洞窟・ハイエナたちの巣
姫子「くっそ!ほんとムカつくぜ!あの猫野郎!まだ頬が痛みやがる!」
いちご「悪いのはあっちなのにね」
瀧エリ「あ~今日も飯抜きだ」
信代「…しくじったか…」のそり
姫子「信代!」
信代「思いもよらないチャンスだったんだけどね…」
姫子「聞いてくれよ!あと少しであのチビを殺せそうだったんだ!」
いちご「そこで邪魔が入った」
瀧エリ「憂の野郎だ…」
信代「わかってる…」
姫子「どうすんだよ信代!憂がいる限りチビは殺せないぜ?」
信代「そうだね…まず憂を殺そう」
姫子「!?」
姫子「憂を殺す!?」
いちご「やつはサバンナ最強…」
瀧エリ「あいつを殺せるやつなんていないって」
信代「ヌーを使う」
「!?」
信代「デスデビルだよ」
姫子「おいおい正気かよ!あいつらに言葉が通じると?」
信代「言葉なんて通じなくたっていいさ…あんた達、なんであのヌーがデスデビルって呼ばれてるか知ってる?」
姫子「知らねぇよ」
信代「群れで大移動する時にあらゆる生き物を轢き殺していくからさ…ゆえに死の悪魔さ」
姫子「!…まさか」
信代「ああ。いくらサバンナ最強といえど…ヌーの群れに轢かれたらただじゃすまない」にやり
姫子「しかしどうやって轢かせるんだ?」
信代「くくく、ちゃ~んと考えてあるよ。もちろんあんたらにも協力してもらう」
姫子「はぁ!?ふざけんな!そんな危険な仕事…」
信代「ほらよ…給料前払いだ」ぶんっ
ドサッ…(シマウマの肉)
姫子いちごエリ「うひょーーーーーーっ!!!」がぶっ
姫子「やる!なんでもやらせてもらいますぜ信代さん」ガツガツもぐもぐ
信代「ああ。期待してるよ」
姫子「しかしあんたも悪だねぇ…仮にもライオンなのに…同属でしかもその王を手にかけようなんて」もぐもぐ
信代「はんっ!王にならなきゃライオンに生まれてきた意味がないのさ」
信代(ああそうとも。憂…あんたを殺して…)
信代「私は神世界の神となる」 ど ん
翌日・峡谷
唯「信代ちゃ~ん!」たたたた
信代「唯!」にこっ
唯「ねぇねぇこの谷にある凄く美味しいものってなに!?昨日信代ちゃんに聞いてから涎が止まらないよ」じゅるり
信代「はは、も~少しここで待ってればくるよ」すたすた
唯「どこいくの?」すたすた
信代「お~っと唯は付いてきちゃダメだ。呼んでくるからここで待ってるんだよ?」
唯「ん~わかった!」
信代「じゃ、あとほんの少し待てば良いからね」すたすた
唯「楽しみだなぁ~どんなものなんだろう」
唯「あずにゃんも呼んでくれば良かったな~!でも信代ちゃん絶対1人で来いって言ってたしな~」
信代「くくく、馬鹿め」
峡谷の上の草原
そこには200頭以上のヌーの大群がのんびり草を食べていた!
そして物陰からヌーの群れをうかがう三匹のハイエナ!
エリ「あ~、もう我慢できね、いいだろ?姫子!一匹ぐらい」ヒソヒソ
姫子「ダメだ!信代の合図があるまで待つよ」ヒソヒソ
エリ「くっそ~!眼の前にこんなに肉がたくさんあるのに!」ヒソヒソ
いちご「あ…信代」
遠くの高台に信代が姿を現した!
信代「 」すっ
エリ「よっしゃ合図だ!」
姫子「いくぜっ!」
三匹のハイエナが突然ヌーの群れに飛びかかった!
ヌー「!!!!!????」
峡谷
ゴゴ…ゴ…
唯「ん?」
ゴゴゴ…ゴ…ゴ…
唯「なんだろう…地響き?」くるっ
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ
振り向いた唯の眼に映ったのは!
唯「 」 ざ わ っ
ヌーの群れ「 」ドドドドドドドドド
土埃を上げながら峡谷になだれ込んでくるヌーの大群だった!
唯「うっ…」ぞくり
唯「う、うわああああああああ」くるっ…ダダダダダダ
唯、走る!逃げる!しかし…!
ヌー「マディキャンディ!マディキャンディ!」ドドドドドド
ヌーの脚の方が速い!いずれ追いつかれる!
ヌー「あたまあたまくびっ!」ドドドドッドドドドドド
唯「ひいいいいいいっ!」ダッダダダだ
ヌー「アアイノオオォミライヲオオォチョウダアアアァァァァァァァァァイッ!!!!」ドドドド
唯追いつかれた!唯がヌーの群れに飲み込まれた!
しかしここで唯の身体が小さいことが幸いした!
ヌーの逞しい脚がなかなか唯の身体に当たらないのだ!
唯「!」
唯、1本の枯れかかった小さな木を見つける!
唯「 」だっ…
唯跳ぶ!
唯「 」がしっ…よじよじ
唯木の上に見事避難成功!
木「」ぐらぐらっ…みしっ
しかしヌーたちの身体が木に当たる!木は今にも折れそう!
純「ん?」
憂「どうしたの?純ちゃん」
純「ねぇあの遠くの峡谷のところ…ヌーが大移動してる…」
憂「この時期に?妙だね…」
「憂!ういー!」ダダダ
純憂「!」くるっ
信代「憂!大変だ!ヌーが暴走して峡谷になだれ込んで!峡谷には唯がいるんだ!」ハァッ!ハァッ!
憂「 」 ざ わ っ
~~~~~~
峡谷
ドドドドドドドド
木「」みしっみしっ
唯「だ、だれか…助けて」じわり
憂「唯ぃーーーーーーーーーっ!!!!!」だっ
その時!崖の上から憂がヌーの群れの中に飛び込んだ!
唯「憂!」
憂「唯!絶対その木から手を離さないで!」ダダダ
どかっ!どかっ!
憂「ぐうっ」
しかし唯と違って憂の身体は大きい!
ヌーの突進が憂を直撃する!
唯「憂!憂ぃぃぃぃぃ!」
木「」みしみし…ぼきんっ!!!
ついに木が折れた!
唯「うわあああああああ!」
憂「」だっ……かぷっ
瞬間!ヌーの群れの中から傷だらけの憂が飛び出してきて空中で見事唯をキャッチ!
憂「」だだっ
憂、唯をくわえたままジャンプ!
そして崖にしがみつく!
唯をそこに置く!
唯「憂!憂も早」
どかっ
憂「くぅっ」
憂が崖をよじのぼろうとした瞬間、ヌーの身体が直撃!
憂がヌーの群れに流される!
唯「憂ぃーーーーーっ!」だだっ
唯「だれかっ!だれか憂を助けて!憂が死んじゃう!」ポロ…ポロ…
信代「…」すたすた
信代が崖の上からヌーの群れを観察している!
純「信代さん!」バサッバサッ
信代「!」
純「なにやってんですか信代さん!早く憂を助けてあげぶっ」
信代のビンタが純を直撃!純気絶!
信代「ここからが大事なのよ…」にやり
~~~~~~
ドドドドドドドド
憂「 」だっ
ヌーの群れの中から憂が跳んだ!
そのまま崖をよじのぼる!
憂「ぐっ」はあ、はあ、
憂の前足が頂上についた!
あともう一息!
しかしそこに…
信代「…」すっ
信代が現れた!信代が憂を見下ろす!
憂「の、信代…!手を…!貸して…!」ぜぇ、ぜぇ、ぜぇ
憂には最早体力が残されていない!幾度となくヌーに轢かれて身体のあちこちの骨にもヒビがはいっている!
信代「……」ゴゴゴゴ
憂「信代…?」
信代「 計 画 通 り 」にやり…
憂「!」
信代「ふんっ!」
ざくっ…
憂「ぐぅぅぅっ!」
憂の前足に信代の爪が突き刺さった!
信代「じゃあね王サマ…国は私に…」
憂「 」
信代「任せな!」ぶんっ
憂「ぬわーーーーーーーーーーーーーーっ!!!!」
憂の身体が…!
まっ逆さまに!
ヌーの群れの中へと!
落下していった!
唯「憂ぃーーーーーーーーーーーーーーっ!!!!!」
10分後…
ヌーの群れはもう過ぎ去り、峡谷は不気味な静寂に包まれていた!
唯「う、げほっ!ごほっ!う、憂…!」
(凄い土埃…」
唯「憂!憂!どこ…!憂いいいい!」
唯「…ん?」
憂「………」
唯「憂っ!!!!」だだだっ
憂「………」
唯「憂っ!憂っ!う…!!!」
(つ…冷たい…)
憂「………」
唯「う……い……」ポロ…ポロ…
憂「………」
唯「そんな…憂…!目を開けてよ…憂っ!」ポロポロ
憂「………」
唯「ねぇ!憂ってば!お願いだから目を開けてよぉ!」ポロポロ
憂「………」
唯「憂!憂ぃぃぃぃぃぃぃぃ!!!!」
唯「うわあああああああん!あああああああああん!」
唯「誰か!誰か助けてぇぇぇ!ああああああああん!!!」
すた…すた…
信代「……」すっ
信代「唯…」
唯「!」びくっ…くるっ
唯「の、信代ちゃん…」ポロポロ
信代「唯…なにをしたの…?」
唯「うっ…うっ…ヌーの群れから私を守るために…憂が…」ポロポロ
信代「…あなたのせいで…憂は死んだのね…」
唯「うっ!うわああ!うっ!ひっく!」ポロポロ
信代「和たちがこの事実を知ったら…どうなるでしょうね…」
唯「うっ…信代ちゃん…私…どうすれば…」ポロポロ
信代「この国から…逃げな…」
唯「!」
信代「そして二度と戻ってくるな…」
唯「…!」
信代「それが残されたライオンにとっても…あんたにとっても一番良い選択なんだよ」
唯「…わ、わかった…」すっく…たた…たたたたたたた
信代「………」
すっ
その時!
信代の背後に三匹のハイエナが!
姫子「…」
いちご「…」
エリ「…」
信代「…殺せ」
姫子いちごエリ「よっしゃあ!」だだだっ
~~~~~~
唯「はぁっ!はぁっ!」だだだだだだ
「オラァ!待てコラァ!」
唯「ん!?」くるっ
姫子いちごエリ「ひゃっはー!」だだだだだだ
唯「ひっ」だだだだだだだだ
唯は逃げた!必死で逃げた!
峡谷を出て、茨の森を抜け、広大な砂漠に出た!
それでも唯は脚を止めなかった!
姫子「ちっ…この茨の森は私らの身体じゃあ抜けられねぇ!」
いちご「まあでも、あいつもいずれ砂漠でのたれ死ぬでしょ」
エリ「おーいチビ!帰ってきやがったらぶっ殺すかんなあー!」
そのうち唯の身体は、はるか地平線の彼方へ消えていった!
~~~~~~~
王国・ライオンたちの巣
和「うっ…うう…憂…唯…」ぐすん
梓「唯先輩…」ポロ…ポロ
憂と唯を同時に失ったライオンたちは、絶望と悲しみに暮れていた!
信代「憂だけじゃなく唯をも失ったことは、非常に残念だよ…」
信代「しかし私たちライオンは、サバンナをまとめる王族として、前へ進まないといけない」
信代「こうなってしまっては仕方ない。私が憂に代わって王になり…」すっ…すたすた
和「!」
信代「そして新しい時代を築く…」
ハイエナたち「 」ぞろぞろ
ライオンたち「!?」
信代「ハイエナたちと共存し、輝かしい時代を作ろう」
ゴロゴロ…ピッシャーン!
信代(くくく、これで私が…王!!!)
この日から、平和だったサバンナの王国は
暴君・信代が支配する暗黒の時代を迎えることになる!
紬「…なんてこと…」ぐすん
砂漠
唯「はぁ、はぁ、」ふら…ふら…
唯「あ…暑い…」ふら…ふら…
唯「はぁ…はぁ…」ふら…ふら…
唯「もう…だめ…」どさっ
唯「………」
唯「………」すぅ…
砂漠のど真ん中で、唯は気を失った!
第1部 完
最終更新:2011年05月23日 22:01