ら全員、やばいクスリでもキメてんのか!?」
こうして会議はぐだぐだに終わった。
疲れた様子で廊下を歩く琴吹父に、嬉しそうに近づく琴吹母。
琴吹母「うふふふ。あ・な・た♪」
琴吹父「? ずいぶんご機嫌だね」
琴吹母「うふふふ。実はですねぇ……って、これ言っちゃ駄目なんでした!」
琴吹父「は?」
琴吹母「だってこれを言ったらあなたの機嫌が悪くなりますもの。そうだ! 私は機嫌がよくなかった、と言うことでお願いします!」キリッ
琴吹父「いや、お願いします、とか言われましても……。別に機嫌を悪くしたりしないから、言ってごらん」
琴吹母「ほんとう? あのね、紬ちゃんに好きな人ができたみたいなの///」
琴吹父「……ほぉ」
琴吹母「最近あの子、綺麗になってきたじゃないですかー。あ、もちろん元々綺麗な子でしたけど。さらにさらに! 綺麗になってきたじゃないですかー」
琴吹父「そ、そう」
琴吹母「でね、ピーン、と来ました。女の勘ってやつです。ああ、この子、恋してるんだ、って! ピンと来ちゃいました!」
琴吹父「ふーん」
琴吹母「それでねー、訊いてみたんですよぅ。紬ちゃんに『好きな人はいないの?』って!」
琴吹父「うん」
琴吹母「そしたらあの子、『そんな人いません』なんて言ってるんですけど、もう、慌てちゃって! あたふたしちゃって! お顔も真っ赤にしちゃって! あ~、可愛い!」
琴吹父「そうだったのか」
琴吹母「あの子にあんな表情させるなんて、どんな男の子なんでしょう!? 気になりますよね? 気になるぅ~」
琴吹父(奥さん……相手は女の子なんですよ……)
琴吹母「紬ちゃんも恋をする年頃になったんですね~。んもうっ///」
琴吹父「まぁ、紬ももう高校生なんですから」
琴吹母「…………」ジー
琴吹父「?」
琴吹母「男親はこういう話で機嫌を悪くする、って言うけど、旦那さんはどうですか?」
琴吹父「……そうだね。君はどうなの?」
琴吹母「正直、ちょっと寂しいです。もう私たちだけの紬ちゃんじゃなくなるんだ、って」
琴吹父「うん」
琴吹母「でも恋って素敵じゃないですかー。恋って幸せになれるじゃないですかー。私も旦那さんに出会って幸せになれたから、やっぱり紬ちゃんにも素敵な恋をして幸せになってもらいたいんですよぅ~」
琴吹父「……うん、そうだね」
琴吹母「私、あなたのことを好きになったとき、母に色々と相談したんです。紬ちゃんもいつか、私に相談してきてくれるでしょうか?」
琴吹父「う、うん。それはどうだろう? まぁ、気長に待つことだと思うよ」
琴吹母「そうですよね」ニコニコ
琴吹父(そうか……。あの子は誰にも相談できずにいるんだな……)
琴吹母「でもどうでしょう? 紬ちゃんって、あんなに可愛いんですもの。失恋なんかあり得ないし、相談したいことなんか発生しないかもしれません!」
琴吹父「ふふっ」
琴吹母「ほえ?」
琴吹父「奥さんも、紬に負けないぐらい可愛いですよ」
琴吹母「ほえっ!?/// い、いや、あの、うぇえ!?///」
琴吹父「」ニコニコ
琴吹母「まぁまぁまぁまぁまぁまぁ/// な、何言ってるんですよー。こんなオバちゃんと一緒にしたら、紬ちゃんが可哀相じゃないですかー。んもうっ、何言ってるんですかー///」
琴吹父「ふふふ」
琴吹母「あっ、私、お客様を迎える準備をしてたんでした! そっ、それじゃ失礼します!///」ダダッ
琴吹父「……」
メイドA「リア充は爆裂してください」
琴吹父「うぉおわあ!! いたのかよ!?」
最終更新:2011年05月23日 01:23