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澪「唯はまだか…!?」

唯がシャロの元へ突入し、中心部へ突き進んだ所までは確認できたが、
領域に入ってしまってからは中の様子がよく分からない。

澪「早くしないと…」

紬「澪ちゃん!あれ…!」

澪「!?」

紬の声の方を向くと、ある一人の生徒が立っていた。

コーデリア「! ここから先は危ないわ!早くお逃げなさい!」

コーデリアが生徒に向かって忠告した。
しかし生徒は尚もこちらへ歩いて来る。

澪「コーデリア!そいつはただの一般生徒じゃない!」

コーデリア「え?」

突然、視界が激しい光に覆われた。

エリー「コーデリアさん!」

間一髪、エリーがコーデリアを引き寄せた。
元居た場所は黒こげになっている。

澪「アイツは…『無人軍隊(アームズ)』の第2級補佐官、佐藤アカネ…!!」

アカネ「…あなたたち、邪魔よ。どきなさい」

コーデリア「な、何よ今の…!?」

紬「彼女たちは魔技兵器のスペシャリスト…魔技使いじゃない代わりに、その体には
  いかなる魔技も通さない特殊装甲と魔技兵器を纏っている」

紬がアカネから目を離さずに言った。

アカネ「解説ありがとう」シュ

澪「!! 避けろ!」

ドガアアン!!

紬「ああっ!」

一瞬にして廊下の真ん中に巨大な穴が空いた。
澪の掛け声のおかげで直撃は免れたが、ものすごい爆風と衝撃で全員なぎ倒される。

アカネ「命令に従いなさい。さもなければ…殺す」

表情一つ変えず、アカネは冷たく言い放った。


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ネロ「おい梓っ!なんなんだよアイツはっ!?」

ネロが息を切らしながら後ろの梓に問いかけた。
背中越しに梓が答える。

梓「あれが『無人軍隊(アームズ)』ですよ!というか囲まれてますってば!」

ネロ「そんなの見りゃ~分かるっての!ボクが言いたいのは…」

ネロが何か言う前に、敵の攻撃が二人めがけて飛んでくる。

梓「きゃっ!?」

ネロ「んにゃろ~!!」

何とか攻撃はかわせるものの、敵の数が多く、反撃する隙がない。

ネロ「こんな雑魚どもより…あの大将は何者だよ!」

ネロが指差す方向には一人の女子生徒がいた。

梓「あれは…『無人軍隊(アームズ)』の総指揮官にしてナンバー1の実力者、佐伯三花…!
  通称『女神』の三花!」

ネロ「女神~!?あの覇気からして完全に死神だろっ!」

三花「私たちバレー部の妨害工作を企んでいたみたいだね。悪いことはしないから
   おとなしく捕まってよ。じゃなきゃここで始末することになるよ?」ニコッ

梓(く…なんで総指揮官がわざわざ現場の、しかも前線に…!?)

三花「…構え」ス・・・

ネロ「!!あぶな…」

三花「撃て」


ドドドドドドド!!!


三花が総攻撃の指令を下し、ネロと梓が居た場所に一斉に攻撃が放たれた。
土煙が立ちのぼり、視界が悪くなる。

三花「………」

煙が晴れる。

そこに二人の姿はなく、まるでコンクリートが組み替えられたように丸い穴が掘られていた。

三花「ふぅん…あの子、こんなことも出来るんだ…。
   よし、あんたたちは持ち場についてオッケーだよ。あいつらは私が殺る」

三花の指令にバレー部員たちが「はい!!」と威勢よく返事する。

三花「…楽しくなってきた♪」

…一方、ネロと梓は『無人軍隊』の攻撃からギリギリのところで逃げ、とある教室に
隠れていた。

梓「はぁ…はぁ…っ」

ネロ「あっぶなかった~…もう少し遅かったらやられてたよ~」

梓「ネ、ネロさんは一体何を…?」

ネロ「地下を通る電気配線にボクの『電子制御(ダイレクトハック)』を仕掛けたのさ。
   一か八かだったけど、ちょうど近くにタービンの駆動装置があったからそこの動力を借りて
   穴を掘ったってこと」

梓「そんなことが…」

ネロ「ってかあの三花とかいうヤツ、いきなり目の前に現れたと思ったら訳わかんない攻撃しやがって…」

本当にいきなりだった。何の前触れもなしに、まるでテレポートしてきたように現れたのだ。

梓「私も初めて見ました…。あれが特殊魔技装甲の能力のひとつ『隠(ヒドゥン)』…だと思います」

ネロ「『隠(ヒドゥン)』…?」

梓「彼女らは目に見えない兵器を身に纏っているんです。それを上手く使うことで
  完全に姿を消すことが出来る…」

ネロ「ふ~ん…てことはあの攻撃の正体も…」

梓「あれは魔力そのものを放出する武器です。バレー部に標準装備されていて、
  言わば開放系魔技のようなもの……詳しい仕組みは分かりませんけど……」

ネロ「…………」

教室の隅でヒソヒソと会話していると、廊下に人影が現れた。

梓「!!」


ガラッ


三花「……フッフーン、見ぃ~つけた♪」

梓「ネロさん!逃げないと!」

梓がネロの服を引っ張り、出口へ向かおうとする。
しかしネロはその場を動かなかった。

ネロ「ボクは逃げないぞ!」

梓「な!?」

三花「抵抗するなら、例え軽音部でも容赦しないよ…?」

シュン

ネロ「危ない!」

梓「きゃ!?」

ドゴッ!!

予備動作なしで繰り出される攻撃を見切り、ネロは梓を蹴飛ばして避けた。

三花「! へぇ…やるじゃん」

梓「あいたたた…」

ネロ「アイツの攻撃の正体が分かったぞ!あれは擬似的に魔技に見立てた微小のナノマシンを
   体に纏い、操っているんだ!そこから魔力エネルギーを生み出したり、周りの景色と同化して
   姿を隠したりしている…!」

三花「…こんなに早く見破られるなんて、大したもんだね。流石オカルト研、誉めてあげよう」

三花は本当に驚いたような顔をした。しかしすぐにニコニコと笑みを顔に張り付ける。

ネロ「梓、アイツの周りの空気をよく見るんだ!攻撃の瞬間に歪むからすぐに分かるはず…」

三花「分かったところで…キミ達に勝ち目はないッ!!」ビュン

梓「!?」

ネロ「うぐッ!?」ドンッ!

三花「私たちの運動能力を舐めちゃいけないよ~。これでも…最強を名乗ってるんだからね」

ギリギリ…

ネロ「あ……が……」

床に叩きつけられ、完全に拘束されたネロは身動きが取れない。

三花「一人目、捕まえた♪」

梓「あ………」

三花「さて、と。もう一人のおチビちゃんは確か…軽音部の新人で魔技も使えないんだって?
   可哀そうに…私手加減出来ないから、かなり痛いよ?」

梓「た、助けてっ!」

三花「半端な覚悟じゃ治安組織なんてやってらんないってこと、教えてあ・げ・る♪」



?「その必要はないわ」



ドドドドドド・・・!!

三花「ッ!?」


カガ゙ン!!

三花「くっ…!」

ネロの上に馬乗りになっていた三花は、何者かによって吹き飛ばされた。

ネロ「かはっ!ハァ…ハァ…お、お前…!?」

梓「あ、あなたは…?」

ほむら「遅くなってごめんなさい。コイツは私が相手するから、あなた達は自分のやるべきことを
    為しなさい」


暁美ほむらは二人を背に、淡々と言った。
梓は何が起こったのか理解する前に、一刻も早くこの場から逃げなくてはと体を起こした。

ネロ「おい!アイツはボクがやっつけるんだぞ!」

梓「駄目ですネロさん!誰だか分かりませんけど…ってあれ?もしかして…」

梓(この人どこかで………! 巴マミと一緒に魔女退治してた、暁美ほむら!?)

ほむら「…………」

ネロ「梓は一人で逃げればいいだろ!ボクは個人的にアイツをやっつけたいんだ!邪魔するな!」

ほむら「…好きにしなさい。だけど足でまといは遠慮するわ」

梓「ネロさん…!」

ネロ「早く行けってば!梓のグズ!のろま!」

梓「…くっ!ほむらさん、ネロさん、ここはお願いします!」

梓はそう言い残すと、出口に向かって走った。

三花「逃がさないよ!!」シュッ!!

バシッ!!

三花「なに!?」

ほむら「…………」

三花の攻撃は梓には届かず、手前で急に消滅した。
その間、梓は勢いよく教室を飛び出し、廊下を走って行った。

三花「…クックック……面白いね…二人同時に相手とは…」

三花は教室の真ん中で高らかに笑った。

ほむら「……一瞬でケリをつけましょう」

ネロ「佐伯三花……お前だけは、このボクがぶったおす!!」


~~~~~


紬「エリーさん!コーデリアさん!しっかりして!」

紬は気を失っている二人に声をかけていた。
すぐそこでは澪がアカネの攻撃を防いでいる。

アカネ「………」

ドゴォン!!
バギッッ!

澪は『念動波(テレキネシス)』を使って物体を呼び寄せ、それでアカネの攻撃を防いでいたが、
『楽器』による魔力増幅をしていない今の澪では運べる物体の大きさや強度で対抗しきれない。

澪「このままじゃ4人ともやられる…!アカネは私が押さえているから、ムギはその二人を連れて
  逃げてくれ」

紬「そんな…澪ちゃん一人残していくわけにはいかないわ!」

アカネ「時間稼ぎしても無駄よ。私の攻撃はバレー部で最高の範囲を誇る…この廊下そのものを
    吹っ飛ばしてもいいのよ?」

澪「く…!」

アカネ「……早くしないと三花に怒られちゃうから、そろそろ本気だします」

アカネがそう言うや否や、澪たちの周り一帯の空気が熱を帯び始めた。

澪「!! 来る!!」

アカネ「 『神の怒り(ジャッジメント)』 」パリ・・・

アカネの掛け声と共に廊下がまばゆい光に包まれる。

ドオオオオオオオオオン!!!

次の瞬間、雷鳴のような爆発音と、何メートルも立ち上がる火柱によって
澪たちが居た場所は跡形もなく消えた。

ドドドドドド…

アカネ(…本気だしすぎたかな……エリに怒られちゃう…)シュン






杏子「へぇ、アンタもそんな顔できるんだ」

不意にアカネの背後から声がした。。

アカネ「!?」バッ

振り向くと、澪たち4人を抱えて安全な場所に立っている一人の少女がいた。

杏子「『魔人』と恐れられた『無人軍隊(アームズ)』の第2級補佐官、佐藤アカネ…
   こんだけ強いのにまだ上に二人いるってのかよ」

澪「あ…あなたは一体…?」

紬と澪は唖然として助けてくれた人物を見上げていた。

杏子「私は佐倉杏子。まぁ知り合いに呼ばれて来たんだが…まさか悪名高い『魔人』と
   会いまみえるとはねえ…楽しくなってきたじゃん」

アカネ「…あなた…桜高の生徒じゃないわね?」

杏子「だからどうってんだい」

アカネ「部外者は問答無用で始末する校則となっています」

杏子「噂通り、物騒な学校だねぇ。ま、あたしには関係ないけど」

澪「学校外の…?一体どうして…」

杏子「巴マミのやつさ。ま、戦友のたっての頼みってところかな…
   ここはあたしに任せな」

アカネ「……舐めた真似を……!」ギリッ

ボッ!!

杏子「おおっと!」バシィ!

不意にアカネから炎が放たれ、杏子がとっさに反応する。
炎は弾かれ、カベに激突した。

紬「アカネちゃんの魔技兵器は現象系特化で、しかもあらゆる範囲をカバーしている…!
  佐倉さんだけじゃ勝てないわ!」

さやか「杏子だけじゃないよ!」

そう言って横に現れたもう一人の少女……以前に巴マミと一緒に
生物化学教室に居た、青髪の生徒だ。

澪「!?」

杏子「おっそいぞ、さやか!」

さやか「まーまー、相手は『無人軍隊(アームズ)』の第2級補佐官だっけ?
    魔女以外で対峙するなんて、杏子くらいなもんだと思ってたのに……」

杏子「ということで、あんたたちは逃げなって。あの場所に用があるんだろ?」


澪「……分かった、二人に任せる」

紬「私たちも協力した方が…!」

澪「『楽器』を使えない私たちは足手まといにしかならない…それよりもエリーとコーデリアさんを
  安全なところへ!」

紬はしばらく迷った後、頷いた。
二人は気を失ったエリーたちを抱え、軽音部の部室へと向かって行った。


アカネ「……ふん。私に課せられた任務は、ここから先には行かせないということだけ…
    だけど私をここまでコケにしてくれたからには、相応の報いを受けてもらいます」

アカネの体から異常な熱気が放出される。

杏子「おいおい…どうなってんだ、こりゃ…」

さやか「『無人軍隊(アームズ)』に魔法は効かないってのは聞いたことあるけど…」

アカネ「……………」

杏子「なら…魔力を上げて…物理で殴ればいいッ!!」ガッ

ドゴオオオン……!!


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最終更新:2011年05月25日 23:06