――4月・教室――

唯「それでさー」

律「おおぅ! まじかよ!」

紬「それでそれで!?」

澪「まさかそんなことがあるなんて……」

和「びっくりよね」

律「だよなー」

ドア「がちゃ」

さわ子「ホームルーム始めるわよ。席について」

紬「はーい」

唯「あれ? あの人だれ?」

さわ子「えーと、新学期が始まって2週間だけど、新任の副担任を紹介します。それじゃあ、
一言お願いします」

ウメハラ「え? ああ、新任の梅原です」

唯「・・・・・・ふぇ?」

信代「だれ?」

エリ「イケメンだけど……」

姫子「あんな先生いたっけ?」

さわ子「梅原先生は今年から先生になったの。初めての赴任先が女子高で大変だろう
から皆も協力してね」

ウメハラ「いや、そんなことはないんですけど」

さわ子「あらそう? じゃあ、自己紹介でもしてくれる?」

ウメハラ「いやー、特にはないんですけど」

律(変わった人だな)

ウメハラ「まあ、頑張りたいです」

さわ子「それだけ?」

ウメハラ「はい」

さわ子「それじゃあ、ホームルームはこれでおしまい。梅原先生は軽音部の顧問補佐を
してもらうから」

澪「え!?」

さわ子「……あ。一時間目は音楽の時間だったのね。梅原先生、授業はいってますか?」

ウメハラ「いや、入ってはいないです」

さわ子「それならちょうどいいわ! クラスのみんなに馴染んでもらえるように、今日の
授業は梅原先生への質問タイムに当てましょう」

ウメハラ「ハハハ」

紬「それじゃあ、今日は教室で授業ですか?」

さわ子「そうよ。ムギちゃん……じゃなかった。琴吹さん、みんなに伝えてくれる?」

紬「はーい」タタタっ

さわ子「ごめんなさい。勝手に決めちゃって。大丈夫でした?」

ウメハラ「まあ、大丈夫だと思います」

さわ子「よかったー」ほっ

さわ子(山中さわ子、彼氏いない歴に終止符を打つチャンスが来たわ!)

さわ子「……と、いうことで梅原先生に質問ある人!」

唯「はい!」

さわ子「平沢さん! ……あ、あの子は平沢唯さんっていって軽音部でギターボーカルや
ってのよ」

ウメハラ「へえ」

唯「好きな食べ物はなんですか!?」

ウメハラ「うーん。色々あるんだけど、やっぱりラーメンかな。じゃんがらラーメン」

澪(そのラーメン知ってるぞ。梓と前に行ったところだ)

澪「は、はい!」

さわ子「はい。秋山さん」

澪「趣味はな、なんです……か?」

ウメハラ「食べ歩きかな。美味いものがあるって言われたら並んだり、遠くでも食べに
行こうと思う」

律「好きなスポーツ選手はいるんですかー?」

さわ子「こら田井中さん。手を挙げて発言しなさい」

ウメハラ「ホンダ」

紬「女の子同士って素敵だと思いませんか!?」

ウメハラ「どうでもいい。どうでもいいと口にすることすらどうでもいい」

紬「そんな!」ガーン

姫子「いやいや」

さわ子「ほらほら。梅原先生困ってるじゃない。もう少しちゃんとした質問をしなさい。たと
えば彼女はいますかー? とか好みの女性はどんな人ですかー? とか」

律「それってさわちゃんが訊きたいだけじゃ――」

さわ子「あ?」ギロ

律「な、なんだかストレッチしたくなってきたー。おいっちに。おいっちに」

唯「そうだ! 先生にあだ名はありますか!?」

ウメハラ「あだ名かー。いや、そんなにないかな」

唯「それじゃあ――ウメちゃん先生ってのはどうですか!」

ウメハラ「いや、まあ、別にいいけど」

唯「わーい!」

チャイム「きーんこーんかーんこーん」

さわ子「それじゃあ質問の時間は終わり。梅原先生、ありがとうございました」

アカネ「梅原先生、かっこよくない!?」

アキヨ「そ、そうだね。かっこいい」

エリ「この学校、男の先生といったらおっさんしかいないもんねー」

アカネ「しかも軽音部の顧問補佐なんて、唯たち恵まれすぎでしょ」

唯「そうかなー。えへへ」

律「まさか男の先生が来るなんて、予想外だったな。澪」

澪「ふえ!? そ、そそそそそうだな!」

紬「澪ちゃん、大丈夫?」

和「顔色悪いわよ?」

澪「へ、平気だ! 男の人なんて怖くもないんともないんだからな! そんなことより、梓
にも教えてやろう」ポチポチ

律「おててが震えてますわよ? 澪ちゅあん」

澪「やかましい!」ごつん!

律「甘いぜ!」カンっ!

澪「ブロッキング!?」

唯律紬和「え?」


――そのころ、西横浜の廃墟――

男1「なんかさー、ウメハラが先生になったらしいんだよね」

男2「は? ありえねーだろ。冗談は顔だけにしとけよ」

男3「いやいや、実はあれ本当らしいですよ」

男2「てめーも乗っかるんじゃねえよ。調子乗るだろこいつが」

男3「五神ネットワーク舐めないでくださいよ」

男1「お、噂の五神ネットワーク」

男2「あれなんなの? 俺にも教えてくれない?」

男3「無理でしょ。だって五神じゃないじゃん」

男2(マゴ)「うっせーぞときど。黒バラでくまちょむに負けやがってよー」

男3(ときど)「それは関係ないでしょ」

男1「まあまあ」

マゴときど「うっせー顔!」

KSK「これ、配信のってるんだぞ!」

ときど「おっといけないいけない。プロ意識が足りなかった」

マゴ「プロプロ言ってんじゃねーぞ」

ときど「いやー、プロだからなー俺。プロだからなー」

KSK「しかもさ。女子高らしいんだよね」

マゴ「なにが?」

KSK「ウメハラが赴任してる学校が」

マゴ「は?」

ときど「ウメさん……?」

チャット欄「先生ハラ!」

チャット欄「連絡促してみます」

チャット欄「蝿調子に乗るな」

KSK「さーて、今月中にVISION復活させないとなー」

マゴ「お前、先月の前の月もそう言ってたよな」

ときど「先々月ね」


――二年教室――

純「ビッグニュース!!!!」

梓「うっとおとしい」

純「器用な噛み方!」

梓「うっとおしい」

憂「どうしたの? 純ちゃん」

純「今年、新任の先生が来たって!」

梓「そりゃあ来るでしょ」

純「ただ来るだけじゃないんだなー。なんと、イケメンらしいよ!」

憂「へー」

梓「ふーん」

純「反応薄ッ!」

憂「なんて名前の先生なの?」

純「梅原大吾って先生だよ!」

梓(……は?)

梓(梅原大吾……? え? まさか、同姓同名だよね。でもイケメンって言ってたし……)

純「どしたの? 梓」

梓(ウメスレ古参で大のウメ信者の私が通う学校に……そんな馬鹿な)

憂「んー?」

純「どうしよう。梓が壊れちゃった」

憂「もうすぐ授業始まっちゃうし、放っておこう」

純「う、うん」

梓(仮令。仮令だ。もし梅原先生があのウメハラだったら。私の渾身の電波実況を聞か
せるしかない! やってやるです!)

ウメハラ「それじゃあ授業を始めます」がらり

梓「ウメハラがああああああああああああああああ!!!!!!!!!」

純「うわ!」

憂「ひい!」

梓「あ、あああ……あああ」

ウメハラ「ん?」

梓(ウメハラだ。マジでウメハラだ。マジハラだ……!)

ウメハラ「えーと、じゃあ日直は――」

日直の子「きりーつ」

梓「れえええええええええええええええええええい!!!!!!」

ウメハラ「!?」

憂「ちょっと、梓ちゃん!」

梓「あわわわわあわわわあわわ……」

純「な、なんかこの子体調悪いみたいなんで、保健室に連れて行きますねー。あははー」

ドア「がちゃん」

ウメハラ「……」

クラス「……」

ウメハラ「じゃあ、授業を始めます」


――保健室――

純「失礼しまーす」

憂「あれ? 先生いないみたいだね」

純「それはよかった。色々訊かれると面倒だもんね」

梓「ハァ……ハァ……」

純「どうしたのさ梓。いきなりあんなことして。アンタ、日直じゃないじゃん」

梓「ウメ様ぁ……」びくんびくん

純「……」

憂「タ、タオル濡らしてくるね。今日、四月のわりには暑いもん」

純「あ、こら憂! 逃げるな!」

憂「あははー」ぴゅー

ドア「がちゃん」

純「あらら。……まったく、梓の所為なんだから」

梓「ウメ様のレバーをウメハラ持ちで、ウメ昇龍をウメ波動に暴発させたい……」ハァハァ

純「きもちわるい」

梓「……フヒヒ」

純「……どうしよう。病院……いや、これはお寺でお祓いを受けたほうがいいのかな」

梓「アィィィ……」

純「変な夢見てるっぽいし」

ドア「がちゃ」

澪「あずさー。大丈夫かー?」

純「澪先輩! どうして!?」

澪「ん? ああ、憂ちゃんからメールが来たんだよ。梓が倒れたって」

純「……それで、憂は?」

澪「教室に帰っていったよ」

純「憂め」

澪「それで、梓はどうしたっていうんだ?」

純「梅原先生が教室に入ってきたら、いきなり……」

澪「ウメ……いや、梅原先生が関係あるのか」

梓「……れっつごー」

澪「どうした梓! レッツゴーを歌いたいのか!?」

純「今、梓は変な夢を見ています。放っておきましょう」

澪「そうだったのか。それなら仕方ないな」

純「梅原先生、イケメンですよね」

澪「確かにな。でもsak……いや、梓が男に興味があるとは思えないんだけど」

純「その言い方はどうかと……」

澪「ここだけの話、梓が入部したころは梓の視線を感じてならなかったんだ。アレは間
違いなく私に性的な視線を向けていたな。ああ、思い出すだけで部屋の隅で震えたく
なる」

純「梓のこと、嫌いなんですか?」

澪「そんなことはないよ。大大大好きな後輩だ」

純「それならよかった」

梓「うぅ……リュウフェイロンは2:8不利だから……」

澪「なるほど……。あれを試してみよう」

純「?」

澪「フフフ……」

純「澪先輩、梓の耳元でなにを……」

澪「ホアチャ」

梓「……」ぴく

澪「キャノンスパイク」

梓「…………」ぴくぴく

澪「勝ったのはウメハラァァァ、じゃなくてうりょ」

梓「――――」

澪「ヨガカタストロフィ」

梓「――――――」

澪「勝ったのはももち戦だけのプロ」

梓「――――」

澪「sakoさん最強」

梓「うわあああああああああああああああああああ!!!!!!!」がばぁ!

純「うわああああああああああああああ!!!!」

梓「sakoオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!」

澪「どうした梓」

梓「……あれ? 澪先輩じゃないですか」

純「耳が痛い……」

澪「いきなり起きるからびっくりしちゃったぞ。ほら、大丈夫か?」

梓「え? え?」

澪「寝ぼけてるのか? 授業は休んで、この時間は横になってな」

梓「は、はい……」

梓(ウメ信者のトラウマが次々に呼び起されたけど……気のせいだよね)

澪「よしよし」なでなで

梓「あったかいです……澪先輩、お母さんみたい」

純「……うらやましいな」

ドア「がちゃ」

ウメハラ「大丈夫?」

梓「!?」

ウメハラ「うーん。キミが、軽音部の中野梓さん?」

梓「は、ひゃい!」

澪「梓、落ちつけって」

ウメハラ「体調が悪いみたいだけど、平気? 次の授業は出られる?」

純(かっこいい……)

梓「だ、大丈夫だと……思います」

ウメハラ「それならよかった。じゃあ、お大事に」

ドア「がちゃん」

澪「いい先生だな」

純「ですね」

梓「ウメ様の新たな一面……。ウメスレに……いや、やめておこう。これは私だけの
思い出だもん」


2
最終更新:2011年05月26日 22:29