ここはサバンナの王国プライドランド。

憂「…」にこっ

王国をまとめるライオンの王、憂。

和「…」にこっ

その妻、和。

純「  」ばさっ、ばさっ…すとっ

憂の側近の鳥、純。

紬「…」すた…すた…

占い師でありながら憂の親友、マントヒヒの紬。

紬「…」すっ

赤ちゃんライオン「…?」

今日、憂と和の間に待望の第一子が生まれた!
そしてその子は、「唯」と名付けられた!

 『ケイオン キング』



洞窟・信代の巣

純「信代さん!」ばさっ、ばさっ、…すとっ

信代「…zzz」

純「のーぶーよーさん!!!」

信代「…んん」ぱちっ

純「…もうお昼ですよ」

信代「ああ、姉貴んとこのうるさい鳥か…なんの用?」

純「どうして今朝の唯さん誕生の儀式に出なかったのです?」

信代「なんで出る必要があんのよ」

純「なんで!?あなたは仮にも憂の妹なんですよ!?」

信代「…で?」

純「本来なら動物たちの最前列に並ばなければいけない身分だということが分からんのですか!」

信代「…はァ~ほんとにうるさい鳥だね」

純「だいたいあなたはいつもいつも」ガミガミ

信代「…朝飯はあんたでいいや」

純「!?」

信代「 」ばくんっ!

純「うわ!ちょっ!出せ!出せぇーーーーー!!!」

「信代っ!!!」

信代「…?」ちらっ

憂「……」ゴゴゴゴゴ

信代「…ああ、姉貴かモゴ」

憂「純ちゃんを放して」

信代「ぺっ」

純「どわっ」べちゃっ

憂「どうして今朝儀式に出なかったの?」

信代「ええ?儀式?なんの?」

憂「とぼけないで!唯が生まれたの知ってるでしょ!」

信代「ああ!唯ちゃん誕生の儀式!今日だったんだ!」

憂「……」

信代「ごめん、明日だと思ってたわ」

純「ふん、よく言いますね、知ってたくせに」

信代「 」がちん!

純「ひっ」

憂「…私の跡は唯は継ぐわ。信代、あなたじゃない」

信代「どうぞご自由に」くるっ

憂「待って!私に背を向けるの!?」

信代「はんっ、あんたこそ私に背を向けない方がいいよ…?」にやり

憂「信代っ!!」だだっ

憂「それは…私への挑戦かしら…」ゴゴゴゴ 

信代「おいおい…落ち着きなよ」

憂「…」

信代「私があんたに勝てるわけないだろ…?早くその物騒な牙と爪をしまってくれ」

憂「…」

信代「私も忙しいんだ。じゃあね、王サマ…」くるっ…すたすた

憂「……」

純「まったく…ほんと困ったやつだね…あいつは」

憂「…どう接すればいいのか分からない」

純「…ほっとこうよ。あんな奴」

憂「………」

信代「…ふん」すたすたすた…


翌日・早朝

唯「わぁ!お日様がちょっと顔出してる!綺麗~!」だだっ

憂「…zzz」

和「…zzz」

唯「ねぇ!憂!和ちゃん!起きて!起きてよ!」

憂「…ん…どうしたの」むにゃ

唯「ねぇ!和ちゃんも起きて!ねぇってば!こんな時に寝ててどうするの!もうっ!」かじかじ

和「んん…もう…どうしたのよ唯…」

唯「お日様が綺麗なんだってば!ほら!」

憂「ん~よっこらしょ」すっく

唯「ほら!ついてきて!」すたすたすた

憂「ふふ」のしのし

唯「綺麗だね!日の出!」

憂「そうだね」にこり

唯「ここから見える景色って、ぜ~んぶ憂のものなんでしょ?」

憂「そう。陽が当たってるところは全部そうだよ」

唯「わぁ~すごい!」

憂「将来は唯のものになるんだよ」

唯「わぁ!ぜ~んぶ私のもの!?」

憂「そうだよ。唯がこの国の王様になるの」

唯「わ~!あの影になってるところは!?」

憂「あそこは私たちの国じゃないの。だから絶対に入っちゃダメだよ」

唯「入ってみたいなぁ」

憂「めっ!絶対ダメだからね」

唯「ちぇ~」

純「憂ーっ!」ばさっばさっ!

憂「純ちゃん、おはよ」

唯「あ、純ちゃんやっほ~」

純「おはようございます唯さん!憂!ハイエナが数匹、国に入り込んだみたいだよ!」

憂「ハイエナが!?」だだっ

唯「えっ、どこいくの」

憂「純ちゃん!唯をお願い!」だだだだ!

純「わかった!」

唯「えっ、憂ーっ!どこ行くのーっ?」

純「さ、唯さん巣に戻りましょう」

プライドロック(ライオンたちの巣)

唯「あーずにゃん!」だきっ

梓「あ、唯先輩おはようございます」

唯「ねぇねぇあの遠くに見える影になってる所になにがあるか知ってる?」

梓「ああ、あそこは象の墓場があるとか聞いたことがあります」

唯「象の墓場!?ねぇ今日行ってみようよ~!」

梓「ええ!?だ、ダメですよそんなの!絶対行くなって言われてるんですから!それに象の墓ってちょっと怖いじゃないですか」

唯「怖くても私がいるから大丈夫だよ~!私は将来この国の王様になるんだよ?墓なんかに怖がってられないよ」

梓「で、でも…もし行ったことが大人たちにばれたら…」

唯「本当はあずにゃんだって気になってるくせに~」

梓「うっ…わ、私は、別に…気になってなんかないですよ」

唯「いいよじゃあ私1人で行くから」くるっ

梓「あっ」

唯「な~んてね!一緒に行こうよ~!」くるっ…だきっ

梓「うぅ~」

唯「和ちゃん!あずにゃんと遊んでくるね!」

和「巣の外に行くの?」

唯「えっ?ダメなの?」

和「遠くに行かなければいいわ。でも純をお供させるからね」

唯「えぇーっ!?」

~~~~~~

純「さぁ唯さん!梓!今日はなにをして遊びましょう!?」ばさっばさっ

梓「ちょっと!なんで純がいるんですか!」ヒソヒソ

唯「ごめん、和ちゃんが純ちゃんも一緒じゃなきゃダメだって…」ヒソヒソ

梓「これじゃ絶対に象の墓場なんて行けませんよ?」ヒソヒソ

唯「う~ん、あ、待って!私に良い考えがあるよ!」ヒソヒソ

純「ふんふ~ん♪」ばさっ、ばさっ

唯「ねぇねぇ純ちゃん」

純「はい?なんでしょう」

唯「なんか歌うたってよ」

純「いいですよ。なにがご希望ですか?」

唯「あれがいいな、なんか純ちゃんが自分の頭のこと歌ってるやつ」

純「分かりました。こほん、…では」

純「あっめの日は大嫌~い♪湿気で、テンパる天パー♪」

梓「ぷっ」

唯「ふふっ、あずにゃん、ゆっくり、そ~っと」コソーリ

純「と~りの巣な~んて♪言~わないで~♪」

梓「ぷっ、くく」コソーリ、コソーリ

唯「笑っちゃダメだよあずにゃん」コソーリ、コソーリ

~~~~

純「フリフリ!あったま、振り!放課後、jazzyなナンバーをプレイ!」

・・・・・・

~~~~

唯「やったね!上手くいったよ!」だだだだっ

梓「ぷぷ、純のやつ1人でまだ歌ってますよ」だだだだっ

唯「よし!このまま行っちゃおう!」だだだだっ

梓「はいです!」だだだだっ

~~~~~

純「アイ、ワナ、ビア、クールベ」くるっ

純「シスト…ガール…」

・・・・・・・・シーン

純「っ~~~~~~」ぞっ

純「やられた!あ~もうっ!」どひゅんっ!



王国の外

ひゅおぉ~~~~…

唯「うわぁ…」

梓「ほんとに…骨ばっかりですね…それに陽が当たらなくてちょっと寒い…」

唯「ねぇ、もうちょっと奥まで行ってみようよ」トコトコ

梓「え、もうやめましょうよ、なんだか不気味ですよここ」

唯「だ~い丈夫だよ!私は次の王様になるライオンだよ!」フンス

唯「たとえお化けやハイエナが出たって私が」

「あら~、珍しいお客さんが来てるよ」

唯梓「!?」

姫子「ほら、見てみなよいちご」すたすた

いちご「…ライオンだね」すたすた

瀧エリ「はぁ~ちょうどお腹空いてたんだよね~」すたすた

梓「ひっ…か、囲まれた…」ぞくっ

唯「だ、大丈夫だよあずにゃん、ただのハイエナたちだよ」ブルブル

姫子「おや~?あんたもしかして…憂んとこの…」

唯「そ、そうだよ!私たちに何かしたら憂が黙ってないよ…!」

姫子「はんっ!ここは私たちの国だよ」

いちご「…不法入国…」

瀧エリ「…あ~もう我慢できね」がばっ

唯「あずにゃん!逃げるよ!」だだっ!
梓「唯先輩!」だだっ

瀧エリ「がちっ」すかっ

姫子「待てコラァ!」だだ!

唯「はぁ!はぁ!」だだだだっ

梓「はぁ!はぁ!」だだだだっ

唯「うっ…やばい…こんな高い壁よじ登れない…」

梓「そんな…お、追い詰められた…」

姫子「ははは、どうした?追いかけっこはもう終わり?」すたすた

いちご「…ムカつくんだよね…あんたらライオンって」すたすた

瀧エリ「まっ、悪いのはあんたたちだし…」がばあっ

姫子「いただきまぁ~」がばあ

梓「ひっ」

唯「う、うわああ!」ひっかき!

姫子「痛っ!」

唯「はぁーっ!はぁーっ!」

梓「ゆ…唯先輩…」

姫子「……」

いちご「姫子…頬ざっくり切れてるね」

姫子「てめぇ…!」ぷるぷるぷる

唯「はあっ!はあっ!」(あずにゃんだけでも守らなきゃ…)

姫子「ぶっ殺してやる!」ぶちっ

唯「う、うわああああああ!」

梓「唯先輩!」

ひゅおっ

憂「オラァッ!!!!」どかっ

姫子「ぶっ」

エリいちご「!?」

唯梓「憂!!!!」

エリいちご「ひっ」

憂「ふんっ!」どがっ!

姫子いちごエリ「ぐえっ」ごろごろ…!

むくり
姫子「くっ…覚えてやがれ!」だだっ

いちご「ちっ」だだっ

エリ「死ね!」だだっ

憂「……」

純「憂!良かった!間に合って!」ばさっ、ばさっ

憂「うん。ありがとう純ちゃん、教えてくれて…さてと」くるっ

唯「う…い…」

憂「あなたたち…」ぎろり

唯梓「ヒイィィッ」

唯「ご、ごめ…わた…私…」

憂「……」ゴゴゴゴゴゴ

唯「ひっ」

憂「話は後だよ。まずここを出なきゃ」

唯「あ、あずにゃ…ごめん…私のせいで…」

梓「いえ…唯先輩は…勇敢でした…」

純「…」
(まったく…私が憂を呼ばなかったらどうなってたことやら)


~~~~~

王国

憂「純ちゃん、梓ちゃんを家までお願い。私は…唯と話さなくちゃ」

純「分かった」


純「唯さん…頑張って!」ぽんっ

憂「唯…こっちにおいで」

唯「う…憂…ごめんなさい…わた…私…」ポロ…ポロ…

憂「唯…あなたは今日、殺されかけたのよ…?あなただけじゃない。梓ちゃんまで巻き込んで…」

唯「うっ…ひっく…私も…憂みたいに怖いものなんて何もないって…勇気を見せたかったの…」ポロ…ポロ…

憂「勇敢なのと無謀とは違うんだよ…唯。それに…私にだって怖いものはあるよ…?」

唯「…?…憂にも怖いものがあるの…?」

憂「ええ。今日初めて…心の底から怖いと思ったわ。唯…あなたを…失ってしまうかも知れないと思ったから…」

唯「…!」

憂「私はあなたを失うことがなによりも怖いんだよ」

唯「う…い…」

憂「唯…おいで」

唯「うん」てとてと

憂「唯…」ぎゅっ

唯「えへへ…暖かい…」

憂「……」にこっ

唯「ねぇ、憂?」

憂「なぁに?」

唯「私たちっていつまでも一緒だよね?」

憂「うん。唯、星を見てごらん」

唯「きれい…」

憂「私の親…前の王様が言ってた。星空からは…過ぎ去りし偉大な王たちが私たちを見守ってるって」

唯「ホント?」

憂「うん。だから、1人で悩む時は思い出すんだよ?…唯を導いてくれる空の王たちを…」

憂「そして私を…」

唯「…うん。わかった」

きらきら…


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最終更新:2011年05月23日 21:59